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31話目

28話     詐欺戦争-11 「見せてやろうっ!大砲の素晴らしさをっ!      


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現在の状況は図にするとこうなる。

ピィザ軍本隊(12万)☚王弟軍(1万) ☚ワルキュラのデュラハン機動軍(1000)  

王弟軍が脱出ゲームを始めようにも、西に12万以上の兵力を保有するピィザ軍があり、西に逃げると遭遇して殺し合いになりかねない。
脱出ゲームなのだから、海がある北や、砂漠が多い南に逃げるのも論外だ。
だから、ナンは天幕で歩きながら、知恵を凝らして考えた。
セイルン王国の地理、手元の1万の兵力と、所持している武器で何ができるか?
その答えは――

「今日はゆっくり休もう。
こっちの方が、数は少ないんだ。
移動速度は兄さんの軍勢より遥かに優っているのさ」

「わっふ?なぜですか?」 ミルクが可愛らしい疑問の声を上げた。

「分からないかい?」

「分からないのです……」

「ほら、兄さんの軍勢は、昼間も夜も歩いているせいで、疲労しているだろ?
この時点で、兵士の9割が脱落しかねない無茶をしているのさ。
物資もほとんど置いてきてしまったしね。
まぁ……脱落しても、セイルン国内に20万人以上の兵士が残っているし、問題はないのだろうけれど」

「戦争算術って怖いです、王弟殿下」

「うん、そうだね。どれだけ犠牲が出ようと目的を達成した方が勝利なのさ。
特に、今回の脱出ゲームの勝利条件は、『本国に先に帰った奴の勝利』に見えるかもしれないけど、兄さんが死んだ場合でも僕の勝利条件は達成される」

「……わっふっ?」

「兄さんが死ねば、自動的に玉座は僕の元に転がり込んでくる。
僕の軍勢の方が数が少ないから、移動力はこっちの方が遥かに上だ。
兄さんの軍勢に追いつこうと思えば、数日中に余裕で追いつけるのさ」

「で、でも、数は向こう側の方が多いのでは?」

「兄さんが立てた撤退作戦は、『僕がちゃんと足止め役』をやる事を前提にしている。
つまり、背後の警戒が、極端に疎かになっているはずなんだ。
背後から攻撃された軍勢は弱いよ。後頭部を殴られたようなものだからね」

「わっふぅー!
な、なんか勝てそうな気がしたのです!
でも、外道すぎます!
味方を殺すなんて、民衆が納得しないと思います!」

犬娘がそう言って、愛しい男の事を心配すると――ナンは素敵な笑顔で

「なーに、歴史書にこう書けば良いのさ。
骸骨の化物達に、兄が殺されましたってね。
兄の死を嘆き悲しんだ僕は、王位を継承し、国を見事に守って発展させましたとさ。めでたしめでたし。
どうだい?素晴らしいハッピーエンドだろう?」

「わっふぅ〜、そうなったら部族の皆も喜びそうなのです。
……でも、殿下がやる事は、合計13万の兵士達が目撃する事になるのですよ?
悪評を流されて自滅しちゃうような?」

「僕の予想通りに進めば、ほとんど死ぬさ。
ここは敵地で、しかも砂漠地帯で壊滅した軍の末路は悲惨だよ。
ほとんど生きて帰ってこれはしない。砂漠という自然災害が全てを飲み込む。
無事に生き残って帰ってきたとしても、一人残らず口封じすれば良いのさ。
ピィザとセイルンの間には、とんでもない広さの砂漠が広がっているのだからね。
僕の配下が生き証人になるけど、人は利益と恐怖で動く。
その二つがしっかりしていれば、裏切る事は早々にないよ」

「わっふぅー!
わ、私はそんな殿下でも付いていくのですー!」

ミルクが犬耳を激しくピョコピョコ動かし、ナンに抱きついた。
彼は嬉しそうにミルクの頭を撫で、そのモフモフな毛並みに満足する。

「よしよしっ良い子だ。
これからゆっくり愛し合おう……王朝の未来を築く子供を作らないといけないからね」

「わっふぅ〜」

二人ともとても良い雰囲気だった。
しかし、ここは戦場。
女の子とイチャイチャして子作りしている余裕なんて、何時でも消え去る。

「殿下ぁー!大変ですっー!」

天幕の外から、慌てた様子の伝令が入ってきた。
ナンは内心の苛立ちを隠しながら、問いかける。

「一体、どうしたんだい?」

「重騎兵の軍勢が東から接近中っ!
数は千〜五千騎だと思われます!」

「はてっ……?」

重騎兵が追撃してくる。
それはナンから見れば、とっても謎過ぎた。
砂漠地帯で、重い鎧を着た騎兵は脱水症状を起こし死ぬ運命にある。
そもそも、移動力に欠ける重騎兵が追撃してくる事そのものがありえなかった。
鎧が重すぎて、移動中に疲労してヘトヘトになる問題点があるはずなのに――

(いや、迷っている暇はないな……。
僕の常識が通用しないのか、戦争の素人なのかは知らないが……重騎兵なんて役立たずだ。
銃と大砲を持つ僕たちなら、簡単に蹴散らすことができる)

移動速度が速い騎兵相手だと、判断する時間が惜しい。
すぐにナンは思考を切り替えて、戦いの準備を命じた。

「よろしい、ならば迎え撃とう。
大砲の恐ろしさって奴を、化物どもにゆっくり教育してあげようじゃないか」

「わっふぅー!」

犬娘が元気よく両手を上げ、愛しい男の勝利を祈った。
その犬娘の頭に、幽霊娘が取り付ている。

『わっふぅ〜、この口調〜、癖になりそう〜』 

王弟軍の弱点もしっかりばれていた。






今回のコメントをまとめたページ


http://suliruku.futene.net/Z_saku_Syousetu/Tyouhen/Fusiou/c31.html




【小説家になろう】 生産職「戦闘職より俺の方が社会的地位高いしw」

http://suliruku.blogspot.jp/2016/04/blog-post_74.html


【内政チート】「俺は交番を作って、治安を維持してチートする!」20世紀の日本
http://suliruku.blogspot.jp/2016/03/20_25.html




ワルキュラ「幽霊娘が一番役にたつなぁ」

クレア「やったー」

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