レーダーを使って漆黒の大宇宙を捜索することが、この宇宙戦争で一番最初にやる事であり、優れたレーダー機能を持つ艦艇が1隻あると有利になれる。
機雷も近距離レーダーとしての価値があり、艦隊は味方の全レーダー情報を共有しているので、戦闘中にレーダー機能が0%まで落ちても、味方の艦艇さえ生き残っていれば戦うことができるのだ。
この索敵にだけ特化した艦艇も存在し、チーム戦で大活躍しているのである。
ただし、駆逐艦を普通の艦隊に入れると、すぐにエネルギー切れを起こす棺桶になってしまうので、継続的な攻撃力に乏しすぎた。
駆逐艦の売りは、そのスピードしかないので、それを生かせる運用方法がなければならない。
第3話 駆逐艦は辛いよ。戦艦買ったほうがいいよ。
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「戦艦? コストが高すぎて、リアルマネーが大量に必要になるが素晴らしい艦艇だ!
巡洋艦? コストに優れた素晴らしい艦艇だ!素人に優しいぞ!
駆逐艦? ゴミだよゴミっ!味方の足を引っ張るゴミ!
戦闘機? 動く小型の棺桶だ!最後まで生き残っているとエネルギー切れで動かない小型の棺桶になっているな!」
by
古参プレーヤー
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主人公が参戦している戦場は可笑しかった
4隻の味方艦と、5隻の敵艦がお互いに撃ちあい、主人公の駆逐艦だけ場にいないのである。
このままでは1隻だけ数が多い敵艦隊に押され、味方艦隊がどんどん不利になっていくのだが・・・敵艦隊の横腹を突ける位置に、主人公の捨て身すぎる駆逐艦がいて、猛速度で敵艦隊に迫っていた。
「ヒャッハー!味方の艦隊と戦闘中に敵艦隊に横から突っ込めば、楽に皆殺しにできるぜぇっ!」
【・・・やっとここまでこれたよっ!
このタイミングを得るために10回ぐらい味方艦艇が全滅しているよ!
他のプレイヤー達が激怒して、抗議メールが殺到していて大変だったよ!】
主人公の考えた画期的な駆逐艦の運用方法は非常に単純である。
味方艦隊が交戦を開始するまでは、味方艦隊の後方に位置し、戦闘が始まったら迂回して、敵艦隊の横腹をついて攻撃するだけだ。
ただ、これをやっている間に味方艦艇が数をすり減らし、結果的に艦隊の戦いとしては敗北している。
敗色が濃厚になっている時点でこれをやっているので、1隻や2隻を奇襲攻撃で沈めても全体の勝利には影響しない事が多い。
味方艦隊が駆逐艦の行動と合わせるように開戦してくれたら、この迂回攻撃も意味がでるのだが、駆逐艦なんてゴミとしか思っていないプレイヤー達は駆逐艦を戦力として勘定してすらいないのだ。
「いくぜえええええええええええっ!!!全速前進だああああああっ!!!!
ビーム三発しか撃てなくなるが、速度こそが最強っ!無敵っ!ヒャッハー!」
【速度だけは速いね!無駄な部品を省いたおかげで、全速だと通常の巡洋艦の4倍の速度がでるよ!
皆、エネルギーを溜める事と、艦隊同士で連携するために最低限の速度だから、この艦だけ早いね!】
艦隊全体としての勝利をようやく出来そうな展開になった事で、AIさんが感動している。
そして、駆逐艦トッコウーは圧倒的な速度で敵艦隊の横腹から接近し、前面にいる味方艦隊との艦隊決戦に夢中になっている連中の隙を突くっ!
「ビーム発射っ!」
【すごいよ!ジェネレーターに直撃したよ!】
敵巡洋艦の純白の横腹にビームが突き刺さり、運よくジェネレーターの近くだったので大爆発を起こした。
シールドは前半分にしか展開してないので、横腹なら駆逐艦のビームでも沈める事ができる。
この大戦果に気を良くした主人公は、残った4隻に狙いを定め、最大船速で宇宙を突き進む。
【ミ、ミサイルさんがとんできたよおおおおおっ!!!!!4発もきたあああああああっ!!!!】
「進めっ!進めっ!進めっ!進めっ!進めっ!進めっ!進めっ!進めっ!」
この時点で駆逐艦が厄介な位置にいる事に気が付いた敵艦隊がミサイル攻撃をしてくる。
一撃でも食らえば確実に即死するミサイルが、駆逐艦に当たりそうになるが、ひたすら前に進むことでミサイルを華麗に回避する事に成功した。
【やったよおおおっ!!!!ミサイルを回避できたよおおおっ!!!!
敵艦隊は前方の敵に集中して戦っているから、この程度の弾幕楽勝だよおおおおおっ!!!!】
「いくぞおおおおおお!!!!残り二発のビームを食らってしねえええええええええっ!!!!」
駆逐艦のビーム発射口が光り、横腹を晒け出している敵巡洋艦へとビームが進み、装甲板を大きく削り取り、武装とジェネレーターに大損害を出させる事に成功した。
このまま、もう一撃浴びせて確実に撃沈しようと主人公は行動するのだが・・・なんと、駆逐艦のビーム砲が、味方艦隊の方角からやってきたビームによって破壊され、次々と駆逐艦を構成している部品が誘爆を開始しているっ!
