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ドラゴン転生
1話「神の国」12KB

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「歩き回っている人がみんな迷っているとは限らない」
by  J・R・R・トールキン



何処までも続く青い空と白い雲。
風を切る感触が心地良い
雲に突撃して突破する遊びを覚えて、人生は順調だ――そうやって空を飛んでいると浮遊する島が見えた。
大きい。
島というより大陸規模の大きい大地だ。
湖があり、森があり、山脈があり、高層ビルが摩天楼のように並ぶ都市が無数にある――

「おおーい!どうやって浮いているんだっ!?
大陸が浮いているとか……現実舐めんな!
幾らなんでも不可能だろう!?」

私が叫ぶと、隣を飛んでいたアイスが、小さな手で湖の真ん中にある大都市を指さした。

「ドラさん、あの都市に降りるよ!」
「私の発言無視!?」
「陸地が浮かんでいるのは常識だからね。
僕にはドラさんの疑問は分からないよー」
「それと……降りても大丈夫なのか?
私みたいな怪獣が降りたら、人間達が大混乱するぞ?」
「大丈夫だよ、ほとんどの地域でドラゴンは崇拝されているからね。
さぁ!ドラさんの記念すべき最初の陸地だよ!」
「よ、よし、アイスの言葉を信用しよう!」

私はゆっくりと頷いて、アイスを頭に乗せて都市へと舞い降りる。
私が降りても余裕がある大広場へと着陸。
――私は心臓が凄くハラハラドキドキした。
怪物だぁー!とか、人間達に叫ばれたらどうしよう。
日本の怪獣映画では、怪獣=軍隊と戦うのが普通だが、そういう展開は嫌だ。
うっかりこんな所で、強力すぎるドラゴンブレス使ったら、億単位で人間殺害した邪竜になってしまう。
お願いだ。
どうか友好な態度で接してくれ、異世界の人間さん達!……広場にいる無数の人間達は、私をみて一瞬の沈黙の後、口々に騒いだ――

「ドラゴン様だ!ありがたやっ!ありがたやっ!」
「きっと神様の誕生を祝いに来たんだわ!」
「貢物を早く渡すんだ!ドラゴンブレスされるぞ!」
「妖精の方はたぶんドラゴン様の巫女だ!甘い物をもってこい!」

そう言って群衆が、次々と近くの飲食店から食料品を運び込み、私の前に並べた。
とても美味しそうな豚の丸焼き。
調理された肉料理。
――ふぅ、どうやら歓迎してもらえるようだ。良かった。
この作品のタイトルが『邪竜転生〜異世界で大量虐殺したら指名手配〜』にならずに済んで良かった。
ありがとう、異世界の優しい人間さん達。
では、久しぶりの食事をするとしよう。
豚の丸焼きに、浮遊の魔法をかけて浮かばせて、一気に口の中にいれてパクンッ。
味を楽しむためにゆっくり噛む。
美味い。
豚を中までしっかり焼いているおかげで、生臭さがほとんどない。
胡椒が少し辛くて、ちょうど良い。
骨をバリボリ砕いて食べる感覚が病みつきになりそうだ……って!ドラゴンの食生活に馴染める私は野生児かーい!
豚丸ごと食べて、骨を砕く感触楽しめるとか可笑しすぎるだろ!?
しかも、広場にいる人間たちが、私を拝んできて鬱陶しいぞ!?

「「「「「ドラゴン様が食事をしておられるぞ!ありがたやっ!ありがたやっ!」」」」」
「「「「「金運アップお願いしまーす!健康長寿!学力アップもよろしくー!」」」」」
「「「「交通安全!安産成就!仕事運!全部お願いしまーす!」」」」

