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俺は今日もダンジョンに潜る。
労働の神のおかげで、屋内でも明るくて快適だ。
この神様は労働者にとっても優しい。
でも、俺は今日も無職だ。
ゴブリンの屠殺は仕事じゃないのか、そうなのか。

「人間は死ねゴブっー!」
「余所者はここで死んで焼肉になるゴブよっー!」
「皆でバーベキューゴブっー!」

今日もゴブリン達が鬱陶しい。
俺は斧で一気に横薙ぎに振り、3匹のゴブリンの身体を半分に分割してやった。
斧は重心を上手くコントロールすれば、こんな風に威力を激増できる素晴らしい武器なのだ。
こんなにも素晴らしくて壊れ辛い武器なのに、俺が無職なのは可笑しい。
ゴブリン達がゴージャス米に交換される光景だけが救いだった。
俺は一日に5kgは食べるので、毎回50匹以上殺さないといけない所が面倒だが、ゴージャス米の黄金の輝きを見ればが心が落ち着く。







第1話    無職でも女侍の恋人ができる








このダンジョンは、浮遊大陸スイーツの地下全体に広がっていると言ってもいいほどに広い。
最初の第一階層だって、この無駄に大きすぎる大陸での人間の支配領域並に広大で、下手をしたらゴブリンの軍隊に遭遇する可能性があるほどに広い空間なのだ。
あと、この階層で活動しているのは、俺と同じ無職か、ゴージャス米を大量乱獲したい探索者くらいである。
俺みたいにソロで活動している無職はたぶん居ない。
最初は俺も他の連中と組んでゴブリンを狩りをやっていたが、俺だけがずっと無職状態で全員が職についてしまったのである。
俺のようにいつまで経っても、カロウワーク神殿に職業を紹介されない奴じゃない限り、一人で危険なダンジョン探索なんて真似はしないだろう。

俺はあまりにもゴブリンを狩る事が暇になりすぎている内に、斧の振り方を工夫する事が日常になっている。
ゴブリンを効率よく真っ二つにするためには、どれくらいの力で斧を振ればいいのかを何千通りと試し、複数のゴブリン相手にはどう振り回して効率よく虐殺するのか考えながら戦っているのだ。
俺はゴブリン専門の探索者といってもいい。
そんな事をイブキに話したら、ゴブリンキラー(笑)って笑われたのが悔しかった。
ドラゴンキラーなら英雄っぽくて格好いいが、ゴブリンキラーだと弱い者苛めをやっているような称号だと思った。

「これだけ頑張っても、何で俺は無職なんだぁっー!」

絶対に可笑しい。
今日だけでも200匹は殺しているのに、どうして俺は無職なんだ。
ゴージャス米の重量が20kgに到達して少し重いぞ。
早く職につきたい。
俺がそんな事を考えながら、ゴブリンを追い掛け回して、斧で背中から真っ二つにしていると、女性の悲鳴が遠くから聞こえた。

「きゃっー!」

可愛い少女の危機だと悟った俺は走る。
ゴブリンは人間の女性には欲情しないので、早く駆けつけないと食材にされているはずだ。
ゴブリン狩りによって鍛え上げられた俺の身体は迅速に動き、悲鳴の現場まですぐに到達する。
そこには、50匹はいるであろうゴブリンの死体が次々とゴージャス米に交換される白い光と、紅い和服を着た女侍が、折れた刀を持って泣いていた。
女侍は、イブキと同じくらいの年齢で、とても義理堅そうで可愛らしい泣き顔をしている。
俺は彼女が怪我したのではないかと思って声をかけたが、返って来た言葉は違った。

「拙者の・・・・・・拙者の刀が折れてしまったっ・・・・・・
ゴブリンを斬りすぎて油で錆ってしまったのですっ・・・・」

なんだろう。
刀じゃなくて斧みたいな頑丈な武器を選べとアドバイスをすればいいのだろうか。
刀みたいな繊細な武器は、扱いが凄く難しく、何十匹も斬り殺すダンジョン探索には向いていない。
鈍器のような頑丈さを持っていないと、この業界ではやっていけないのだ。
だから、俺は斧の愛好家を増やそうと

「刀はダンジョン探索には向いていない。
俺のように斧を使えばいい。頑丈な武器じゃないとやっていけない。」

「・・・・・・拙者の職業は侍なので、騎馬と槍と刀と弓しか恩恵がありません。」

「そうか、悪かったな。」

気まずい雰囲気になったので俺は場から立ち去ろうとした。
すると、女侍ちゃんが俺の服をガシッと細腕で掴んで放さない。
俺は、モテモテのハーレム期が到来したのではないかと一瞬思ったが、次の彼女の言葉で違うとわかった。

「すいませんが武器がないので、ダンジョンの入り口まで送り届けてもらえませんか?
ここで見捨てられると、拙者はゴブリンの夕餉の食卓に並ぶ事になります。」

「・・・・・・わかった。」

俺は美少女には優しいので、ダンジョンの外まで女侍ちゃんを送り届ける事を決めた。
その道程で惚れてくれるかもしれないという淡い思いもある。
帰る途中に30匹ほどのゴブリンに遭遇し、全員を斧で一撃で殺害した光景を見せて、その度に女侍ちゃんの方をチラチラと見る。

