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1話 泥棒の国B
「僕とマニィは新しい歴史の生き証人となった」と犬耳少年は語った。

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かつて、このモフモフ大陸には千英雄と呼ばれる英雄達が居ました。
彼らがいた頃は、大陸の遥か上空を通り越した宇宙空間で、無数の戦艦が飛び交い、億単位の機械歩兵がぶつかる地獄の大戦争。
宇宙空間に真っ赤な華(爆発した艦艇)が幾つも咲き誇り、意味のない死闘を延々と繰り広げる――狂人の宴。
それが当時の僕達……獣人の日常だった。
でも、彼らは獣人には全く迷惑をかけなかった。
現在、この大陸を支配するオークのブロンブス総督と比べれば、犬と豚です。
犬は番犬として役に立ちます。
でも、豚は食い荒らすだけ荒らして、迷惑しかかけません。
そう、あれは、千英雄が去った10年前――異世界に転移したモフモフ大陸に来た1隻の飛行船。
それが全ての悲劇の始まり。
船の中には当時、探検家だったブロンブスと部下のオーク達が居て、大陸に上陸した彼らは――僕たちにこう言ったんです。

『食料を寄越せ。お前らは今日から俺様の家畜だ。
逆らったら殺す。女は犯す。わかったな?
まず先頭にいる熊顔の奴。死ね』

自動小銃が熊人のプーさんに向けられ、彼が最初の犠牲者になったんです。悲しい事に。
僕たち、獣人は棍棒や釘バッド、道路標識、道端にたくさん落ちているビームソードを装備して団結。反抗作戦っ!を開始しました。
でも、オーク達が持つ自動小銃には勝てません。
10人が1匹のオークを襲っても、自動小銃の乱射で蜂の巣にされて返り討ちです。
あっという間にモフモフ大陸はオークに征服され、男は労働奴隷、女は性奴隷として苦渋を強いられている日々。
当初、モフモフ大陸には5000万人ほどの獣人が居たのに、僕の集落に居た男達は9割方殺されて、女は犯され……今は大陸全体で何人の獣人がいるのか、僕にはわかりません。
負けた獣人――この僕、銀髪の犬耳と大きな尻尾を持つ犬人の少年『エール』は労働奴隷です。
貧相な布切れを着て、毎日のように、ブロンブス総督が将来入る予定のお墓を作ってます。
墓作りのために10万人の獣人が動員され、数万個の巨大な石を階段上に積み上げて――最終的に50年ほどかかりそうな大工事をやらされました。
後にナポ陛下にこの墓の事を話したら
『まるでピラミッドのような墓だな。豚の分際でエジプトの歴代王朝群の猿真似とは生意気だ。
偉大なエジプト第四王朝辺りに地獄で謝罪しろ』
こんな事を言ってました。
僕は今、墓に使う巨大な石を、獣人の皆と一緒に押して運搬しています。
後ろには鞭を持った監督役のオーク達が居て、僕らを無意味に叩いて辛いです……。

「貴様らぁー!ブロンブス大総督のお墓を作れる栄誉を誇りに思えー!」
「必死に働かないと給料ゼロにするぞー!こらぁー!」
「そこの獣人っ!服で隠しているが……お前、女だな!可愛がってやるぜ!ギャハハハハ!」
「いやぁー!誰か助けてぇー!」

あー、やだやだ。
獣人の平均寿命が極端に長くて、不老なおかげで、僕は未だに子供ですけど……こんな灰色の青春を送るのはうんざり。
幸い、恋人のマニィを、10年前に森の隠れ家に隠したから性奴隷にされてないのが唯一の救いです。
でも、オーク達を駆逐しないと明るい未来が描けません。
マニィと子供を作ったら、その子供も奴隷にされちゃうなんて悲しいです。
パシーンっ!
痛っ!鞭で頭を叩かれた!
頭を叩くとか酷過ぎ!

「もっと力をこめろぉー!糞虫がぁー!明日から2割増しのサービス残業させるぞぉー!」
「偉大なるブロンブス大総督に感謝しながら石を運べー!」
「限界と思わなければ限界じゃないんだぁー!限界を超えて働けぇー!」
「365日24時間、死ぬまで働けぇー!」

