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ゆっくり戻るよ!



俺の喉に極上のお酒の味が染みわたる。
それは喉を通るだけで激痛で苦しむ身体が安らぎ、身体を強くしてくれる。
死んだと思った俺の身体に活力が戻っていた。
俺の口元がとても暖かい。
目を開けると・・・・・そこにはムラサメちゃんが俺の口とブチューとキスをしていた。
この酒は、ムラサメちゃんの口から流し込まれている事がわかった。
ムラサメちゃんは俺が目を開けた事で、安心したように涙を流し、倒れたままの俺の身体に抱きついてくる。
俺は困ったように視線を周りに向けると、そこには虹色に輝く美しいガラス瓶が複数あった。
その虹色のガラス瓶には俺は見覚えがある。
コボルトリーダーを殺害すると、食の神がプレゼントしてくれる神酒アップルパイパイの酒瓶だ。
ボトル1本だけで20万ほどの値段で取引される酒である。
この酒が俺を死から救ったようだ。

兎にも角にも、俺はムラサメちゃんのおかげで今日も生きる事ができる。
そう思うだけで感動して涙がでて、嬉しさのあまり、ムラサメちゃんを逆に抱き返し、全力で抱き締めた。

「ありがとうっー!俺を助けてくれてありがとうっー!
ムラサメちゃんは俺の救いの女神様だぁっー!」

「あ、主殿っ!い、痛いですっ!ほ、骨が折れてしまいますっ!」

ムラサメちゃんが痛いようなので力を緩める。
そして、俺は改めて、お礼を再度言う。
もう、感動しすぎて俺の涙腺は崩壊中で涙がポロポロだ。

「ありがとうっ!無職のまま死ぬなんて酷い死に方から救ってくれてありがとうっ!
絶対に脱無職して、俺はイブキもムラサメちゃんも幸せにしてみせ」

何故か、頭をグーで殴られた。
でも、頑丈なのであんまりダメージはない。むしろ、心が痛い。
殴られた理由もわからず茫然としていると、ムラサメちゃんが少しだけ恥ずかしそうに

「乙女心という奴なので気にしないでください。」

乙女心は秋の空のように移り変わるそうだから、俺も気にしないでおこう。
それよりも、今の俺にはやらないといけない事がある。
10本の神酒アップルパイパイの瓶に目を移し

「とりあえず、家に帰って、おっぱいでワカメ酒をやってくれないか?」

「主殿っー!こんなシチュエーションでも発言が変態すぎますっー!
もう少し、乙女心という奴を勉強してくださいっー!」

「アッハハハハっ!俺はいつでも変態だぞぉっー!」

俺、無職だけど可愛いお嫁さんのおかげで今日も生きる事ができて嬉しかった。
ムラサメちゃんと俺の最初の関係は無理やりで、はっきり言ってレイプだったが、今はイブキ以上にムラサメちゃんの事が好きかもしれない。
借金が1億あっても、こんなに健気な嫁は滅多にいない事を考えると、ムラサメちゃんを嫁にしたのは幸運である。
しかし、俺は欲張りだ。イブキも嫁にしたい。
さっき、殴られたのもイブキの名前を口にだしたせいなのかもしれないが、俺は自分の力でイブキを幸せにしたいのだ。
他の男と結婚して幸せそうにしているイブキなんて見たくもない。
ハーレムの道は凄く険しくても、イブキも絶対に嫁にするぞぉっー!

そんな大望を抱いた俺は自宅に帰り、ムラサメちゃんのおっぱいでワカメ酒と、一日中布団の中で一緒に寝るという超絶リア充生活もできたので気分はヘブン状態っ!
無職だけど、将来への希望が湧いてきたっ!