「・・・・・?拙者を見てどうかしましたか?」

天然っぽくて可愛らしいが全く脈がなかった。
俺は悲しい気持ちになりながらもゴブリンを屠殺する作業を繰り返し、女侍ちゃんを無事にダンジョンの入り口まで護送する事に成功するが、見惚れているような感覚が全くないので残念だ。
ダンジョンの入り口は、モンスターが侵入しても大事なように巨大な門が複数築かれており、武装した兵士達がリア充死ねという視線を向けてくる以外には何の問題もなかった。
護送の役目を終えた俺に、女侍ちゃんは感謝して頭を下げて

「ありがとうございます。貴殿がいなかったら、拙者はゴブリンの食卓に並んでいたかと思うと感謝を仕切れません。
よろしければ、職業と名前を教えてもらえませんか?」

職業紹介っ・・・!
なんて酷い奴なんだっ・・・!
俺は無職としか答えられないのに酷過ぎるっ・・・!
俺は精神的なダメージを受けながら、女侍ちゃんに正々堂々と男らしく答える。

「俺の名前はアージ・ガイ。20歳の・・・・・・無職だ。」

場の空気が重くなった。
20歳で無職というのは、普通はありえない事だけに、俺は軽蔑されるかもしれない。
女侍ちゃんが同情の視線を向けてくる所が余計に辛い。
彼女は俺の両手を掴んで

「だ、大丈夫ですっ!貴殿ならきっと就職できますっ!
あの斧の扱いは、私の剣と同じくらいでしたっ!」

こんな可愛い16歳の女の子と同じレベル。
俺の心はへし折れそうだ。
俺が重い沈黙を保ち続けていると、女侍ちゃんは余計に心配になったのか、この空気的に可笑しい自己紹介まで始めている。
すごく唐突な自己紹介だ。

「拙者の名前はムラサメ・アヤモリと申しますっ!
職業は侍、Lvは2ですっ!」

「俺は無職Lv80だ。職があるのが羨ましい。」

俺は心が辛いので場から逃げようとする。
ずっと無職のせいか、逃げ癖がついてしまった。
そんな逃げようとする俺にムラサメちゃんは声をかけてくる。

「あ、あの・・・・・・よろしければ拙者とパーティを組んでもらませんか?
貴殿と拙者がコンビを組めば、きっと完璧になると思いますっ!」

こ、これはっ・・・!
俺のモテモテ期が到来したのかっ・・・!
ヒャッホゥッー!と俺は気分を盛り上げて、ムラサメちゃんに近付いて小柄な身体を抱き締めて、子供も泣きだすような笑顔で叫ぶ。

「ありがとうっー!一人で探索する生活はずっと辛かったんだぁっー!
俺の心も身体も慰めてくれぇっー!
宿にとまって深い仲になろうっー!」

「え?え?あっ、あのっ?」

俺の孤独なダンジョン探索生活が終わりそうで心が温まるようだった。
そのまま家に帰るとイブキに見つかるかもしれないから大変なので、恥ずかしがっているムラサメちゃんをお姫様抱っこし、奮発して宿にとまり、同じ部屋で気持ちのいい汗を流す熱い夜を裸で過ごしたのである。
やりすぎた疲労で気絶したムラサメちゃんも俺と一緒に布団に寝ていて、最初は涙を流して抵抗していたが、命の恩人という事もあり、最終的に恋人になれた。
なんか主殿とムラサメちゃんに呼ばれて、凄く新鮮な気分で俺は興奮してムラムラした。



あと、俺はムラサメちゃんと一緒に同じ部屋で眠って思った事があるんだ。
その場の勢いを利用して、最後までやれば、OKと。
無職だって恋人を作れるんだ。
でも、イブキには黙っておこうと思う。
ばれたら、イブキもハーレムに加えられない。
というか薙刀で斬り殺されて、俺の人生は終了だろう。







(。・ω・)ノ゛どうしよう。俺、脱童貞しても無職だ。

あと、ムラサメちゃんは外見の割には大きなおっぱいだった。おっぱいおっぱい。
紅い和服のせいで着痩せしていたようである。






●アージ・ガイ 20歳 身長2mの筋肉モリモリのマッチョ
【職業】【@無職Lv80】≪無職はほとんどステータスもあがらなくて辛いね。≫
【武器】【頑丈すぎて大きい斧】
【防具】【布の服】



●ムラサメ 16歳 身長160cmの黒髪美少女侍さん。
【職業】【無職Lv10】→【A侍lv2】
【武器】【なし】
【防具】【紅い和服】



●イブキ 16歳 身長165cmの凛々しい黒髪巨乳美少女巫女さん。
【職業】【@無職Lv10】→【A巫女Lv3】≪回復も補助も前衛もできる中途半端な職業さんだね。巫女服が可愛らしいと思うよ。≫
【武器】【なし】
【防具】【巫女服】




あとがき


(´・ω・`)植物が子供を作るから、絶倫っ・・・!







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