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ドラゴン転生 14話「愛の国」10KB Cパート |
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「愛することによって失うものは何もない。
しかし、愛することを怖がっていたら、
何も得られない」
【バーバラ・デ・アンジェリス】 米国の女性作家
――今日、私はアイスのために指輪を買って、プレゼントする。
日々の感謝の気持ちを込め……この人口10万人ほどの小さな浮遊島で指輪を探す。
予算は人生相談などで稼いだ金貨50枚。
小さな島だが――多数の周辺諸国との中継貿易拠点となっている場所。
だから、繁栄していて国中が店だらけだ。
ここならきっと、良い指輪が見つかるはず。
私はアイスが持つ変身の宝玉の力で、いつもの巫女服を着た10歳くらいの緑髪の妖精に変身。
好きな娘と一緒に街をデートするなんて素敵だなと思ったら――
「ドラさん。
僕、寄りたい所があるから……夕方になったら、この広場で合流しようよ。
その方が、何をプレゼントされるのか、色々と想像できて楽しそうだし」
「!」
「じゃ、ドラさん、また後でねー」
アイスが口早にそう言って、氷の翼を羽ばたかせて空を飛んでいった。
……
……
私のデート計画が破綻してしまった。
こうなったら――素敵な指輪を購入して、アイスに喜んで貰えるように頑張るしかない。
THE・1人・ショッピング!
この広場に隣接している店舗群に、宝石店が数店あるから、適当に入って指輪を物色してみよう。
最初に目をつけた、中にズラリと宝石と指輪が並ぶ高級そうな宝石店のガラス扉を潜ると――真っ黒なスーツを着た、恰幅の良いお爺さんが小走りでやってきた。
「ドラゴンの巫女様っ!ご来店ありがとうございます!
私はこの店の店長のクビカといいます!
当店は様々な需要に答える一級品店です!」
店長が、珍しい妖精いるぞ=ドラゴンの巫女という認識で話しかけてきた。
私は誤解を解くのが面倒だから放置して――さっさと用件を告げた。
「指輪を買いに来た、店長おすすめの指輪を見せて欲しい」
「少しお待ちください!
すぐに超一級品の指輪を持ってまいります!」
そう言って店長が店の奥に引っ込んで、すぐ指輪を持ってきた。
彼の手には岩サイズのダイヤモンドを付けた指輪がある――
「ダイヤモンドのサイズが大きすぎるだろ!?
そんなもん付けたら女性の指が折れるぞ!?」
「国宝級のダイヤを使った指輪です!
値段は金貨10万枚!(日本円にして100億円くらい)」
「王族にしか買えない値段!?」
「さすが巫女様!よく分かりましたね!
これはオフランス国、国王イル15世の愛人のために作った指輪です!」
「だったら、そっちに売れよ!?
というか愛人のために税金無駄遣いしすぎだろ!」
「いえ、実は国王陛下が崩御(死去)なされまして買い取りキャンセル……しかも、値段が高すぎて誰も買ってくれないのです!
正直、これが売れないと破産します!
助けて!巫女様!」
特大級の不良在庫を私に買わせたいだけか?!
そんな指輪付けたら、アイスの細い指がポキッと折れるだろ!?
絶縁状叩きつけられる険悪な関係になってまう!
私は怒って店から出た。
……
……
……それからたくさんの宝石店を巡ったが、これといって良さそうな指輪がなかった。
アイスは宝石大好きな女の子。
普通の指輪じゃ満足してくれないだろうし、どうすれば良いんだ?
地上を歩くのは不効率だ、いっその事、空を飛んで店を探そう。
「とうっ!」
私はエメラルドの羽を震わせると同時に、浮遊の魔法を使って空を飛んだ。
空から宝石店を一つづつ物色する。
そうしていると――街の郊外にピンク色の看板を掲げたお洒落な店が見えた。
エルフ娘の絵とともに【リリーの宝石ショップ】という文字が大きく描かれている。
親友と同じ名前の店だから気になった私は、店の前にある道路へとスタッと降り立ち、木製のお洒落な扉を開けると――カラランッと鈴の音がした。
扉の先には、魔女娘ローブを纏ったリリーの姿がある。細長い耳が特徴的で愛らしい銀髪エルフ娘だ。
彼女は椅子に座っている。
「やっぱりリリーの店だったのか!」
「……ドラか?今日は客が多いのう。
先ほども……おっと、これは秘密じゃな」
「なんか凄く気になる反応だ!?」
「乙女の秘密でありんす。
それよりも、ここに来たのは用事があるんじゃろ?」
リリーがニヤニヤ笑っている?……なんか隠しているようだが、今はどうでも良い。
今はアイスのために、素敵な指輪を探している途中だ。
「リリー。アイスが気に入りそうな指輪を扱ってないか?
