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本好きの成り上がり
6話 村「税率9割です、腐ってます」


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核戦争後の世紀末世界に居そうなモヒカン頭の農民達に道を聞いてみた。
……宿はどこでしょうか?

「宿?村の中央だぜ!お嬢ちゃん!」

モヒカン頭じゃなかったら、素晴らしい青年だと思えるほどに良い対応だった。
なぜ、この村の半分ほどがモヒカンなのか。不思議である。

「え?モヒカンが可笑しい?
これはなっ!戦士の証なんだ!」

ツッコミを入れるのも野暮だったので、私は素直に頭を下げて感謝し、村の中央を目指す事にした。
ニューヨーク州のハドソン川上流に住んでいたモヒカン族もモヒカンだったし、そういう異文化があるのだろう。
この村は、東に大きな川があるおかげで、ここらへんは生命力に満ちた木々が生い茂って涼しい。
家の数の割には、活気が溢れ、まるで地下都市でも存在しているのか?と思うほどに村人の数が多い。
砂漠と比べれば、ここは天国のように感じる……税率9割という悪条件を知らなかったら、本当にここは良いところなのだろう。
どんな統治者がこの地域を支配しているのか気になる。
きっと、イギリスのジョン失地王みたいな人望の欠片もない無能君主に違いない。
戦争に負けまくったり、領土を次々と奪われたりでもしない限り、税率9割はありえないはず。
そのような事を思いながら歩くこと2分。エミールの足に合わせてゆっくり歩いたが、それでも普通の人間の十倍の速度で歩いていたから、到着するのは早かった。
村長の家は、何十人も泊まれそうな程に大きい。隣には手動ポンプつきの井戸があり、文明の気配を伺わせた。
きっと使用人を何人も雇っていて豊かな生活をしている御仁なのだろう。
私は家の前で、畑仕事をしている金髪の美青年に話しかける。

「すまないが聞きたい事がある」
「はい、何でしょうか?」

その男は、とっても爽やかなイケメンだった。
細長い耳をしたエルフの男。金髪の髪を首元まで伸ばし、彫りの深い顔立ちだ。
眼鏡が似合っていて賢そう。
日本に居たら、女性の9割は振り向くだろう。
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村長(イズミ・ウ・リドラ・ルドラ・カグラァール・アントニアーン)
昔、建設業界で名を馳せた偉人だ。
「魔法を前提にした建築技術とか困難すぎる……ダム作れません」という言葉を残し、隠遁生活を送っている。
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なるほど、このイケメンが村長か。
個人のプライバシーが欠片もない世界だが、こういう時は便利だな。
早速、交渉しよう。
私達はこの村に訪れたばかりの冒険者なんだ。
あなたの宿に宿泊したい。料金は幾らだろうか?

「……あなたがカグヤさんですか?」

むぅ、この反応……この人も関係者か。
私は身構えた。敵なのか、味方なのか、どっちか分からない。
そうすると村長は苦笑いしながら豪邸を指差して

「料金なら既にある人から貰っています。
どうぞどうぞ、一年でも十年でも宿泊してください」

これが罠なのか、私に味方する人の好意なのか悩むな。
……エミールはどう思う?

「もっふー。よく分かんないです」

人生経験が全くない子供に相談する私が間違っていた。すまん。
よく考えたら、村長が敵だったら料金を受け取った上で、私を罠に嵌めるはずだ。
私ならそうする。
なら、この人は敵ではないのだろう。
よろしい、村長の家に宿泊しよう。世の中、タダほど怖いものはないと言うが、私は柔らかいベットの上でゆっくり眠りたい。
罠ならば、それごと食い破れば良いのだ。幸い、砲弾飛ばして援護してくれる味方が近くにいるようだし。
でも、一応、カマかけはしておこう。
……村長殿、聖帝カグヤという言葉に心当たりはないか?

「北斗の拳の聖帝サウザーなら知ってますが、聖帝カグヤは知りませんね。
何かの小説のキャラクターですか?」

北斗の拳を知っているだとっ……?
核戦争後の世界を舞台にした超有名漫画をなぜ知っているんだ?
私がそうやって村長に近づいて捲し立てると、彼は人を安心させる笑みで

「なるほど、カグヤさんも私と同じ地球人という事ですか。
レベルも低いようですし、こちらに来たのはつい最近の事なので?」

ああ、数日前に来たばかりだ。
砂漠で遭難して危うく、永遠に死ぬところだった。

「それは大変でしたね。
私は五百年前に、ゲーム知識ゼロでここに来ましたよ。
最初の街にたどり着く前に十回くらい死にました。
幸い、ペットが手に入るイベントのおかげで、地球に居た頃よりも生きる気力が湧きましたが」

五百年、地球とエロイナ世界では時間の流れが違うのか……ところで村長殿のペットの種族は何だったので?
私は隣にいる狐耳の少年だったのだが?

