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9国目  わらしべ長者の国なのです 中編
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茶碗を貰った後、るんるん気分になって散歩しながら、次の物々交換をしてくる相手の場所に向かいました。
光の精霊さん達にかかれば情報集めに一秒もかかりません。

【こっちに金メッキの酒杯持ってる人いるよ!】
【きっと凄い価値があるよ!】

精霊さんありがとうありがとうなのです。
あとで全員纏めて抱き締めて、ギューと抱擁してあげますよ。
最近、精霊さんとの付き合い方がわかってきた気がしました。
軽く抱き締めてあげると凄く喜んでくれるんですよね。
きっとエルフの体から、精霊が喜ぶ何かが出ているんだと思います。
そのまま精霊さんの案内で幾つかの階段を上り、地下通路を歩き続けると、市民の憩いの広場になってそうな巨大な地下公園に出ました。
天上は20mほどの高さがあり、幅は東京ドームほどのサイズの広大な公園です。
そこら中に木々が生い茂り、この国の住民が運動したり、火縄銃を振ったりして思い思いに過ごしています。
ん?火縄銃?
よく見ると白い着物を着た若い青年が火縄銃を振って鍛錬していました。腰に刀を帯びています。
どうやら、この人が次の物々交換をやってくれる相手らしいのです。
早速、真っ黒の茶器を持ち上げて声をかけますよ。

「あの、この茶器と高そうなものを交換してくれませんか?」

青年は素振りをやめて、ギロリとこちらを鋭そうな顔で睨んで一気に顔を近づけてきて、こ、怖いのです!

「それは利休の茶碗ではないか!小娘!
どこで手に入れた!?」

「さ、さきほど、深い深い地下の通路で手に入れたのです。
この茶碗と高そうなものを交換して欲しいのですよ」

「利休が居た場所を教えろ!」

「高そうなものとこの茶碗を交換してくれたら、教えてあげるのです」

「わかった!
この酒杯を持って行け!
さぁ、利休の居た場所だけ教えろ!」

そう言って、青年が差し出したのは髑髏。
茶器と交換して受け取ってよく見ると額に浅井長政と漢字で書かれた金メッキの髑髏でした。わかりやすく言うと人間の頭蓋骨なのです。
ふぇぇぇぇぇぇ!!!!マジキチですよ!この人!
しかも、喋っているの日本語なのです!

「あ、あの、これは誰の頭蓋骨なのです?」

「俺の義理の弟の髑髏だ。
名を浅井長政といってな。
俺の軍団が朝倉攻めをした時に、いきなり裏切って背後の補給路を断ち切って俺の軍団に酷い目を合わせた屑野郎だ。
この地獄でも、浅井長政にあったからぶっ殺して、こうして生前の世界と同じように酒杯にしてやったのよ」

「ひょっとして、あなたの名前は織田信長?」

「よく知っているな!
さすが俺!
地獄でも知名度が高い!
ガハハハハハハハ!」

自称【織田信長】を名乗る青年は口を大きく開けて大笑いしました。
私は頭が狂って殺人をやった人とは会話したくないので、すぐに自称【千利休】さんが居た場所を教えてさよならさよならしました。
ごめんなさい。自称【千利休】さん。
でも、歴史的に考えれば、当時の自由都市【堺】にいた千利休さんを登用して、茶の湯で有名にしたのは織田信長ですから殺人沙汰にはならないと思うのです。
当時、織田信長は家臣を従えるために高価な茶器を配りまくってましたから、どうか、そのネタで自称【織田信長】さん相手に頑張ってほしいです。
……あと、この自称【織田信長】さん。
歴史知識が中途半端だから、パチモノ臭がとてもするんですよね。
だって、織田信長が浅井長政、長政の父親、朝倉義景の髑髏を杯にして酒を呑んだという有名な逸話って、嘘話のはずですし。
一次史料を見ても、髑髏を飾ってあったとしか書いてなかったらしいのです。

「よぉーし!利休にあったら、わしのために茶器を大量に作らせるぞぉー!」

……自称【千利休】さん。冥福をお祈りするのです。











この金メッキの髑髏の酒杯、欲しい人いますかー?
自称【織田信長】さんが言うには、浅井長政製の頭蓋骨ですよー、価値はたぶんないですー。
精霊さんこの酒盃を欲しい人を探してくれませんか?
探してくれたら、一日中、抱き締めてあげるのですよ?

