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生贄食材召喚。それは浮遊超大陸スイーツで発見された新しい召喚術だった。
食の神クッキングマスターと契約を交わし、モンスターを殺害して生贄に捧げる事で、神々の食材を代わりにくれるのである。
食べるだけで身体が強化されて不老不死に近づき、強いモンスターを倒せば倒すほど極上の食材が手に入る。
世界中の人々が富と不老の身体を得るために探索者となる新しい時代の到来だった。

そんな新しい時代の中、身長2mの筋肉モリモリの1人のゴツイ青年が立ち上がる。
青年は可愛い美少女だらけのハーレムを作り上げるための経済力を得ようと、探索者としてダンジョンに潜ったのだ。
周りの人々も、その体格から将来を期待していたのだが・・・結果は残念だった。
人外のモンスターだらけの環境で、巨額の報酬を得るには職業と呼ばれる祝福がなければ不可能だからだ。

「なんで俺は無職なんだぁっー!お願いだぁっー!職業をくれぇっー!」

職業の神カロウーワークが、青年がどれだけ頑張っても職業をプレゼントしてくれず、ずっと無職Lvを上げ続けている。
無職は無職であるが故に、周りから軽視され、本人がどれだけ頑張っていようと馬鹿にされる。
まだまだハーレムの道は険しかったのだ。









プロローグ     無職は辛いよ







やぁ。俺はアージ・ガイ。職業欲しさに無職Lvを上げようとゴブリンを毎日虐殺している仕事をやっているガチムキの筋肉マッチョだ。
ゴブリンというのは子供みたいに小さい人型のモンスターで、斧で簡単に真っ二つにできる雑魚なんだ。
俺の使っている斧は、リーチが短すぎて扱い辛い代わりに、その重量で敵の防御ごと虐殺できるのが強みなんだぜ。
剣や槍なんて、この圧倒的な攻撃力の前にはゴミみたいなものさ。

「なんで俺は無職なんだぁっー!ゴブリンなんて死ねぇっー!」

こんな風にゴブリンを頭から真っ二つにして、二つに増やす事すら容易いのに、カロウーワーク神殿で無職以外の職業を俺は貰えない。
早く新しい職業が欲しいね。ハーレムを作るために、もっともっと深い階層で狩りをしないといけないだけに。。
ゴブリンの死体はしばらくすると、俺の契約している食の神クッキングマスターが勝手に持っていって、デリシャス米100gと交換される。
ちゃんと布の袋に入っている所がすごくありがたい。
俺はデリシャス米が入った袋を拾い、背中にあるリュックサックの中に入れ、ダンジョン探索を続ける。
ダンジョンそのものは、労働の神カジュウロウドーウが探索者のために昼でも夜でも仕事ができるように24時間明りがついている。
なんでも、働いている人間を見るのが大好きな神様だそうだ。
この神様のおかげで2交代勤務、3交代勤務で工場が稼動するようになったらしい。







しばらく歩き、道中襲ってくるゴブリンを40匹ほど斧で真っ二つにして、デリシャス米を手に入れた俺はダンジョンを出て、カロウーワーク神殿の方へと向かう。
人々に職業という名前の祝福と、生きていくための仕事の両方を紹介してくれるありがたい場所だ。
ここに登録した労働者の50%が1年以内に死ぬという噂があるが、俺は登録して4年くらい過ぎても死んでないし、ただの噂だと思っている。

カロウーワーク神殿の外見は、大理石でできた豪華な神殿であり、職業を求める無職達が常に出入りしている。
全員辛そうな目をして、俺が来たダンジョンの方向へと歩いているのは、ダンジョン探索の仕事をプレゼントされたからかもしれないな。
俺みたいな無職でもやっていけるから、職業の祝福のある連中は楽勝でつまらない仕事なのかもしれない。
俺はカロウーワーク神殿の中に入り、お金を払って、職業案内水晶玉のある場所まで通る。
この水晶玉は青く透明で美しく、これを売るだけで家が一軒買える値段なそうだが、部屋の周りには武装したガードマン30人がいるので盗難の心配は全くない。
30人のガードマンに監視されながら、俺は職業の祝福が貰えるかどうか、水晶玉を覗いてみると適性のある職業が紹介される。

【あなたの適性は無職です。現在は無職Lv80です。
無職は何にでもなれる可能性がある素晴らしい職業です。】

余計なお世話だ。この野郎。周りにガードマンがいなかったら、斧でパリンパリンとゴミにしてやる所だったが、俺も命が惜しいので壊さない。
涙を流すのを堪えて、カロウーワーク神殿を出て帰路へとたつ。
周りには、俺と同じように辛そうにしている人間達の姿が見えていた。

