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3話 豚の国E 二章最終話
「豚の分際で人間様に迷惑かけるなよ!死ぬなら他の浮遊大陸に落ちろ!」名も無き市民A 14KB
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無数の星が落ちてくる破滅の大地。そこから逃げ出す十隻の空中戦艦。
飛行船から発展した兵器という事もあり、遅い速度で空をノロノロと突き進む。
逃げる船の中に『ブータ家を象徴するライオンの紋章』を記した船があった。艦橋にボンレスハム体型のオークがいる。
この豚の名をオロ・フォン・トンカッツ・カツッドン・ヤキッブタ・ブタッドン・ブータ皇帝――略してオロ皇帝。
豪華な紅い絹の服を纏い、片手にワイングラスを持ち、無数の隕石で滅びゆく浮遊大陸『ブータ』を見ていた。
「ふん、今頃、いい気分だろう?ナポ王。
俺の民草が20億死のうが、俺は死なぬ苦しまぬ。
まだ200億も居るのだ。
青空連合を貴様に叩きつければ、俺の勝利は揺るがない。
せいぜい、今だけは勝ち誇るが良い。
次に出会う時が、貴様の最後だ」
愚痴だ。オロ皇帝は最低最悪な現実から逃避している。
妄想の中で、ナポの手足を切り刻み、豚の餌にする姿を想像するだけで――愉快になっていた。
完全に負け犬だ。いや、負け豚だ。
負けた豚なんて生きる価値すらない。
そんな事も理解できないオロ皇帝は、グイッとグラスを傾けて酒を飲み干し、後ろにいるはずの小姓達に向けて叫んだ。
「おい!小姓ども!
酒が足りない――え?」
死体だった。
後ろにいたはずの小姓、艦橋のオペレーター、艦長など、全ての豚《オーク》が切断されて死んでいた。
居るのは紅い機械歩兵3機と、ピンク色の外装の機械歩兵『ニュー・ピンク元帥』
周りを飛んでいた9隻の空中戦艦は、大爆発を起こし空の下へとゆっくり消えていく。
落下する艦艇から、無数の豚が落下して……まるで豚が生ゴミのようだ。
「おっほほほほほっー!
豚が屠殺場から逃げる事は出来ないわよ!」
ピンク元帥が右腕で、豚《オロ皇帝》の喉元を掴み大笑いした。
「え?え?」
豚は未だに現状を理解していない。
それもそうだろう。
機械歩兵達が、音もなく、周りにいた豚を皆殺しにして、9隻の護衛艦を同時に破壊した。
ただ、それだけ。
それを理解する事は――
「あんたはチェックメイトよ!
さぁ、どのような死に方がお望みかしら?
絞殺?火刑?アイアン・メイデン?」
オロ皇帝という名乗る豚の人生が詰んだという事だ。
「ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!」
豚は叫んだ。己の命が風前の灯火である事を理解したくなくて叫んだ。
ピンクは、ゆっくりと機械の手に力を込め、喉を締め付けて豚の悲鳴を無理やり止めさせる。
「豚の悲鳴は醜いわ。
黙りなさい。黙らないと殺すわよ?」
「は、はいぃぃぃ!」
太りすぎた豚は素直になった。
だって――大人しくしていたら、きっと殺されない。
なぜなら自分は200億人に減ったブータ大帝国の皇帝だから。
生かした方が利益があるから殺されない。
そう思い込んでいる。
だが、ピンクの機械の顔を見ていると……豚は不安になった。
普通、機械は利害で物事を考えない。命令された事を実行する『道具』に過ぎない。
そういう考えが頭によぎって、豚はブルブルと震える。
「アンタさ。
なんで自分の国を捨てて逃げたの?
責任者が責任取らずに、国民に全ての責任を押し付けて逃げるとか情けないわよね?
ナポ様とは大違いだわ!
アンタ格好悪いわ!ダサイわ!臭いわ!豚だわ!ボンレスハムだわ!糞虫だわ!虫以下だわっ!謝りなさいよ!」
今まで他者から馬鹿にされた事がない豚の顔は……怒りで真っ赤に染まっていた。
だが、豚の命はピンクに握られている。少し力を込められただけで首の骨が壊されて死ぬ立場。
何もできない。悔しいっ……ビクンビクンっ……!豚だけど涙が出ちゃう。
「アンタみたいな虫以下の豚に相応しい罰を用意するわ!
