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ナポレオン帝国の野望オンライン

1話   獣人達の希望の星『ミーニャン』

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まえがき
(´・ω・`)クフ王戦スタートの物語だと、説明過多になりすぎて読みにくいから、エジプト占領時点から物語スタートして、説明する設定をエピソードごとにバラバラにする事にした。
オスマン帝国の領土も増やして難易度アップアップ。うん、書き直してすまない。

西暦1910年時点での勢力図
http://suliruku.futene.net/Z_saku_Syousetu/Tyouhen/Mofumofu_teikoku/tiiki.html

没にした1話 オスマン帝国「属国のエジプトが狐娘の手で独立しちゃった件はこっち
http://suliruku.futene.net/Z_saku_Syousetu/Tyouhen/Mofumofu_teikoku/30_1.html




エジプト首都カイロから北に10kmほど離れた場所に、尻尾と獣耳が生えた獣人達の姿があった。
彼らは夜の西方砂漠に現代人らしく50個の列に整列して並び、彼らの前方に黄金の尻尾と狐耳が愛らしい『妖狐』の少女ミーニャンが立っている。
着ている服は動きやすいように少し改造された巫女服。
赤い袴の裾から大きな狐の尻尾が出ていて、不思議と他者を安心させる魅力を持つ女の子だった。
ミーニャンは手に持っているお手製の拡声器(新聞を丸めた物)で3000人はいるであろう獣人達に向けて演説を景気よく始めた。

「皆さんー!国が欲しいですかー!」

「「「「「「欲しい!獣人に優しい国が欲しい!」」」」」」

獣人達の意志をしっかり掌握したミーニャンは言葉を続けた。

「皆さんー!人権が欲しいですかー!」

「「「「黒人並の扱いはもう嫌だ!人権が欲しい!」」」」

「皆さんー!幸せになりたいですかー!」

「「「「幸せになりたい!家族と一緒に安心できる生活が欲しい!」」」」

「皆さんはそのために命を捨てられますかー!」

「「「「「家畜の平和より戦争して自由を得た方が100倍良い!」」」」」

不思議と獣人達の声がしっかり揃っているのは、今まで何回もこれと同じ事をやってきたから。
このやり取りを繰り返す理由はただ1つ。
このエジプトの地に何をするためにやってきたのか?それを再確認する事で勇気を奮い立たせ、差別され迫害される最底辺種族『獣人』に未来という希望を与えるため。
明日になれば首都カイロで、エジプト総督アリー・ムハンマド率いる軍勢5000人と最終決戦。
勝てば獣人達は自分たちの国を手に入れられる、黒人奴隷並の扱いを受けずに済む。
ミーニャンは必死に思いを込めながら演説を続けた。

「ならば!皆さん!絶対勝ちましょう!人間に差別されて酷い事をされる現実なんて否定して、自由を勝ち取るために戦いましょう!モッフフー!」

「「「「「モッフフー!」」」」

その言葉とともに獣人はさっと自分達の旗を持ち上げて掲げた。
旗にはミーニャンをモデルにして描かれた『二頭身の狐娘』の二次元イラストが書いてある。
戦争に行く戦闘集団というより、これからコミケ会場に行きそうな団体だった。
ミーニャンは内心、本当こんな二次元アニメみたいな旗でいいのかな?と思ったが、皆が納得してくれるならこれで良いのだろうと判断し命令を下した。

「軍師タヌキモンが立てた作戦通り、これから首都カイロに攻め込みます!カイロを落とせばエジプトを落としたも同然です!そうなったら後続のフランス大陸軍と合流してエジプト全土を手に入れましょう!モッフフー!」