「いやぁ・・・娼婦はいやぁ・・・」
「農民だったっ・・・!食うだけで精一杯で未来もないっ・・・!」
「今日も無職だ。お金がない。」

彼らが呟く独り言は絶望に包まれている。
カロウーワーク神殿は、本人の適性を考えて祝福をくれるが、本人が望んでいない職業を普通に紹介してくれるところが痛いな。
適性があっても、天候で収入が0になる事もある農民になりたい奴はあんまりいない上に・・・・・そもそも耕す土地もないのに農民に適性あっても無理ゲーだろう。
他人の土地を耕作して、収入のほとんどを国と土地持ちに奪われるだけの困窮生活になるぞ。
労働の神は、農業を舐めすぎたと俺は思う。


俺はそんな彼らの列と途中まで一緒にしょぼしょぼと家に帰る。
俺の家はとても家賃が安い代わりに、小さな木造の小屋だ。
街の外れにあり、交通も不便で人気がない。
しかし、そんな俺にも救いがある。家のボロボロの扉をあけると

「あ?アーちゃん帰ってきたん?
今、昨日のゴージャス米でカツ丼を作っているから少し待ってや〜。」

腰まで届く美しい髪を持つ可愛らしい美少女巫女さんが俺の家の台所で料理をしているのだ。
俺が職業を得られることを願って、カツ丼を作ってくれるところが健気で愛らしい。
俺よりも4歳年下の16歳で、兄妹のように育ってきた妹分であり・・・俺の婚約者だ。
俺が無職でも頑張って探索者で生きていけるのは、ハーレムは出来なくても、嫁になってくれる美しい彼女がいるからである。
もう、彼女の顔を見るだけで心が癒されて、涙がでるほどに嬉しい。
思わず、脱童貞をやりたいくらいにムラムラする。

「イブキっー!俺はお前を愛してるっー!」

「あかんでー。そういうのは結婚してからやでっー。
あーちゃんが無職でも、神社の神主やってくれるならウチは結婚してもええからな〜。」

無職。その言葉が辛いから、明日も俺はゴブリンを虐殺する求職活動をやるしかない。
早く職を得て、イブキから無職と呼ばれない生活をしたい。
俺は、後何匹のゴブリンを虐殺すれば、カロウーワーク神殿で職を得られるのだろうか。

俺 は 職 が 欲 し い。 こ ん な 可 愛 い 婚 約 者 が い て も ハ ー レ ム を 作 り た い。

今の俺の経済力じゃ、ただのヒモ男にしかなれないっ・・・!
なんという屈辱っ・・・!
毎日働いているのに無職と呼ばれないといけない辛さっ・・・!
イブキがいなかったら、自殺しているかもしれないっ・・・!

「職が欲しいっー!ハーレムを作りたいっー!」

「・・・・・・うち、お嫁さんになるのやめようかなぁー?
うちで満足できないとか、最低やでぇ〜。
無職のアーちゃんがうち以上の女性と結婚できると思えへんわー。」

俺の心は今日も痛い。
でも、イブキがゴージャス米で作ったカツ丼は黄金に輝いていて美味かった。ごっつぁんです。
神々の食材は食べるだけで元気が湧いて、無職のLvが上がる。
このまま無職のLvをあげたらどうなるのだろうか。


この飯の美味しさに今年中に無職を卒業できなかったら、ハーレムを諦めて、イブキだけを愛そうと俺は思った。
このままいくと、可愛い嫁なしの非モテ男になりかねないっ・・・!
俺はイブキと一緒にNPC生産木で、子供の誕生を祈って良いくらいに好きだぁっー!
明日からも脱無職に向けて仕事を頑張るぞぉっー!





●アージ・ガイ 20歳 身長2mの筋肉モリモリのマッチョ
≪無職のおかげで全ステータスが均等にアップしていてバランスがとれているね。
バランスが取れすぎて、何にも極められない有様だよ!≫
【職業】【@無職Lv81】≪無職はほとんどステータスもあがらなくて辛いね。≫
【武器】【頑丈すぎて大きい斧】
【防具】【布の服】

●イブキ 16歳 身長165cmの凛々しい黒髪巨乳美少女巫女さん。
≪中途半端なステータスと職業だけど、無職よりはましだね。≫
【職業】【@無職Lv10】→【A巫女Lv3】≪回復も補助も前衛もできる中途半端な職業さんだね。巫女服が可愛らしいと思うよ。≫
【武器】【なし】
【防具】【巫女服】



あとがき

(´・ω・`)十二国記の再放送を見て、女性が子供を産まずに植物が生産してくれるなら、女探索者がたくさんいてもいいんじゃねと思って、子供は植物から生えてくる仕様にしてみた。







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