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2話 新たな仮面・新たな敵国A
中ボスが倒されたから――とうとう親玉が出てきたのだ」

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天空を飛ぶ紅い巨大戦艦ツァーリ。
1kmを超す圧倒的な巨体。
その下部にある展望室で……ナポは支配下に入った大地を眺めていた。
そして、彼の後ろにミーニャンがいる。巫女服がよく似合う見事な狐娘……不機嫌そうな顔をしていた。

「マスター……全部、終わりましたね。
2億人も殺してどういう気持ちになりました?」
「……豚は豚だ。2億匹と言った方が妥当だな。
豚を屠殺しても何にも思わんね」
「普通、漫画の主人公だと、虐殺をした罪悪感とかに押しつぶされる展開ですけど……マスターって本当タフな精神してますよ」

ミーニャンは肩を竦め、少し感心していた。
あれだけ一方的な大虐殺を平然と行えるナポの精神性に。
ナポはその疑問に答えてあげた。

「……初めての人殺しは暗黒大陸《アフリカ》でやってしまったからな。
今更、豚を殺しても、全くなんとも思わん」
「え?
マスターって人殺しだったんですか?」
「紛争解決人は、危険で、命が軽い紛争地帯で活躍する仕事だ。
当然、人を殺す必要も出てくる。
怪しい者は殺しても良い、身元を調べる手間暇をかける時間もない、警察は盗賊と同じ存在、余所者を見かけたら治安維持のためにすぐ殺そう……暗黒大陸《アフリカ》のシ●●●●●はそんな場所だった。
だから、私は治安維持のために――現地でたくさんの人間の処刑を住人に命じたのだ」
「……でも、殺人は殺人ですから裁かれませんか?」

ミーニャンが首を傾げて問うた。ナポは人差し指を流れるように立てて

「こう考えれば良い、ミーニャン。
処刑人が死刑囚を殺すのは悪い事かね?
人を殺す人間というものが社会にはどうしても必要なのだ。
殺すべき時に殺さなければ、社会は不安定化し、もっと犠牲者が増える」
「うーん、現実って大変なんですね」
「うむ、現実は辛い事がたくさんだ。
そして理不尽だ」

場の雰囲気がかなり重くなった。ミーニャンは話を変えて明るい気分になろうと――前向きな話題を持ち出す。

「……ところで、マスター。
新しい国を作るんですよね?
国名はもう決めたんですか?」
「モッフフー国だ。
響きが良いだろう?」

スタイリッシュらしさの欠片もない名前。ミーニャンは狐をピョコピョコ動かしながら驚いた。

「あ、あの、てっきりマスターの事だから、ネオ・ナポ帝国とか、薔薇帝国とか、そんな名前にすると思ってました。
どうして国名をモッフフーにしたんです?」
「この方がモフモフ・オンラインらしいだろう?」
「私、気分が良い時にモッフフーって呟いてますけど……どういう意味でしたっけ?」
「モッフフーという言葉に、深い意味はない。
だが、皆が生きてた頃、挨拶代わりに『もっふふー』を使っていた。
聞いていると不思議と癖になって元気になる。
『もっふふー』は、そんな魔法の言葉なのだ」

そう言われたから、ミーニャンも納得した。
自身も癖になって『もっふふー』をよく使う獣娘。
呟くと嬉しくなる、そんな魔法の言葉が国名なら……不思議と納得できる。

「……なるほどなるほど、モッフフー、良い言葉です。マスター」
「だろう?」

ナポは後ろを振り返った。
すると――ミーニャンの右手に、銀色の仮面がある事に気づいた。
ナポの白い仮面と違い、顔の上半分だけ覆う簡素な仮面だ。

「……ミーニャン。
その仮面は何かね?」
「いやー、演説の時に気づいたんですけど……マスターの今の仮面って不便じゃないですか。
顔を全部覆う仮面だと、食事が出来ないですよね?
だから、顔の上だけを覆う仮面を作ってみました」

そう言ったミーニャンの顔はとても嬉しそうだ。狐耳が元気良くピョコピョコ動いている。尻尾もフリフリと左右に動いていた。
ナポは銀色の仮面をゆっくりと受け取り、落ち着いた声で

「……君には本当に迷惑をかけるな。
ありがとう。新しい仮面を用意してくれて」
「新しい国作りをするんですし、仮面も新しくした方がいいかなーと。
それにずっと仮面を付けたまま……という訳にも行かないですよね?」

ナポの脳裏には――植物人間になる前、トラック事故でグチャグチャになった顔を……道路にあったカーブミラーで見てしまった記憶がある。
――皮膚が剥がれ、血まみれ、まるでホラー映画のゾンビのような醜い肉塊。
それがトラウマとなり、VRゲーム世界でも仮面をつけて生活する嵌めになった。
仮面を外すのは正直怖い。
だが、この世で一番の恩人《ミーニャン》の期待に答えるためにナポは決断する。

「なるほど、これは……トラウマの克服か。
よろしい、私は今ここで――」

ひと呼吸置いて

「千年の長きに渡り私を苦しめた『トラウマ』を半分、克服してみせよう」

決意したナポは、顔を全て覆う白い仮面を剥がす――そこには黒髪の優しい青年の顔があった。
心臓が爆発しそうなほどに――ドクンドクンと脈動する。
心が死にそうだ。だが、この程度の事を乗り越える事が出来なければ――王になる資格はない。
白い仮面をミーニャンに渡し、銀色の仮面を顔にゆっくりゆっくり嵌める。
すごく……呼吸が楽になった。
顔の上半分しか覆わないから、口元が前の仮面より楽だ。
ナポはニヤリっと笑う。

「……私はトラウマの半分を乗り越えたぞ、ミーニャン」
「ええ、さすが私のマスターです」
「ミーニャン、私はこの恩に報いたい。
私が作る国の……王妃になってくれないか?
たくさん苦労させるが……絶対に幸せにすると約束する」

ナポはとても真剣な顔で、ミーニャンの青い目を見ている。
このプロポーズに対して、彼女が返した返答は

「もっふふー♫」

狐耳がピョコピョコ動き、尻尾が横にブンブン動いてる様を見るだけで――ミーニャンがとても喜んでいる事が、ナポには手に取るようにわかった。
そのまま二人の顔が近づく。
あと少し、あと少しでミーニャンの薄い赤色の唇とキス――する寸前で、巨大戦艦ツァーリの人口知能が警報を鳴らした。

『ミサイル接近警報!
2光秒先から多数のミサイルを確認!
数は1万、2万、4万……たくさんっ!
核ミサイルの可能性が濃厚です!マスター!』

ナポは殺気を込めた目で、丸い警報装置を睨みつけた。
折角、金髪の巨乳狐娘とラブラブチュッチュッ!して、そのままベットin!という最高のシチューエションだったのに――全部台無しだ。
ミーニャンは狐耳を下に垂らして――首を傾げている。

「……マスター。
これって何処からの攻撃でしょう?」
「簡単だ。
私が屠殺した豚『ブロンブス』の地位は……総督。
つまり一地域を任されただけの下っ端だ。
RPGで例えるなら、たくさんいる中ボスの1人に過ぎない。
中ボスが倒されたから――とうとう親玉が出てきたのだ」

ナポは指をパチンッと静かに鳴らす。
一つの映像が空中に表示された。
そこには黒い機械歩兵――黒真珠元帥の姿が映っている。

「予備兵力として活躍する時が来た。
黒真珠元帥、一つ残らずミサイルを撃ち落とせ」

新たな戦いの幕が上がった。



この話のコメントまとめ+ 作者感想
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