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10国目  転生者の国なのです 中編
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最初、ボロボロの衣服を着たお爺さんに転生者の国と言われても訳がわかりませんでした。
一瞬、私のような転生者だらけの大魔境を想像しましたけど……そんな国、創作の中にしかないですよね?
だから私は聞き返す事にしたのです。

「お爺さん、転生者の国とはどういう意味なのですか?」

「……ここは輪廻転生を繰り返してきた人間達が住む国なんじゃよ。
前世で良い事をした人間は良い階級に生まれ変わり、悪い事をした人間は底辺階級に生まれ変わる。
その教えを説くヒドウ教に支配され、そうやってこれからも未来永劫、ワシ達はこの地で生き続ける定めなんじゃ」

「……お爺さんも前世の記憶を持ってたりします?」
  
「はっ?
転生したら前世の記憶などなくなるに決まっとるじゃろ?
小さいお嬢ちゃんは何を言いたいんじゃ?」

「いえ、なんでもないのです」

私は首を横に振ふると、その後もお爺さんが話を続けました。
銀貨1枚も貰ったから、できる限り知っている事を話そうと必死なのです。
お爺さんの長い長い内容を一通り聞いて、省略してみたら、この国には独特の身分制度がある事が分かりました。
現世で良い事をしたら来世で良い階級に転生、悪い事をしたら来世で悪い階級に転生するカルマ制度という設定(伝統)を信じ込んでいるのです。

【カルマ制度の階級】
➊僧侶   一番偉い   働かなくても暮らせるニート
❷戦士    
❸農夫・平民・その他職業
❹奴隷            
❺家畜   最底辺    排泄物の掃除・運搬・雑用

この5つの階級による厳しい身分制度になっているらしいのです。
階級が違えば結婚は許されず、生まれた時から選択できる職業が身分によって限られ、底辺階級は上位の身分には逆らう事は許されず、底辺階級に属する若くて可愛い娘達は全員レイプされるから処女がいないとか、お爺さん言ってました。
お爺さんが先ほど、戦士階級の人に苛められても抵抗をしなかったのは、前世で悪い事をしたからひどい目にあうのは当たり前だと、刷り込み教育を受けているせいだったのです。
……ひ、ひどい国なのです。
こんな身勝手な設定の世界観を作り上げて、民衆を支配している時点で頭が可笑しいですよ!

「お爺さん!
そんなのひどすぎなのです!
酷い事を騙されて泣き寝入りをしていたら、子孫も同じ目にあうのですよ!」

「……ワシらは前世で酷いことをしたから仕方ないんじゃよ、小さいお嬢ちゃん。
ワシのおばあさんがレイプされて妊娠したのも、ワシの娘がレイプされたのも、ワシの孫娘が集団レイプされて自殺したのも全部ワシが前世で悪い事をしたせいなんじゃよ」

「お爺さんの娘も前世で悪い事をしたから、レイプされても良いという事なのですか?」

「……そうじゃよ。
悪い事をしたから、現世で地獄のような目にあう。
だからワシは現世では一生懸命働いて貧乏暮らしを貫いた。
きっと来世は僧侶階級じゃな。
ワシが幸せになるのは、来世からでいいんじゃよ」

そう言ったお爺さんの言葉には元気はありませんでしたが、来世にだけ希望を抱いている事が私にはわかりました。
お爺さんは私との会話が終わった後、畑仕事に戻り、鍬を振って地面を耕作しています。
来世で良い階級になるために、善行を積もうと必死です。
今の自分たちの問題から眼を背けている上に、現状を改善する余裕なんて、そもそもこのお爺さんにはありませんでした。
明らかに日々の生活で手一杯なのです。
今時、耕作機械なしで農業とか、不効率すぎるのですよ。







