もふもふ帝国でニート巫女やっています
10話 ミーニャン「領地がありえない位に発展しちゃった件」 |
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ビーストティマーってなーに?
他者をペットにして使役する地雷職です。
ペットにするための条件が、対象の同意を得るか、対象が瀕死状態にある事……大抵は集団リンチしてボコボコにした後にペットにするから、第一印象が最悪となり、マスターへの忠誠心が低くなりやすいのです。
エミール少年をゲットしたミーニャン辺境伯は運が良いですな。
by 領主補佐タヌキモン
〈辺境伯領、中心都市スエズ〉
【妖狐エミール視点】
今日は公務がないから休日です。
普段、人よりも働いているマスターが自由に過ごせる素敵な日。
僕の敬愛するマスターは外出を楽しむために、いつも着ている巫女服を脱ぎ、代わりにGカップの胸を包み込むゆったりとした白いワンピースを着ていました。
偉大……としか形容するしかない巨乳を見ているだけで僕の心が癒されて狐耳がピョコピョコです。
更にマスターは顔を隠すために、僕が誕生日にプレゼントした真っ黒のサングラスを着用していました。
マスターは辺境伯領で一番有名で、ミーニャン紙幣に外見が印刷されていますから、こうしないと市街地で目立って遊べないんです。
僕も目立たないようにするために、白い着物を脱いで、真っ黒なTシャツと短いズボン【ハーフパンツ】を着用しています。
これなら、きっと民衆に正体がばれないままデートを楽しめるに違いありません。
「エミール君〜、遊びにいくよ〜」
あ、マスターから声がかかりました。
最近のマスターは着替えるのに慣れたせいか、着替えがとても早いです。
休日を精一杯楽しもうとするマスターを待たせるのは失礼なので、財布を持ってる事を確認した後に走り、手を繋いで一緒に領主館の裏門から出ました。
裏門の付近にいた2人の衛兵が微笑ましそうな視線を僕に向けていて、小さい声でボソッと僕の事を応援してくれます。
「リア充爆発しろ」「私の非リア充力は53万です」
正確な意味はわかりませんが、冒険者の専門用語でカップルを祝福する言葉らしいです。
僕とマスターはカップルではなく、主従の関係で結ばれているのですが、いつも一緒にいるからカップルだと勘違いされています。
最近のタヌキモンさんの生暖かい視線の正体は、こういう勘違いから来る代物だったのです。
都市スエズの中心市街へと向けて、僕とマスターは手をしっかり握って歩きます。
最近の領地の発展っぷりは凄まじく、ここスエズも人口2000人都市から、人口10万人都市へと変貌しつつあります。
これも全部、タヌキモンさんが作った銀行が、次々と色んな事業に融資して、産業を大量に育成したおかげです。
仕事が異常なほどにあるから、この辺境伯領では働く意志と身体があれば、口から酸を吐くエイリアンだって働けます。
仕事紹介所ミーニャンワークという公共施設も誕生し、そこで仕事を簡単に探せるから失業率は1%以下という偉業を成し遂げていて奇跡的でした。
僕はマスターやタヌキモンさんみたいな偉大な人たちと出会えて幸運です。
恩を少しでも返すためにも、今日のデートプランを作った僕がマスターを最大限楽しませないと駄目ですよね。
マスターの顔をチラッと見ると、満面の素敵な笑みで僕に話しかけてきました。
「エミール君、カードゲームセンターってどんな所だろうね?
