今回、私達が訪れた島は、珍しい地形だった。
二つの島が1kmほど離れて存在している。
さすがに空は海を越えるよりも……遥かに難易度が高いらしく、どちらの島も独特の文化が栄えていた。
ただ、問題なのは……国と国は、近ければ近いほど問題が発生しやすく、相手に悪いイメージを持つのが歴史の常識。
片方の島に訪れた、私に相談してきた30代ほどの男も――

「ドラゴン様！向こうの島《精霊島》に住んでいる奴らが酷いんです！
24時間、俺達の国を盗撮して大変です！
どうか、盗撮行為をやめてくれる様に、向こうの連中に説教してくれませんか！？
皆、困ってるんです！」
「……ストーカーか。
それは酷いな」

私は精霊島の方角を見て、じっくり睨んでみた。
ドラゴンの眼は性能が素晴らしい。
1km先の島に居る美少女の顔も見れる。
10代前半の金髪美少女が、こちら側を望遠鏡風のカメラで覗き込んでいる様子が見えた。
他にも何人もの美少女――半透明の身体を持つ精霊娘が、こちらをじっくり盗撮している。

「確かに、彼女達はこっちを見ているな」
「そうでしょ！
あの金髪の精霊娘はいつもいつも俺達を盗撮しているんですよ！
おかげで夜も安心して眠れません！」
「うむ、次に行く予定の島だから、私がちゃんと説教してやろう」
「ありがとうございます！ドラゴン様！」

男は頭を下げてきた。
しかし、私は今までの会話に違和感があったから――

「……ところで聞きたい事があるのだが」
「なんでしょうか！？ドラゴン様！」
「なぜ、こちらを見ている女の子の１人が金髪だと分かったのだ？
お前は眼が良いのか？」
「そりゃ簡単ですよ！」

男は自信満々な顔で

「彼女達の観察を始めたのは俺が最初だからです！
あの金髪の精霊娘可愛いんですよ！
下着が熊さんのキャラクターパンツなんです！
風呂の時は湯船に、ヒヨコの玩具を浮かばせて子供っぽい所があるんです！
特に素晴らしい観察ポイントは、精霊娘達の更衣室ですね！
パンツを脱ぐ着替えシーンはまさに天国！
毎日、暖かく見守っていたら、こんな事になりました！」
「お前が全部悪いんかい！」
「魅力的な美少女が居たら……覗くのは常識でしょう！？」
「盗撮はほとんどの国で迷惑行為だろ！？」
「向こうの浮遊島の警察も、さすがに空を飛び越えて、こっちに来れませんから大丈夫です！
つまり盗撮しても良いんですよ！」
「そんな訳あるかー！」
「ほ、ほらドラゴン様も、近くに魅力的な大きなトカゲが居たら……うっかり覗いちゃうでしょう？」

トカゲ扱いだと！？
私は銀髪美少女妖精が大好きな、普通の　性　癖　の　ド　ラ　ゴ　ン　だ　！
よし、こうなったら、二つの国の問題を一気に解決しちゃうぞ！

「よし、そんなに美少女を見たいのなら……お前の願いを叶えてやろう！」
「やったー！
さすがドラゴン様！」

この男を、口に咥えて向こうの島に連れて行って、警察署に放り込んだ。
精霊娘達とゆっくり仲良くしていってね！
望遠鏡なしで、精霊娘を間近で見放題だぞ。
後の事は知らん。
覗きよくない。

4話ストーカーとドラゴン
　おしまい

 

4話元ネタ＋コメントまとめはこっち  
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