「「「「「モッフフー!」」」」

この演説から10時間後、『二頭身の狐娘』の旗を掲げた連中の手によってあっさり首都カイロは陥落した。
街の周囲を負う外壁はここ数年エジプトの地で起きた戦で壊れていたから、夜明けと同時に行われた奇襲攻撃は大成功。
敵側のエジプト総督アリー・ムハンマドはその地位に就いたばかりで保有している兵力が少なかったため、無駄に士気もレベルも高い獣人達の集団に対応できず栄光の人生は終了した。
彼の人生最後のセリフは「なんだ!?その旗はっ!?お前たちの軍旗は本当にそれで良いのか!?後で絶対後悔するぞ!?」
史実で150年続く予定だったムハンマド・アリー朝は、この世界ではたった1ヶ月そこらで潰えて王朝として歴史に名前を残す事はない。
いや、それ以前に、なんでピラミッドが観光資源のエジプトに尻尾と獣耳が生えた獣人がいるの?とこれを読んでいる諸君に聞かれたらこう言うしかない。
……この世界はとある歴史系オンラインゲームが異世界化した世界で、獣人達はそのプレイヤー『冒険者』だと。
ゲームの内容は簡単に言えば、史実の超大国達が時空を超えて同じ世界で戦争してたら楽しいな!という歴史マニア垂涎の戦争アクションRPG。
1つの超大国の存在は、同時代に存在する他の超大国・地域大国を潰してしまう事が多々あるため、同じ時代に超大国が4つも5つも存在するのはありえないって所が人気だった。
史実の世界と違う点は、この世界には魔法があり獣人を始めとした異種族が多数住んでいて、本物の世界としか思えないほどに高クオリティなゲームだった事。
本物に等しい水と空気の流れ、惑星の移動、人間の思考を持つ膨大なNPCを含むデータを高性能電子サーバーで動かして5年ほど運用したらゲームがそのまま実体を持ち異世界化してしまったのだ。
その時、プレイヤー達は異世界化したゲームの世界に取り込まれて二度と現実へと戻れなくなり、人間以外の種族を選んだプレイヤーには特大の不幸が待っていた。
史実の国だらけの世界に獣人の国なんていうファンタジーな存在はない。
国がないという事は生きる権利を自然と人間に妨害され、人間社会から迫害される立場に立たされた。

人間(´・ω・`)獣人は超低賃金重労働者になーれ。家族を養える程度の額は残してやるー。
獣人(ミ`ω´ミ)そんなー嫌やー。

人間(´・ω・`)戦争になったから人間の代わりに戦場に行けよ獣人、無論、武器なしな。
獣人(ミ`ω´ミ)そんなー、酷い。

人間(´・ω・`)お前らの家族を人質として俺達のところに送れよ!可愛かったら性奴隷にするから!
獣人(ミ`ω´ミ)もうやだ、この世界。

こんな黒人奴隷と似たような酷い運命を甘受できるだろうか?
いや、納得できるはずがない。
そういう経緯もあり、彼らがエジプトに攻め込んで独立国を得ようとするのは当然の帰結だった。
首都カイロを平定した後、ミーニャン達はイスラム世界最強のオスマン帝国が介入してくる前に死に物狂いでエジプトの北から南へと一気に三週間で残党やマムルーク(奴隷軍人)を始めとした勢力群も制圧。
エジプトは線型のオアシス『ナイル川】周辺に街と村が密集し、他は少数のオアシス残して全部砂漠という単純構造の地理だから一直線に船で川を下ればエジプトの制圧は簡単だった。
エジプトの住民達は『二頭身の狐娘』の旗を掲げている獣人達に困惑しながらも、異民族に2000年以上支配されて慣れていたからミーニャン達を受け入れ、ここにミーニャン王朝が誕生。
世界で初めて二次元美少女キャラを国旗にした国家という事で、2世紀先のインターネットの掲示板で話題の種を提供する事になる。
「……あいつらアニメもない大昔から未来に生きてるな」って。








ミーニャンはエジプト総督府があった大きな建物の中に入って落ち着いた。
エジプト制圧があっという間に終わった事に安堵している。
傍らには少し特殊な関係のエミール少年が付き従っていた。
外見年齢は12歳ほど若々しい妖狐の少年で、銀色の狐耳と尻尾が愛らしさを感じさせる。
エミールは感動の気持ちを籠めながらミーニャンに

