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マッハの音速を超えた攻撃で死亡したはずの俺だったが、何故か生きていた。
ウズノメ神社の一室にある布団で仰向けの体勢で生きている。
俺はすぐにバッ!と布団から飛び起き、これが現実かどうか確かめようと胸に手を当てて

「ちゃんと動いてるっ・・・!」

五体満足で負傷の痕すらなかった。
死んだはずなのに生きている。この現象に俺は見覚えがあった。
ほとんどの神社で行われている蘇生というサービスである。
この部屋には俺と同じように蘇生されたのか、数人の男女が眠っている。
皆、俺よりも遥かに強そうで・・・蘇生サービス料金の1億くらいなら簡単に払えそうな連中だった。

「払える金がないっ・・・!
アズサさんに見つかる前に逃亡するしかないっ・・・!」

イブキのことは後で考える事にして、俺は部屋を立ち去ろうと部屋の襖をあけると、無言で怖い顔をしている凛々しい美女がいる。
綺麗な巫女服を着こなし、とてもクール。笑ってくれれば、そのギャップで惚れてしまいそうな顔を持つ、イブキの母親のアズサさんだった。
俺は久しぶりにアズサさんの顔を見ちゃったせいで、子供の頃のトラウマが蘇り

「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」

「どうして悲鳴をあげるのおおおおおっ?!
自宅に帰ったら、頭がなくなっている死体があったから、親切に蘇生してあげたんだよおおおっ!!!!
あと、料金5億を払ってね!1年以内でいいよ!」

アズサさんは、それなりーに昔は優しかったんだが、俺が就職活動しても無職だったせいでゴミを見るような目をしてくるから心が痛い。
しかも、蘇生サービスの料金が相場の5倍だった。
入手した神々の食材をほとんど食べている現状の今の俺だと、払うのが凄く辛い。

「ぼ、ぼったくりだっ・・・!」

「はあああああああああああああああああああああああああっ!?!?!
死ぬ事に比べれば、これはとっても良心的な料金でしょおおおおおっ!!!!
蘇生料金1億っ!
可愛いイブキを傷つけた心の傷1億っ!
ウズノメ神社の庭を血で汚したから1億っ!
イブキの婿殿に殴りかかろうとした罪で1億っ!
アズサを怒らしたから1億で合計5億なんて当たり前でしょおおおおっ!!!!!
ダンジョンを探索しているのに、どうして5億程度も払えないのおおおおおっ!!!!!?!?」

マッハとは比べ物にならないほどの気迫のせいで何もいえず、ムラサメちゃんの借金と合計して、借金が6億になった。
アズサさんは、ダンジョンの最前線を攻略しているせいか金銭感覚が完全に狂っている。
1億が1日に使う子供のお小遣い感覚だった。

「やっぱり無職には年に1兆くらい稼ごうという気概がないから駄目だね!
イブキとお前が別れてよかったよっ!
本当に無職はゴミだねっ!ゴミっ!
死んだお前の両親に顔も合わせられないよっ!」

どうしよう。
アズサさんを納得させられるだけの経済力って、世界の億万長者ランキングで上位に飾らないとなれないレベルだった。
無職は厳しい。













第1話   それでも巫女さんを諦められない。












背後からイブキとマッハの視線を受けながら、俺は帰路へとつく。
二人の結婚式は2ヶ月後、結婚式の招待状まで受け取ってしまうという屈辱的すぎる事態に涙を流して歩いている。
二か月過ぎれば、あんなに魅力的で可愛らしいイブキが、マッハと布団の中で、快楽で気持ち良くなってエロくなってしまうのだ。
巫女服を脱がすという栄誉も、イブキへの変態的な行為の権利も全てがマッハが独占する事になる。おっぱい。

「これが寝取られか。」

悔しい。一番好きな女の子が俺以外とセックスする事そのものが許せなくて涙がでる。
少し前までは、通い妻をしてくれた幼馴染が今は他人の物だ。
今の俺には、可愛いムラサメちゃんしかいない。
そんな風に俺が泣きながら歩くと、可愛らしい子供達が石を投げながら

「無職がないてるっー!早く就職すればいいのにねっ!」
「無職な事がそんなに辛いの?努力しないからそんな事になるんだよ!」
「バーカーっ!バーカーっ!」
「お母さんから聞いたよ!あの人みたいなことを木偶の坊っていうんだって!」
「まじめに就職活動やってないから、無職っ!無職っ!無職ぅっ!」

