「もしあなたが食べ物を拒否し、慣習を無視し、宗教を恐れ、そして人を避けるなら、あなたは家を出ないほうがいいだろう」

ジェームズ・ミッチェナー（アメリカの小説家）

お、恐ろしい島を見つけてしまった。
村が一つだけ、ポツンッとある小さな島を訪れた私は――心を読める2人の少女に出会ってしまったのだ。
恐ろしい。
何が恐ろしいかって？
この会話の内容を聞けば分かる。

「空を二週間かけて飛んで……この島に来た？
しかも飲まず食わずで？
その不死身のスタミナがすげぇぇぇぇぇぇ！ 」
「普通の人間なら過労で死んでいるわね。
さすがドラゴン様だわ」

なんと、ツッコミを入れる暇がないダブルマシンガントークをしてくる2人組だったのだ。
しかも、過剰に褒めてくる上に、何故か身体がダルイ気分になる。

「ドラゴン様の吐く息。
計測したら、二酸化炭素が出てないぞ……どういう体の構造になってるんだ！？ 」
「さすがね。
普通なら二酸化炭素を吐くのに……自然環境に配慮してドラゴン様は苦労してるんだわ」

え！？まじで！？
いや、今は話を変えた方が良いな。
私は割り算もできるのだ。それどころか高等数学もな。
どうだ、対応できるか？

「え？
ドラゴン様は掛け算どころか、割り算も出来る?
読み書きできない身体なのに頭良すぎるだろ!？ 」
「学者並の頭の良さね。
こうやってわざわざ自慢する所が、学者そっくりだわ」

頭の上でグゥーグゥー眠っている妖精娘は、私の嫁（予定）。

「ドラゴン様は、巫女のアイス様を愛している？
種族を超えた恋愛とか難易度高すぎ！？さすがドラゴン様！」
「良いわね。
これが本当の愛って奴なんだわ。
なんとなく、嫁にする予定って所が良いわね。
失恋する可能性が残っているわ」

あと、この村の農具を見て思ったのだが……穀物の収穫率をアップさせる道具を教えてやろうか？

「人間の道具の使い方を理解している？
獣のような手足なのに、道具の使い方を知っているなんて……すげぇぇぇぇぇぇ!!
しかも、頭の中で思い描いている道具がシンプルで画期的だっ！」
「きっと長く生きすぎて、ドラゴン様には無意味だけど道具の使い方を覚えてしまったのね。
誰にでも出来る事じゃないわ」

しかも、私は老いないらしい。

「ドラゴンと妖精は老いない？
羨ましい……ほんとっ！まじすげぇぇぇぇぇぇ!!」
「いつまでも若いままなんて最高ね。
私も若い姿で過ごしたいわ」

お前たち、仲良すぎるだろ！？
やった！ツッコミ成功した！

「ドラゴン様が私達を褒めてくれたぞ。
他人を気遣う事ができるドラゴン様の寛大さは世界一イィィィィィ！！ 」
「慈愛に溢れたお方ね。
さすが神の使いだわ」

私のツッコミをツッコミで相殺された！？
なかなかやるなっ……！

「ツッコミとツッコミとか、漫才として失格なのに、私達と対等に渡り合えるドラゴン様の漫才センスがまじぱねぇっ！」
「こっちは倍の物量なのに、善戦するなんて、中々やるわね」

こうなったら、今日の私はボケに徹そう。
アイスのパンツは美しくてな。
縞々パンツなんだ。

「妖精に欲情している！？へ、変態だぁぁぁぁぁぁ！！！！！！！！」
「まるで人間みたいな性癖ね。
女性のパンツが気になるなんて、ドラゴン様の好みは凄いわ！」
……
……
……
……
……
……
……
……めっちゃ疲れた！
たった1時間会話しただけなのになんでこんなに疲れるんだ！？
あと少女達に聞きたいのだが、どうして私をそんなに褒める？


「「そりゃ簡単ですよ。
他人を褒めると気分が良いからです。
ドラゴン様の感情エネルギー、美味しかったです！」」
「疲労の原因はお前らか！」
「「ちなみに、私達が定期的に叫んでいる『すげぇぇぇぇぇぇ!!』発言はドラゴン様の膨大なエネルギーを食べながら、その不死身のスタミナっぷりを褒めていただけです。
会話の序盤にちゃんと言いましたよね？」」

た、確かに『その不死身のスタミナがすげぇぇぇぇぇぇ！』とか言ってたな！

「酷すぎる！？
今までの歓迎が、全部台無しすぎるだろ！？」
「「だって、こうやってドラゴン様が落胆してくれたら、悲しみの感情を食べられて最高ですし」」
「もうやだ！
私は二度とこんな島には訪れないぞ！」
「「またのお越しをー」」
「二度と来るか！あほ！」



3話「食べちゃった話」 　おしまい

 

3話のコメントまとめはこっち  
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