この宇宙戦争ゲームでは、戦闘機が最低辺の存在である。
現実の対艦巨砲主義を終了させた憎き存在に徹底的に報復した結果、ジェネレーター・・・発電機を搭載していないという致命的な欠陥がある糞性能になった。
ビーム、移動、シールドにエネルギーをじゃんじゃん消費する仕様なので、ビーム砲とシールド発生装置の搭載=死亡となる。
そのため、武装は駆逐艦すら打倒するのが困難な機銃と2発のミサイルだけで限界となり、絶望的だった。
更に更に、このゲームでは索敵しながら敵艦隊の位置を探り当て、そこから艦隊決戦に移行する仕様なのも絶望的である。
敵と遭遇する前は可能な限り、場に停止してエネルギーの消費を抑えねばならず、いざ戦闘になっても短時間しか稼働しかできない超絶糞性能なのだ。
そして、この戦闘機の次に最低辺なのが、主人公が選択した駆逐艦と呼ばれる劣化巡洋艦さんだった。
第2話 駆逐艦は巡洋艦よりも早い。早い。早いっ・・・!早さに何の意味があるっ!
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「駆逐艦は速度が素晴らしい。速度が素晴らしいね。ああ、速度がいい。
・・・で?速度が速いからって何の意味があるの?これ艦隊決戦ゲームなんだよね。
1隻だけ足が速いとか馬鹿なの?死ぬの?戦闘機なの?」
by 戦艦使い
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全長50mの劣化万能駆逐艦レッカーは、初期艦艇の巡洋艦よりも1,5倍ほどの速度で通常航行ができる。
通常航行とは、ジェネレーターから供給されるエネルギーを100%使い切る時の速度であり、蓄積しているエネルギーも消費すれば2倍ほどの速度がでるのだ。
「なんて素晴らしい速度なんだぁっ!鈍足の巡洋艦どもからどんどん距離が離れているぞっ!やっぱり戦争は速度だぜぇっ!」
【どぼじで単艦だけで突出するのおおおおっ!?!!??!チームワークとか考えてないのおおおおおおっ?!?!?!?
1隻だけ突出してもデメリットしかないでしょおおおおおっ!!?!!?!】
主人公の駆逐艦は、味方の援護や増援が全く期待できないほどに距離を離している。
しかも、レーダーによる索敵機能も劣化バージョンなので、敵の方が速く見つけてくれる低性能だった。
そのため、前方から駆逐艦のレーダーに敵艦が映ってない状況でビームが一筋飛んでくる。
【敵に見つかっちゃたよおおおおっ!!!!!早く回頭して味方の元に戻ってね!今なら殺されずにすむよ!】
「俺はよぉ・・・銀河英雄伝説っていう小説で、敵前回頭する奴は馬鹿だって教わったんだぜっ・・・!
そんな情けない事ができるかよっ・・・!回頭したらジェネレーターの部分に攻撃が着弾するんだろっ・・・?」
【敵艦隊に突撃するよりもマシでしょおおおおっ!??!そんな大昔のSF小説の言葉を真に受けないでねぇぇぇぇぇっ!?!
それに状況が違うでしょおおおおおっ!?!!後ろに敵がいるんじゃなくて、前に敵がいるんでしょおおおおおっ!?!!?】
飛んでくるビームの数がどんどん増えていく。
敵艦がいる=敵艦隊がいるという発想から、デタラメな照準での一斉攻撃だ。
的が小さい駆逐艦だからこそあたっていないが、巡洋艦なら高確率で何処かに被弾している。
「半分のエネルギーをシールドに消費して、全速力で突撃だぁっ!
ビームはエネルギー残量から考えて1発しか撃てなくなるが・・・そこがいいっ!」
【・・・死中に活を求めるという奴だねっ!こうなったら奇跡が起こることを期待するよ!】
駆逐艦の推進口から膨大なエネルギーが噴出し、通常の巡洋艦の2倍の速度がでて、敵艦隊がいると思わしき宙域へと距離を狭める。
しかし、敵艦をレーダーに捕える前にシールドにビームが衝突したっ!
【ジェネレーター出力が50%に低下しちゃったよおおおおっ!!!!!装甲板も40%も吹き飛んじゃったあああああっ!!!
なんなのおおおっ!?!!?弱すぎるでしょおおおっ?!!?!ついでにミサイル発射口が全損しているよおおおおっ!!!!】
「へっ!ビームを一発撃てればそれでいいっ!役に立たないシールドは解除するぜぇっ!ヒャッハー!」
駆逐艦は大ダメージを負いながらも突撃する。的が小さいというメリットが発揮され、5隻の敵艦隊による攻撃が全く当たらないっ!