師匠と私は手を再び繋ぎ直して、道を歩き始めました。
こういう国に出会うと、人間の事が嫌になりますが、師匠と手を繋いで歩く内に怒りがスンっと収まります。
でも、すぐに嫌な光景を目にしました。
15歳ほどの若い女の子が、道の遥か前方で10人の男たちに犯されているのです。
綺麗な褐色の肌が男達の体液だらけになって汚い汚い事になって、く、口で言えない状態なのです!
これは明らかに、男達が悪ですよね!悪!
女性がこんな状況を楽しむ訳がないのです。
……光の精霊さん、男達全員を殺す気でビームしてください。
出来れば即死させたいので、ビームは頭に向けてやってくれると嬉しいです。

 ̄   ̄
   ̄     ☚顔
【あの娘、喜んでいるだねー】
【正の感情が大量に流れているんだよー】
【撫でて!撫でて!】

はっ?
集団レイプされている側が喜んでいる?
そんなのありえないのです。
……えと、本当に喜んでいるなら、別にいいのです。
それなら合意でしょうし。世の中には自分から男達の便器になりたいビッチが居て大変なのですよ。
純愛派の私としては、そんな女性とは友達にはなりたくないのです。






私と師匠が道を歩いて、犯されている女性の所へと行く頃には、男達は去り、場には男達の精液が体中にこびり付いた女の子が場に寝転がっていました。
褐色の肌がグチョグチョ。髪はボサボサ。服はビリビリに破れてます。
一応、体の各所に殴られた傷跡があるので、光の精霊さん達に治してもらうのです。
痛いの痛いの飛んで行けー、はい、女の子の怪我は全部消えました。
女の子は眼を覚まして起き上がって、眼をパチパチした後に私と師匠をじっくり見た後に笑顔で

「そ、その格好は戦士階級のお嬢様?!
私を虐めてください!虐めて!
死ぬまで虐めて殺してください!」

地面に頭を下げてジャパニーズ土下座して、こんな事を言ってきたのです。
私が絶句して何も言わなかったので、代わりに師匠がとっても嫌そうな顔をしながら、女の子に話しかけました。

「君はどうしてそんなに卑屈なんだい?
僕は君に酷い事をしないよ?」

紳士な対応をする師匠に対して、女の子は鬼気迫る顔でこう言いました。

「私はたくさんひどい目にあって死んで、早く上位階級に転生したいんです!
だから私を殺すレベルでひどい事をしてください!
もう嫌なんです!家畜階級でいるのが!
毎日毎日、排泄まみれになっで仕事をじても貰えるのは平だいパン一枚!
親が苦労じで学校に通わせでぐれだのに、自治体が与えてくれる仕事はトイレ掃除だげ!
だからひどい目にあって転生するんです!
殺してぐだざい!
出来れば拷問じで欲じいでず!
眼を貫いでぐだざい!
そうずれば来世ば僧侶階級になれまず!
転生じで本当の人生を歩みだいんでず!」

「……やれやれ、狂気の沙汰だよ、この国」

「殺じでよおおおおおお!!!!!
人間扱いざれないのはもうやだああああああああああああああああ!!!
大好きなお姉ちゃんはレイプざれで燃やされて殺ざれるじなんなのごれえええええええええええええええええ!!!
だがら私だけでも幸せになるんだあああああああああああああああああああ!!!!」

師匠は風の精霊魔法で睡眠ガスを生成して、女の子の周りにばら撒き、女の子は眠りにつきました。
この女の子は、現世に完全に絶望して、来世でいい人生を送るために、喜んで酷い目に会っていただけのです。
ほんと、この国は酷いですよ。
こんな国に転生したくないのです。
きっと、社会問題の宝庫みたいな国に違いありません。






師匠と私は手を繋いで、道を歩く事を再開しました。
先ほどの女の子の事を思い出すと、気分はかなり憂鬱になりましたけど、こうやって好きな人と共に散歩できるのは良い事なのです。
でも黙ったままなのは気まずいので、話題を振りました。