……この空と浮遊大陸しかない世界の構造上、他国へ亡命するのはほぼ不可能ですし……僕の将来どうなるんでしょうか?
可愛い恋人と一緒にゆっくりしたいです。

「こらぁー!貴様ぁー!もっと押せぇー!
労働意欲がない貴様はビルから飛び降りて死んじまえー!」

男だけど涙が出ちゃいます。



★安息の時★

オレンジ色に輝く夕日が、遥か空の向こうへと沈もうとしています。
地平線が存在しない世界なのに、どうして太陽が沈み込むのか不思議です。
さすが異世界、ファンタジーです。深く考えちゃ駄目ですよね。
あ、今は、石を運搬する仕事がようやく終わったから自由時間です。
給料は大きくて硬いパン四つ、酒1瓶。
後にナポ陛下にこの辛い境遇の事を話したら『エジプトのピラミッド建築労働者よりマシな給料だな。食料事情は科学が発達している分、低コストで済んだのだろう』とか言われました。
きっとエジプトという地は、ここ以上の地獄なんだと思います。
なんでもナイル川以外にまともな水源がないから、国土のほとんどが死の砂漠だとか、かんとか。
……話が脱線しました。
今、僕がやるべき事はこの給料を持ってマニィに会いに行く事です。
毎日可愛い可愛いマニィに会える。
それだけでこの辛い労働の疲れが吹っ飛びます。
彼女は綺麗で長い漆黒の髪と、猫耳がよく似合う最高の猫娘美少女なんです。
ピンク色のエプロンドレスがよく似合って、優しくてお上品で、料理も上手い、完璧な女の子。
僕、リア充です、もっふふー。



深い深い森の中、夕日すら入らない獣道を進むと隠れ家が見えました。
迷彩色を施した小屋の前で、マニィが僕の帰りを待ってくれてます。
ああ、なんて幸せなんでしょう。
美しい猫娘が幼馴染で恋人とか……僕には勿体無いとしか言いようがありません。
マニィは僕の姿を視界に入れた途端、猫耳をピョコッピョコッと動かして、優しい笑みを浮かべ

「あらあら、エールったらいつも元気そうですわね。
とても犬耳が可愛いですわ」
「マニィー!
パンとお酒を持ってきたよー!」

僕は持っていた袋から、酒瓶を取り出しました。
今日は満月ですから、月を見ながら彼女と一緒に異世界お酒ライフです。
お互いの尻尾を絡ませてモッフフーと一緒に呟けると思うとたまりません――

「ギャハハハハ!やっぱり女を隠してやがったか!
残念だったなぁ!エール!
お前の恋人は今日から性奴隷だぁー!」

え?
ぼ、僕の後ろに5匹の監督役のオークが居ました。手に拳銃を持っています。
大変です。
困りました。
僕は大切なマニィを守らないといけないと思って、両手をバッと広げて

「マニィ!逃げてください!」
「あらあら?困りましたわねぇ」
「こんな時に天然な行動はやめてください!早く逃げて!」
「でも、私がここで逃げたらエールは酷い目に合うでしょう?」
「拷問されて殺されますよ!
でも、マニィが陵辱されるよりマシです!」
「あらあら、エールったら本当に素敵な殿方ですわねぇ」

呑気に夫婦漫才をやっている場合じゃありませんでした。
オーク達は僕を半包囲して、下品な笑みを浮かべてニヤニヤしながら

「面白いカップルだなぁ!楽しみになってきたぜ!」
「小僧には勿体無い!俺らが可愛がってやるぜ!」
「ヒャッハハハハ!お前の女は俺の女!俺の女は俺の女だぜ!」
「ギャハハハハ!お前っ!アニメ『ジャイアモン』の見すぎだぜ!」

包囲網を狭めて来ました。
詰んだ。僕、詰みました。
今からじゃマニィを逃がしても失敗します。
あれ?マ、マニィがオーク達の方向へとゆっくり歩いてます。
ま、まさか、僕を庇うために犠牲になるつもりじゃ――

「オークさん達。
私が……あなた達の性奴隷になれば、エールには手出しをしないと約束して欲しいですの……。
エールが無事なら、私はどんな事でもしますわ。
エールに酷い事をしたら――ここで舌を噛み切って死にます」

このマニィの痛切な願いにオーク達は大喜び。

「ギャハハハ!いいぜ!労働奴隷を殺してもメリットがないからなぁ!」
「その代わり、俺達にたくさん奉仕するんだぜ!お嬢ちゃん!」
「小僧は良い恋人を持ったなぁ!今日から俺達の性奴隷にして可愛がってやるよ!光栄に思えよ!」
「お前の恋人は俺たちが永遠に借りるぜ!二度と返さないけどな!
死体になったら返却してやるよ!」
「お前、『ジャイアモン』に嵌まりすぎだぜ!お嬢ちゃん安心するんだ!
俺らは女は性奴隷にするけど、反抗しなければ殺しはしないぜ!」

な、なんて事でしょう。
僕の大事なマニィが……僕を守るためにオーク達の慰み者に……?
駄目だ。そんな事は駄目だ。
僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕のマニィが――オークの性奴隷?

