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ドラゴン転生 5話「ワガママの島」5KB |
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「たぶん、何かを探すために旅に出て、故郷に帰ってきた時に自分自身を見つけるのでしょう」
チママンダ・ンゴズィ・アディーチェナイジェリア・イボ民族出身の作家)
どんな世界でも争い事は起こる。
この青空が無限に続く異世界でも、人類の歴史=戦争の歴史……と、5億人ほど住めそうな巨大な浮遊大陸に訪れた私は思った。
目の前には、戦地へと向けて次々と出発する軍人達の姿がある。
国民の歓声と期待を受け、涙をポロポロ流す軍人が大きな飛行船へ乗り込んでいく光景の隣には
「この非国民ども!
戦地へ行きたくないなら国外追放だ!」
顔に大量の傷がある大柄のベテラン軍曹が怒りの声を上げた。
軍曹は、縄で手足を繋がれた10人ほどの若者達をバシーンっ!バシーンっ!と鞭で叩いて歩かせて、私の目の前を通り過ぎようとしている。
私がこの光景を見ている事に、ベテラン軍曹は気づいて笑顔で話しかけてきた。
「ドラゴン様!見苦しい光景をお見せしてすいません!
こいつらは兵士の癖に、戦地に行く事を拒否するゴミ屑な非国民でして、国外追放にする最中なのであります!」
「……戦争か。大変だな」
「ええ!こいつらみたいに兵士の義務を果たさない屑どもが出て大変です!
ほら!クズども!
ドラゴン様に挨拶しろ!」
パシーンっ!
鞭に叩かれて、服が裂けた若者の1人が、泣きながら私に話しかけてきた。
「ドラゴン様!この国は酷いんです!
無理やり、私達の自由意思を無視して戦争に行かせるんです!」
「むぅ……それは本当に大変だな。
だが、徴兵制がある国で国民が戦争に行くのは義務だろう?
義務を果たすからこそ、権利が得られる訳だ」
「私達は、元々はこの国の民ではありません!
国の命令に大人しく従う義理なんてないはずです!」
ま、まさか国から義務だけ押し付けられたのか!?
――そう思って戦慄していると若者は
「私達は、この豊かな国の国籍を得るために、兵士になっただけの難民です!
この国に来れば、生活保護受けられて働かずに暮らせると聞いたのに……こんなの酷い!あんまりだ!
兵隊生活は自由がなくて最悪です!
基地では必ず2人一組行動っ!単独で自由に歩く事が許されません!
決められた時間に風呂に入って、夜の10時には寝る制限だらけの生活っ!
飯は栄養バランスは良いけど不味い!
昼間は軍事教練のせいで、気軽に昼寝も出来ませんっ!」
「え?」
「しかも、私の故郷は、この国の軍隊が進軍する予定の紛争地帯なんです!
私は戦乱の日々から逃れて、密航業者に大金払って、ようやくこの国に来たのに……兵士になって苦労して故郷に逆戻りなんて嫌でしょう!?
だから、戦地に行く事を拒否したんです!
国外追放になった方がマシだ!このクソ国家!
私達は騙された!
いずれ謝罪と賠償を要求し――」
若者の言葉に、後ろに居たベテラン軍曹が顔を真っ赤にして、鞭を振り上げ
ぱしーん!ぱしーん!ぱしーん 猛烈な勢いで若者を叩きまくった。
「ぎゃあぁぁぁぁ!!!!背中の皮膚が切れたああああああ!!!」
「貴様ぁー!この非国民がぁー!
兵士になるのは、この国の国籍を得るための最低限の対価だろうが!
それすら忘れて、権利ばっかり主張する人間の屑め!
義務を果たしてから言え!」
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!!」
「死ねっ!死ねっ!非国民っ!
権利だけを出張する甘ったれめ!
貴様の母親はきっとアバズレだ!姉はブスだ!史上最悪の生ゴミだ!」
若者は痛みで気を失って地面に倒れた。
ベテラン軍曹は息をハァハァッして落ち着いた後に私の方を見て
「ドラゴン様!本当申し訳ありません!
お見苦しい所を見せてすいませんでした!
すぐにこやつらを国外追放してきます!」
「う、うむ。
国外追放になった方が、この若者達も幸せだろう。
……ところでどこに追放するのだ?
難民を受け入れるのは、どこの国も嫌うだろう?」
軍曹は怖い笑みを浮かべて
「大丈夫です!追放先は、クズ達の生まれ故郷です!
ほんと、どの選択肢を選んでも、戦地行きなのに我儘な奴らですな!
私にはクズ達が何を考えているのか分かりません!」
「難民が発生した国に、難民を押し付けているんかい!?」
「この国は安定しているから、社会を不安定化させる難民なんて要らんのです!
国籍をくれてやったら、どんどん家族を呼びつけて増えるのであります!」
「だったら最初から難民を受け入れるなよ!?」
「仕方ないのです。
最初は貧相な身なりの難民に我が国は同情的だったから、国内世論も難民の受け入れを認め、職業訓練所代わりになってる軍隊に放り込んだのですが――」
軍曹は少し哀しそうな顔で
「一度優しくすると難民が我が国の福祉目当てに殺到してきて、異教を広めるわ、こちらのルールを守らないわ、現地住民と衝突するわ、どれだけ支援しても不満を持つわと大変だったんです!」
「う、うむ、大変だな」
「それに幾ら、この国が豊かだと言っても限界があります!
膨大な難民達への就職支援、医療支援、食料支援、教育支援をやるには国民に重税を課さないと出来ません!
故郷で食い詰めた余所者のために、この国の民が犠牲にならないといけないのです!
こんな理不尽に誰が納得できますか!」
「いやいや、一応は受け入れたんだから最後まで責任を持つべきだろう?」
「はい、だから私達は責任を取りました」
軍曹は善意たっぷりの笑顔で
「軍事教練を施した難民達に武器を持たせて、今こうやって一人残らず送り返してますでしょう?」
「おいおい!?難民に武器持たせたらこの場で暴れるだろ!常識的に考えて!」
「奴らの武器に小型爆弾を仕掛けていますから、我が国に逆らったら吹き飛ぶ仕様です。
だから奴らは涙流して飛行船に大人しく乗っている訳であります」
「酷すぎる!?」
「ドラゴン様……これが一番良い解決方法なのです。
難民問題を解決するには、紛争をさっさと解決して、難民を帰国させる事なのです。
それが結果的にお互いのためになります」
「紛争解決する前に、難民送り返している時点で説得力がなさすぎるだろ!」
「……まぁ、我が国の本音としては、難民を全員国外に追放出来ればそれで良い訳でして。
そのための手段は、国内政治的に正しければ、どれでも良かったのだと思います」
軍曹が指で指し示した先は、次々と大きな飛行船へと乗り込む軍人――涙を流す難民達の姿があった。
私の頭の上で、一緒にこの光景を見ていたアイスは
「ドラさん。
軍人達がさっきから大泣きしている理由が納得できて、僕は安心したよ。
人間って最初は熱意を持って……人助けするけど、面倒くさくなると凄い酷い対応するよね」
5話「ワガママの島」おしまい
5話のコメントまとめはこっち
http://suliruku.futene.net/Z_saku_Syousetu/Tyouhen/Youseiryu_to_soratobu_daiti/c5.html
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