「……師匠、なんでこの国はカルマ制度を作ったんですかね?」

「それは簡単だよ、ヴィクトリア。
この国の権力者達がずっと特権階級で居るためさ」

私は黙ったまま、師匠の言葉を聴き続けました。師匠は少し悲しそうなのです。

「特権階級は前世で良い事をしたから、現世で何をやっても良いと思い込む。
下位階級の人々を虐めるのは、その人たちが来世で良い階級につけさせるための善行となるんだ」

「……でも、人間は反旗を翻す生き物ですよ?
いくらそういう世界観を刷り込ませても、カルマ制度そのものが自分達が生きるために不都合なら、大勢の下位階級が集まって反乱を起こしませんか?」

「身分制度というのはね、貧民はずっと貧民のままだと諦めさせ、上位の階級が下位の階級を見下すから以外と実用的なんだよ。
それに複数の身分に別れているとね、反乱を起こす時に身分のせいで団結できないから各個撃破されてしまうんだ。
この国みたいな身分制度は、僕は大嫌いだけど、人間の国をよく見渡すと複数の階級に分かれている事がよくある。
金持ち、中間層、貧困層とかね」

師匠は私が不安なのかな?と思ったのか、私の頭を撫で撫でしてきました。
こういう優しい男性なら、私は何時でもOKなんですけど、未だに師匠は私に手を出さないのです。
やっぱり師匠は奥手なんですかね?






しばらく、この調子で歩くと鉄条網で覆われた大きな街が見えました。
国の真ん中に茶色に汚れた大きな川が流れていて、街全体が汚いのです。 
川岸では、次々と遺体を火葬して、その灰を川に流している光景を見かけました。
川をよく見ると、人間の死体とか流れてます。
うーん、ひどそうな国なのです。やっぱり社会問題の宝庫に違いないのです。
あと、街の中へと入る際に、銃を構えたモヒカン頭の男が、私達に銃を向けて問いかけてきました。

「名前を言え!」

私は指を2本立ててVサイン。
可愛く返事を返しました。

「ヴィクトリア・ジャスティスなのです!」

「はっ?」

モヒカン頭の男は訳が分からないという顔をして、少しすると顔を真っ赤にして激怒しました。
銃を鼻先に突きつけられましたけど、全然怖くないのです。
き、きっと師匠がなんとかしてくれると思います。

「名前を言えと言ったんだ!
名前をな!」

「訳がわからないのです。
ちゃんと私は答えたのですよ?
ヴィクトリア・ジャスティスが名前なのです」

「それのどこが名前だ!
名前というのはな!
掃除婦や戦士、農夫などの階級名が一緒についていて当たり前だろうが!
身分の偽証は法律で死刑だぞ!」

「ヴィクトリア・ジャスティスは、勝利の女神という意味がある可愛い名前なのです。
あなたは失礼すぎなのです!」

「なんだ、お前らは異教徒なのか?
異教徒ならラッキー金貨1枚を払わないと入国を認めん」

どうやらこの国は、名前+階級の1セットで名前を作るのが常識なようなのです。
そうやって階級を区別しているんだなと理解しましたけど、名前に職業が付くのは嫌ですね。
師匠がいつものようにS級冒険者カードをチラッと見せると、戦士さんは急に態度を変えて手でゴマすりをして媚びる視線を向けてきました。
冒険者カードって不思議なのです。

「この国では金持ちの異教徒は上位階級と同じ存在!
どうぞ!どうぞ!お入りください!
ラッキー金貨1枚でいいです!
よく見たらエルフ様じゃないですか!
前世でどんな良い事をしたんすか?
俺は小さいエルフのお嬢さんを尊敬します!
きっと前世で英雄だったに違いありませんよ!」

結局、街に入るためにお金が必要だったのです。
前世で良い事をしたら、現世で報われるというのがこの国の世界観ですけど、私、前世で良い事しましたっけ?
特に犯罪行為はしてませんけど、偉人と呼ばれるほどの事は何もしてないのです。




後編に続く

あとがき

テーマ➊【イ●●のカ●●制度】
小説書くためにインドのカースト制度のひどさを纏めてみた。
http://suliruku.blogspot.jp/2015/02/blog-post_63.html


現実

上位カースト(´・ω・`)最近は下位カーストが力を持っていややー だから俺らが反乱するー

下位カースト(´・ω・`)そんなー

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