――よく考えたら、数十万円くらいしそうな豚肉を、私のためにポンッと無償でだしてくれるのか疑問だ。
もしかして料金は後払いなのだろうか?
だとしたら、困った。
お金がない。
金融機関からお金を借りて借金地獄は嫌だぞ……。
だから近くいる、コック服を来た男に話を聞いてみると「え?料理の値段?ドラゴン様から金を貰う訳ないじゃないですか!
無料ですよ!無料!」という返答が返ってきた。
今までの反応から見て、ドラゴンのイメージがとっても良い事が分かるが、一体、どのような事をすればここまで崇拝されるのか、私には分からない。
人間側の経済負担が多すぎだ。
場に次々と出された肉料理は、軽く見積もっても人間基準で1万食分ほどある。
ここまで私を歓迎するのは何故だ?
……今まで沈黙を保っているアイスの方をチラリッと見ると、緑色のアイスクリームをペロペロッと舐めて満足そうにしている。無邪気だ。
そうやって食事で時間を潰していると――高級そうな黒い車が数台やってきて、車両の一つから偉そうな老人が出てきた。
老人は私の目の前で、手をおおっぴろに広げて

「ドラゴン様!
ご来訪歓迎いたします!
ワシはこの国の大統領です!」
「手厚い歓迎感謝する、大統領閣下。
豚の丸焼きが最高だった。
ハンバーガーも美味かった」

かなり適当な口調になってしまった。
正直……国の最高指導者相手にどう対応すればいいのかわからん。
ドラゴンはどう振る舞うのが自然なんだ?
大統領は青い目で、こっちをジロリッと見つめてくる。
一国の指導者なだけあって迫力あって格好いい老人だ。

「ドラゴン様、それはそれはありがとうございます!
……ところで、何の用事で我が国に来たので?」
「特に用事はない。
たまたま目がついたから、ここに来ただけだ。
迷惑をかけてすまない」
「ならば、ワシの国が誇る大事業を見学なされますか?
今から三日後!
ワシらは全治全能の神様を製造する予定なのです!
まさに歴史的大事業!世界の歴史が激変する事は間違いなし!」

……ツッコミたい。
なんでそんな国家機密っぽい内容をペラペラ喋るんだよ!ってツッコミたい。
ドラゴンってそんなに偉いのか?
いや、よく考えたら大艦隊を、一撃で消滅させるドラゴンブレスがある時点で……核兵器より遥かにやばいな!ドラゴン!
そりゃ、人間達が低姿勢で相手してくるのは当たり前だと気づいた。
こんな事に気づかない私の方が馬鹿だ。
こうやって私が心の中で一人ツッコミをやっていると――大統領は首を傾げて

「おや?嘘話だとドラゴン様は思っておられますな?
ワシらは神様を製造する方法を……とうとう思い付いたのです!
近隣諸国やこの国の民から情報を集積し、全知全能の神っぽい設定を持つ生物を生命創造魔法で作る!
そういう画期的なアイデアを思いついたのです!
実現するために10年の歳月がかかって大変でした!」
「……大統領は、神様を作って何がしたいんだ?」
「それは簡単!
ワシらの目的は、世界中の全生物の幸福!
差別もない、苦しみもない、豚や蟻すらも幸福になれる世界!
全知全能の神様ならば、それが叶えられる!
ドラゴン様も幸せになれますぞ!
皆、幸せぇー!
ヘブン状態!」

あ、明らかに嘘すぎる!?
こんな聖人みたいな発言する奴が、大統領になれる訳がないだろ!常識的に考えて!
ツッコミたい衝動に苦しみながら――私は返答に困った。
全治全能の神。
そんなものを作るのは不可能だと思っているが、ここで否定したら大統領は激怒するだろう。
それに私もどういう結果になるのか気になったから

「……大統領閣下。
この国に三日ほど滞在してもよろしいか?」
「よろしいですとも!ドラゴン様!
ですが……ドラゴン用の宿泊施設はないのですが、よろしいですかな?」

