第百二十九話
権威 ーヤンは、主人公が人間不信に陥っているから、このまま圧倒的な権威を得て独裁者になるのではないかと疑っていた。
でも、ホアン委員長がヤンを安心させようと、主人公が今現在、莫大な影響力を持っているのは、戦後のビジョンを描けるのが彼しかいないだけで、新秩序を作り上げたら、主人公の影響力は低くなり独裁者になろうにもなれないから、安心しろと、ヤンに告げる。 ー
「権力と権威の融合、その融合が進めば進む程ヴァレンシュタイン委員長は危険な存在になるだろう。表向きは共和政でも内実は独裁政に近くなる可能性が有る。まるでペリクレスだな」
「……」
ヤン提督が溜息を吐いた。
ペリクレスとは何だろう?
ヤン提督は分かった様だ。人の名前、おそらくは政治家の名前の様だが……。私が疑問に思っているとヤン提督が
”ペリクレスは人類が地球を住処としていたころ、古代ギリシャの政治家だった。彼が統治者であった時代のギリシャは外観は民主政だが内実は唯一人が支配する国と言われた”
と説明してくれた。なるほど、意味が分かった。
「珍しいケースでは有る。独裁者というのは独善的でも良いから揺るぎない信念と使命感、自己の正義を最大限に表現する能力、敵対者を自己の敵では無く社会の敵であると見做す主観の強さが必要だ」
「……なるほど」
ホアン委員長がコーヒーを一口飲んだ。
(´・ω・`)知的に書ける文章が羨ましい。
第百三十話 手荒い歓迎--同盟が新しい新秩序のために大忙しだった頃、主人公の部署は暇だった。
重要な役割だが、行政機関というよりシンクタンクのようなものだから帝国と協調する部署を作る必要もないって事で、暇になっている。
でも、主人公は部署の最高責任者だから、あちこち移動しまくりで忙しい。
フェザーンに訪問して、フェザーンと癒着していたヘンスロー弁務官を苛めてボコボコにしていたら・・・今度はイゼルローン要塞で反乱騒ぎが起きていた。 -
「残念ですがそれは認められません。ヘンスロー弁務官、同盟政府は貴方がフェザーンの自治領主府と親しくなり過ぎたと認識しています。これ以上貴方を高等弁務官の地位に置くのは同盟の国益を損ずる事になると考えているのです。私が何を言っているか、お分かりですね?」
「わ、私は、国益を、損ずるなど」
また汗を拭いだした。
「否定しても無駄ですよ、同盟政府は全てを知っています。アドリアン・ルビンスキーが政府の保護下に有る事を忘れないでもらいましょう」
今度はガタガタ震えだした。忙しい奴だな、しかしパニックになられても厄介だ、馬鹿げた事を仕出かしかねない。
「安心してください、ヘンスロー弁務官。ハイネセンに戻っても貴方が処罰を受ける事は有りません」
露骨にホッとしている。
「但し、今後は貴方の行動は二十四時間、同盟政府の監視下に置かれます。貴方を利用しようとする勢力が接触を図るかもしれません。それを防ぐためです、理解してください」
ヘンスローの顔が引き攣った。散々楽しんだんだ、もう十分だろう。
(´・ω・`)仕事がどんどん勝手に生えてくる。
第百三十一話
反乱--イゼルローン要塞の反乱の首謀者は要塞司令部、駐留艦隊司令部の参謀達だった。
主人公が交渉でイゼルローン要塞を国際交流都市にして無力化しようとしたから反発して、反乱騒ぎが起きている。
今まで、同盟がイゼルローン要塞を攻略すると、帝国への大遠征イベントが発生するので、放置していたが、それが仇になった。
だから、主人公はとうとう難攻不落のイゼルローン要塞の攻略を・・・銀河帝国に任せた。
方法は!要塞には要塞で!
原作でやった要塞決戦だ! --
「自由惑星同盟からイゼルローン要塞の攻略案が送られてきた。攻略案を考えたのはヴァレンシュタインらしい」
彼方此方から声が上がった。皆驚いている、酒場の冗談が本当になった。体に残っていたアルコールの残滓がきれいに抜けたような気がした。
「いささか突拍子もない案だ。政府は酷く混乱している。財務省、軍務省、統帥本部、それと俺達に攻略案を検討しろと命令が有った。ああ、それから科学技術総監部もだな」
また皆が顔を見合わせた。軍務省、統帥本部、宇宙艦隊司令部は分かる。科学技術総監部?
