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7国目 レベルとステータスの国【地獄】(100億人の屍山血河で彩られた地獄と闇の魔王ザ・デヴィル) その1
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キリスト教の地獄とは? 一度入ったら二度と救済されないゴミ箱です。詳しい事は分かっていません。

イスラム教の地獄とは? キリスト教の地獄と似たようなものです。

仏教の地獄とは? 生前の罪に応じて色んな地獄が豊富に用意されています。基本、罪人を殺して蘇生して殺してを永遠に等しい時間繰り返すのが必要最低限の受けるべき罰なのです。罪を償うと転生できます。

現実は? 地獄があちこちにあります。


〜師匠視点の話なのです〜


僕の名前はマクシムという。
人間なら20代後半の青年くらいの外見に見えるだろうが、こう見えても900年近い歳月を生きるエルフの男だ。
世界トップクラスの風の精霊魔法使いなのだが、僕にはとっても残念な所がある。
それは好きになった娘は、僕を振ったり、逆に僕から振ったりして、人生を共に歩めるパートナーが未だに居ない事だ。
最初に好きになった娘が、祖母のラッキーだった事から僕の残念っぷりが分かるだろう。
当時の僕は、金髪碧眼の小さい少女ラッキーを実の祖母だと知らずに一目惚れをして、恋人になった気分で500年間も世界中を一緒に旅をした。
ラッキーという少女はとても無邪気で、何千年も生きているはずなのに童女のような娘だった。
頭に妖精さんという謎の生物を常に載せていて、精霊魔法を全く使えない不思議な娘だったが、そんな事なんかどうでもよくなる程に僕は惚れていたんだ。
ラッキーが実の祖母だと発覚した後も、僕はそんな事を気にせずに熱烈にポロポーズをした。今となっては思い出すのも恥ずかしい黒歴史だが、恋というのは人を盲目にさせる効果がある。
そして、この恋愛の結果は見事に祖母ラッキーに振られて玉砕。
500年の片思いが粉々に砕け散って、10年ほど空に浮かんで何も考えずにぼーとして暮らした。
初恋とは実らないのが普通だって事は、人間の世界の文学で知っていた事だけど、それを現実で体験する嵌めになった僕は人間の世界で言う引きこもりニート同然の暮らしを続けたんだ。
僕の場合は、風の精霊が保護者だと思ってくれたら良い。
人間だったら母親が引きこもりの部屋までご飯を運んでくれるらしいが、僕の世話は風の精霊が見てくれるからね。
ほんとに精霊達は良い奴らさ。
こんな駄目男の面倒を見てくれる時点で、彼らには返せないほどの恩がある。
【新しい女にチャンレンジしろよ!マクシム】【女なんて幾らでもいるさ!】
【エルフ娘少ないから競争率高いよ?】【元気出せよ!元気出せ!】
【あの女はやめとけ、悪夢の皇帝瞬殺した化物】【あれ、エルフじゃない、もっと別の何か】
【神々とも魔族ともエルフとも全く違う生物】
この時、ずーと風の精霊達と会話していたおかげで、半径100km以内にいる風の精霊達にお願いできるようになって、精霊魔法の腕が上達したのは隠したい秘密だけどね。
精霊が冗談を言えるユニークな感性の持ち主だと、この時気づいたよ。
あんなにちっちゃくて可愛らしい祖母が、悪夢の皇帝を倒せる訳ないじゃないか。