「私が手に入れたのは、エルフ耳の美しい少女です。
清楚で優しくてユーモアもある素晴らしい女性ですよ。
この世で最も愛しい大切な妻でもありますね」

村長は自信満々の爽やかな顔で答えてくれた。
彼は人生の勝ち組だ。うらやましい。
ペットがエルフ娘でそのまま添い遂げるなんて、どこかの恋愛ゲームの主人公みたいな人生だ。
会話しているとコミュニケーション能力も高い事が分かるし、人間としての能力も高そう。
【天は二物を与えず】という諺(ことわざ)があるが、そんなのはハッキリ嘘だなと理解できた。
村長殿は話し足りないのか……私が黙って考えている間にも、言葉を続けてくれる。

「今に思えば、ペットイベントは……この世界に放り込まれた私達への救済策だと思います。
エロイナの事を知らずに異形種や最弱種族を選んでも、ペットが優秀なら生活できますし、一緒に過ごせば愛情も芽生えるでしょう?
この世界は厳しいように見えて、意外と優しい世界なのかもしれませんね」

ペットイベントで出てくる生物は、全部異性だからな。
性別:女を選んでしまった私のペットは……当然、性別:男になる。
もっふぅ。

「もっふ?」

私の視線に疑問を感じたエミールが首を傾げた。大きな狐耳がよく動いて愛らしいぞ。ワンコみたいだ。
これで彼の性別が女の子だったら最高なのだが。
いや……逆に考えるんだ。
異世界でステータス優先で女キャラを選んだけど、可愛い弟が出来たから別にいいやって考えるんだ。
エルフなんて、猫の神に比べれば速度遅すぎるゴミステータス。利点はせいぜい魔法耐性がある程度。
エロイナ世界は弱い奴に厳しい世界観。
なら、強者の道を選んだ私は正解で正義なんだ。
そうだ……ところで村長殿。
税金で9割も取られるのに、なぜ畑仕事をしているので?
村人は狩猟生活をしているようだが?

「節税対策ですよ、カグヤさん。
一応、畑仕事はやりましたが不作で税金を収められませんって言うために、畑を最低限耕作しているんです。
貴族と役人どもへの無言の抗議とも言いますね」

……そんな重い事を爽やか笑顔で言える村長殿……あなたも苦労しているんだな。
あと、もう一つ聞きたいのだがよろしいか?

「何でしょうか?」

私が無料で宿泊できるように、お金を払ったのは誰なので?

「金髪の狐耳が愛らしい巫女さんでしたよ。ちょうどカグヤさんが着ている巫女服と似たような材質です。
彼女は日本語で書かれた混沌の魔法書を、料金代わりに渡して来ました。
おかげで、混沌の矢の魔法を魔石に込めまくって、大金を得られてありがたいですね。
村民に装備を行き渡らせる費用や、地下都……げふんげふん、新しい家を建築する費用を捻出したりできて大恩人ですよ」

ま、魔法の本!
読みたい!見させて貰ってもよろしいか!
……勢い余ってキスしそうなほどに、村長の顔に接近してしまった。
幸い、私の背が低かったからそんな事態にはならなかった。
村長は爽やかに楽しそうに笑っている。

「ええ、良いですよ。
それも条件の一つに含まれていますから。
カグヤさんは読書が好きなんですね」

素晴らしきかな。イケメン=性格が良いの法則は、異世界でも当てはまるようだ。

「あと……言っておきますが、この魔法書はこの世界に存在する事そのものがありえない代物です。
日本語で構築された魔法なんて初めて見ましたよ。
だから気をつけてください。もしも役人にばれたら……ひたすら魔石に魔法を込め続ける人生を送るハメになりますよ?」

日本語魔法はありえない異物。
きっと、未来世界の誰かが考えて作った代物に違いない。
まぁ、私が生きていればその内、誰が発明したのか分かるはずだ。私が選んだ種族:猫の神は寿命なかった記憶がある。
ゲームの頃ならプレイヤーにも寿命はなかった。
復活するのを諦めたら、ゲーム終了ですよ?っていうゲームだからな。





玄関を通り抜けると、村長の家の中は、色んな道具で溢れていた。
村長殿は物作りが趣味らしく、この豪邸も自分で建てたそうだ。
案内された先にある小部屋。そこにある小さな本棚には、一冊の紫色の装丁の本がある。それ以外は木簡の塊が並んでいた。
木簡とは、木の板に文字を書いて巻物のように丸めた代物だ。
紙がなくても、ナイフと木材があれば手軽に作れる事から、時代を問わず活躍している。
しかし、可笑しいなぁと私は感じた。
……なぜ、本棚にほとんど紙の本がないのだろうか?
村長殿。魔法書以外に本はないのですか?