アタシにたくさん感謝しなさい!おっほほほほほほっ!」
ピンクが豚の首から手を離し、代わりに両肩を掴んだ状態で空間転移を行った。
転移した先は――青空。
無限に広がる大空。真下には雲が広がっている。
壮大な大自然。豚は、自分がこれから何をされるのか理解した。
まさか、まさか――
「俺を落とす気かっ!?」
「あら?豚の癖によく理解できたわね?
ひょっとしてアンタも似たような事をやった事あるの?」
空から落とす虐殺。
現実でもそれなりに使われている虐殺方法だ。
高い所から落とせば、海は速度のせいで壁となり、人体は衝撃でバラバラになる。
あとは海に住む魚達が食べて証拠隠滅してくれる……この世界には空と浮遊大陸しかないから、海がある場所に落ちるのは天文学的確率だが、この豚は似たような事をたくさんしている。
そう、800人の兄弟を皆殺しにした時。
この豚は「パーティを開催するから来い」と言って、ほとんどの兄弟をおびき寄せ、空中戦艦から全員落として殺したのだ。
それを思い出した豚は叫ぶ。
「嫌だ!
俺が死ぬのは世界の損失だ!
やめろぉー!皇帝をこんな方法で殺して良いと思っているのか!?」
豚はピンクの腕の中で暴れた。
自分が同じ事をやったから、この処刑方法の酷さをよく知っている。
無限に空が広がる世界。
この世界の空を落ちるという事は――ほとんどの場合、浮遊大陸にぶつかる前に、餓死で死ぬ事を意味する。
餓死は最悪と言われるほどに酷い死に方だ。
飢える苦しみは地獄と聞く。
暴れる豚に、ピンクはゾッとするような怖い声で
「……アンタさ。
モフモフ大陸にいるエルフ娘に酷い事をしたでしょう?
食用にしたり、性奴隷にして地獄のような屈辱を味わせたでしょう?
なら、納得しなさいよ。
この結末はアナタの自業自得だわ。こうなるのが運命だったのよ」
「た、助けろ!
俺を助ければっ!貴様に総督の地位をくれてやる!
い、いや、王の地位をくれてやるぞ!
どうだ!?俺に仕えないか!俺の国は広大だぞ!幾らでも土地がある!」
豚はピンクを仲間に引き入れようとした。
大抵の知的生命体は、土地や富の多さに惹かれ操られる。
だから、豚はピンクと交渉しようとしたが――返って来たのは馬鹿にするような機械の笑み。
「……アンタ馬鹿ぁ?
アンタみたいな無能な豚に仕える訳ないでしょ?
豚が200億匹残っているらしいけど――ナポ様が本気になったら一日もかからずに皆殺しよ?
そんなゴミみたいな国いらないわ」
「ゴ、ゴミ?お、俺の偉大な国がゴミ?」
「ゴミよ。プレイヤー様達が作った建物をほとんど壊した時点で、豚には生きる価値がないわ。
それに――」
ピンクの冷たい笑み。冷たい目線が豚を貫いた。
「アタシは、体は機械だけど、心は『乙女』なの。
エルフ娘や獣娘を散々、犯して凌辱した豚を許せないわ。同じ女としてね。
彼女達の苦しみの何分の一かでも味わいなさい。
それが豚さんの義務よ。
あ、そうだ」
ピンクが異次元にあるアイテムボックスから、大きなリュックサックを足で取り出し、豚に持たせた。
「この中に水入ってるから、落下中に飲みなさい。
そうすれば一週間生きれるわ。
……たくさんたくさん反省したら、アンタの事を助けてあげるかも?
期限は一週間よ。一週間以内に今までの罪を洗いざらい、叫びなさい。
このリュックサックに付いている機械で、あんたの発言を全て聞いてあげるわ。
まぁ――謝罪しなかったら一週間後に、浮遊大陸にぶつかって死ぬ軌道だけどね」
そう言ってピンクは豚を容赦なく落とした。
翼がない豚は高速で、スカイダイビングっ!
「うわぁぁぁぁぁぁ!!本当に落としやがったぁぁぁ!!
ふざげるなぁぁぁぁ!!」
「おっほほほほほほ!水は節約して使うのよ!豚さん!
