鬼人掃討作戦に熱狂する民衆の狂気で頭がクラクラして、しばらく屋上でスカートを手で抑えてヘタレ込んでいると、師匠が空を飛んでやってくる姿を見ました。
生きて帰ってきてくれた。
これだけで嬉しすぎて涙がでそうだったので
「師匠っー!寂しかったのですー!」
「やれやれ、その様子だと、どうやらひどい目にあったようだね?
何があったんだい?」
私から師匠に抱きついて、その温もりを感じてゆっくりしました。
最近、師匠に精神的に依存している気がしますけど、私は師匠なしだと酷い死に方して人生終了しているだろうだけにこれは仕方ない事なんです。
この恩はあとで返すとして、今はこの国の狂気っぷりを師匠に報告しないといけないのです!
「師匠!
この国の人達ひどいんです!
極悪犯罪者の子孫には人権がないとかいって、無人兵器で皆殺しにしてたんですよ!
きっと魔族のせいで歪んだに違いないです!」
「いや、それは昔からのこの国の伝統だからね。
魔族のせいじゃないんだ。ヴィクトリア」
「え?」
「僕が思うに犯罪を抑止するために作られた伝統だね。
子供や孫の人権まで剥奪されるという恐怖で、犯罪を減らそうとする取り組みだと思うんだ」
「し、師匠はそれに納得するんですか?」
「……ヴィクトリア。
人間の国は理想論だけじゃ運営できないんだよ。
国を纏めるために、特定の少数派を最下層階級に叩き落として差別したりとか、よくある事なんだ。
とても悲しくて辛くていずれ改善しないといけない事だけど、それを忘れないで欲しい」
師匠が私を安心させるためか、頭を撫で撫でしてきました。
なぜでしょう。
元人間の私が、エルフの師匠に人間の国について色々と言われるのは可笑しい気がしたのです。
やっぱり人生経験の差って奴ですかね?
生まれ育った日本も、昔は部落という名前で階級差別が残っていて酷かったと聞きますし、異世界ならこういう理不尽な事も当たり前だと思って生きていかないといけないんですか?
……今は師匠に抱きついて、その温もりだけあればもういいのです。
この国の人間について考えるのは疲れました。
きっと周辺国もこんな感じでしょうし。
あー、甘えられる大人がいるのって、なんて贅沢なんでしょう。
私が師匠に女として見られてない理由が最近分かってきたのです。
私って師匠から見れば、人生経験が全く足りてない子供なんですよね。
……何時か、師匠に大人として認めてもらいたいなぁ。
師匠の温もりで心を落ち着かせた私の手を、師匠は握って国の外へと向けて歩き出しました。
どうやら、この国にこれ以上、私を滞在させるのは精神的に良くないと、師匠は判断したようです。
宿代が勿体無いですけど仕方ないですよね。
私、あれだけ取り乱して精神的にガタガタになってしまいましたし。
あ、そうだ。まだ聞いてない事がありました。
「師匠、この国に居た魔族はどんな悪事を企んでいたんですか?
さっきまで強い魔族と戦っていたんですよね?」
「相手と会話できるような易しい戦いじゃなかったから、魔族の口から直接聞けなかったけど、だいたいの想像は付くよ。
恐らく、この周辺国で使ってる無人兵器で、世界を混乱に陥れる計画を企んでいたんだと思う。
そうすれば魔族を成長させる負の感情が大量発生して、魔族の戦力がさらに増強されるという訳さ。
あとはまぁ、魔族のせいか分からないが、無人兵器の中身は……いや、これはよそう。
子供に話す内容じゃないからね」
「私ならもう大丈夫なのですよ?