エピローグ --無職か、就職か--








ムラサメちゃんと24時間くらい気持ち良い事をして気絶させた俺は、神酒アップルパイパイを飲んで身体が元気で困りすぎた。
残った神酒アップルパイパイをほとんど俺が飲んでしまったせいか、眠気が全くやってこない。
既に2日くらい起きても身体が平気だ。
ダンジョン探索は、ムラサメちゃんと一緒にやると決めているので、この暇になった時間を有効利用しようと、テーブルにカロウワーク神殿へ行く事を伝える手紙を書き、服を整えて家をでる。

昼間なので道には夜よりも人が溢れている。
俺の身長2mの巨体のせいで、通行人がうざがっているが気にしない。
子供達が無職、無職と叫んで、石を投げてきても無視した。
ああ、無職は辛い。
なんで、こんなに働いているのに職業がないのだろう。
神様から職業を貰えないと、世間からの風当たりが厳しい。
そんな事を考えながら歩いていると、神殿の近くに到着した

カロウワーク神殿の方は相変わらずの光景である。
無駄に大理石を使いまくった巨大建造物であり、周りには職業や仕事を求める求職者がいる普通の光景だ。
大半は何らかの仕事について働いていると思うが、職業を神様から貰えないとゴミ扱いされるから心が辛い。
俺と同じ思いをしている奴が何人もいるかと思うだけで、心が少しだけ楽になる。
俺はカロウワーク神殿の内部に入り、受付の元へいく。
受付の娘は、背中から大きな蝶の羽を生やしていて可愛らしい。
俺は素敵な笑顔を作って、受付に話しかけた。

「職業案内水晶玉を使わせてくれ。」

「ゆへへへへへっ!毎度毎度、ご利用ありがとうございますのぜっ!」

財布から金を払い、奥の部屋へと俺は入る。
受付の女の子は、大妖精という名前で可愛らしい金髪巨乳美少女だが、既に夫がいるところが残念だ。おっぱい。
職業案内水晶玉がある部屋は相変わらず、武装した兵士達が配置されている最低な空間である。
可愛い女の娘を配置してくれればいいのにと思うが、接客や受付に回されて人材不足なんだと俺は思った。
そして、職業案内水晶玉を、俺の脱無職の思いを籠めて覗き込むと

【あなたは就職できます。】

「ひゃっほぅっー!脱無職の瞬間がとうとうきたぁっー!」

兵士達が俺の大声で驚いているが、そんな事は俺は気にしない。
俺は大喜びしながら水晶玉を覗き込み、文章を読み続ける。

【二つの職業に就職できます。
一つ目は無職王。
レベルアップ時の各ステータスの伸びがとても素晴らしい無職です。
しかし、技術面での恩恵は何もないので、そこらへんは自分で学んで鍛え上げていく必要があります。】

「無職の王様だとっ・・・!?
武器に対する恩恵が何もないのは辛いからパスだ。パス。」

ムラサメちゃんを見ていて思ったんだが、やっぱり武器に対する恩恵がないとダンジョン探索は辛い。
俺は斧で戦うのは嫌になったから、槍とか、槌とか、そこらへんに適性があると嬉しいのだ。
コボルトリーダーみたいに、一定の高い質を持ったモンスターによる数の暴力に晒されると、斧は相性が悪すぎである。
俺は次の職業を閲覧する。

【二つ目はアックスヒーロー。
短い斧を扱う技術が加速度的に伸び、レベルアップすると筋力が著しく上昇する生産職です。
建造物を相手にした時の攻撃力は凄まじく、家屋の破壊や木を斬る時に便利です。
今ならカロウワーク神殿で森林を管理する林業も紹介できます。
林業はとても重要な仕事でやりがいがあります。】

「・・・・建造物じゃなくてモンスターを相手にした時の恩恵が欲しいっー!
林業じゃハーレムをできるほどのお金を得られないだろうがぁっー!
なんで、給金を書かずに職業紹介している時点で詐欺をする気満々だぁっー!」

俺は激怒した。
この職業を選択したらダンジョン探索で深い階層を潜る事が不可能になる。
ダンジョンの中にある木なんて、膨大な数のモンスターに守られたNPC生産木ぐらいしかない。
俺はイブキもムラサメちゃんも嫁にして、イチャイチャハーレムを築き上げたいんだっ・・・!
なぜ、職業の神はわかってくれないんだっ・・・!おっぱい!

