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俺が明るい未来を描いていた頃の昔の記憶。
俺が14歳で、イブキが10歳の時の会話をいつも俺は夢でみる。
当時の俺は筋肉をつけようと斧を振り回し、可愛らしいだけの貧乳少女だったイブキの前で盛大に見栄を切っていた。
10歳のイブキは、活力たっぷりの当時の俺に憧れていたのか、毎日のように斧を振り回す俺を見て喜ぶ少女だった。
俺は14歳の時ですら身長が180cmもあって、神様から立派な職業をプレゼントされる事は間違いなしのマッスルイケメンっぷりだったから仕方がないだろう。
あの時のイブキは無邪気で可愛かった。
今じゃ会う度に無職、無職と言われて心が辛い。

「あーちゃんっ!うちはあーちゃんのお嫁さんになるっ!」

「もっと巨乳になったら、お嫁さんにしてもいいぞっ!俺の将来の夢はハーレムだからなっ!
俺は貧乳のガキには興味がないっ!ハハハハハハっ!」

俺がこんな風にいつも対応すると、10歳のイブキは泣きだして

「あーちゃんのあほぉっー!すけべぇっー!永遠に無職になっちゃぇっー!」

「無職なんてゴミになる訳ないだろっ!この俺の筋肉マッスルっぷりを見れば、とても素晴らしい職業を神様がくれるぜっ!」

イブキは可愛らしい顔に涙や鼻水をたらしまくって、ウズノメ神社に帰ったんだ。
その度に、イブキのお母さんに殴られて大変だった。
イブキのお母さんは、外見は20代の凛々しい美人さんなんだが、神々の食材の食べ過ぎで老化が完全に止まり

無職→巫女→戦闘巫女→大覇王拳法

っていう意味不明な転職をして、ダンジョンの最前線を攻略していたから、遥か雲の上の憧れの人だったんだ。
ただ、口調が凄く残念で、性格がきついから惚れた事はないけどなっ!

「イブキを毎回泣かすとか、何を考えているのおおおおおおおっ!!??!
いい加減学習しろおおおおおおっ!!!!
この脳味噌筋肉ううううううっ!!!!!
謝っても遅いよおおおおっ!!!お前が血の涙を流すまで殴るよおおおおおっ!!!!
これはお前をイブキに相応しいお婿さんにするための血と涙の教育なんだよおおおおっ!!!!」

「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!」












プロローグ  寝取られた。鬱だ。死にたい。











俺はイブキとの仲を取り戻すために、新たにコボルトリーダーを虐殺して獲得した神酒アップルパイパイ5本を持って、ウズノメ神社へと向かっている。
ムラサメちゃんは、武器屋【ヒャッハーワールド】に刀の整備の依頼をしにいったからいない。
これから向かうウズノメ神社は、街の郊外の住宅密集地にあり、葬式、結婚式、死んだ人間の復活の儀式で儲けている神社で、俺が育った家でもある。
実は俺の両親がダンジョンへと向かう途中に乗っていたエレベーターごと転落して、浮遊大陸から地上へと落ちてしまったんだ。
生死の確認はされていないが、あの高度じゃ生きてないって事で、両親の親友であり、イブキの母親のアズサさんの所で育てられたという訳だ。
18歳までは神社に住んでいたんだが、16歳から就職活動始めて、2年間無職という結果をだしたせいで家を追い出され、イブキが通い妻的な事をしてくれていたのである。

「そんな可愛い幼馴染の好意を裏切った俺って最低だ。死にたい。」

思い出すだけで鬱になる。
ちゃんと子供の時の約束を守ってくれたのか、美しい黒髪巨乳美少女巫女さんになってくれたのに、俺が最低だった。
しかし、俺はムラサメちゃんもイブキもどっちも幸せにできる甲斐性のある漢にならなければならない。
イブキと復縁するまで俺はアタックするんだっ!
そう、俺は強い意志を硬め、ウズノメ神社の白くて大きな門へと辿りつく。
門は来客のために昼間は開けっぱなしであり、門の内側にある庭で、イブキが箒をもって庭を掃除していた。
いつも通りの美しい紅い袴と白い白衣で構成された巫女服を着ていて、復縁して布団の中で脱がしたいと思うほどに魅力的な幼馴染である。
向こうもこちらに気づいたのか

「あーちゃん・・・・・」

俺は、イブキのこの呟きと反応に仲直りが出来そうだと一瞬思った。
どうやら、もう怒っていないようである。
俺は一気に仲良くなるためにイブキの方へと走って駆けだしたっ!