知らないままにした方が、恐らく駄目だと思うのです」
「本当に大丈夫かい?ヴィクトリア。
かなり倫理観に問題がある内容だよ?」
う、なんかホラーな話な気がして怖くなりました。
でも、子供扱いされるのは嫌です。
「この国の人間を人間扱いせずに虐殺する倫理観以上に酷い問題なんて、そうはないから大丈夫なのです」
「なら、話すとしよう。
この国の無人兵器はね。
中身が人間の脳味噌なんだ」
「はい?」
これまたSFホラーですけど、鬼人と違って、実際に内容を目にしてないから、まだ耐えられました。
「恐らく兵器に使われる脳味噌は、周辺国の犯罪者やその子供達の頭から取り出した物だと僕は思う。
犯罪者に人権を認めてないんだ。
その脳味噌を兵器パーツとして運用しても可笑しくはないのさ」
「でも、人間の脳味噌ってそんなに高性能なのですか?」
「僕は技術者じゃないから、詳しい事は分からないけど、今の科学では自分で完全に判断できる人工知能を作るのが難しいらしい。
その点、人間の脳味噌ならそこらへんにあるから、供給に困らないんだ。
きっと犯罪者の脳みそを洗脳して、兵器として使えるようにしているんだと思う」
「……そうなのですか。
人間、相手を人間じゃないと思い込めると、どんな恐ろしい事でもできるんですね」
師匠が黙りました。
私が辛辣な事を言ったせいです。
あー、師匠と会話してもっと落ち着きたいのにこれは酷いのです。
さっさと国を出て、いつものように仲良く散歩したいですね。
私の大好きな自由な散歩は国の外にあるのです。
……数時間歩くと、国の出口が見えてきました。
昨日会った青年兵士さんが複数の人型ロボットと一緒に門番やっています。軍事オリンピック見ずに仕事しないといけないとか、ある意味大変ですよね、この人も。
労いの言葉をかけてあげないといけない気がしました。
ここでは私と師匠の常識が非常識なんでしょうし。
「お仕事、ご苦労様なのです」
青年兵士は私の声でこちら側を見て、訳が分からないという顔を浮かべて
「おや?
マクシムさん達は国を出られるのですか?
まだ軍事オリンピックは二週間くらい続きますよ?」
「ちょっと急用でね。
僕達は、この国を旅立たないといけなくなったんだ」
「残念だなぁー。
我が国の無人兵器を作っている軍需工場の見学も出来たりしてイベントが一杯なのに勿体無い」
え?軍需工場を見学?
無人兵器の中身は、人間の脳味噌ですよね?
それ、普通は知られてはいけない軍事機密なのでは?
私がそれを知っている事がばれない程度に、青年兵士さんに聞いてみるのです。
「あの兵隊さん。
無人兵器の中身って、どんな高性能な人工知能を積んでいるのですか」
「計算する役割は機械、判断する役割は人間の脳味噌が担当して、お互いの得意分野で苦手分野を補う形のハイブリットな人工知能ですよ。エルフのお嬢さん」
「はい?人間の脳味噌?」
「厳密に言うと、工場で大量生産した脳味噌です。
気持ち悪いかもしれませんが、感情を持たないように調整して作ってあるので、人間のように苦しまないし、生体パーツとして最適なんですよ。
我が国では、無人兵器に搭載する脳味噌を【生体脳】と呼んでいますね」
「それをなぜ無人兵器と呼ぶのですか?
人が中に入っているじゃないですか」
「生体脳は人間じゃありません。
産まれた時から人権を与えれず、兵器として作られた存在だからです。
だから、生体脳を搭載していようが無人兵器は無人兵器なんです」
「わ、わかりましたなのです」
うーん、人間として生きた犯罪者の脳みそを使っているよりもいいんですかね?
よく考えたら、高度に発達した機械の人工知能も、人間の脳味噌も思考を持った時点で、人間と変わらないような……ややこしいから、もういいです。
さっさと、この国から出る事にします。
トンっトンっ
ん?師匠に肩を軽く叩かれました。
一体なんでしょう。
後ろを振り返ると、そこには宿屋のオバサンが走ってこちらに向かってくる光景でした。
そのオバサンを、5人の青い服を着た警察官が後ろから追いかけています。
「そこの鬼人!おとなしく捕まれー!」
「逮捕する!」「待てー!」
「鬼人っー!」
えと、どうすればいいんでしょう。
警察官の言葉が真実なら、あの宿屋のオバサンは、極悪犯罪者か、もしくはその子供や孫って事ですよね。
オバサンを助けると、この国を敵に回す事を意味し、師匠に迷惑がかかるのです。
こうやって考えことをしている間に、オバサンは警察に取り囲まれて、両手に手錠をガシャンっ!と嵌められて、どこかへと無理やり連行されようとしていました。
無駄かもしれませんが、この青い制服着ている警察官さんに話しかけて何とかするしかないです。
「あの、警察さん。
その人はどのような犯罪をしたのですか?」
「ん?観光客か?