私、今日が楽しみ楽しみで仕方ないんだよ」
「トレーディングカードゲームという道具を売っている店らしいですよ、マスター」
「トレーディングカードゲームって、イラストが描かれたカードでバトルするゲームだよね?」
「さすがマスター、博識ですね。
でも、現地に着いたらきっと驚くと思います」
「うん、楽しみにしているよ」
マスターと僕がそのような雑談を繰り返しながら歩き、途中で電気バスや人力車を乗り継いて移動しました。
これらの乗り物と運用方法は冒険者や商人の発案です。
人力車は2人乗り用の小さい車を、人間が引く構造の乗り物なのですが、低コストで観光案内に向いているから比較的早く普及した乗り物なんです。
電気バスの方は、電気で動く金属製の大型車両です。
同時に40人以上を運搬でき、最高時速60kmという画期的な乗り物です。
バスの動力源は電気ですが、電気バスが通るルート沿いに、雷属性を使える魔法使いが電気を供給する電気スタンドが設置されているため、電池切れにはなりません。
こういう乗り物を発明できる冒険者は、僕なんかよりも遥かに偉大だなと痛感しました。
僕の狐耳はバスに乗っている間、興奮してピョコピョコです。
将来、大量の電力をため込めるバッテリーを開発して、電気自動車を一般に普及させて民衆でも購入できる値段にするって、自動車工場の工場長トヨータが言ってましたし、そうなったら素敵ですよね。
僕も自動車を運転して、マスターと一緒に遊びたいです。
電気バスを2回乗り換えて、中央市街停留所で降りたら、カードゲームセンターがすぐ近くにありました。
白い石作りの大きな建物で、【ルールを守って楽しくバトル!】【君もやろうぜ!パネェファイト】 という白い旗が掲げられています。
早速、僕達はカードゲームセンターの扉を開けて店内に入ると、そこには大勢の子供たちが店内にある複数のテーブルを囲んで、激しいカードバトルを繰り広げていました。
「俺のターン!ドロー!
場の不敗のタヴー、お菓子女王マリー・アントワネットを生贄にナポレオン皇帝を召喚し、モンスター効果発動!
フランスの偉大なる26元帥を墓地から特殊召喚!
ふははははは!無敵!最強のナポレオン帝国軍団!
次のターンで俺の勝利だな!」
「それはどうかな?
俺は魔法カード【ウイグル商人の支援】を使い、モンゴル帝国皇帝チンギス・カーンを召喚!
伏せていた魔法カード【大陸中の女は俺のもの!ヒャッハー!】を発動する!
このカードは俺の場にチンギス・カーンがいる時にだけ使えるカード!
効果は場にいる全ての敵モンスターカードを破壊だ!
消えうせろー!ゴミどもぉー!
騎馬民族速攻ラッシュ!」
「ぐあああああああ!!!!」
「更にチンギス・カーンで貴様にダイレクトアタック!
騎馬民族無双乱舞!ライフポイントを0にする!
俺の勝利だ!
ほら!商品のナポレオン皇帝をよこせ!」
皆、絵に数字や文字が刻まれたカードを使ってます。
冒険者さんが作った印刷機という機械のおかげで、クオリティの高い絵を安い値段で販売できるから、トレーディングカードゲームというジャンルが出来上がったのかもしれません。
ルールはよくわかりませんが子供たちは楽しそうです。
マスターも、狐耳をピョコピョコ動かして喜びながらこの光景を見ています。
「エミール君、あのカードゲーム面白そうだね!」
「なら買いますか?
10枚1000ミーニャンで売っているらしいですよ?」
「うん、買ってみよう!」
僕とマスターは、手を繋いだまま店の奥に進みました。
店の奥にはガラスのケースの中に入れられたキラキラとしたレアカードや、束になったカードが入っているパックがあり、ナポレオンデッキ、チンギス・カンデッキ、ヒトラーデッキ、スターリンデッキ、ミーニャンデッキ、織田信長デッキ、メフメト2世デッキなどなど色々と売られています。
僕とマスターがじーとガラスケースの中を見ていると。受付のヤギ人のお爺さんが笑顔で話しかけてきました。
「おや?見ない顔だね?
君達もトレーディングカードゲーム【パネェファイト】に興味をもった口かな?
興味あるのなら40枚入りのデッキを購入すると良い。
普通に10枚入りのカードパックを4セット購入するよりも値段が6割安いからね。
ただし、デッキにはミーニャン様のレアカードが入ってないよ」
「なら、カードパックの方を購入しようと思います」
「はいよ、値段は10枚で1000ミーニャンだ」
僕は財布から1000ミーニャン紙幣を出して、ヤギ人のお爺さんに渡すと、代わりに黒いカードパックを貰えました。
その場ですぐに封を開けて、カードを取り出すと……すごく見覚えがある人達をデフォルメしたイラストがカードに描かれていたんです。
<軍神エミール>
<暗黒大陸の英雄トラジロウ>
<幼女ミーニャン>
<ミーニャン辺境伯>
<ミーニャン 水着バージョン>
<ミーニャン アイドルバージョン>
<スーパーミーニャン3>
<軍師たぬきもん>
<皆のアイドル ニャンコ・ノ・ルナ>
<狙撃の名手ウサウサ・ヘイヘ>
美しいです。
敬愛するマスターが可愛らしい絵で描かれてます。
水着バージョンのマスターなんて一度も見た事ありません。
全裸のマスターなら何度も見た事ありますが、これはこれで男心をくすぐるものがあります。
僕の隣からカードを見ているマスターの様子を窺うと、恥ずかしそうな素振りを見せて、顔を真っ赤にしてました。
その反応が可愛らしくて、クスリと思わず笑ってしまい、僕の心がとても癒されてモッフモフです。
【ミーニャン辺境伯視点】
わぁ〜、私のイラストばっかり〜。
キラキラに輝いていてレアカード扱いされている〜。
とっても恥ずかしい。
特にこの
<幼女ミーニャン>
8歳くらいの私をイメージして描かれた狐耳の幼女が神社で歩いている姿を描写しているイラストは、モッフモフで初々しくて可愛らしいけど……このイラストに萌えて癒されてしまった私って一体……。
ナルシスト?