足りなくなったら知恵で工夫して乗り切りなさいっ!」
豚は落ちる。
無限の大空を。
飛べない豚は、本当にただの豚だ。
落ちる、落ちる、落ちる、落ちる、落ちる、落ちる、落ちる、落ちる、落ちる、落ちる、落ちる、落ちる、落ちる、落ちる、落ちる。
「誰が反省や謝罪をするかぁぁぁぁ!!!!!
俺はオロ皇帝!誰にも媚びぬ!跪かぬ!貴様らに謝るくらいなら死ぬ道を選ぶわぁー!」
★三日後★
豚は落ちていた。
三日間落ち続けた。
そしたら少し離れた浮遊大陸にいるドワーフの少年と大人が、無限に落ちまくる豚を見かけて
「親方ぁー!
空から豚が落ちてるっー!」
「美少女じゃないのか、残念だな」
「上に豚の国があるんですねー!」
「この前、800匹ほど豚が落ちてきたな」
「焼いて食べたら美味しかったです!」
「だが、あの位置じゃここには落ちてこないな……」
「おーい!豚!
こっちに落ちてこいー!落ちたら食べてやるー!」
などという事を言って、豚が近づいてこないから残念そうに肩を竦めた。
彼らの食欲まみれの感想を他所に、豚は落ち続ける。
青い空は美しい。
そして残酷だ。
飛べない豚には空は厳しい。
★四日後★
飛行戦艦に乗る学者風の男と、逞しい軍人が
「まるで豚がゴミのようだ!」
「誰が捨てた!空を豚で汚すなんてけしからん!
豚は屠殺場で締め上げて、食べないと駄目じゃないか!」
落ち続ける豚を見て叫んだ。
飛べない豚は、ただの豚だ。
★五日後★
落ち続ける豚。
さすがにこれだけ落ち続けると、反省したくなった。
飢えて苦しい。風冷たい。何か食べたい。
謝罪すれば助かる(かもしれない)。
その希望に縋って豚は、リュックの小さな機械に向けて叫びまくる――己の罪を
「ずいまぜんでじだぁぁぁぁぁ!!
実は前の皇帝が死んだのは、俺が毒殺したからでずぅぅぅぅっ!!
手際よく兄弟を皆殺しにできたのは、事前に準備したからなんですぅぅぅぅ!!
政治力が凄くて頭が良くてずいまぜんっ!!!!
だから許じでぐだざぃぃぃぃぃっ!!」
『そうそう、その調子よ。
謝り続ければ助けてあげるわ』
機械からピンクの声が聞こえた。
男のようにも、女のようにも聞こえる奇妙な声だ。
豚は反省すれば助かると思って叫び続ける。
「お母さんっ!ずいまぜんっ!
鉄板の上で焼き殺してごべんなざいぃぃぃっ!!
火傷で踊るお前の姿を見て笑ってずいまぜんっ!!
許じでぐだざいぃぃぃぃぃっ!!
弟も生きたまま焼き殺してごべんねぇぇぇぇ!!
許してくださいぃぃぃぃっ!!別に悪気があった訳じゃないんですぅぅぅっ!」
酷すぎる罪の懺悔。
しかも、まだまだ豚の自供は続く。
「核兵器で皆殺しにした10億人のオークずいまぜんっ!!
見せしめのためにっ!何の罪もないのにっ!核の炎で焼き払ってずいまぜんっ!
でも、必要だったんでず!統治のだめに恐怖がっ!
だから許じでぐだざいぃぃぃぃぃっ!!
たくさんたくさん俺に従わない奴を拷問じでずいまぜんっ!!
浮遊大陸から突き落としたヴリューク地区の市民の皆さんずいまぜんっ!!
手足を切断じで嬲り殺じにじだ新人類統合体の皆ごべんなさぃぃぃぃっ!!
俺が悪かったですぅぅぅぅっ!!許じでぐだざぃぃぃっ!!」
酷い懺悔だ。
ピンクは頭が痛くなりそうだった。
★六日後★
さすがに一日も経過するとネタが尽き、反省内容がオークへの仕打ちから、他種族へ行った酷い事への反省に変わっていた。
「エルフの皆さんっ!ごべんなざいぃぃぃっ!!
切り刻みながら犯してごべんなさいぃぃぃぃっ!!
食べて俺のウンコにしてずいまぜんっ!!
俺が悪かったですぅぅぅぅぅっ!!