私は頷いた。
アイスと一緒に楽しい空中野宿をするから、特に問題はなかった。
大統領から、さっさと出て行け!と遠回しに言われている気がするが、気にしないでおこう。

「大丈夫だ、大統領。
無限に広がる大空そのものが……私から見れば豪華なホテルだ」

お、私、格好良い事言えたぞと思ったら――アイスに笑われた。

「僕とドラさんは、毎日豪華なホテルに泊まっているカップルって事になるのかな?
いやー、熱々だねぇー」

私の頭が真っ赤になった。



★恋の季節★

アイスを頭に乗せて、島の上を飛んだ。
こうやって人間の町並を上から見下ろすのは気分が良い。
まるで精巧な超巨大ジオラマを見ているような、そんな贅沢な気分に浸れる。
都市間を電車が走り、大勢の人間達が人生という物語を紡ぐ様は感動物だ。
これなら、三日をあっという間に潰せそうな楽しい一時を過ごせる。
ただ、気になるのは

「……アイスに聞きたいんだが、この世界の神様で有名な神様はどんな奴だ?」
「国交が断絶状態の立地の国が多いから、地域ごとに有名な神様はいると思うけど、世界規模で有名な神様は居ないんじゃないかな?
こんな事を聞くって事は……ドラさんは召喚される神様が、どんな存在なのか気になるの?」
「私の居た世界では、全知全能の神という設定がある宗教はどれもこれも、悪魔と何ら変わらない神が多い。
だから、とても不安なんだ」
「うーん、気になるなぁ。
神様が悪魔みたいな奴なの?
ドラさんの世界で有名な神様って具体的にはどんな感じ?」
「人間の事を地獄という場所で永遠に苦しめたり、慈愛に溢れている設定なのに信徒同士で凄惨な殺し合いをさせ、人間を洪水で殺しまくる最低の神だ。
冷静に考察すれば、慈愛の精神や全治全能にほど遠い神様なのに、世界の大半がそんな神々を優しくて偉大なお方だと思って信仰していた」
「なるほど、だからドラさんは不安なんだね。
でも、大丈夫大丈夫。
ここは現実だし。そんな酷い事にはならないよ」

アイスは意味深な事を言ってから、私の頭からジャンプして、氷の翼で空を羽ばたいた。
私の隣に並んでニッコリと笑みを浮かべ

「ドラさん。
そんなどうでも良い事よりも飛んで競争しよう!
僕より速く飛べたら、お嫁さんになってあげてもいいよ!」

可憐だ。
私にはアイスの小さな身体が、美しい宝物のように思えた。

「よし!その挑戦受けた!」
「あ、やっぱりドラさんって僕に欲情してたの?
ドラゴンになっても人間の頃の価値観って残るんだねー」
「今までのやり取りがただの誘導尋問だった?!」
「そんでドラさんはきっと童貞だと思った!ついでにロリコン!」
「若い子が好きなのは反論できない!?」
「まぁ、妖精に変身できる秘宝持ってるし、種族を超えた愛って奴もいいかもしれないよ?
僕を惚れさせる事が出来たら、考えてあげるよ。
ドラさんは幸せ者だよね!」
「ありがとう!凄く嬉しい気分になった!」

女の子と会話するだけで、元気になる私は単純な生き物だ。
私はひょっとしたら地球の何処かで死ぬ寸前で、この世界は私が見ている夢なのかもしれないと思うほどに、今は幸せだ。
――しかし、全知全能の神は本当に存在するのだろうか?
1人の自由は、他者の自由と衝突するのが現実。
例えば、1人の男が100人の美女を集めてハーレムをするとしよう。
単純に考えて……100人の男が素敵な美女と結婚する自由を失い、不幸になる事を意味する。
誰かの大きすぎる幸福は、誰かの不幸となるのが現実なのだ。
矛盾なく願いを叶えられる神様が、現実に存在できるのか謎だ。

「ドラさんっー!
競争だよぉー!」

でも、この世界が夢だったならば……矛盾なく、他者の自由と衝突する事なく、全ての生物を幸福にする事が可能だ。
もしも、全知全能の神様が出てきたら、この世界はきっと――夢に違いない。




★神話の再現★

……空を飛んでいる内に、三日の時間が流れた。
今、この大地の中心にある広場に、巨大な魔法陣が描かれ、その起動を膨大な数の人間が期待して見ている。
私は魔法陣のすぐ近くにある貴賓席という名前の石畳に座り、頭の上でアイスが寛いでいた。
全治全能の神――それは全てを知り、何でも出来る至高の存在。
それを目撃する歴史的瞬間に立ち会えるかもしれない期待と、大魔王が召喚されて「我は人の闇。邪悪の化身、我の腕の中で永遠に朽ち果てるがいい!人間達よ!」的な展開になるかもしれない不安で、私の心はドキドキだ。
大統領が魔法陣の前に設けられた台座へとゆっくり歩き、儀式が始ま……らなかった!?