「……マスター、やっと念願の国を手に入れましたね」
「うん、やっとだよね。これで皆が笑って暮らせる国を作れるよ。私、エミール君と出会えたおかげで幸せだよ」
ミーニャンは今までの苦労を思い出した。
ゲームをプレーした途端、異世界化したゲームに取り込まれて酷い生活が続いた二ヶ月間。
黄金の大きな尻尾や狐耳の事を、悪魔の尻尾だとイスラム教徒の人たちに言われて、下半身を地面に埋められて石打ちの刑に処されて殺されそうになった事もある。
その時、同族の匂いを嗅ぎつけてやってきたエミールと出会わなかったらミーニャンは死んでいただろう。
そうなっていたら、ミーニャンはヨーロッパの各地でロンメルを始めとした偉人キャラを集めたり、フランス帝国の支援を得てエジプト遠征をする現在にたどり着けず、獣人の未来は真っ暗になっていたはずだ。
―――ここから、ようやくここから、新しい人生の第一歩を仲間達と一緒に歩めるんだと思ったら嬉し涙が出てきた。
エミールはそんなミーニャンを暖かい視線で見守り、そのまま数分の間、心温まる時間がゆっくり二人の間に流れていると部屋の扉がガチャッと開いて、軍師のタヌキモンが入ってきた。
体どころか手足もまん丸太った青狸、黒い軍服を着ている。
どうやら慌てているようだ。

「閣下!大変です!」
「たぬきもん、どうかしたの?」ミーニャンは首を可愛く傾げた。

エジプト全土を制圧した今、不測の事態なんてないはずだと思っている最中の事である。
だが、現実は残酷だった。
というかエジプトが交通の要衝すぎて戦争イベントが頻繁に起こる場所だって事を忘れてた。

「私達をエジプトまで運搬したフランス艦隊が、ネルソン提督率いるイギリス海軍の追撃に合って撃破されました!」
「はい?」
「わかりやすく言うと海からの補給線を完全に切断されてしまったのです!手持ちの兵力だけで今後を乗り切らないといけません!物資はエジプト人から徴発すれば何とかなりますが住民から反感を持たれるのは必至です!」

事の深刻さがようやくミーニャンに理解できた。
エジプトの地は東にオスマン・トルコ帝国というイスラム世界最強の超大国と隣接している地域。
超大国相手に、味方の超大国『フランス帝国』の支援なしで戦うのはさすがに無理がある。
仮に戦争になったらミーニャンの敗北は間違いなし。
奇跡的に勝利しても史実だと強大なロシア帝国が南下してくる。大英帝国軍上陸イベントもある。
オスマン帝国に寝返れば一時的に安寧を得られるだろうが、そうなったらオスマン帝国よりも遥かにやばいフランス帝国を裏切った事になり軍人皇帝ナポレオンが激怒して攻めてくる。
ミーニャンは狐耳を下に垂らして落ち込んだ。
(私、どうしよう?)
その時、この世界の元になったゲームの正式名称が頭の中にふと思い浮かんだ。
『ナポレオン帝国の野望オンライン』(ナポレオン、スターリン、アメリカ合衆国、大英帝国、チンギス・カーン、メフメト2世、織田信長、大日本帝国の野望オンラインの略称)
読み飛ばしたくなるような長いゲーム名。1つの時代に複数の超大国が君臨する世界。
ミーニャン王朝の行く末は針の穴に糸を何度も通し続けないといけないほどに儚くて、少しの判断ミスがそのまま致命傷になる。
安心して布団で眠れる日は遠いなぁと、ミーニャンは思った。



エジプト「ナイル川の西と東が砂漠に覆われている件、ナイル川なかったら文明なかった」紀元前
http://suliruku.blogspot.jp/2015/05/blog-post_24.html
ナポレオン「エジプト史での俺の存在感が大きすぎる件、近代エジプト学誕生に貢献しすぎた」18世紀
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ナポレオン「エジプト遠征軍3万5000人の損耗率が80%な件。つまりほとんど死亡」18世紀
http://suliruku.blogspot.jp/2015/05/350008018.html
エジプト「クフ王が建設させたギザのピラミッドが完全に可笑しい件。2.5tの石灰岩を約280万個積み上げて作ってる」 紀元前26世紀
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古代エジプト「ナイル川使った水上交通が便利すぎて、陸路の交通インフラがほとんどない件」 紀元前
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古代エジプトの労働者「日給がパン三つ、ビール2壺だから家族を養えない件」
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エジプト「住宅が高すぎて家を買えない若者がたくさんいる件
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エジプト「ソ連の援助で巨大ダム作ったら、問題が大量発生して大変な件」20世紀
http://suliruku.blogspot.jp/2015/06/20.html 


 

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1話
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●獣人が差別されている〜だから国がほしい〜 + 演説

アリームハンマドぶっ殺す。

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