「約束は守って欲しいですわね。
……エール。私の初めてをアナタに上げられなくてごめんなさい。
私の事は忘れて欲しいですの」

そう言ってマニィはエプロンドレスを捲りあげて一気に脱いだ。
陶器のような白い肌、小さいながら可愛らしい胸、長くて細い妖艶な尻尾、ピンク色のパンツ――マニィの裸体は女神みたいに美しい……です。
マニィは元気を無くして、黒い猫耳が下に垂れてます。
……そんな、ありえない、嫌だ。
マニィの純潔が豚に奪われるなんて嫌だっ!
でも、ここでオーク達に反抗したら僕は殺されて、マニィの努力が無駄になる!?
ぼ、僕は!ど、どうすればいいんだ!?

「前の穴は俺な!」
「素晴らしい猫娘だなぁ!俺、尻もらいー!」
「俺は胸だ!たっぷり吸ってやるぜ!」
「尻尾気持良いよな!おい!」
「口で俺のをシャブれよ!歯を立てたら小僧を殺すからな!」

ああ!僕が悩んでいる間にっ!?
マニィがオーク達に押し倒されて全身をペロペロ舐められてます!?
唾液だらけでエッチィ姿!?

「いやぁ……エール見ないでぇ……私の汚い姿を見ないでぇっ……!」

どうすればいいんですか!?
このままじゃマニィが汚されて、豚の子供を孕んじゃいます!
殺したい!豚を殺したい!
憎い!
死ね!
このけがわらしい生き物!
僕たちが何をしたと言うんだ!
平和に暮らしていただけなのに!
なんで僕らの幸せを奪うんだ!豚ども!
千英雄さえ居ればこんな事にはならなかったのに!
どうして僕たちを見捨てた!お願いだ!マニィを助けるためなら何だってする!
帰ってきてくれ!千英雄っー!
この地獄から救ってくれー!
……
……?
……え?
こ、これは一体?
空に巨大な宇宙戦艦が無数に浮かんでます。
皆、赤い艦艇で小さい物は10mサイズ、大きな物は1kmほどの大きさがありました。
空母から次々と戦闘艇が射出されて、大陸各地へと向けて飛んでます。
この光景――見覚えがありました。
紅い艦艇は千英雄の1人『紅スーツ』のナポ様、その彼が率いる『スタイリッシュ宇宙艦隊』の特徴。
気づいたらマニィの周りにいたオーク達は、空から降ってきた、機械歩兵のビームソードで体を切断されてバラバラになって全部死んでました。
機械歩兵はオークを殺し終えた後「貴様らの行動は10秒遅い、遅すぎる。戦う資格すらないゴミ」とか言って、背部のスラスターを吹かせて、何処か遠くの空へと飛んで行きました。
マニィの美しい裸体は、オークの血にまみれ、彼女は呆けた顔をしています。

「……あら?私……助かったのかしら?」
「マニィ!」
「あらあら、エールも無事なのね。良かったですわ」

僕はマニィに抱きついて尻尾も触ってモフモフしました。
大好きな彼女の純潔が守られて良かった!
何故か願いが通じて千英雄が帰ってくれました!これで僕は好きなマニィと一緒に毎日過ごせます!
そうやって神様に感謝したらマニィが

「エール、空を見て。
凄い光景だわ」

言われて空を見てみると――空中に超巨大なナポ様が投影されてます。
白い無表情な仮面、高貴な紅いスーツ、黒マント、手にはワインガラスを持っています……なんてスタイリッシュな光景なのでしょうか?
無駄に格好良さに。憧れます。痺れます!
ナポ様は、圧倒的な大音量で声を響かせました。

『諸君、私はスタイリッシュ宇宙艦隊の大元帥ナポである。
この地に自由と正義を復活させるために帰ってきた。
豚どもに虐げられた獣人達よ。
私の支配に賛同せよ。さすれば幸福な人生を与えよう。
この地を不法に占拠し、不法に虐殺と虐待を行った愚かな豚達よ。
今すぐ国外に退去せよ』

なんて頼もしいお姿!
僕、こういうリーダーシップに憧れます!

『……などという事を言っても無駄な事は分かっている。
豚よ。豚は豚らしく屠殺場で死ね。
この大陸はお前達の屠殺場だ。
逃げろ絶望しろ泣き喚け。
地獄の閻魔大王様の所で罪を懺悔せよ。
私がこの地に投入した戦力は10個艦隊10万隻。機械歩兵1000万だ。
抵抗するなとは言わん――最後まで無駄に足掻いて死ねっと言っておこう。
豚は豚らしい悲鳴を上げて死ぬのだ』

……この日、獣人達の苦痛に満ちた歴史は終わりを告げた。
僕とマニィは新しい歴史の生き証人となった。


「泥棒の国B」コメントまとめ +作者の感想
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