「諸君っ!
ワシらの夢!
全生物の幸福が叶う時がやってきた!
これは全国民の努力の結果である!
ワシはそれを嬉しく思う!
我が国の歴史は試練の連続であり――」

聞きたくもない演説が2時間ほど続いた。
正直、2秒くらいでスピーチを終わらせて欲しいと思った。
お爺さんの意味のない演説なんて誰得。




「――だから何なになのであって、かくかくしかじかなのである!
ワシらは超偉い!
では神様製造の儀式発動!
アーメン!」

大統領の演説がようやく終わった。
演説の終わりとともに、魔法陣は光り輝く――すると、真ん中から全身黄金色のハゲの巨人が出てきた。
仏像っぽい優しい顔だ。
ただ全身が黄金色なせいで、成金っぽい下品さが出ている……これがこの周辺地域に伝わる有名な神様なのだろうか?
神様はゆっくりと目を開き、呟いた。

「ふぉふぉっ!
我は神!
頭がでかいぞぉー!ドラゴン!」
「普通に座っているだけなのに殴られた!?」

ズビシッ!神様の空手チョップが私の頭に直撃した。
特に痛みはない。
とっさに、頭の上に居たアイスが飛んで逃げてなかったら、彼女が死んでいる所だった。
許せない。
あんなに可愛い銀髪美少女妖精に危害を加えようとするなんて、許されない事だ。
世界中の妖精好きが許したとしても、私が許さない。
この自称神様は悪の大魔王に違いない。
そう思って反撃のドラゴンブレスをやろうと思ったら、醜悪な顔の大統領が神様の前で騒いでいた。

「神様!
ワシがあなた様を創造した創造主です!
ワシに不老不死をくだされ!
若い身体にして、永遠に健康を保てる最強の命をくだされ!
ドラゴンよりも強い身体をくだされー!」
「いいゾ!我はその願いを聞き届け――」

神様の動きが突然、止まった。
何か考え事をしているらしく、冷や汗を流している。
大統領は観衆の目を気にせずに遠慮なく、己の欲望を果たすために叫び続けた。

「神様!
ワシを早く不老不死にしてくだされ!
そして、世界を支配する王にしてくだされ!」
「わ、我はその願いを、その願いを……?」
「ワシだけを幸せにしてくだされ!
この世界そのものを犠牲にしても良い!
早くしろ!この役立たず!
ワシがお前を作ったんだぞ!ワシを全知全能の神様にしろぉー!」
「ふ、不老不死は矛盾だらけ……?死なない生命は居ない……?ドラゴンはブラックホール直撃しても死なない……?わ、我は……?」

やはり神様はそれ以上の言葉を紡ぐ事ができない。
頭を抱え込んで苦しんでいる。
大統領の方は何度も何度も自分の欲求を叫ぶが、神様はその願いを叶えない。
深刻そうな顔で……ブツブツと呟いている。
そんな状況で、命知らずなアイスが、神様の頭の上へとスタッと着地して、ゆっくり話しかけた。

「ねぇ?神様は本当に全治全能なの?」
「わ、我は全治全能だ!出来ない事は何もない!」 
「なら、僕の願いを叶えてよ」
「わ、わかったぞ。
何でも言うがいい!!」
「誰の言う事も聞かない妖精って作れるのかな?」
「……」 神様は顔を大きく歪めた。
「もちろん、神様の言う事すら聞かない妖精だよ?
全治全能なら作れるよね?
で、ここで僕は思うんだ。
誰の言う事も聞かない妖精を、神様は従わせる事が出来るの?
妖精が言う事を聞いたら、その妖精は失敗作。神様は全治全能じゃないよね?
妖精が言う事を聞かなかったら、神様は全治全能じゃない事が証明されちゃうよね?
ね?この矛盾をどうやって解決するの?
僕じゃ分かんないから、神様に答えて欲しんだよ?」