財務省? なんだそれは。
「作戦案の根幹にあるのは要塞には要塞を以って対抗するという事だ」
「……」
はあ?
なんだそれは。ヴァレンシュタインは何を考えた?
「ガイエスブルグ要塞をもってイゼルローン要塞を攻略する」
ガイエスブルグ要塞?
駄目だ、さっぱり分からん……。唯一の救いは皆が困惑している事だ。元帥は何を言っている
(´・ω・`)うほ、これは良い展開。
第百三十二話 要塞攻略案ー”
ガイエスブルグ要塞をもってイゼルローン要塞を攻略する”
主人公の提案で、ラインハルト達は要塞 VS 要塞戦をやる事になった。
要塞にワープエンジンと通常航行用エンジンを取り付けイゼルローン回廊まで運び、4つの攻略案をプレゼントしてもらった。
兎にも角にも、準備するのに膨大な時間がかかるので、訓練する猶予があって大助かり。
でも、元帝国軍人の主人公がこんな奇抜な案をポンポン出すもんだから、ラインハルトは怖くなった。
おまっ!
帝国軍にいた時からっ!
イゼルローン要塞を攻略する方法を考えていたな!的な意味で、怖がられていた。 ー
攻略案は四つあった。一つ目はガイエスブルク要塞をトール・ハンマーの死角に運びそこから要塞主砲で攻撃するというものだ。反乱軍がそれを妨害しようと駐留艦隊を出撃させてもこちらの方が兵力は多い、簡単に撃滅出来る。連中にはイゼルローン要塞が破壊される前に降伏するしか生き残る道は無い。
二つ目はガイエスブルク要塞の主砲を以ってイゼルローン要塞のメインポートを射程範囲内に捉えるというものだ。そうする事で駐留艦隊の出撃を封じる。そしてこちらの艦隊を以ってイゼルローン要塞の外壁を破壊しそこから陸戦隊を送り込んで内部から制圧する。自由惑星同盟が第六次攻防戦で行った戦法だ。制圧目標は司令部、又は核融合炉になる。
三つ目はガイエスブルク要塞をイゼルローン要塞にぶつけるというもの。これが一番驚いた。説明を受けているときも“馬鹿な”、“正気か”という声が出たほどだ。但し作戦にはぶつけると言って降伏させろと書いてあったらしい。主目的はぶつける事よりも降伏を促す事なのだろう。そして四つ目は上記三案を反乱者達に通知し降伏を促すというものだった。
(´・ω・`)帝国は出費が続きすぎて涙目だ・・・
第百三十三話 フェザーン独立--同盟も帝国も移動要塞という新兵器の存在に困った。
これは明らかに兵器の歴史を一変させるレベルの戦略兵器。
攻撃にも防御にも使えてやばい。
しかも、イゼルローン回廊で要塞を作るよりも、ハイネセン近郊で移動要塞作った方が安く済む事もあってやばかった。 -
「軍民の技術者達が出した結論は可能というものだった。幾つか問題はあるが解決は可能であると」
『おかしな結論ではないな、帝国も同じ結論を出したのだから』
事も無げな口調だ。気楽だな、レベロ。技術者達はその結論を出すまでが大変だったのだが。
「コスト面でも削減が可能だと言ってきた。イゼルローンまで輸送船や工作船を送り込むならハイネセン近辺で建設し運んだ方が安く上がるらしい、工期も短縮出来るようだ」
『良い事尽くめだ、それで?
移動要塞にするのか?』
「帝国軍の運用実績を見てからだ。反乱鎮圧に成功すれば、こちらも移動要塞に変更する事になるだろう」
『まあ妥当な線だな』
「もう分かるだろう。帝国との最前線に移動要塞が有る。それが戦争にどういう影響を与えるか、それを検討しているのだよ」
“なるほど”とレベロが頷いた
『で、どうなると思うんだ?』
「分からん、まだ検討途中だ。色々な意見が出ている」
『……』
うさん臭そうな表情だな、レベロ。だが実際に検討会では統一した見解は出ていない。いや出せずにいるのだ。
(´・ω・`)移動要塞無双の時代さんが来るのか。
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