エルフ肉のステーキ美味しかったですぅぅぅっ!!
エルフ娘って肌が真っ白でエロかったですぅぅぅっ!
貧乳を馬鹿にじでごべんなざぃぃぃぃぃ!
貧乳は希少価値でじだぁぁぁぁ!巨乳よりも素敵でずぅぅぅっ!!」
これを聞いているピンクは呆れた。
罪深すぎる。ちゃんと録音して後で獣人の皆に聞かせてあげなきゃと思った。
「獣人の皆さんごめんなさいぃぃぃぃっ!!
犯した後に殺じでっ!尻尾を抜いて、コートにしましたぁぁぁぁぁ!!
本当ずいませんっ!!
謝罪するがら許してぐだざいぃぃぃぃぃっ!!
感謝して狐娘のステーキ食べましたぁぁぁぁ!!
生きたまま生皮を剥いでずいまぜんっ!!本当にずいまぜんでじだぁぁぁぁっ!」
豚はまだ許されなかった。
お腹が空いて辛い。頭が痛い。
水はもう尽きた。
今飲んでるのは、自身の小便だ。
手足すらボンレスハム体型だった豚が、今はかなり太った豚に見える程度に痩せていた。
「お腹空いたぁぁぁぁぁ!!
誰かぁぁぁぁぁ!食べ物をぐれぇぇぇぇぇ!!
エルフ肉食べたいぃぃぃぃぃっ!!
美味しい獣人の肉も食べたいぃぃぃぃっ!!
誰がだずげでぇぇぇぇぇぇ!!」
豚は飢えた。あまりにも飢えすぎた。
だから、描写する事も厭うような●●物を食べて飢えを凌いだ。
「早く殺してぇぇぇぇぇぇぇ!!
助けなくても良いから殺じでぐだざぃぃぃぃぃ!!
お腹すいて辛いんですぅぅぅぅっ!!
お願いですぅぅぅぅっ!早く死にたいぃぃぃぃっ!!
殺じでぇぇぇぇぇぇぇ!!」
★十日後★
豚はまだ落ちていた。
もう一週間が過ぎたのに浮遊大陸が真下に見えない。落下して死ねない。
飢えて苦しい。喉が乾く。身体の一部が腐り始めた。
豚は理解した。自分がピンクに騙されたのだと。
この落下劇には希望なんてものは存在しなかったのだ。
「ふざげるなぁぁぁぁぁぁ!!
よくも俺との約束を破ったなぁぁぁぁ!
恨んでやるぅぅぅっ!!恨み殺してやるぅぅぅ!!
ナポぉー!末代まで呪われろぉぉぉ!
貴様は俺を苦しめて殺した事を後悔するのだぁー!
……お腹空いたぁぁぁぁ!!食べたいぃぃぃ!!
ケーキ食いたいぃぃぃぃっ!!酒飲みたいぃぃぃっ!!」
『あら?助けてあげようと思ったけど……反省してないようね?
あーあー残念ねぇ。自分から助かる道を閉ざすなんて愚かな豚だわぁ』
リュックサックに付いた機械から聞こえる、突然のピンクの言葉に豚は絶句した。
本当の絶望は、希望をへし折った後に生まれる。
だから、ピンクはありもしない希望をプレゼントしたのだ。
『アナタ反省してないでしょ?
だから苦しみながら死になさい。
落下するまで……後一ヶ月かかるわ。
それがアナタの運命だと納得しなさい』
「ごべんなざぃぃぃぃぃ!!
謝るから助げでぐだざぃぃぃぃっ!!
お腹ペコペコなんですぅぅぅっ!!
何でも良いから食べさせてくだざぃぃぃぃっ!!
ぞうじないと死んでじまいまずぅぅぅぅっ!!」
豚は僅かな命綱を得ようと、必死にピンクへと媚びる。跪く。
だが、ピンクの声はどこまでも冷たかった。
『アナタ、本当に反省しているの?』
「反省じでまずぅぅぅっ!!本当ずいまぜんっ!!」
『じゃ、このまま苦しみ続けなさい。
そして死ね。そうしたら許してあげるわ。
本当に反省しているなら……できるはずよね?豚さん。
あと、最初から豚さんを助ける気はないわ。
苦しめて殺すために、こんな事したのよ?わかるわよね?』
「ふ、ふざげるなぁぁぁぁ!機械の分際でぇぇぇぇ!!