「イブキいいいいいいいいいいっ!!!!
俺と仲直りして、布団で一緒に眠ってくれええええええええええっ!!!!」

まさに完璧な叫び。
俺がイブキと何をしたいかを完全に伝えられるセリフだった。
もう、イブキと接近したら、そのまま自宅へと持ち返って、ムラサメちゃんと一緒に夫婦の営みである。おっぱい。
しかし、俺の即席で作られた計画はすぐに破綻する事になる。

「ふはははははっ!」

空から1人の男が落ちてきたからだ。
身長2m、俺と同じくらいの体格で歴戦の勇士のような覇気を持ち、俺よりも質が遥かに良さそうな筋肉・・・見覚えがあった。
俺が栄光の未来を信じていた頃の元親友マッハ・エンペラーだ!
俺がずっと無職だった事を馬鹿にしてきたから、こちらから絶交してやった男っ!
マッハは俺とイブキとの間に落ちてきて、悠々不敵でこちらを舐め切った笑みを浮かべている。
見ただけで分かる実力の違いに俺の身体は動けず、冷や汗しか流せない。
数秒ほど、この状態が続くとマッハが口を開いて

「アージ・ガイっ!俺様の婚約者に近付くとは何事だぁっー!
既に可愛いサムライの少女を嫁にしたと聞いたぞっ!この無職めぇっー!無職っ!無職っ!無職ぅっー!」

「こ、婚約者だとっ・・・!?」

俺は驚いた。無職と何度も言われたせいで心が悲鳴を上げそうなほどに痛いが、驚いた。
マッハは、俺が驚愕している事を楽しんでいるのか、こちらがイラっくるような笑みを浮かべながら

「そうだっ!イブキは俺様の婚約者になったのだっ!
綺麗な黒髪も、巨乳も、ウズノメ神社も全てが既に俺様の物っ!
悔しいか?元親友にして無職の我が友よぉっー!ふははははははっ!!!
悔しいなら跪けっ!泣けっ!絶望するがいいっ!」

「いや、うちは婚約しただけで、そこまで深い関係になってへんで。」

イブキの言葉で俺は安心した。
だが、マッハはイブキの言葉なんて聞いていないかのように無視しながら、俺に余裕を盛大に見せつけて

「俺様は14歳の頃からイブキが好きだったんだっー!
無職のお前には、もう寄越さぬっー!
俺様がイブキを幸せにして円満な家庭を築いてやるっ!
貴様は、俺の最強の家庭を遠くから見ているがいいっ!ふはははははっ!」

「許せねぇ。
俺は貴様を許せねぇっ!
イブキを幸せにするのは俺だぁっー!」

俺はマッハを殴り倒そうと近付いた。
そして、俺の行動が余りにもずさんなものだとすぐに発覚する。
マッハは、超一流ボクサーという三次職についている若手エリートだった事を、怒りで完全に忘れていた。
俺が4年間就職活動して得た無職王は、ただの二次職であり、実力が段違いだったのだ。
相手は音速を超える速度で戦う事ができる化物である。

「マッハパンチっ!」

音速を超える速度で放たれるパンチなんて視認できるはずもなく、俺の頭は一瞬で損壊し、俺の人生は終了した。
走馬灯すら見る事もできない圧倒的な攻撃速度だけが俺の最後の記憶である。







第二章       マッハ皇帝から巫女さんを取り返せっ!   主人公死亡










●マッハ・エンペラー 20歳  身長2mの筋肉マッスルのボクサー
≪音速の速さで繰り出すパンチが素晴らしい人間さんだね。
伝説のマッハ兄貴と同じくらい強いよ。褒めてあげてもいいよ。≫
【@無職lv30】→【A格闘家lv100】→【B超一流ボクサーlv52】≪パンチが凄い事になっている職業だね。≫
武器【素手】
防具【紅いボクサーパンツ】




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