「カグヤさん。
残念ながら……この世界の人類に、紙を作る技術がないんです」

村長殿が顔を残念そうに横に振って答えてくれた。
……そんな馬鹿な。
紙は繊維の塊。つまり、そこらへんの雑草からでも作れるはず。
そこから製紙産業を発展させれば、地球の現代社会みたいに木材を砕いてパルプにするやり方にいずれは到達し、低コストで大量生産できるだろう?

「国際情勢が色々と厳しいんですよ。
カグヤさんは、この世界に来たばかりだから知らないと思いますが……この世界の人類は滅亡の危機に貧しているんです」

エロイナ世界が滅亡しそう?

「人類は魔族とずーと戦争しているんです。
最近の人類は敗北しまくりで、生存領域が惑星の4割程度に激減。僻地へと追いやられているという裏事情があるんです。
金もない、人材もない、何もなくてないない尽くしですよ」

なるほど、それほどまでに状況が厳しくて戦争だらけなら……紙などの開発に予算を投資する訳がないか。
それによくよく考えてみれば、地球のイスラム世界に紙が伝わったのは、中国の歴代王朝と戦争して、紙職人を捕虜にしたから。つまり、紙が誕生してから伝わるのに千年近い歳月がかかっている。
……はぁ、高クオリティの本を読みたい。
だが、希望はある。この魔法書は未来につながる希望。未来では良質な紙が量産され、本が作られている証明に他ならない。
私は本棚から魔法書を取り出してページを開いた。
頭に無数の魔法の知識が流れ込んでくる。完全記憶能力がある私じゃなかったら、完全暗記するのに数年近くかかるだろう。
混沌属性。それはエロイナ世界の最強属性だ。
複数の状態異常を起こし、敵を発狂させ、圧倒的な優位を術者に齎してくれる。
きっと、これからの私の人生で……重宝するだろうな。
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混沌の魔法書
それは紙で出来ている
それは錆びない。
それは燃えない。

内容を完全に暗記すれば、混沌属性魔法を使えるようになる魔法書だ。
日本語という異世界の言語で描かれている。
カグヤ帝国製だ。
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将来、私が生き残れば国を作って、魔法書に使われるような良質な紙を量産するのだろう。
そう思えたら希望が湧いてくる。
待っていろよ、小説、漫画、知識本。
絶対、大量生産して風呂でゆっくり読んでやるからな。

「もっふぅ……カグヤさまぁ……」

エミールが私の袖を掴んできた。
隣を見ると、白い狐耳が垂れ下がって元気を失った彼が居た。
「ど、どうしたんだ?まさか病気か?! 」
私がそう言ってエミールの肩を掴んで揺らすと

「お腹が空きました……ご飯が欲しいです……」

私とエミールのお腹から、空腹を表現する音が鳴った。
村長殿はそんな私達を見て、相変わらずの澄み渡る笑顔で

「おやおや、お連れの子は空腹のようですね?
ご飯を食べますか?カグヤさん。
私の妻の手料理は病みつきになる味ですよ」

久しぶりに美味しい料理を食える。
なんとありがたい事か。
村長殿に感謝しよう。




……後で気づいたのだが、この時『紅い服を着たサンタクロースの事を知りませんか?』
そう村長殿に聞けば、サンタ集団繋がりで、誰が敵なのか簡単に分かったはずなのに、私はウッカリしていた。
ダメだな、私。
名探偵の素質が欠片もない。
所詮、知識だけの読書オタだよ。こんな私が異世界で可愛い猫娘になっても価値は出ないだろうがね。








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カグヤ Lv4  ※レベルで上がるのはHPとMPのみ。その他のステータスは食事と行動とスキルのレベルアップで上昇する。

所持金 約1万

 筋力  5
 耐久  6
 器用  3
 感覚  5
 習得  12
 意思  12 
 魔力  85 
 魅力  23(+100) 
生命力:90(+30)
マナ:90
速度:2000

 クラス   魔法使い
獲得スキル 詠唱(魔法の成功率)瞑想(MP回復)エコ魔法(魔法のストック節約)魔力の限界(MP切れた状態で魔法使った時の反動を抑える)など×1000のスキル
獲得魔法 無の矢(アロー)LV3  混沌の矢(カオス・アロー)LV1
状態異常
称号 『男女』


装備






胴体 ★神聖なる巫女服『カグラ』(90.20)
遠隔武器 ✩純白に光るパンティー『ピンクレディー』(10d6)
弾薬

欲しい魔法
魔力の暴風(無属性の最強範囲魔法)
飛行(フライ)(一定時間、空を飛べる魔法)
ファイアボルト


どうでもいい設定E



村長さんは現実で建設会社を経営していたプレイヤーさんだ。
嫁のエルフ娘はもちろんペット。
そして、ダムや船は、実際に作った人がいないと、とてもじゃないが作れない。
なら、どうすればいいのか?

カグヤ「実際に作った事がある人に仕事を放り投げて内政チートすれば良いのだ」

エミール「さすがカグヤ様!」

村長「私に過労死フラグ?!」


 

この話のコメントまとめ+作者の感想
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