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21話目

18話   市場支配-終 「金の魔術師ワルキュラ」  


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高いの塔の上で、暇なアンデッド達が、下界に広がる光景を見下ろしている。
下界の……市場では、アヘン紙幣を手に持った人間達が嬉しそうな顔で、欲しい物を買い、あるいは逆にアヘン紙幣を手に入れるために、財産を高値で売ろうと、血と汗の涙が滲むような努力を行っていた。
酷い場所では、食料の独占を狙って買い占めを行おうとする輩もいたが、そういう輩はすぐに群衆にボコボコにされ、近くにいる骸骨へとプレゼントされている。
そんな光景を、紅い帽子を被った骸骨……リッチが見ていた。

「……ワルキュラ様はなんでこんなに人間を優遇するっス?」

ワルキュラが焦って何かをいう前に、彼女の上官である黒軍服が似合うデスキングが代わりに答える。

「リッチ。ワルキュラ様は人間を優遇してなどいない」

「でも、アヘン紙幣をばら蒔かなくても、骨なんて人間に貢がせれば無料で集まるっス。
金の無駄遣いっス」

「……だから、お前はアホなのだ。
物資を奪われたら農民の厄介さを知らない……じゃなく、ワルキュラ様の真意を全く理解しておらん」

「……?」言われた通り、全く理解できなかったリッチは首をかしげた。
デスキングは黒い帽子を被り直して、言葉をゆっくり続ける。

「アヘン紙幣は確かに価値があるものだ。
十億アヘン集めればエルフに転生でき、無数のサービスを受けられる。
だが……ワルキュラ様から見れば、アヘン紙幣は大量生産できる紙切れに過ぎない。
ここまで言えば、意味は分かるな?」

「か、紙切れって……一万アヘン紙幣すら稼ぐの大変っスよ!?
オイラの初任給が月額三万アヘンだった事を知らないッスか!」

「お前はその『たかが紙切れ』を得るために、必死に働いてるだろう?」

「ま、まさかっ……気づかない間にオイラ……っ!
紙切れに支配されてたっス……?」

リッチは人生哲学的な、とんでもない事に至った。紙切れに支配された死後の人生なんてゾッとする。
即座にデスキングは厳かに否定した。

「違う。お前は紙切れに支配されている訳ではない。
『紙切れ』を通してワルキュラ様に身も心も支配されているのだ」

「?」

デスキングは、異次元(アイテムボックス)から一万アヘン紙幣の束を取り出し

「その金っ!オイラにくれるんスか――」 リッチの言葉を強引に遮って、紙幣を見せつけながら解説を続ける。

「アヘン紙幣に価値があるのは、ワルキュラ様が皆に信用されている証だ。
ワルキュラ様がその価値を保証すると言っておられるからこそ、紙切れでエルフに転生できるのだ。
紙幣の価値は『信用』だけで成り立っている」

「つ、つまり人間達は……一晩も経過してないのに、ワルキュラ様を信用してしまったという事ッスか!?」

「うむ、そうだ。
偉大なるワルキュラ様はアヘン紙幣を通して、人間を経済面を支配……いや精神すらも支配し、この国を征服しようと企んでおられるに違いない。
だからこそ、人間どもにアヘン紙幣をばら撒いたのだろう……」

感動極まったデスキングは、近くにいるワルキュラに尊敬を篭った視線を送った。(骨だから目玉がないよう)
ワルキュラは『また、勝手に勘違いしてやがる、この骸骨』という印象を抱きながら顔を横に逸らした。

「す、すごい陰謀ッス!」

……あまりの驚愕に骨ボディをプルプル震わせるリッチ。アヘン紙幣の裏にとんでもない陰謀が働いている事を知り、背筋に骨しかないのにゾクゾクっと冷たくなった。

「さすがワルキュラ様っス……惚れたっス!
智謀すらオイラ達を遥かに凌駕しているっス!
天下一っス!エルフに転生してお嫁さんになりたいッス!」

「いずれ人間達はアヘン紙幣を得るために、血を分けた子供や親ですら売るようになるであろう……。
そうなった瞬間、この大地はワルキュラ様の物になり、広大な宇宙を舞台にした大遠征が始まるのだ……ふはははははははっ!」

デスキングの高笑いが夜空に響き渡る。
空の下では、アヘン紙幣を得るために、金銀財宝を売り払う貴族。
金を得てロリエルフになった哀れな犠牲者。
今を生きるために、食料を得ようとする平民達の姿があった。
幸福を得るには、ワルキュラが発行した紙幣を得るしかない。みんなが無意識にそう思い込んでいる。
お金さんには、そういう人間の精神構造を支配する魔力がある事に気づくものは少なかった……




(すぐに近くに俺がいるのに、なんでこいつらは壮大にアホな事を言っているんだっ……?
分からんっ……お金より女の子に愛される方が大事だろ……常識的に考えて)

「ワルキュラ様そろそろアヘン線香なくなりそうです……
アヘン紙幣燃やしても良いですか?」

(ルビーちゃんは可愛いから許す)

紙切れが燃えて、アヘンの良い匂いが場に漂った。



  今回のコメントをまとめたページ

http://suliruku.futene.net/Z_saku_Syousetu/Tyouhen/Fusiou/c21.html
【小説家になろう】 テンプレ「なぜか王族が少なすぎる!」
http://suliruku.blogspot.jp/2016/02/blog-post_55.html
【内政チート】 「中毒性のあるコーヒーを栽培してチートする!」18世紀のブラジル
http://suliruku.blogspot.jp/2016/02/18_25.html


デスキング(´・ω・`) (アヘン紙幣を燃やして、おられるっ……!)

リッチ(´・ω・`)(こ、これが格差社会という奴っスかっ……!)

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