「なんで、短い斧限定なんだぁっー!斧槍を使いたいのにこんなのあんまりだぁっー!」

さらば職業。さらば、アックスヒーロー。
俺は短い斧で戦う事はやめたんだ。
槍のように長くて、斧の破壊力がある斧槍をこれから使ってモテモテになるんだ。

【あなたは無職王に就職しました。
世間の目は辛いでしょうが、無職王は無限の可能性に溢れている素晴らしい職業です。
なんにでもなれ、なんにもなれない。これを忘れないでいてください。】

「・・・・・・これは俺を励ましているのか?」

この水晶玉って何なんだろうな。
職業の神が話しているのか、水晶玉に意志があるのか謎だ。
兎にも角にも職業が無職王になった俺は部屋を立ち去る。
相変わらず無職だが、無職の王になったから、色々と人生が変わる事を信じてカロウワーク神殿から離れた。








「やーいっ!無職っー!」
「イブキお姉ちゃんにも捨てられたゴミっー!真性のクズっー!」
「無職なんて18歳までだよね。」
「社会のゴミっー!底辺っー!バーカー!バーカー!」

何故か、俺は子供達に石を投げられている。
無邪気な子供達の悪意が心に痛い。
俺は子供達に、ただの無職じゃなくなった事を伝えようと、空気を深く吸い、盛大に叫んだ。

「俺は無職王に就職したんだぁっー!だから、ただの無職じゃないっー!
それにちゃんと働いて、税金納めているのに馬鹿にするなぁっー!」

子供達は俺の声に驚いて逃げた。
だが、近くにいた主婦の方達がヒソヒソと

「あらまぁ〜、あの人、無職の王様になったの〜」
「大変ねぇ〜、職業の神様から無職しか貰えないとか、将来どうするのかしら?」
「無職王?何かの自称かしら?」
「子供達相手に大人気ないわね〜だから神様は職業をくれないのよ。」

も う 、 心 が 限 界 だ。
俺は涙を流しながら、自宅まで疾走し、眠っているムラサメちゃんを抱き締めて眠った。
女の子の柔らかい身体だけが、俺の疲れた心を癒してくれる。
ダンジョン探索という仕事をしても、職業の恩恵で基礎能力しか上昇してない俺への世間の扱いが酷い。
職業の神様なんて死ねばいいんだ。d






 ・゚・(ノД`)・゚・。 俺、4年間頑張って就職活動したけど、無職だった。
 ・゚・(ノД`)・゚・。イブキと仲直りをするには、どうすればいいんだろう。
 
o(・∀・`o)(o`・∀・´o)(o´・∀・)o ・・・・・・おっぱいおっぱい。

(゚∀゚)ムラサメちゃんのおかげでヘブン状態っ!




第一章  無職を卒業しよう      失敗








●アージ・ガイ 20歳 身長2mの筋肉モリモリのマッチョ
≪もう、基礎能力が上がりすぎて筋肉が鎧代わりだね。≫
【職業】【@無職Lv100】→【A無職王Lv1】≪無職王は基礎能力の伸びだけはいいね。でも、技術とか技術とか、凄く重要な事を忘れているよ。≫
【武器】【頑丈すぎて大きい斧】
【防具】【布の服】



●ムラサメ 16歳 身長160cmの黒髪美少女侍さん。
≪順調に探索者としても、お嫁さんとしても成長しているね。≫
【職業】【無職Lv10】→【A侍lv12】≪素晴らしい近接職だけど、おっぱいのせいで弓は諦めたほうがいい。≫
【武器】【武骨な刀】
【防具】【紅い和服】



あとがき
 

(´・ω・`)ダンジョン探索=就職活動。
頑張れば頑張るほど職業をくれたり、くれなかったり、モンスターとの面接試験(殺し合い)が難関だった。ヒャッハー!

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