失恋のショックが完全に抜けきって、次の素敵な娘と出会ったのは、今から200年前。
その娘の名前をアリューカという。
人間なのにエルフのように膨大な炎の精霊達に好かれた可愛らしい紅髪紅眼の少女だった。
世界屈指の紛争地帯【イースラァム国】の奴隷市場で性奴隷として売られていたアリューカとの出会いが、僕と彼女の馴れ初めだ。
当時のアリューカは10歳、精霊達に好かれてるから良い人間だろうと思って、大金を払って僕は彼女を買い取った。
アリューカは最初、僕の事を小さい娘が性的に大好きなロリコンだと罵っていたが、全く手を出さずに炎の精霊魔法の扱いを教えて一緒に旅をしている間にロリコン疑惑が解けて、彼女はどんどん僕に懐いて……いつの間にか、その好意が愛情へと発展していた。
5年間の旅の間、何度も何度もアリューカに結婚を前提とした告白をされ、時には夜這いをされた事もあったが、僕はそれを断った。
僕としてはアリューカみたいに利発で可愛らしい娘なら、結婚してもいいかな?と思ったが、アリューカは短命な人間、僕は悠久の時を生きるエルフ。
考えなくても、最後は悲惨な末路が待っている。
だから、僕はアリューカの好意を拒絶して振ったんだ。アリューカには僕よりも相応しい人間の男性がいると思ったしね。
何度も振られてもアリューカは平気そうな顔をしてたけど、内心では苦しんでいたと思う。
僕はきっと酷い奴だ。将来的に不幸になりたくないから、今ある幸福を壊してしまう最悪な奴だ。
アリューカは僕の事をあれだけ愛してくれたのに、僕は不幸を恐れる臆病者だから答える事ができなかったんだ。
そして、アリューカとの素敵な旅は、とある国を訪れた際に終わりを告げる事になる。
偶然、アリューカがその王国のお姫様である事が発覚したんだ。
10年前に悪い悪い大臣が魔族と結託してアリューカをお城から誘拐して、奴隷として海外の紛争地帯に売り飛ばし、こうして10年後に故郷に戻ってきたアリューカの命を大臣が狙ってきた騒動のおかげで、お姫様だと分かったのさ。
そこからの展開がすごくてね。
大臣と結託した魔族が当時の魔王の1人で、アリューカの故郷を使って世界を混乱に陥れる計画を練っていた事を僕達は知り、その結果、なりゆきで僕とアリューカは魔王の1人と戦う事になったんだ。
たった2人で魔王と戦うのは幾ら何でも無謀だったが、30分ほど逃げ回りながら戦っていると、空から空が見えないくらいの膨大な数の風の刃が降ってきて、魔王に直撃してそのまま魔王を消滅させて戦闘は終わりを告げた。
当時の僕には、どうして風の刃が大量に空から降ってきたのか訳が分からなかったが、今なら分かる。
風龍王の仕業だったんだなと。
僕の人生は、僕がそうと知らずに、風龍王によってコントロールされていたんだなと、天国へと来てようやく分かった。
なぜなら、ヴィクトリアに聞こえないように空間を遮断して言ってきた風龍王の言葉は

【おい、童貞エルフ。
さっさと結婚して子孫を残せ。なぜヴィクトリアを押し倒さない?
妾が手間暇をかけて、若いエルフの女と巡り会えるようにしたのだぞ?】

風龍王がこんな奴だとは思っても見なかった。
まるで、人間の男女にお見合いを強引に勧める親切なおばさんだ。
ある意味、親近感を感じるが僕の中の神のイメージが粉々に砕け散ったよ。

【しかも、ヴィクトリアはまだ13歳だぞ。13歳。
今ならお主の理想通りの女に育てる事が出来るぞ?
どうだ?リアルプリンセスメーカーをやらないのか?
こんな素晴らしい好機を掴めるエルフの男は、そう滅多にいないぞ?】

「は?13歳?
それはありえない。
あの外見なら少なくとも100歳は過ぎてるはずだ」

【いいや、ヴィクトリアは13歳だ。
どうして、あやつが食べ物を食べる性癖を持っていると思う?
それは元人間だからだ。
普通の環境にいる人間は他者を食べないと生きていけない。
ヴィクトリアは人間からエルフになる奇跡を起こした存在なのだ。
お主も有名な逸話を知っておろう?
精霊に愛されすぎると、人はエルフになる事があると……】