自分で自分に萌えるなんて複雑だよね。
<ミーニャン 水着バージョン>
こっちのカードなんて、縞々の水着を着た私をイメージして描かれてる。
おっぱいが現実の私よりも一回り大きく描写されていて重たそう。
どうして、私はゲームのキャラメイキングで巨乳設定にしたんだっけ?思い出せない。
胸なんて小さくて良いのに。
男の頃の感覚がわからなくなりつつあるけど、胸ってただの脂肪の塊だよね?
小さい方が動きやすくて便利だよ。
貧乳の娘達が羨ましい。妬ましい。
貧乳は希少価値、巨乳は資産価値だと前の世界の偉人は言ったけど、巨乳のどこが資産価値なの?胸が重くて不便だよ?
ブタマン帝国の牢屋にいた頃は、この巨乳のせいで真っ赤に腫れるまでオーク達にモミュモミュされてエッチィ事を散々されて女性である事を呪ったし。
資産価値どころか負債だと思うの。
【妖狐エミール視点】
マスターと僕はカードゲーム屋さんで100枚ほどカードを購入して満足したので店を出ました。
今回の目的は、マスターを驚かせる事、トレーディングカードゲームを購入する事だったから、もうここは用済みです。
次に向かう場所は、最近流行になっているお寿司屋さん。
生魚をご飯の上に載せる不思議な店らしいです。
普通、生魚を食べたらお腹を壊したり、寄生虫が体内に入ってくる恐れがあると思うのですが、冒険者達に大人気で清潔な店らしいから、きっと魚好きのマスターも喜んでくれるに違いありません。
冒険者の価値観は未だによく分かりません……が、美味しい食文化をこの地に齎してくれた張本人達ですし、たぶん寿司も美味しいのでしょう。
10分歩くと<カメカメハ回転寿司>という魚の形をした看板を掲げた真っ白の店が見えました。
外から窓越しに店内の様子がわかります。
えと、工場のベルトコンベアーみたいな回転して動くレーンが張り巡らされていて、その上に寿司を載せた皿を大量に置いてました。
冒険者の考える事は訳が分かりませんが、店中にいるお客さん達が好き勝手に寿司を皿ごと取って、美味しく食べている様子を見るに、合理的なのかもしれません。
これなら寿司を店中に行き渡らせて、料理を運ぶウェイトレスなしで店を経営できます。
さすが、冒険者。
こんな異常な発想を思いついて実行するなんてさすがです。
マスターも狐耳と尻尾をピョコピョコ激しく動かして大喜びです。
ああ、金色の尻尾が可愛らしい。モッフモフしたい。
「エミール君!エミール君!
この店凄いね!」
「え、ええそうですね、マスター。
これは期待できそうな店だと思います」
すぐに僕たちは店の中に入り、店員に案内されて、店の奥にある横に長い椅子に一緒に座りました。
……素晴らしいです。この椅子。
横に長いおかげで大好きなマスターと密着しながら、目の前のテーブルに寿司を置いて食事ができます。
「エミール君!マグロだよ!マグロ!
こんなところにマグロがあるよ!
私、感動して涙が出そう!」
マスターは喜びの声を上げながら動いているレーンの上から、次々と寿司を取り、テーブルの上に置いていきました。
マグロ?