神様は何も答えず、震え続けるだけだった。
アイスは更に言葉を続ける。

「じゃ、誰にも持つ事が出来ない岩作ってよ。
全知全能の神様より凄い神様とかでも良いよ?
あれ?やっぱり作れないのかな?
大統領の不老不死と同じで、どれも致命的な矛盾を孕んでいる願いだもんね。
答えを出せない時点で……君は全知全能の神じゃないって事になるのかな?
認めた方が人生楽に生きられるよ?
僕はそれを責めたりしない――この世界で全知全能という概念そのものが矛盾の塊だからね」

神様は泣き出した――自分が全治全能の存在ではない事を悟ってしまったのだろう。
哀れだ。
人間の都合で作られ、絶望するとは哀れだ。
神様の身体はポロポロッと崩れて崩壊して瓦礫と化し、近くに居た大統領が慌てて場から逃げ出した。
この光景を眺めていた民衆は呆然として、しばらく沈黙を保った後に――大きな絶望を心に抱いて魂の叫びを上げた。

「うわあぁぁぁぁぁぁぁ!!!神様が死んだあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「死んだお婆さんと仲良く暮らす夢があぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ゴルフのトッププロになる夢があぁぁぁぁぁぁぁ」
「俺が不老不死になって美少女ハーレム作る夢があぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「異世界で無双して、大帝国を建設する夢はどうやって達成すれば良いんだあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「イケメン達で逆ハーレムする夢があぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「大統領が逃げたぞぉー!追いかけて殺せぇー!責任取れぇー!」

このまま混乱が続けば、治安が崩壊しそうだ――そんな時、飛んでいるアイスが、私の頭の上へと三回転しながら華麗に着地。
腰の魔法の鞄から【ドラゴン教】と書かれたプラカードを取り出し、空気を大きく吸って、音を伝える魔法も使って大声を上げた。

「人間の皆ぁー!
そんなに人生が辛いなら、ドラゴン教徒になれば良いんだよぉー!
ドラゴン様は、善行を積んだ魂を天国へと運んでくれるって子供でも知ってるよねっー!
一般常識だよぉー!
お金は改宗した時の銀貨1枚しか貰わないし、とっても経済的に楽で素晴らしい宗教だよー!
さっきの偽の神様とは大違いだよねー!
既に入信した人も銀貨払った方がお得だよぉー!」

人間達は騒ぐのをやめた。
両手を勢いよく上げて

「「「「「ドラゴン様!万歳っー!」」」」」
「「「「「ドラゴン様こそ本当の神様の化身!ドラゴン様の他に神はなし!」」」」」
「「「「「偽の神様が消滅して万歳っー!」」」」」

すぐに銀貨を持って列を作り、ドラゴン教という謎の宗教団体へと加入していった。
……なるほど。
通りでドラゴンが崇拝される訳だ。
アイスみたいにドラゴンの権威を利用して金儲けしようとする輩が、この世界にはきっと多いんだろう。
納得納得、
とても安心した。
…………
…………
…………
…………って納得できるか!
こいつら信仰心ゼロだぞ!ゼロ!
さっきの偽の神様の事ですら、己の目的を達成するための道具としか思ってない扱いだったぞ!
信仰心なさすぎぃっ!
さっき消滅した偽の神様に謝れ!お前ら!

「「「「ドラゴン様万歳っー!死後に天国よろしくー!」」」

――信仰とは、見返りのある愛で出来ている。
死後の幸福のために、人間達は辛い信仰を貫き、欲望を我慢するのだ。
……異世界でドラゴンになった結果、僧侶みたいな悟りを開いてしまった私だった。




神の国 
おしまい




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反ドラゴンな武装勢力に襲われる過酷な旅になると思ったが……アイスの話を聞くには、どうやらこの世界では反ドラゴン派は少数派らしい。
そう思えば空の旅は優雅だ。









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