こいつの300年前の先祖が、凶悪な大量殺人鬼シャックリ・リッパーな事が判明したのだ。
だから貴官達が逮捕したんだ」
はっ?
「あの、今、何年前の犯罪者と言いました?」
「300年前の凶悪な大量殺人鬼だ」
「うーん、幾らなんでもその子孫まで逮捕するのはやりすぎなのです。
300年前って事は、逮捕される容疑者がたくさんいるのでしょう?」
「子孫の数は戸籍を照合した結果32768人だ。
だが法律は守らなければならない。
さすがに私達も法律に欠陥があると理解しているが、法律改正には時間がかかるから仕方ない。
それが法治国家というものなんだ。エルフのお嬢さん」
警察のその言葉に、宿屋のオバサンが怒りました。
顔を鬼のように憤怒に染めあげてます。
「ふざけるんじゃないよ!
アタシが何をしたというのさ!」
「法律でそう決まったんだ。諦めろ。
さぁ、警察署に行くぞ。鬼人」
「ふざげるなぁー!
私は人間だよ!
鬼人なんかじゃない!
あんたと私のどこに違いがあるっていうのさー!
アデブッ!」
宿屋のオバサンが必死に暴れましたが、警察官5人にボコボコに殴られたり、蹴られたりしてすぐに動かなくなりました。
酷いです。光の精霊魔法で怪我を治してあげたいのです。
でも、助けたら犯罪者を助けたという事になって師匠に迷惑がかかります。
師匠も嫌そうな顔をして人間達を見ていて機嫌が悪いです。
そんな中、青年兵士は笑いながら、全く場の空気を読まずに師匠と私に話しかけてきました。
「アハハハハ、この国に悪い印象を持ちましたか?マクシム様」
「ああ、そうだね。
久しぶりに訪れたら、こんなにも酷い国家になっているとは思わなかったよ。
まさか300年前に犯罪者の先祖が居たからという理由で、3万人の人権を剥奪するなんてね。
社会制度として考えてもやりすぎだと撲は思うよ」
師匠は無表情な怖い顔で返しました。
でも、青年兵士は笑っています。
「法律に欠陥があるのは貴官にもわかっていますが、法治国家である以上、これは仕方のない事なんですよ。
当時の法律では、遺伝子を鑑定して300年前の犯罪者を誰なのか割り出す技術が誕生するなんて事は想定していませんでしたし。
折角だから、どうしてこんな鬼人制度が国にあるのか?私の考察も踏まえて全部話してあげましょうか?
我が国にこれ以上の悪印象を、S級冒険者のマクシム様から持たれたくありませんからね」
この国、裏が真っ黒すぎてもう嫌なのです。
青年兵士さんも笑いながらこんな会話ができる時点で、頭が可笑しいのですよ。
「僕は、鬼人制度は犯罪を抑止するための制度だと考えていたんだが違うのかい?」
「一応、犯罪抑止の効果もありますが、鬼人という人権すら剥奪された最底辺階級が我が国を含めた周辺国全てにあるのは、実は周辺国を束ねた同盟【アース連合】の揺るぎない結束を保つためだと貴官は思う訳なんです。
人権すら剥奪された惨めな存在がいる事で、周辺国に住む全住民は安心し、人間らしい残虐な欲求を発散する事で連合加盟国間での衝突が減って連合は安定するんです」
「……あの、なぜ、鬼人がいると安心できるのです?
私にはさっぱり分からないのですよ」
「エルフのお嬢さんには分からないかもしれませんが、人間生きて居れば色んな辛い事があります。
例えば、夫をなくした未亡人が、子供達を育てるために一生懸命働いて苦労したのに貧乏で生活に困窮しているとしましょう。
幾ら幾ら働いても生活は楽にならない。
金持ちが憎い。
こんなのは可笑しい。不平等だ!
隣国の言っている事がキチガイだから我が国はもっと抗議しろ!
そんな日々の不満を何かを差別する事によって晴らす事で未亡人の精神……いや、人間の精神は落ち着くようにできているんです」
「はぁ……それを言える兵隊さんは、きっと相当に凄い人生歩んできたんですね」
「ええ、今の例は死んだ貴官の母親の事ですし。
鬼人の悪口を言う時の母親の顔と来たら、とても気分爽快で清々しい感じでした。
一日中重労働しても、見下して差別できる対象がいる。
それだけで人の心は助かるんだと、貴官に教えてくれたのです」
「他に方法はなかったのですか?
