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本好きの成り上がり
12話 「ダブルベット」


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風呂から上がって薄い寝巻きに着替えた私とエミールは、テファさんに大きな部屋へと案内された。
設計図を描いたお礼を兼ねているそうだ……良かった無償労働じゃなかったんだ……労働には報酬で報いるタイプの指導者でありがたい。
その部屋はとても大きく、本棚やテーブルがあり、巨大なダブルベットが中央を占拠している。
ラブホテルでよく見るようなタイプの……カップル御用達しの品だ。
にゃ、にゃんだこりぇ!?
私は思わず、無邪気に微笑んでいるテファさんに

「なぜダブルベット?!」
「あらあら?二人はとても仲が良さそうですもの。
一緒に同じベットで眠っても良いと思いますわ」

いやいや、エミールは私にとって弟や犬みたいな存在なんですよ?
そういうエッチィ関係にはなりません。

「恥ずかしがらなくても良いですのよ?
仲の良い男女が共に過ごしたら……こういう結末になるのが自然ですの」

そう言ってテファさが両手を己の顔に当てて、幸せ天国状態になっていた。
どうやら彼女は、他人の恋を応援するのが大好きなようである。当人から見れば……かなり迷惑だが。
まぁ、良いか。エミールと一緒に居てもエッチィ展開にはならないだろうし。
ダブルベットの寝心地の良さとやらを体験させて貰うとしよう。

「私は邪魔ですわね?
二人でゆっくりしていって下さいね?」

テファさんが扉を閉めて出て行った。
彼女は清楚で料理も上手い理想的な女性なのだが、あの恋愛脳には苦悩させられそうだ。

ガチャッ

少し開いた扉の隙間から、テファさんの青い瞳がこちらを楽しそうに見ている。
そんな彼女の様子を不思議に思ったエミールが首を傾げて――

「もっふ?」

……き、気にするなエミール。
こういった村はプライバシーとか欠片もないんだ。
明日は早いから寝るぞ。一ヶ月間、メルカッツさんを持たせたから、きっと怒ってるはず。

「もっふ!」

私はベットの前で靴を脱ぎ、ゆっくりとベットに横たわる。
エミールも同じく、私の隣に横たわり、一緒に毛布を被った。
こういう時、無邪気な子供は楽である。アダルト展開にならずに済む。
窓から見える青い月が美しい。
このまま静かに時間が流れれば良いのに。



……目を瞑って一時間ほどが経過した頃だろうか?エミールが隣りでスヤスヤ眠っている中。
とある事件が起きた。
隣の部屋からエッチィ声が聞こえる。

「んぅ……アナタったら……素敵……」
「テファ、今日は寝かせないよ」

どうやら、テファさんと村長殿が子作りに励んでいる。それはもう熱烈に。
バカップルらしさに尊敬すら覚える。
だが、エミールの教育に悪いからやめろ。
若い少年に悪影響が出るだろ。 主に獣になって私が襲われる的な意味で。
でも、警備問題的に考えてテファさん達が隣の部屋にいるのはありがたい……?
壁も薄いらしく、やっている事がばればれである。
なぜ、こうなった。

「もっふぅ〜」

幸い、エミールは眠ったまま狐耳をピョコピョコ可愛く動かすだけで、隣の部屋から聞こえるエッチな声の数々は聞いてない。
助かった。無邪気な少年の純情は保たれた。でも、緊急事態になっても彼の目が覚めそうにないから、これはこれで問題すぎる……。
あれ?なんだこれ?
エミールの隣に……生首がある。胴体は付いていない。
ま、まさか……誰かが被害者を殺害して、その遺体をここに放り込んだのか?
だとしたら不味い。きっと魔族達の策略に違いない。私を殺人事件の加害者にするつもりだな!
なんて卑劣なんだ――

「テレサはテレサだよ!カグヤと一緒にスヤスヤーするために来たよ!」

うわっ!?……なんだ、この生首はテレサさんか。目の前の金髪童女生首は天使のように穏やかな笑みを浮かべている。
あー、びっくりッポンだった。
夜に見る生首とか、死体にしか見えないから怖いですよ。

「カグヤ?テレサがいると迷惑?」

いいえ迷惑ではありません。
テレサさんみたいな方なら大歓迎です。
私の隣でゆっくり眠ってください。

「ゆわーい!ありがとう!」

私はテレサさんを持ち上げて、私の左隣へと置き、毛布をかけてあげた。

「息ができなっ!し、死ぬ!」

なんて不便な生き物なんだ。こんな状態になっても生きる事を選択するテレサさんの精神力の高さに感服するしかない。
さぁ、寝よう。明日はダンジョン探索だ。
たくさん魔法使ってスキルレベル上げて無双してストレス解消しよう。
あー、楽しみだなぁ〜。

「カグヤっ!おやすみ!」


〜〜〜〜〜
翌日、朝日の光に照らされて私は起きた。
この世界の太陽の残りの寿命は、50億年くらいありそうなほどに熱い。
右隣にいるエミールは、私の尻尾を優しく掴んで安らかに眠っている。
左隣にいるテレサさんは、ベットの下に転げ落ちていた。
やれやれ、これじゃ風邪を引いてしまうな。
テレサさんは素晴らしい女性だが寝相が悪い――
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
生首の死体がある。少し腐っている。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
おいっー!?テレサさんっー!?
一晩眠っている間に、永遠に眠っちゃ駄目でしょー!?
ベットから落ちただけで死ぬとかっ!HPが低すぎるぅー!?

「テレサはテレサだよ!ぐっすり眠ってスッキリしたよ!」

テレサさんが普通に復活して起きていた。
ああ、そうだった。この世界では気合があれば、復活する事が許される世界観。
普段から死にまくりのテレサさんは、死ぬことそのものに絶対的な耐性とやらがあるのだろう。
全く羨ましくないが。

「カグヤっ!おはよう!」

この時のテレサさんは、本当に幸せそうな笑顔だった。
そこに居るだけで、人を癒せる彼女は素敵な人だと思う。
私もニッコリ微笑み返した。



  この話のコメントまとめ+作者の感想


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