【あっちに家を手放したがっている金柑禿げ頭がいるよ!】
【金メッキの酒杯を、完全黄金製だと勘違いして交換してくれるかも?】

精霊さん、あとで一日中抱き締めて、撫で撫でしてあげるのです。
次はどんな人ですかね?
精霊さんに誘導されて、地下通路や階段を登ると、高級住宅地らしい場所に出ました。
そこは大きな家が立ち並び、天上までの高さが30mくらいある凄い場所なのです。
贅沢な構造ですよ。一般住宅は通路に壁置いて家にした感じの住宅ですけど、ここは屋根つきの豪邸が丸ごと作られて並んでいるのです。
地下だから雨が降らないのになぜか屋根つきの家だらけ。
精霊さんに誘われるがままに高級住宅地の道路を歩くと、鉄の柵で囲われたプールつきの豪邸の庭に、ハゲ頭のおじさんを見つけました。
どうやら何かに悩んでいるそうです。
早速、柵越しに声をかけましょう。

「あの、すいません。
この酒杯と何か高そうなものを交換してくれませんか?
髑髏ですいません」

金柑ハゲ頭なおじさんは、私の声で振り返って髑髏をじーと見つめた後に動揺して

「ん?なんだ?
浅井長政の髑髏……うわあああああああああああああああ!!!!
やはり信長公が近くにいるのかっ!?
この豪邸をやるから、助けてくれえええええええええええええええええ!!!」

「えと、よくわかりませんけど、この髑髏と高そうなものを交換してくれるって事でいいのですか?」

ハゲ頭のおじさんが豪邸の門を開けて出て、どこかに逃げていきました。
どうしましょう?
この豪邸が私の物になったと考えればいいですかね?
この国は一日中、人工の照明が地下空間を照らしているようですし、師匠と結婚した時、ここに住むのもいいかも?
いや、一番住むのに良いのは空飛ぶエルフの島【バルス】ですから、この豪邸要らないのです。
どうしましょう?
どこかの不動産屋に売り飛ばして金に替えましょうかね?
捨て値でも大金になるでしょうし。

「ぎゃぁー!信長公だぁー!」

「見つけたぞぉー!明智光秀っー!
やはり、この地獄に居たな!
弟や長政や足利将軍……えと、他の裏切り者のように髑髏を酒杯にしてくれるわぁー!
本能寺で俺を裏切って、焼き討ちされた仕返しじゃぁー!」

「いや、それは裏切られすぎた信長公が悪いし、それに本能寺を攻撃する陰謀は秀吉が企んだぞ!?私だけの責任じゃない!
その証拠に当時の私の行動錯乱してただろ!?
無駄な行動ばっかりしてたし!」

「なにっ!?猿が俺の暗殺を企んだだとっ!
なら光秀を殺した後に、あいつも見つけて髑髏の酒杯にしてくれるわぁー!」

「ぎゃぁー!」

なんか、遠くで何か酷い事が起きているような……き、気のせいですよね。
自称【織田信長】と自称【明智光秀】がこの広大な地下迷宮な場所で出会って殺し合いになるなんて、凄く低い確率なのです。
エルフ耳のせいで、雑音が聞こえすぎて、こんな内容になってしまっているだけに違いないのです。
この長い耳は、音が聞こえすぎなのです。
それにしても、二人共中途半端な歴史知識を元に行動してますよ。
明智光秀が起こした本能寺の変で、豊臣秀吉が大軍引き連れてすぐに京都に戻ってきたから、豊臣秀吉が怪しいんでしょうけど、それは乱暴すぎる推理だと思うのです。
当時、中国の毛利軍と対峙していた秀吉軍ですけど、主君【織田信長】が暗殺される【本能寺の変】が起きると全く予想してなかったから、京都に戻るための【中国大返し】という強行軍で軍勢がばらけて、戦場に1万余しか到着できなかったのです。
その後、【織田信長】が生きていると嘘をついた宣伝合戦に勝利して、摂津の国人衆1万と、四国遠征軍残党5千を吸収して明智光秀を討ちましたけど……秀吉の陰謀だったら、もっと準備してから上手く撤退して光秀殺してますよ。
だから、あの人たちは、自分の事を歴史に名前を残す偉人だと思い込みたいだけの中二病患者だと思うのです。
偉人になり切りたいなら、もっと歴史を勉強すべきだと思うのです。






さて、次はこの豪邸と高そうな物を交換してくれる人を探すとしますかね?
わらしべ長者なら、このまま豪邸に住んで結婚してハッピーエンドですけど、人間の国の家なんて要らないですし。



テーマ@【日本の歴史   戦国時代】
http://suliruku.futene.net/1uratop/rekisimono_Nihon.html


後編に続く


あとがき

(´・ω・`)日本人じゃないと、おそらく楽しめない内容でそうろう。

なんで信長の弟と足利将軍も髑髏の盃になったの?→ この世界で出会って信長が切り殺して作ったから。


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●物々交換の国なのです

ヴィクトリアが光の精霊魔法の修行ついでに、お金稼ぎ。
具体的には、銅貨1枚で購入した物を、光の精霊魔法で欲しそうな人を探して、どんどん高価な物と交換していく。

銅貨 ☛ 美味しい棒 ☛ ガキ大将☛センベエの入った袋、おいしそうなのです ☛ 

織田信長にそーすせんべえ プレゼント

織田信長から浅井長政のしゃれこうべ(金箔つき)の酒盃をもらう

●明智光秀が逃げたいから、家と交換してくれる。⇒ 織田信長やってきて殺し合いになる

● でも、旅に持っていけないよね? ☛  

他国から引っ越してきた豊臣秀吉に売る。
1兆ジンバプエートル ☛ あ、その国、セルフ自己経済制裁して、紙幣が紙キレになったよ。☛ そんなー

●異世界でわらしべ長者ならぬ、紙キレ長者が産まれた国



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