どんな魚か知りませんが、真っ赤で美味しそうですね。
他のお客さん達は、寿司に醤油をつけて食べているようですし、僕もそれを真似して、皿に醤油を少し落とし、マグロの寿司を押し付けて醤油をつけて、一気にパクンッと食べてみました。
マグロ寿司の味は……甘いですね。
マグロの脂肪が低温で溶けて良い感じです。
なるほど、寿司が人気な訳が分かりました。
レーンの方を見ると、〈イクラの親子軍艦巻〉〈ウニの握り寿司〉〈大トロの炙り寿司〉〈炙りチーズつきの焼き卵寿司〉〈ミーニャン寿司〉などの看板と一緒に流れてくる美味しそうな寿司がたくさんあります。
素晴らしい。
ミーニャン辺境伯領は食文化も最高級です。
これもマスターの日頃の行いが良いおかげです。
試しに〈炙りチーズつきの焼き卵寿司〉を食べてみましょう。
これは焼いた卵の上に炙ったチーズを載せた美味しそうな寿司です。
魚が駄目という人でも、これなら大丈夫でしょう。
パクンッ
美味しい。
ご飯に酢がよく効いていて、卵の美味しい味が舌に広がります。
そこにチーズの味が噛み合わさって絶品。
ああ、僕はマスターのペットで幸せです。
マスターがこの辺境伯領を作るまでは、こんな美味しいものを食べた事がありませんでした。
……肝心のマスターの様子の方を見ると、狐耳をピョコピョコ動かしながら次々と寿司を口に入れて楽しそうに食べてます。
その光景を見るだけで心がホッコリして癒されました。
あなたの幸せが僕の幸せでモッフモフです……と思いましたが次の瞬間に起きた出来事で気分が台無しです。
「強盗だぁー!金を出せぇー!」
その野太い男の声に釣られて、店の入口にあるレジを見ると、刃渡り50cmの剣を構えた人間の男が、レジにいる店員のナマケモノ人を脅していました。
最近、大量の人口が流入した影響で、こういう犯罪者も街の中に入って大変なんですよね。
僕はマスターとの楽しい時間を邪魔する強盗を倒そうと思って、席を立ち上がろうとしたら、店員のナマケモノ人が大きな声で叫びながら右手を振りかぶり
「ボク、アルバイトォォォォ!!!!」
強盗に爪で殴りかかって剣を弾き飛ばし、一方的に強盗をボコボコにしていました。
確か〈ボク、アルバイトォォォォ〉は、冒険者の専門用語で、貴様の脅しには屈しない!答えはNoだ!わかったか!クソ野郎!って意味です。
なんでも異世界にあるコンビニという万能ショップを守る最強の英雄のセリフらしいです。
一度、どんな英雄なのか会ってみたいですね。
寿司を満喫した後は、人気アイドルのコンサート、その次はアイスクリーム屋さんと僕のデートプラン通りに店を周ったら、太陽が地平線の彼方へと沈みそうになっている時間帯です。
楽しい時間が過ぎ去ると悲しいものがあります。
僕はマスターと手を繋ぎ、領主館へと帰るために帰路に着きました。
マスターは今日1日をとても楽しめたようで、顔に満面の笑みを浮かべ、狐耳がピョコピョコ動いていて……すごくモッフモフです。
「エミール君、今日も楽しかったね。
次の休日が楽しみだよ」
「そうですね、マスター」
「エミール君はどの店が気に入ったかな?
私はアイスクリーム屋さんが気に入ったよ。
サーティワンコ アイスクリームって店名を見たら笑っちゃった」
「僕は断然、寿司屋です。
生魚があれほどまでに美味しい食材に化けるなんて、まるで魔法です」
「回転寿司凄いよね。
どうやってこの世界で回転する小型レーンを実現したのか、私には謎だよ。
工場ならともかく、料理屋であれを設置するなんて凄いよね」
この時、僕はこんな平和な時間がずっと続いたらいいなと思いました。
敬愛するマスターと一緒に、あちこちを視察という形で国内旅行したり、たまにある休日を一緒に過ごしたり、一緒にお風呂に入ったり、素敵な時間が永遠に続けばいいなと思いました。
でも、これは錯覚です。
世界は何時、世界中が戦争をしてもおかしくない戦国状態。
領主館へと帰ると、アメリカ大陸中でイキリス王国からの分離独立を宣言したアメリカ独立戦争が始まっていると、タヌキモンさんの口から聞きました。
世界を巻き込んだ激しい激しい大戦争の幕開けとなったのです。