心が痛い。
ダンジョンで命がけの面接試験(モンスターとの殺し合い)を何万回と繰り返しても、俺が手に入れたのは無職の王の座だけだった。
ムラサメちゃんは、無理やりレイプしたような感じでゲットしたから、就職活動の結果とは関係ない。おっぱい。
かつての親友が就職してエリートで、全力で努力した俺は無職、この世の理不尽さを感じる。
子供達の純粋な悪意が痛い。可愛らしい女の子達からも石を投げられて、罵詈雑言されると身体がビクンビクンする。
もう少し身体が成長してくれてから罵ってくれると嬉しいと俺は思った。
胸のところを見るだけで残念なちっぱいが広がっているので、可憐な少女達を見ても微妙だった。









自宅へと着く。
今の自宅は、前の小さい木造の小屋ではなく、一戸建ての洋風の一軒家を借りている。
ムラサメちゃんと一緒に探索しているおかげで収入が30倍くらい増えて余裕ができ、その余裕の結果が今の一軒家なのだ。
8人家族が住めるサイズを選んだのも、将来的に作るハーレムのためである。
子供が出来たら、もっと大きい所に引越しをすればいいだけだ。
俺が家の扉をあけて

「家に帰ったっー!ムラサメちゃんを抱いて眠りたいっー!」

既に帰宅済みのムラサメちゃんのおかげで気分がヘブン状態っ!
悩み事がある時は、夫婦の営みの後に、布団で裸のまま会話すると気分が安らぐから最強だと思った。おっぱい。
情事の後に可愛いサムライ美少女と布団に入ったまま会話するために俺は生きている気がするんだ。
悩み事も、辛い事も全部ムラサメちゃんに最近ぶつけている。

「イブキ殿が婚約したのですか。それは良いニュース・・・いえ、主殿には残念なニュースですね。
この調子でハーレムも諦めてください。
そして、拙者と一緒に借金1億を返済して、道場を再建し、子供を作りましょう。
もう、ハーレムを作る余裕なんて消してあげます。」

今も見惚れるような素敵な笑顔で話しかけてくれている。
そんなムラサメちゃんには、俺は

「マッハに殺されたせいで借金が6億に増えて大変だった。
一緒に頑張って借金を返済しよう。」

借金の額が増えたので殴られた。
布団の側にある刀で鞘ごと頭を殴られた。頭が少し痛い。
いつもなら、拳で殴ってくれるのに、今回のツッコミは痛かった。










時刻は既に深夜、隣にいるムラサメちゃんは既に目を瞑ってグーグー眠っている。
俺は真っ暗な室内を見ながら、イブキを手に入れるにはどうすればいいか悩んでいた。
ムラサメちゃんに相談すると殴られて「乙女心です」って言われるから話にならないんだ。

「期限は二カ月か。
これが過ぎれば、イブキとマッハは布団の中でラブラブになるのか。」

マッハをぶちのめしたい。
あんなに可愛い美少女に育った幼馴染を横取りされたと思うだけで殺したくなる。
取り戻すには強くならなければならない。

「モヒカーンさんに斧槍の注文はしたし、それでダンジョンに潜り続ければ、少しは勝算はでてくるのだろうか?」

音速を超える攻撃をしてくるマッハに勝利できる自分を想像できない。
攻撃を視認すらできずに、気づいたら死亡していたという戦いだった。
死んだという事実に気付いた時点で奇跡的といってもいい。
あの強さに少しでも対抗するためには、無職王のレベルをあげて、斧槍の扱いを自力で慣れて上達しないと瞬殺だ。
今よりも深い場所に潜って、リスクの高い狩りをしないと絶対に勝てない。
そして、俺はイブキみたいな可愛い幼馴染を諦められない。

「明日からもっと深い階層に潜るぞぉっー!イブキは俺の嫁だぁっー!
布団の中でエッチな事をしていいのは俺だけだぁっー!」

俺は覚悟を決めた。
イブキを手に入れるためならば、多少のリスクは背負うことを決めたのだ。
あと、眠っているムラサメちゃんに何故かグーで頭を殴られた。不思議だった。

「乙女心という奴です・・・・・・・ムニャムニャ。」

















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