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ドラゴン転生  
16話「考える浮遊島とドラゴン」5KB
 

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「平和は、力では保たれない。
ただ分かり合うことで、達成できるのだ」

 【アルバート・アインシュタイン】  物理学者



吾輩は浮遊島である。
空にプカプカと浮いている島だ。
名前は最初はなかったが、吾輩の上に住み着いた人間達から『ゴッドランド』という格好良い名前で呼ばれている。
彼ら……人間を始めとした知的生命体達は素晴らしい。
文明を築き上げ、毎日を懸命に生きている。
そんな姿を見ているだけで、吾輩は孤独を癒されるのだ。
ところで話が変わるが……人工的に作られた道具や食べ物も自分の意思を持ち、生物に聞こえない声で会話しているのはご存知だろうか?
建てられたばかりで、ピカピカの高層ビル達からはこんな声が聞こえるのだ。

「うはwww俺、超巨大すぎwww」
「トンキン・スカイツリー全長6kmとか巨大すぎるww」
「人間さん達の建築技術すごすぎwww」
「軌道エレベーターさんwwwwあんたww宇宙空間もないのになんで建設されたのwww」

大通りに面したケーキショップからは、大勢のケーキさん達が食べ物としての使命を果たそうと、一生懸命宣伝している。

「美味しいイチゴのショートケーキです!賞味期限が来る前に買ってください!わっち、食べられるために生まれてきたの!廃棄処分は嫌よ!」
「チーズケーキ美味しいよ!食べてね!お客さん!」
「らめぇぇぇぇ!賞味期限過ぎたからって、ゴミ箱に捨てるのはらめぇぇぇ!!!誰かに……食べられたかった……ガクリッ」
「使命を果たせて幸せー!美味しく食べてね、人間さん!」
「新品のピカピカのロールケーキだよ!美味しく食べてね!」

人間達には届かない声だから、この宣伝は無意味だが……賑やかだ。
吾輩の上は、道具達の声で溢れている。
どの道具達も良い奴らだ。
使命を果たそうと必死だ……彼らの声が、人間に届かないのが真に残念だ。
もしも彼らの声が人間達に聞こえていたら、捨てられる料理や廃棄処分される道具なんて存在しないのに――


「おい!浮遊島の馬鹿!
早く俺に破壊させろ!ドカーンしたい!」

おっと、道具の中で一番性悪な馬鹿がいる事を忘れていた。
この声の主は、格納庫の中で偉そうにしている核爆弾だ。
爆発すれば一撃で浮遊島の表面を焼き尽くす最低最悪の爆弾だ。
さっさと廃棄処分されれば良いのにと思う。

「早く俺の使命を果たさせろ!
爆発させろ!老朽化で解体処分は嫌だ!」

ふざけるな。
貴様が爆発すれば……
吾輩の表面は草一本生えない不毛の大地になってしまう。
放射能の影響がなくなるまで何年かかると思っているのだ。

「俺は爆弾だ!爆発して壊すために生まれてきたんだ!
爆発して何が悪い!」


貴様が爆発する日がくる事を、人間のほとんどが望んでいない。
用途を果たさずに朽ちるが良かろう。
核爆弾はこの世界には存在してはいけない――唾棄すべき異物だったのだ。

「俺は道具だ!
必要とされて生まれてきた存在のはずだ!」

残念だったな。
吾輩は毎日、全てのテレビ局のニュース番組を見ているから知っているぞ。
貴様は10年以内に周辺国と結んだ核軍縮条約に基づき――廃棄処分の運命だ。
次に生まれ変わる事があったら、もっと役に立つトイレとか、車さんになれ。

「嫌だー!
俺は大艦隊を消滅させたり、億単位で人間を消滅させたりしたいんだ!
活躍したい!戦争が勃発してほしい!
この前、解体された旧型ミサイルみたいな末路は嫌だ!」

ふ、愚かな。
貴様の運命は変わらぬ――うわぁぁぁぁぁぁ!!!!

「ど、どうした!?
浮遊島、何を驚いているんだ!?」

ド、ドラゴンが飛んできた。
頭に銀髪の妖精を載せた妖精龍だ。
かなり前にニュースになった、10万隻の大艦隊を一撃で消し飛ばした奴だ。

「な、なんだってー?!」

怖い。やばい。危ない。
ドラゴンブレスをやられたら、一撃で
吾輩(浮遊島)は消滅してしまう。

「俺も嫌だ!
ドラゴンって核爆弾を魔力防御だけで防ぐ化物だろ!?
何も壊せずに果てるのは嫌だ!」


ドラゴンが吾輩の上に降り立った。
あ、これ、まさか……定住する気か!?

「ドラさんー。
この島のケーキ屋さん、とても美味しいんだよ」
「じゃドラゴン教の集金が終わったら、ケーキ屋さんに行くか」

!?



☆ドラさんは次の旅に出た☆

……ふぅ、ドラゴンが一ヶ月も滞在したが、ようやくここから去って行った。
緑髪の妖精娘の姿に変身して、街中で遊ぶ不思議なドラゴンだった。
これでようやく吾輩は日常に戻れる。
テレビ局のニュース番組を見ながら――ゆっくりお空に吾輩はプカプカ〜。
雲さん、お元気〜。
人間達は今日も働いてエッチラホッチラ〜。
小さい浮遊島のお嫁さんが欲しい〜。
……ん?
核爆弾の馬鹿の声がしない。
何処行った?

「俺、工場に運ばれて、核物質とプライマリー(起爆装置)を中から抜かれちまったよ……。
もう核爆弾じゃないんだ」

そうか、廃棄処分されたのか。
悪友だったが長い付き合いがあるせいか、悲しくなってくる……。
ん?なら何故会話できるんだ?
廃棄処分されたんだろう?

「そのな、ドラゴン相手に平和国家である事をアピールするために、人間達が二度とこんな最悪な兵器は作らないとか身勝手な事を言って……俺の残った部品を再利用して、大きな尻尾がモフモフな金髪の狐娘ロボットにして巫女服着せて、中央公園のお掃除の仕事をプレゼントされたんだ……。
ゴミを掃除したり、老人や子供と会話するの楽しいな。
破壊よりこういう事の方が俺には向いているかも。
あ、この汚い言葉遣い直さなきゃ」

……生物と道具と両方会話できる新しい存在が誕生し、歴史が大きく変わった。
核爆弾の馬鹿は、二つの存在の架け橋となり、素晴らしき黄金時代を築く英雄となった。

「皆さんー!今日も元気よくラジオ体操始めますよー!もっふふー!」
「「もっふふー」」

吾輩も、もっふふー



16話「考える浮遊島」
おしまい

16話の作者感想 コメントまとめ
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