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26話目
23話     詐欺戦争-5 「偽情報   


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ヤスはこの上ない命の危機に晒されていた。
跳ね橋の鎖を錆びさせ、ピィザ軍を首都内部に招き入れようとした大罪。
死より恐ろしい罰が待ち受けているに違いない。少なくともヤスはそう判断している。

(お、終わった……!
死の支配者はっ……!人間の心を読める化物だったんだよっ……!
お、俺っ……!ど、どうすれば良いっ……!
俺、日本人だから祈る神様は……だ、誰に祈れば良い?
日本神話で、拝んでご利益がありそうな奴っていたか……?)

「貴様のやった事は、万死に値する」

その声とともに怖い巨大な骸骨顔が、ヤスに迫る。

「俺のワルキュラ軍では、裏切り行為には厳しい罰が待っている。
ヤス、貴様が想像できないほどに辛くて苦しい、最悪の罰だ。
その罰を受ければ、地獄ですら天国と感じるだろう。
当然、貴様の家族も終わりだ。
その先に道はない」

「お、オワタ……?」

ヤスの両足が恐怖で後退した。
後ろを見なかったから、高い塔から転げ落ちる寸前。
ワルキュラの骨の手が、ヤスの両肩を掴む。

「(危ねぇー!あと少しで飛び降りる気だったな!)
……だが、俺は貴様の罪を許してやろうと思う」

「こ、殺され……え?」

「寛大な俺は、貴様の命を取らない。
その代わりに……別の仕事をやってもらおう」

一人の人生と引き換えにプレゼントされる仕事。
ヤスはそう思い、手足が緊張してガクガク震えた。

(ま、まさか……!
ちゅ、忠誠の証に家族を差し出せと言うんじゃっ……!?
き、きっと碌でもない物を望んでいるっ……!)

「俺が貴様に任せる仕事。それは――」

走馬灯のように、ヤスの思考は加速した。

(も、もしくは、人類を救う救世主が産まれてくるから、そいつを赤ん坊の内に殺せとか……?
お、俺の子供がそんな重要な存在だったりするのかっ……!
だ、だとしたら父ちゃんは負けないぞっ……!
ど、どんな物語だって、最後は愛と勇気が勝つのがテンプレなんだっ……!
圧倒的な力の差を愛情で乗り越え……これ死亡フラグだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
親の愛情で勝利する物語って、大抵、親は死んでいるオチだぁぁぁぁ!!
うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!俺は出来れば生きたまま、ハッピーエンドを迎えたいぃぃぃぃ!!)

時間にして僅か0.1秒。脳みそのカロリーを盛大に消費し、ヤスの顔が少し老け込んだ。
そして、時間は正常に動き出し、ワルキュラが続きの言葉を紡ぐ。

「俺の言った通りの情報を、ピィザ軍に流せ。
……とっても簡単な仕事だろう?」

「……え?」

「もちろん、報酬はきちんと払う。
こう見えても俺は寛大で太っ腹だ。
貴様……いや、ヤスだったな。
お前には二人の子供と、愛しい妻がいるだろう?」

「な、なぜ、それをっ……!?」

心が読まれている。この時、ヤスは確信した。
ワルキュラがこの異世界に来たのは、今日の昼間。
それにも関わらず、それ以前にやったヤスの工作を完璧に暴き、家族構成まで調べ上げる……それは人間業ではない。

(こ、これが格の違いかっ……!
死の支配者の二つ名は伊達じゃなかったっ……!
わ、ワルキュラ様は正真正銘の神様だったんだ!)

実際に、人間業ではなかった。
空中を好き勝手に飛び回る幽霊娘達が情報を集めて、クレア経由でワルキュラに情報をプレゼントしているという残念なオチだが、監視網を持つ事が名君になるために必要最低限の条件だから仕方ない。
長く続いた江戸時代も、お庭番や、目安箱などの監視システムがある。

「この簡単すぎる仕事の成功報酬は一千万アヘン。
他のスパイ達は既に裏切って、前金を受け取って仕事をやっている最中だ。
……これがどういう事か分かるな?」

ワルキュラは、日本人という民族の特性を利用する事にした。
日本人は皆がやっている事なら、自分もやらなくちゃ……と思い、行動してしまう生き物が比較的多い方だ。
これがイタリア人なら『可愛いエルフ娘を紹介してやるぞ』
フランス人なら、高いプライドを刺激する言葉を言えば良い。
それ以外の人種には、金と女をチラつかせれば、大抵の人間は言う事に従う。

(お、俺以外にも、たくさんスパイがいたのかっ……!
そもそも、俺にはピィザ王国のために、ここで死ぬ義理はない。
皆もピィザを売ったのなら、俺も売っていいはずだ。
家族を養うためなら、俺は悪魔にだって従うぞ)

見事にヤスの行動は予測され――ワルキュラの手のひらの上で踊らされた。

「ははぁっ!分かりました!ワルキュラ様っ!
昼間に言った通りっ!アナタ様に従う事をっ!ここで再び宣言します!
ワルキュラ万歳っ!死の支配者に栄光あれぇー!」

今日、ヤスは二度目の忠誠をワルキュラに捧げ、大勢の人間を生贄に捧げる道を選び、悪魔に魂を売った。
特に後悔はしていない。
その場その場の気分と打算で行動して、利益がある方向に動いているだけだ。
家族を守れれば、今は、それで良かった――後で後悔する事になったとしても、それは仕方ない事だ。


「ヤス、俺が伝える情報は、短くて分かりやすくて簡単だ。
この地にいる骸骨の数は――300万。
しかも、ワルキュラ軍は、後三回、異世界から援軍を呼び寄せる用意があります。そう伝えろ」





 

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【内政チート】 「俺は80兆円の現金を信用創造でっ!千兆円以上に増やしてチートする!」20世紀の日本
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【小説家になろう】 「歩くだけで世界最強」 歩くだけでレベルアップ。一万歩でレベル10000です!
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デスキング「三百万の軍勢っ……!?
い、一体、どこに居るのですか!?」


ワルキュラ「察しろ」

デスキング(な、なるほど、今の陛下なら一人で骸骨1億相当の戦力に相当する……。
自身の戦闘力を分かりやすく骸骨で数値化しておられるのかっ……!)

リッチ(少しづつ本気出して、どんどん強くなる展開っス?)


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