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ドラゴン転生 7話「人気作家とドラゴン」5KB |
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「成功の鍵は、的を見失わないことだ。
自分が最も力を発揮できる範囲を見極め、
そこに時間とエネルギーを集中することである」
【ビル・ゲイツ】
今日、訪れた浮遊島は一言で説明するなら本の島だ。
島のあちこちに巨大な図書館や、本屋が溢れ、国民のほとんどが本を読み、その世界に夢中になる――そういう落ち着いた場所だ。
だが、本を売って生活費を得るために頑張っている小説家はそうはいかない。
日々、アイデアを出そうと頭を捻らせているのだ。
そう、こんな風に。
「ドラゴン様!
私の相談に乗ってください!」
学者風の褐色エルフ娘のお嬢さんが、私に土下座して会いに来た。
手には大きな鞄を持っていて、胸が大きかった。
私は少し考えた後に、返事を返そうとすると――
「私はこの国の人気作家アインスと言います」
「私が反応する前に自己紹介とは中々やるな!」
「今、新しい本のタイトルについて悩んでいるんです。
斬新で売れるタイトルを私と一緒に考えてくれますか?」
「言葉のキャッチボールが出来てない!?」
「小説って家に引き篭もって書く職業だから、会話苦手です」
「それはお前の問題だろ!?
会話苦手なのに、よく物語が作れるな!」
私のツッコミを他所に、褐色エルフ娘は一方的に話を進め、鞄の中から大量の本を取り出して地面に並べた。
「これは、今、この国で売れてる小説のベスト10です。
これを参考に、売れるタイトルを考えてくれませんか?」
「むぅ」
私は困った。
この国の文字が読めん。
ただの記号にしか見えなかった。
しばらく悩んでいると、私の頭の上で寛いでいるアイスが
「ドラさん、代わりに僕が本のタイトルを読んであげようか?」
「おお!読めるのか!」
「順番づつ読むよ。ええとね。
ドラゴン、最強をモットーに生きております!」
「きっとドラゴンが無双する小説だな。分かりやすい」
「最弱のドラゴンって、それはないでしょう!」
「弱いドラゴンが成り上がる作品だと理解した。成り上がりは創作の鉄板展開だな」
「異世界迷宮でドラゴンハーレムを」
「この国の小説のタイトルは、ドラゴンだらけか!
ドラゴンハーレムとか、人間から見たら誰得だろ!?
外見爬虫類だぞ!?」
「転生したらドラゴンだった件
」
「ジャンルが偏りすぎぃ!
なんで私に相談しに来たのかわかったぞ!
私がドラゴンだからか!」
褐色エルフ娘はウンウン頷いた後に
「さぁ、ドラゴン様。
売れるタイトルをお願いします」
「いや、そんな期待しているぞって顔で言われてもな……。
本は中身が重要だろう?
中身が良ければ売れるよな?」
「いいえ違います。
本は表紙のイラストとタイトルが売り上げを左右します。
最初の一冊は中身よりも外見が一番大事なんです。
手に取って読んで貰えるタイトルの本じゃないと、内容どころか、表紙イラストすら知ってもらう事ができません」
「なんてひどい現実だ!」
「さぁ、ドラゴン様。
どうか売れるタイトルをお願いします」
ここまで期待されては仕方がない。
私は少し頭を捻らせて
「……ドラゴンの旅はどうだろう?」
「シンプルすぎて何も伝わらない駄目タイトルですね。
ドラゴン様のセンスに絶望しました」
「なんて酷い言い様!?
じゃ、ドラゴンスレイヤーズはどうだ!」
「ドラゴンを殺す作品なんて売れません。
もっと、笑える感じのタイトルをお願いします」
「ドラゴンの妹がこんなに可愛い訳がない!」
「おお、なんか良くなりました。
長文タイトルって良いかもしれませね」
「ドラゴン高校の劣等生!」
「おおっ!ドラゴンで学園物!
学園物は人気要素だから売れそうです!」
「とあるドラゴンの禁断魔法!《ドンデックス》」
「シンプルながら、当て字も入れて格好いい!
ドラゴン様のセンスに脱帽しました!
でも、私としては先ほどの長文タイトルの方が良いと思います!」
「ダンジョンにドラゴンを求めるのは間違っているだろうか!」
「すごく売れそうです!」
……
……
……
……
……
……
……
……
……あれから、たくさん長文タイトルについて議論しまくった、
どのようなタイトルなら、読者は驚くだろうか?
それを考えた結果――翌日、褐色エルフ娘は大きな紙を持ってきて、私の前で発売するかもしれない本のタイトルを読み上げると
「ドラゴン転生〜無職の俺が異世界に行って妖精娘の幼馴染のズボンを脱がして洞窟でパコンパコンして学生結婚し、
合法ロリな魔法少女の命をダンジョンで助けてパンツ貰って御神体にしてクンカクンカして二番目の嫁にして
更に嫌悪な仲になったツンデレな貴族娘と和解して、妹も嫁にしてハーレムしてパンツを涙を流しながら暖炉にくべる壮大な冒険物語〜」
「これは酷いネタバレ。
なぜこうなった」
「売れる予感がします。
ありがとうございます、ドラゴン様」
「いやいや売れないだろ!?
タイトルでストーリーが全部分かるとか、楽しみがなくなるぞ!?」
「いえいえ、半分くらい嘘ですから」
「タイトル詐欺だぁー!?」
「絶対売れます!
私はそう確信しました!
売れたらドラゴン教にたくさん寄付しますね!
あと、写真取って良いですか?」
私が断る暇もなく、褐色エルフ娘が構えたカメラから、パシャッパシャッと連続して光と音がした。
それと同時に、近くの林からもパシャッパシャッと謎のカメラの撮影音がする。
林に居た謎の人影も、褐色エルフ娘も逃げるようにして、場から走り去った。
……最後まで会話が一方的な女の子だ。
コミュニケーション能力がなさすぎる。
「大赤字間違いなしだな。
あんなタイトルじゃ絶対売れんぞ」
「タイトルを決めてから、小説を書くなんて不思議なダークエルフだったよね、ドラさん」
「内容を決めてから本のタイトルを決めるのが普通だと思うが、人気作家だから色々と書き方が違うのかもしれない。
だが、あのタイトルでは在庫が大量発生するだろうな……」
次にあの褐色エルフ娘に会ったら、作家をやめて金を稼げる男と結婚するように助言した方がいいかもしれないと思った――常識的に考えて。
☆宣伝の力☆
後日、島の上空をアイスと一緒に飛んで遊んでいたら、大型書店で、目立つ旗が掲げられているのを見かけた。
《エメラルドドラゴン様も絶賛!『ドラゴン転生』発売!作家とドラゴン様の写真入り!》
「私を宣伝の出しに使うためだけに、会話してたんかーい!」
7話「人気作家とドラゴン」おしまい
元ネタ+7話のコメントまとめはこっち
http://suliruku.futene.net/Z_saku_Syousetu/Tyouhen/Youseiryu_to_soratobu_daiti/c7.html
【小説家になろう】 7という数字は何でこんなに人気なん?【作品名:検索結果1,000作品】
http://suliruku.blogspot.jp/2015/08/71000.html
【小説家になろう】
ヒーロー文庫、 《竜殺しの過ごす日々》発行部数65万部で断トツ一位
http://suliruku.blogspot.jp/2015/09/65.html
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