この世界には魔族やオーク、ゴブリンとかいるから、鬼人階級なんて作らなくても良かったと思うのです」
「いえ、周辺にいるオークやゴブリンはとっくの昔に国家ごと皆殺しにしましたし、魔族は人間よりも遥かに狡猾で恐ろしいので心の底から見下せる対象ではないですし、人間は同じ人間を見下した方が頭の中で理解しやすくて心が安定するんです。
人間の集団は、敵や差別する対象がいないと内部分裂するようにできているから、これはもう本当に仕方のない事なんですよ」
確かに、前の世界でも第二次世界大戦後の戦勝国陣営が、勝利した途端、内部分裂起こして核兵器を突き付けあう冷戦になったのです。
まぁ、元々の仲が悪すぎたからというのもあるんですけどね。
青年兵士は未だに清々しい笑顔を受かべながら言葉を続けて怖い人です。
「それに考えてみてください、エルフのお嬢さん。
誰もが見下せる最底辺階級がいるおかげで、アース連合に参加する国家群は仲良くオリンピックをして交流を深める事ができましたし、これからも良い関係を継続できるんですよ?
少ない犠牲で、理想的な結束がこれからも続くんです。
これはとっても良い事じゃないですか。
言ってみれば民主主義ですよ、民主主義。
大多数が幸せになるために、全体の極一部を犠牲にしただけなんです」
「……あの、私は思うのですけど、全員で幸福になるという道を進むことはできなかったのですか?
少なくとも、犯罪者の子供や孫を罰するのは可笑しいのです」
「はははははは!
そりゃ仕方ないですよ。エルフのお嬢さん。
この国の偉人ハンサムもこう言ってました。
【生きている以上、人と人の利害が衝突し、全ての人間が幸福になる事は不可能だ。
可能なのは少数の犠牲があってもできるだけ多数の人が幸福になることが全体の幸福である】ってね。
貴官はこの考えは素晴らしいと思います。
貴官も、兵士の給料が安いわ、重労働だわと不満を抱えていますが、人以下の鬼人の存在を思い浮かべるだけで心が不思議とスッキリーするんです。
鬼人さまさまですよ!
あはははははは!!」
ガシャン
大笑いしていた青年兵士の両手に警官さんが金属製の手錠をかけました。
青年兵士の顔は怒りと驚愕に染まり、警官さんはどうでも良さそうな顔で告げます。
「貴様も鬼人だろうが!
さっさと警察署に来い!」
「うあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!
なんで貴官が鬼人なんですかっ!?
そんなのありえないでしょおおおおおおっ?!!!!!」
「仕方ないだろう!
先祖に極悪犯罪者が居るんだ!
諦めろ!この鬼人!」
「ふざけるなああああああ!!!
俺は貧乏な家で惨めな思いをしながら苦労して、ようやく就職できた軍隊の安い賃金にも不満を言わずに我慢してきたんだぞ!
こんなのありえないいいいいいいいい!!!!!
やっと可愛い娘と結婚できそうだったのにいいいいいいい!!!!」
青年兵士が暴れだして警官の1人を地面に突き飛ばして国の外へと逃げようとしたので、警官達が腰のホルスターの中にあった拳銃を取り出し、逃亡しようとする青年兵士の背中へと向けて発砲しました。
パンっ!パンっ!パンっ!パンっ!パンっ!パンっ!パンっ!パンっ!パンっ!パンっ!パンっ!パンっ!パンっ!パンっ!パンっ!パンっ!パンっ!パンっ!
18発の銃弾は胴体に当たり、青年兵士は地面に倒れてビクンビクンした後にすぐに動かなくなったのです。
えと、光の精霊魔法で治しましょうかね?