なんだって?
ヴィクトリアの年齢が本当に13歳?
風龍王の言葉が本当なら、確かにヴィクトリアが恐ろしいくらいに世間知らずな事に説明がつく。
そんな幼い娘に手を出したら、僕は完全に犯罪者じゃないか……。

【どうした?
童貞エルフ。
まさか900歳近いお主が、13歳の少女に手を出すのは犯罪だと思っておるのか?
確かに人間の先進国やお主の故郷でなら、それはロリコンという名前の犯罪であろう。
逮捕されて社会的地位を失う罪であろう。
だが、妾がそれを許す。
そろそろ結婚して幸せになるがいい。
神公認だぞ?】

「……なぜ、風龍王様は僕にこれほど親切にしてくださるので?
こう言っては何ですが、ヴィクトリアには僕よりもっとふさわしい若いエルフの男性がいるのでは?」

【その問いに答えるのは簡単だ。
お主が幸せになれば、正の感情を大量に撒き散らすであろう?
妾はそれを食べたいのだ。
それにお主は、風の精霊魔法を極めたと言ってもいい術者。
二人の間に産まれる子供は、魔族に対抗するための強大な戦力となり得る。
全ては世界の存続のため。
そして子孫を残すのは、全ての生命に課された義務である。
義務を放棄する事を妾は許さぬ】

僕は隣にいるヴィクトリアを見た。
音が遮断されているせいで、風龍王とどのような会話をしているのかは不明だったが、驚いたり凹んだりして、見ているだけで可愛いと思う仕草をしている。
金髪の頭を撫で撫でしてあげたくなる小動物のような可憐さが、若すぎるが故のヴィクトリアの特徴なのだろう。
そして、風龍王は僕がこの娘に手を出して、結婚する事を望んでいる。
やれやれ、本当にこれじゃお見合いを強引に勧めてくる親切なおばさんだよ。風龍王という奴は。
これほどまでに親切だからこそ、他者から神と呼ばれるのかな?

【ああ、そうだ。
お主に他にもう一つ別件があったのだ。
あと1時間もすれば、この天国の遥か上空に闇の魔王がやってくる。
負の感情で埋め尽くされた地獄とともにな】

「は?」

【お主の役目は、この天国に滞在しているマリウスと一緒に地獄へと突入し、闇の魔王を倒す事だ。
突入するためのサポートは、妾と妾の下僕達と、周辺の国々の軍勢がやる予定になっておる。
何か言いたい事はあるか?】

「……僕がそれを拒否したらどうなるので?
幾らなんでも、いきなりそんな事を言われても大人しく従えませんね。
それになぜ、弟がここにいるんですか?」

【いいや、お主は必ず、この役目を引き受ける。
なぜなら闇の魔王という魔族の正体は、お主が200年前に振った人間の女アリューカだからだ】

なんだって!?
そんな馬鹿な!?
精霊にあれほどまでに愛されていた彼女が魔族になった!?

【アリューカはお主と別れた後、悪い大臣を一族郎党全員処刑して、人間の国の女王となったが、結局は圧倒的な絶望に飲み込まれ、魂に寄生していた魔族と同化し、今では何百億人の罪もない人間を遊んでなぶり殺す魔王と成り果てしまった……これはお主の責任だ。
だから責任を果たせ。闇の魔王を殺すのだ】

僕には訳が分からなかった。
なぜ、それが僕の責任になるのか?
魔族になる前のアリューカを殺せとでも風龍王は言いたいのか?
当時の僕は魔族が魂に寄生していた事すら、知らなかったのに?