俺が下手に出ていれば調子に乗りやがっでぇぇ!」
豚は飢えの苦しみすら超越して怒る。
しかし、どんな行動をしようが豚の運命は変わらない。
落ち続ける――それが『この豚の罪を償う道』なのだから。
「オークだって一生懸命生きてるんだぞぉぉぉ!!
どうじでそれがっ!わがらないんだぁぁぁっ!ごの悪魔!大魔王!
俺達はこの世界に生きているんだぁぁぁぁ!!」
『あら?豚は家畜でしょう?
豚を屠殺するのは犯罪じゃないわ』
「オークは家畜じゃないっ!
貴重な命なんだぁ!それがどぼじでっ!お前らは理解できないっ!
神様が何時かっ!貴様らを裁く時が来るぞっ!
悪はっ!絶対!正義に勝でないんだっー!」
『はぁ?』
豚の身勝手な言い分を聞いて、ピンクの声に殺気が篭った。
『アンタさ。
エルフと獣人、ついでに人間、ドワーフ、ダークエルフ、豚、ミノタウロス、ケンタウロス、スキュラ、雪女、エロフ、鳥人、ゴブリン、トロル、マインドフレイヤー、魔族、幽霊、アンデット、スライム、ウサギ人、犬人、猫人、牛人、熊人、象人、魚人、ペンギン人とか、たくさん虐待しまくって殺した畜生でしょ!?
保護したエルフ娘達から聞いたわよ!アンタの所業!
馬鹿じゃないの?!』
「はぁぁぁぁぁぁぁ?!
何が悪いっ!?負けた奴らを虐げて何が悪いっ!
勝者として当然の権利だろうがぁぁぁ!
俺はっ!俺はっ!俺は絶対の支配者だっ!
何をやっても良いに決まってるだろうがぁぁぁぁ!!」
豚は最後の最後で、心が赴くままに叫んだ。
怒りの感情に身を任せている間は、飢えの苦しみから少し解放される。
『アンタ、私から見れば圧倒的に弱者よ?
じゃ、こういう結末になるのも納得できるわよね?』
「じゃ、弱者は社会が助けないといげないんだぁぁぁぁ!!
どうじでお前には、それがわがらないんだぁぁぁぁ!!
早く俺を助げろぉ!ぞうじだら!
全殺し程度で済ませでやる!」
『はぁ、話にならないわねぇ……もういいわ。
豚さん、さようなら。
地獄で被害者に詫びなさい。
どうせ反省なんてしないんでしょうけどね?
ああ、やだやだ、豚との会話は疲れるわぁ』
音を出力していた機械がボォーンっ!と爆発した。
豚は火傷を負い、刺さった破片の苦しみに悶える。
「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!! 」
でも、死ねない。
生存本能が豚を生かす。
それが生き地獄を産んでしまった。
「どうじでごんなごとにぃぃぃぃっ!!
全部、ナポって奴が悪いんだぁぁぁぁ!!
俺は何も悪くねぇぇぇぇぇぇ!!
地獄に落ちろぉぉぉぉ!!ナポッー!」
単純に、最初のナポの提案を承諾すれば……帝国は規模を縮小して存続できた。
むしろ、ナポという後ろ盾があるおかげで、家臣の軍事クーデターの心配もせずに楽しい人生を過ごせるはずだった。
楽しい楽しい人生を過ごして死ねるはずだった。
この豚の最大の過ち。
それは――無駄に高すぎる自尊心。
現実の国々を数多く滅亡へとおいやった要因である。
……それからもオロはたくさんたくさん落ちた。
落ちても落ちても浮遊大陸に衝突せず、自殺する気にもなれなかった。
その内、考える事すら出来なくなり、ただの食欲の塊になった。
30日後、描写する事すら厭う生存方法を実行した末に豚は死んだ。
浮遊大陸にぶつかった。地面の染みになった。
「腐った豚が落ちてきたぞ!?」
「ウジがたくさん湧いているぞ!ひでぇ!」
「豚の分際で人間様に迷惑かけるなよ!死ぬなら他の浮遊大陸に落ちろ!」
3話 豚の国
おしまい
二章最後のコメントまとめ + 作者感想
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【小説家になろう】 賢者の孫、評判が悪すぎる件
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【1人でなんでもできるもん】 多重影分身の術でチート 【小説家になろう】
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