金貨50枚で売って欲しい!」
「これはどうじゃろ?」
リリーが私の前に、龍を模したデザインが施された緑色の指輪を出してきた――早っ!?
「要求を言ったらすぐに商品が出てきた!?
リリーの接客能力高すぎるだろ!」
「そんな事よりも、この指輪をみて欲しいのう……綺麗じゃろ?」
「確かに……緑色に光り輝いて美しいな。
どんな素材を使っているんだ?」
「妖精龍の鱗を溶かして圧縮して作った指輪でありんす」
「へ〜、ドラゴンの鱗ってこんなに美しい装飾品になるんだな」
「お主が原材料なのは秘密じゃ」
「おおーい!?何時、私から鱗を採取した!?」
「わっちの分裂体がの。
お主の鱗を大量に拾って、ここに運んできたから買い取ったんじゃ。
これどうじゃろ?買うかの?」
「いやいや、さすがに自分の体を材料にした指輪をアイスに贈るのはダメだろ……?」
私がこう言うとリリーは首を傾げて
「妖精龍の指輪は凄い効果があるでありんす。
健康を保つ素敵アイテムとしても重宝されておるんじゃ。
耐久力も高くて頑丈じゃしの
それに……」
「それに?」
「この国の宝石言葉じゃと、妖精龍の鱗には【永遠の絆・純潔・永久不変】という意味があって、若いカップルや夫婦から大人気でありんす。
お主はアイスが好きなんじゃろ?
なら、ピッタリじゃ」
「確かに……私はアイスとずっと一緒に居たい」
妖精龍の指輪をじっくり見た――緑色の金属質な輝きを見ると気分がリラックスする。
……アイスが、この指輪を受け取ったら喜んでくれるだろうか?
不安だ。
ずっと一緒に居るから既に親密な関係だとは思うが、アイスの好みに合わない指輪だったらどうしよう。
そう思っていたらリリーが笑って
「お主、不安なんじゃろ?
大丈夫じゃ。わっちが保証する。
その指輪を買えば、アイスは大喜びでありんす。
古い古い友である……わっちが言う事だから間違いなし」
「そ、そうか!
よしこの指輪を購入するぞ!
値段は幾らだ!」
「ざっと金貨100枚!」
「高っ!」
「じゃけど、友達価格で金貨10枚!」
「90%引き!?
ありがとうリリー!」
私はリリーの身体に抱きついて感謝した。
エルフ耳がピョコピョコ元気よく動くから、見ているだけで萌える素敵なロリBBAだ。
素敵な友達を持てて、私は幸せだ。エルフ耳が可愛い。
しかも返せ切れないくらい……彼女には恩がある。
「そうじゃ、良い事思いついた。
お主、5分ほど待ってくれんかの?
とっても良いサービスを思い付いたでありんす」
「ああ?わかった」
リリーが宝石ショップの奥の方に引っ込んだ。
奥から「お母さーん、何してるの?」「古い古い友人へのアフターサービスじゃよ」って声がするから、きっとこのリリーは結婚しているのだろう。
毎日、ピョコピョコ動くエルフ耳を見れるとか……幸せ者だな、リリーの旦那さん。
☆友情☆
4分ほどすると、リリーが奥から出てきた。
左手に青い小箱、右手に白い封筒を持っている。
「お主、この封筒をアイスに渡してくれんかの?