【た、大変だよっ!味方艦隊の誤射が当たって終了した有様だよ!】
「ふざげるなっ・・・!ようやく無双できるチャンスがきたんだぞっ・・・!
【誘爆がジェネレーター付近に起こって大爆発がおきたあああああああああああっ!!!!!!
ようやく無双してヒャッハーできるチャンスがきたのに酷過ぎるよおおおおおおおっ!!!!】
駆逐艦は綺麗な宇宙の花火に変身し、敵艦隊は序盤で味方艦隊に与えた被害を拡大して、そのまま勝利してしまうという快挙を成し遂げたのである。
「抗議だっ!抗議メールを送るぞっ!
誤射したから1万円よこせって書いておけっ!」
【ピキピキきたよっ・・・!折角の大勝利が台無しだよっ・・・!】
でも、抗議メールを送る前に味方艦隊から4通のメールが送られてきて、その内容が
『射線上を通るなっ!』
『なんで一緒に戦わないんだっ!邪魔ばっかりするなっ!』
『あんなに敵艦に近付かれたら、攻撃の邪魔だろ・・・常識的に考えて』
『あははははははwwwwざまあああああああああっ!!!ねぇっ!どんな気持ちなのおおおおおっ!!!!
駆逐艦の分際で無双しようと思って、味方の誤射で敗北するとかどんな気持ちいいいいいいいっ!!!!』
味方艦隊の射線上を通るのは、マナー違反だった。
悪いのは敵艦隊に接近した駆逐艦の方である。
艦隊決戦は、効率よく火力を生かした闘い方をしないといけないので、味方艦に射線上を通られると攻撃し辛くて困るのだ。
【プレーヤーさんっ!プレーヤーさんっ!この2億で販売している銀髪巨乳美少女の外見を持つアンドロイドを買うといいよ!
AIの私が、その身体を使って癒してあげるよ!
夜のベットでキャハハハ、うふふふ、昼間はイチャイチャラブラブのデートができるよ!】
「死ねっ!」
【ほら、この消費者金融で2億を借りればいいと思うよ!
プレイヤーさんの家と、臓器とか全部担保にすれば借りれるよ!やったね!
このボタンをポチッと押すだけでいいよ!】
「・・・こんなクソゲーはアンインストールだぁっ!ヒャッハー!」
【どぼじでぞんな酷いごというのおおおおおっ!?!!?!
折角、慰めるために超絶銀髪巨乳美少女になってあげようとしたのにいいいいいいっ!!!!!】
AIのうざい声が鳴り響く空間で、もう少しでアンインストールする段階まで行く所だった主人公の元に一通のメールが届く。
そのメールの差出人名を見ると、この宇宙戦争ゲームでネタ的な意味で有名なチーム名がのっていた。
『駆逐艦で敵艦を嬲り殺す会』
索敵に特化した巡洋艦のレーダーだけをあてにして、駆逐艦からレーダー機能を外して闘う漢達のグループである。
主人公の駆逐艦がレーダーを外したら、ビームを5発撃てるようになれるので、今よりも強力になれるっ!
メールの内容も主人公の駆逐艦を愛する心とか、チームに入って欲しいなどという文章が書かれており、もう入るしかなかった。
「ヒャッハー!なんて素晴らしいチーム名なんだぁっ!
戦場を自由自在に駆け回り、敵艦を沈めるとか漢だぜぇっ!
俺も漢だから入ったらんかーい!レーダーも外して更に軽くなるぜぇっ!」
【そのチームが強いのは、普通に巨大戦艦イスカンダルが数隻いるからだよっ・・・!
チーム戦は、駆逐艦3隻で巡洋艦1隻分だと計算されて配備できるから、大量に駆逐艦を使い捨てにしているだけだよっ・・・!
プレイヤーさんみたいに装甲全部外すような真似しているプレーヤーなんて30人くらいしかいないよっ!】
「ヒャッハハハッハ!あんないらねぇ部品は全部ショップに売却したから、ここにはないぜぇっ!」
【どぼじでいつもいつも極端なのおおおおおおっ!?!?!1撃で沈んでしまう駆逐艦とかいらないでしょおおおおっ!!!!
チーム戦にはね!修理してくれる艦艇さんもいるんだよ!?
その恩恵にあずかれないでしょおおおおおおっ!!!?!!】
●巨大戦艦イスカンダル 全長500m
拡散ビーム砲がついているので戦闘機・駆逐艦キラーとしても大活躍している巨大戦艦。
ひたすら装甲が硬く、駆逐艦の攻撃では横腹から攻撃しても無意味である。
後ろの推進口狙いでもない限り、シールドすら破れない。
●修理戦艦アリス 全長1km
味方艦艇を修理する巨大要塞・・・いや戦艦。
内部のドックに格納して、短時間で完全に修理してくれる。
武装がない所が傷だが、無人戦闘機が30機ほど配備されているので、それなりの迎撃能力がある。
●無人戦闘機ジサツ・トッコウー 全長 5m
戦闘機の弱点を特攻という形で補った画期的な戦闘機。
武装はないが圧倒的な速度と、内臓されている爆弾で戦艦にすら被害をださせる。
あとがき
(´・ω・`)なんて酷い戦闘機の扱いだ。