私がそんな事を悩んでいると、ドサッ、ドサッ、ドサッという音とともに5人の警察官が前触れもなく唐突に倒れて眠りました。
どうやら、師匠が風の精霊を使って、睡眠ガスを空気から作って人間達の顔の前に流したようです。
青年兵士の周りにいた数機の人型ロボット兵器は、風の刃で真っ二つに裂けて地面に転がっています。
「やれやれ、この国どころか、人類そのものに僕がうっかり悪印象を持ってしまうような会話や光景はやめにするとしよう。
あと、ヴィクトリア。
地面に転がっている宿屋のオバサンの怪我を光の精霊魔法で治してあげてくれないかい?」
「……でも、この国から指名手配されませんか?」
「大丈夫だよ。
周辺にあった監視カメラを全部壊したし、今なら国の外に転がる魔族達のせいにできるからね」
「さすが師匠なのです!
では精霊さん!おばさんの怪我を治してください!
ついでに兵隊さんの怪我を治してください!」
ピカァー!
おばさんが怪我をしている部分が光って、一瞬で治りました。でも、青年兵士は既に死体なのか怪我が治らないのです。
昼間だと、光の精霊さん達は頼もしいのですが、相手が死体じゃ仕方ないのです。
怪我が治ったおばさんは目をパチパチさせた後に身を起こして、顔を憤怒に染め上げて叫びました。
「アタシは鬼人みたいなクズじゃないんだよォー!
どうしてそれがわからないんだぁー!
アタシは人間だぁー!犯罪者じゃないっー!」
おばさんが国の中へと向けて走りそうになったから、慌てて私は手を掴んで止めました。
「待つのです!
国に戻ったら、鬼人として酷い目に合わされるのですよ!」
「はぁっ!?
アタシは人間だよ!人間っ!
ちゃんと政府に訴えれば、みんなが納得するはずだよ!
これは何かの間違いなんだぁー!アタシは税金をちゃんと納めて子供を3人も大学に行かせて夫の介護を死ぬまでやった良い女だおぉー!
アタシは人間だぁー!どけぇー!クソガキィー!」
「イタッ!」
おばさんは私を地面へと突き飛ばして、国の中に戻ってしまいました。
……突き飛ばされた時に膝を強く打って怪我して痛いのです。
でも、すぐに光の精霊さん達が、何も言わずとも怪我した場所を光らせて治してくれたから痛みが消えました。
精霊さん、いつもいつもありがとうなのです。
問題はオバサンがこのままじゃ、鬼人として扱われて最低最悪の末路が待っているから大変です。
どうしましょう?
師匠の方を見ると、師匠はおばさんが去った方角を見ながら一回ため息を吐いた後に
「……やれやれ、やはりこういう結末になってしまったか。
ヴィクトリア、この国を出ようか?」
「あのオバサンを助けなくていいのですか?」
「あの様子だと国を捨てて、何処かに移住する気は全くないようだからね。
自分から助かる気が全くない人間を手間暇かけて助けるほど、僕は優しくないよ。
それに」
師匠は言うのを一瞬やめるかどうか悩んだような素振りを見せた後に、息を少し吸って
「この国では、僕の常識が非常識なのさ。
先祖の罪は、子孫の罪だなんて僕達が可笑しいと思っていても、この国と周辺国の人間達はそれでずーとやってきたんだ。
僕は認めたくないが、彼らの常識はこの地で生きるために築き上げられた必要悪なんだよ。
部外者の僕達がどうこう言っても何も変わらない。
こんな時はさっさと国外に出るのが一番さ」
「……わかったのです」
私と師匠は手を繋いで国を出ました。
世の中、考えても納得できない事がたくさんあるって、改めてこの国で知る事ができたのです。
国の外に出ると、そこには
「あの、師匠」
「なんだい?ヴィクトリア」
「なんで、国の外にある兵器が全部真っ二つなんですか?」
数千あった戦闘機は全て地上に落ちて炎上、数万の戦車は真ん中から真っ二つ、数十万の人型ロボットも真っ二つになって地面に転がっています。
よく見たら最下級魔族の死体が数千、数万単位でゴロゴロ転がって凄いのです。
それはまさにロボットと魔族達の墓場といっても過言ではない壮大な光景でした。
師匠は見惚れるような素敵な笑顔で、私に
「将軍級の魔族との戦闘中に、これらの兵器の幾つかが僕を攻撃してきてね。
どれが敵か味方か分からないから全部破壊したんだ。
でも、近くに魔族の死体があるから、全部魔族がやったと人間は判断してくれるだろうさ」
わぁ、師匠もすごく非常識なのです。
テーマ@【オリンピックのパロディ】
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