【お主、訳が分からないという顔をしておるな?
なぜ、アリューカが最低最悪の魔王になったのがお主のせいなのか?
それは簡単よ。
アリューカという人間の娘は、炎の精霊に愛されすぎてエルフになる寸前だったのだ。
お主がアリューカの好意を受け入れて居れば、アリューカは正の感情を大量に解き放ってエルフになって完璧なハッピーエンドとなり、更に更に大量の正の感情が産まれるはずだったのに、結果は逆だ!
アリューカはお前に振られた後に、心を暗黒に染め上げて魔王と化し、何百億人の人間をなぶり殺しにして地獄を作り上げた!
それゆえに、お主には責任をとって闇の魔王を殺す義務がある!
お主はアリューカの幸福になる権利を奪ったのだ!】

風龍王の口調から激しい怒りを感じた。
本当、この世界はどうしようもない。
そして、僕もどうしようもない奴だ。
そんな素敵な奇跡が起きると知っていれば、僕はアリューカと結婚していたのに……ん?
ちょっと待て。
可笑しい。
風龍王が言った内容はまるで……アリューカと僕の出会いと旅すら、神々の企みだったというのか?というほどに知りすぎている。

「……風龍王様。
あなたのセリフから察するに、僕とアリューカとの出会いは、あなたの企んだ事だったのですか?」

【ああ、そうだが何か?】

「 何 の た め に ?」

【先ほど言ったであろう?
お主が幸せになれば、美味しい正の感情が大量に発生し、お主の子供が生まれれば、魔族に対抗する強力な戦力になり得ると。
現実は妾の理想通りにゆかなくて困ったのぅ。
まさか夜這いされても、女を抱かないヘタレだとは思わなかったぞ】

「……風龍王様。
あなたが正直者だという事はよくわかった。
だが、僕はあなたの玩具じゃない。
これ以上の干渉はやめて欲しい」

【だがっ!断る!
妾はお主達がもっともっと幸せになる姿を見て、その正の感情を食べたいのだ!
お主と比べると、弟のマリウスと、その妻イエニーはいいのぅ!いいのぅっ!
お互いに相手を思いやり、愛し合う理想的なカップル!しかも幼馴染だから思い出を小さい頃から共有した深くて濃厚な愛!
その感情と来たら至上の美味!
こういう幸せなカップルが、エルフに次々と生まれれば、妾は強大な力を得て、この世界にいる全魔族を打倒し、この世界に平和を齎す事ができる!
それゆえにお主のその願いは聞けぬ!
嫌なら、お主の力で勝手に幸せになるがよい!
そうしたら妾は干渉をやめるであろう!」

やれやれ、本当に困った神様だ。
なら、せいぜい幸せになってやるさ。
ヴィクトリアを嫁にするかどうかは別としてね。

「師匠は、風龍王様とどんな会話をしていたのですか?」

ん?気づいたら、僕とヴィクトリアの間にあった風の結界がなくなっていた。
ヴィクトリアはいつものように、呑気そうな口調で話しかけてきている。
僕はやっと、彼女の綺麗な金髪の頭を撫で撫で出来るのが嬉しくて、左手で触れて撫で撫で。
ああ、なんだろう。この幸福感。
僕はヴィクトリアの髪を触れると気分が安らかになる。

【美味しいぞ!美味しいぞ!
お主の幸せな感情美味しいぞ!】

だが、風龍王のセリフでその気分が台無しになった。
そんなに僕の幸せな感情を食べたいなら、黙っていてもらいたい。
風の精霊達の元締めなのに、場の空気を全く読んでいない。
僕は、ひょっとしたら魔王アリューカとの戦いで死んで、ヴィクトリアの髪を楽しむ最後の機会なのかもしれないのに、このウザサと来たら大変だ。
こうなったら、風龍王を完全に無視して会話しよう。

「……ヴィクトリア。
僕はこれから闇の魔王のいる地獄へと突撃しないといけない。
君はここで待っていてくれるかい?」

「え?師匠も戦うのですか?」

ヴィクトリアはひどく悲しそうな顔になった。
それもそうだろう。
僕は彼女の保護者のようなもので、彼女は13歳の幼い子供だ。
彼女を安心させるためにも、いつものように髪を撫でる動作を続けながら