距離をつめ、とうとう敵艦隊を駆逐艦は補足する事に成功した。
主人公は、この好機を逃さないようにと、残った全エネルギーをビーム砲につぎ込み、ビームを放つっ!
そして、それは巡洋艦の・・・シールドにヒットし、ジェネレーターの出力を1%ほど下げさせる軽微すぎて困る被害をださせたのだった。
【・・・無理ゲーだね。ミサイルが10発ぐらい飛んでくるけど、もうどうしようもない有様だよ!】
「要塞に艦艇を突撃させるシーンにロマンを感じたから突撃だぁっ!駆逐艦アタックだぁっ!ヒャッハー!」
ミサイルによる包囲網から駆逐艦が逃れる術はなく、駆逐艦の横腹に被弾して装甲板を大量に消し飛ばし、ジェネレーターの付近にも着弾して駆逐艦は綺麗な宇宙花火に変身した。
こうして、駆逐艦のやってきた方角から味方艦隊の位置がばれ、駆逐艦の情報から敵艦隊の位置を知った両艦隊は戦いを繰り広げ、味方艦隊がギリギリ勝利するという快挙を成し遂げたのである。
【プレーヤーさんっ!プレーヤーさんっ!この高速巡洋艦「ユンヤー」が200万円で売っているよ!プレーヤーさんの駆逐艦レッカーと同じ速度で移動できて、性能は普通の巡洋艦と同じだそうだよ!これはお買い得だね!このボタンをポチッと押すだけで購入できるよ!】
「うるせぇっ!そんな大金なんか持ってる訳ないだろうがっ!
こうなったら、このクソゲーなんてアンインストールしてやる!」
【どぼじでぞんなごとずるのおおおおっ!?!?!AIだけでも購入するのに500円くらいかかったでしょおおおおおっ!?!!!】
ちなみに、このオペレーターAIさんは、プレーヤーが敗北する度に購入をオススメする機能がうざいので、高性能だが安くなっている。
プレイヤーが引退=己の死を意味するので、生き残るために必死に媚を売る事ができるAIなのだ。
【プ、プレイヤーさんっ!駆逐艦の部品をショップで超低価格で購入できるから、それで艦艇をカスタマイズするといいよ!
今のジェネレーターの2倍の出力のジェネレーターが30万円で売っているよ!】
「この駆逐艦買うポイントで全部使い果たした。」
【・・・なら、シールドもミサイルも機雷も装甲板も全部外せばいいんだよ!
これでエネルギーの余裕を持てて、戦術の幅が広がるよ!
味方艦隊の位置を考えながら行動するようにすれば、いつか勝利できるよ!】
AIがこの発想をプレイヤーに教えてしまった事で究極のネタ駆逐艦が誕生する事になる。
全長50mの駆逐艦の外観が、ジェネレーターと推進口、進路を変更するサイドスラスター、レーダー、ビーム砲しかないという致命的なまでに使い捨てな外観の艦艇が誕生しちゃったのだ。
これで勝利するには、敵艦艇の急所に確実に攻撃をヒットさせる腕と、それまでの過程で全ての攻撃を回避する必要がある。
「味方艦隊の位置だとっ・・・?わかったぞっ!
効率よく味方を利用すれば、確実に勝てるっ!あの巡洋艦どもの腹に爆発の花を咲かせてやるぜっ!
ヒャッハハハハハハ!巡洋艦も戦艦も全部皆殺しだぁっ!」
【と、とんでもない艦艇だよっ・・・!
こんなの無理ゲーだよっ・・・!
ネーミングセンスが自暴自棄すぎるよっ・・・!捨て身だからトッコウーとかスーサイドアタックすぎる名前だよっ・・・!
実際のスーサイドアタック並に効率が悪そうだよっ・・・!】
●超捨て身駆逐艦「トッコウー」
実質の戦闘時間でビーム4発も撃てる超ノーガード戦法駆逐艦。
一撃でも攻撃が当たれば終了するという防御力なのだ。
ちなみに普通の巡洋艦は、戦闘しながらエネルギーを蓄積させる事で、ビームを平均10発位撃てて、ミサイルを16発ほど撃てる。
駆逐艦と違って、艦隊を組んで戦う事で、隙を補う事ができるから簡単に沈まないのだ。
あとがき
(´・ω・`)戦闘機とか、戦闘機とか出したい。でも、雑魚すぎて出せない。