中身には手紙が入っとる」
「分かった、渡しておく」
「こっちの青い小箱の方には、妖精龍の指輪が入っとる。
箱の方は、魔法の鞄の中に入れておくと、再利用できて便利じゃ」
「ありがとう、リリー。
私は君みたいな良い友を持てて幸せだ。
料金は金貨10枚と言われたが……金貨50枚払おうと思う」
「お主、お人好しじゃのう。
まぁ、そういう性格じゃから、アイスと仲良く旅が出来るのかもしれんの?」
私は金貨50枚が入った財布を近くのテーブルに置き、封筒と青い小箱の両方を受け取った。
……これからが本当の戦いの始まり。
夕方、この指輪を渡して――アイスに喜んでもらえるかどうかが、今後の人生を長く左右する気がする。
「わっちの恋愛相談はいるかの?
こう見えても、わっちの恋愛歴は凄いでありんす」
「確かにたくさん分裂体がいる時点で……恋愛皇帝と言っても良いレベル!?」
「うむ、わっちは若い頃、色んな酷い目にあったからのう。
恋愛経験どころか、●●経験も豊富じゃ」
「これは酷い」
「特に電車で●●●●●された時は酷くての。
わっち、思わず●●するかと思ったほどじゃ。
もう同時に●●匹の●●●を相手してな。
全身が●●だったんじゃ」
「伏字のせいで、会話が卑猥すぎる!?」
「伏字はええのう。
どんな会話も卑猥になるんじゃ」
こうして……私はここで時間を潰した。
リリーの過去が酷すぎる……。
特に不思議のエロダンジョンでの大冒険とか、うわぁ……としか言いようがない。
☆愛☆
私はリリーと別れを済ませた後、夕日に照らされた美しい街の空を飛び――広場に降り立った。
広大な広場の真ん中にはアイスが居て、両手を後ろに組み、私の顔をみて――ニパァーと可憐な笑みを見せてくれる。
夕日に照らされた彼女の顔は幻想的といっても良いほどに美しかった。
「ドラさんっー!
良いプレゼント買えたかな?」
「あ、ああ、アイスがきっと気に入ってくれる指輪を買ってきた。
こ、この小箱を受け取って欲しい」
私の手は緊張で震えていた。
青い小箱をプルプル震えながらアイスの前に差し出す
するとアイスが後ろに隠していた両手を前に出した。
その両手の上にも、私のと全く同じ青い小箱がある。
「……僕、ドラさんを驚かせるために指輪を買ったんだ」
「……なるほど、リリーがニヤニヤ笑っていたのは、このせいか。凄く納得した」
「とりあえず、ドラさん。青い小箱を交換しようよ。
一緒に指輪を指に嵌めたら素敵だと思うんだ」
私は静かに頷いて、持っている青い小箱を交換した。
すぐに箱を開けると――そこには、妖精龍の指輪じゃなくて、青色の指輪があった。
これもドラゴンを模したデザインが施されている。
私が指輪を掴んでじっくり見るとアイスが――
「その指輪はね。
水龍王の鱗を使った特別性なんだって。
宝石言葉は【初めての愛】……リリーはそう言ってたよ」
「なるほど……今の私にぴったりな指輪だ」
「それじゃ、ドラさん、今から一緒に指輪を嵌めるよ。
きっと、とっても良い思い出になるね」
「……そうだな」
アイスがニッコリ微笑んだから、私も笑顔になった。
二人一緒にゆっくりと、自分の薬指に指輪を嵌める。
……今、この瞬間、私達は特別な関係になれた。そう確信できた。
アイスの顔は夕日に照らされて、銀髪が光って、本当に美しくて――この時間が何時までも続けば良いのに……と思える。
一緒に隣り合って、無限に続く大空へと沈む夕日を眺めた。
この自然現象だけでツッコミ所が100個ぐらいあるが、今日は無粋なツッコミはやめておこう。
好きな娘と一緒に手を繋いで、暖かさを感じながら、こうやって生きていける。
こう思える時間を大切にしたい。
☆リリーが渡した封筒の中身にあるのは――手紙☆
【二人の出会いと奇跡に祝福を。
二人の絆が永遠である事をわっちは願う。
この金貨50枚は新しき友ドラへの餞別でありんす。
お主の事をお人好しと呼んだが――わっちもお人好しじゃった。
by 古き友リリー・コーティ】
14話「愛の国」
おしまい
作者の感想+テーマ+コメントまとめ
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