「ああ、そうだよ。
僕はこれからマリウスと一緒に地獄へと突入する。
だが、安心してくれ。
必ず僕は生きて帰る。
そうしないとヴィクトリアは悲しむだろ?」

「……本当に大丈夫なのですか?」

「安心してほしい。
僕は世界一の風の精霊魔法使いさ。
ヴィクトリアには言ってなかったけど、200年前に魔王を1人倒しているし、今回は風龍王様の支援つきだからね。
きっと何とかなるさ」

「……わかったのです。
私、師匠の帰りをここで待っているのです」

ヴィクトリアは未だに、僕の身を案じて不安そうだった。
絶対、僕は帰ってこないといけない。
アリューカの時の二の舞はごめんだ。
僕のせいで、僕を好きになってくれる娘を二度と不幸にしてはいけない。
彼女の顔に僕の顔を近づけて、頬っぺにチュッと口づけをした。
ヴィクトリアは酷く混乱しながら、顔を真っ赤に染め上げて初々しくて可愛らしい。

「え?し、師匠?」

「僕の大好きなヴィクトリア。
僕が死んだら君は困るだろう?
だから、絶対死なないのさ」

どうだ?風龍王?
好きだと言われて、顔を真っ赤にして喜ぶヴィクトリアの正の感情を食べて美味しいか?
僕が生きて帰ったら、彼女はもっと喜ぶぞ?
お前の思惑に乗るのは気に入らないないが、幸せにな……ん?

パシャッパシャッ

カメラのシャッター音と光が僕とヴィクトリアを二回照らした。
カメラを構えている持ち主はイエニー。その隣にニヤニヤ笑っている我が弟がいる。
イエニーはとっても良い笑顔を浮かべて

「あらあら?
二人共結婚までゴールイン?
マクシムお兄様にも春がきましたわー!
喜んでいるヴィクトリアちゃん最高に可愛いですわー!
私、幸せですわー!」

「よぉ、兄貴。
とっても良い雰囲気だったな。
結婚は、とってもいいぞ?」

やれやれ、どうやら風龍王がイエニーと弟の周りに光学迷彩を展開した状態で、最初から二人はこの部屋に居たようだ。
幸福な感情を食べるためなら、風龍王はなんでもやるようだね。
本当に困った神様だ。
親戚のオバサンらしい厳しさや優しさをそこに感じて、親近感が湧いてくるよ。
種族が完全に違うのにね。







天国を出て、空を飛んで遥か天空にある地獄へと突入するまでの過程は、様々な事が起きたが僕はそれを省略しようと思う。
文章が延々と長くなって読者がうんざりするし、僕は弟のマリウスを背中に載せて、ひたすら攻撃を回避したり、マリウスが炎で迎撃したりして、十時間ほど地獄に突入する事だけを意識していたからね。
周りの戦況を細かく見る余裕なんてほとんどなかったのさ。まともに戦えば僕でも苦戦する将軍級の魔族が最低でも20人は戦場に居たようだしね。
ただ、一瞬だけ風の精霊を使って把握した地獄の全長は、天国の1000倍近い面積の岩の塊だったと言っておこう。
遥か天空に重力を無視して謎の力で浮かび、後方に炎を噴き上げる巨大なブースターを備え付け、炎と土の精霊達が守っている宇宙要塞のような代物だった。
この時、僕はどうして魔族を嫌う精霊達が、闇の魔王に協力しているのかさっぱり分からなかったが、戦艦が入れそうなサイズの地獄の港口の一つが開いていて、港口の上に設置されている巨大な電子掲示板に【どうぞお入りくださいマクシム師匠 by 貴方を愛した女】と文字が表示されていた。
どうやらアリューカは魔族になっても僕の事をちゃんと覚えているらしい。
風龍王が僕を地獄に突入させようとするのは、人間の頃の意識を持つ魔王の隙に付け込ませるためだったのだろう。
これそのものが罠かもしれなかったが、ここ以外は強力な精霊魔法による防衛網があったから、僕とマリウスはすぐにそこから突入し、次々と開く金属製の巨大な扉をくぐり抜け、その先で見た光景は……地上と同じように人工の建築物と自然が延々と広がっていて、まるでSF作品でよく見るスペースコロニーだった。
そこには大空があり、雲があり、川があり、湖があり、山があり、人工太陽があり、人々が生活を営んでいる。
僕は激しく動揺した。
地獄だと聞いたから、てっきりあちこちに死体が転がり、苦しむ人間達の悲鳴が響き渡る空間だと思っていたのに、想像していたよりも遥かにまともだったんだ。
僕の背中に乗っているマリウスも僕同様に驚いて戸惑っている。

「兄貴、ここ本当に地獄か?
地獄の割には負の感情は地上と同じくらいだぞ?」

「……ああ、風龍王が言うにはここは地獄のはずなんだが……これは一体どういう事なんだろうね?」

「風の精霊達による探知だと、どうなっているんだ?」

「広範囲を索敵しても、地上の国よりも平和で安全な国にしか見えない。
違う所は虫の類が一切いない事だね」

風の精霊達による広範囲索敵でも、大勢の人間が平和的に暮らしていて、どう見てもここは地獄とは思えなかった。
一部、他の都市に行くための通路らしき場所があるが、完全に密閉されて封鎖されているから、そこから先は風の精霊達では探査するのは無理だから、地獄があるとすればその先にあるのかもしれない。
そして、人間達の頭の上に【Lv15 織田のぷなが】【Lv29 ヒットラァー】【Lv80 イーエス】【Lv121 ブッタ】と文字が表示されている所が唯一の可笑しい所だが、それ以外に可笑しい点は特にない。
これの何処が地獄だ!風龍王!
よく考えたら精霊達がこの要塞の防御に協力している時点で、闇の魔王は世界を滅亡させる気がないぞ!
それ以前に、魔王倒したら、きっと宇宙要塞が惑星に落ちてきて、天国と一部の地底国家を残して世界滅亡クラスの熱エネルギーと衝撃波が発生するぞ!
さてはそれが狙いだな!
世界を完全統治するために負の感情を出す地上の人間ごと全生物を皆殺しにする気だろ!
そんでもって、工場で人間を大量生産して夢の世界で幸福にして、全世界をあの自称天国だらけにする気だな!
なんて性悪な神様なんだ!



その2につづく(全4話後世)


テーマ@【レベルとステータスが表示される世界は、なろう小説のテンプレ】
http://suliruku.blogspot.jp/2014/12/blog-post_28.html

テーマA【隕石落としはロマン。妾が管理してない人間は全員しんじゃえー by 風龍王】


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●風龍王。マクシムに語りかける。
@さっさと結婚しろ。ヴィクトリアをてごめにしろ。
A200年前に振ったアリューカの二の舞にするつもりか?
B闇の魔王になったぞ
Cお前がここに来たのは、闇の魔王の弱点を突くためだ、そう、人間だった頃の記憶を刺激して、隙を作れ。
この周辺の国々の軍隊は、妾の配下よ。
不安がるヴィクトリアを抱きしめて出撃

●闇の魔王の地獄に突入。
そこには100億人の屍があちこちに転がり、絶望を食べてゆっくりしている魔族がいる。
Aアリューカ、闇の魔王になった過去を騙る。具体的には国民に夫を殺され、4人の子供たちを人質に取られて2年間、輪姦生活。2年後、子供達は既に国民たちになぶり殺しにされた事を知り、魂に寄生していた魔族と同化。人間としての意識を残したまま闇のまおうとなる。

●師匠、マリウスと炎と風の合体攻撃、最大威力で闇の魔王を焼き尽くす。闇の魔王、やっと子供達の所へ行けると喜んで死亡。
@師匠、ヴィクトリアの元へと帰ってくる。その笑顔に僕は癒された。
おしまい
次は闇の魔王の故郷へと墓参りして、過去語り。

ヴィクトリアを婚約者にするかどうかはまだ未定

●レベルアップの国のプロットで地獄作ればいいん


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