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22話目 |
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夜の深き闇を、人工太陽が照らす中。
首都カイロンを半包囲しているピィザ軍。その本営で、酒瓶が綺麗に割れる音がした。
「跳ね橋を突破できたのに……鉄のトゲトゲがあるせいで、前に進めなかっただと!?
しかも城壁の上は骸骨だらけ!?なんだっ!その信ぴょう性に欠けた報告はっ!?
余の臣下は、報告・連絡・相談の三つもできない馬鹿なのか!」
声の主は、燃えるような真っ赤な髪の大男ピィザ3世。
彼は目の前にいるチィズ軍師を始めとした側近達に怒鳴りつけている。
だって『骨に負けました』と言って、信じる奴はそうはいない。
独裁者は何時だってリアリストだ。
特にピィザ3世は苛烈に生き、炎のように怒る男だから、この場にいる中で平然としているのは、普段から感情がないかの如く、冷静なチィズだけだった。
「陛下。どうやら……骸骨が城壁の上に並んでいるのは確かのようです。
最初は誤報かと思いましたが、実際に近づいたら真っ白な骨が蠢いている事を、この眼で確認できました」
「チィズ……お前、麻薬か何かやっておるのか?
セイルン王国は麻薬産業が盛んだが、麻薬はいかんぞ。麻薬は。
飲むなら酒くらいにしておけ」
「私は正気です。
現実に死んでいるはずの骨達が動き、我が軍に敵意を持ち、弓矢による攻撃を仕掛けてきた……それが認めたくないですが現実なのです」
「ふんっ!なんだ、つまりこういう事か?
余の軍勢は、死人どもと戦争していると言いたいのか?
それは大層な事だなっ!
戦史に残る戦になるぞ!珍しい的な意味でなっ!」
「はい……その通りでございます。
しかも、どうやら、こちらの手の内がばれている様子。
跳ね橋の鎖を錆びさせる工作は、とっくの昔にばれていたのでしょう。
いや、この工作を実行したヤスという男が、骸骨どもの仲間かもしれませぬ。
でなければ、罠を設置する時間がないはず。
ヤスという男が、二つの陣営に情報を売り渡す二重スパイだと考えれば、全てに説明が付きます」
無表情ハゲ頭なチィズがこう言った途端、ピィザ3世が砂嵐のごとく迅速に激怒した。
「跳ね橋が事前に落ちる事が分かっているのにっ!実際にっ!その上をっ!兵士に通過させる馬鹿が何処にいるっ!
そんなアホな罠があるはずないっ!」
「しかし、現実に陛下の軍勢が跳ね橋を突破しても……鉄のトゲトゲのせいで侵入が阻止されています。
これは我らの策を完全に利用した上で、待ち構えていたと見るべきです。
よほど、骸骨どもは鉄のトゲトゲとやらに自信があるのでしょう」
「それは、ありえぬ、ありえぬぞ。チィズ」
そう言って、ピィザ3世は火酒を一口飲んでから
「この世界の何処に、首都が陥落するリスクを犯して罠を張る馬鹿がおるのだ?
一点でも突破された城塞は、容易く落ちる。
特に首都が落ちたら、無数の財宝は略奪され、国を維持するために必要な官僚組織も壊滅する恐れがあるのだぞ?
余がセイルン王だとしても、そんな愚策は絶対に取らぬ。
お前の考えすぎではないか?」
「骸骨達の弓矢の有効射程が完全に800m、いや、報告によっては1kmを超えていると聞きます。
これは人間の限界を超えた筋力を持っている、もしくは非常に発達した弓を持っている証です。
つまり……今までの常識が全て通用しなくったと見るべきですな。
昨日までの戦場と同じだと思えば、酷い目にあいますぞ。
ここまで射程距離に差がありますと、置き盾を多数用意しないと防げませぬ。
しかも、近くに行けば、その置き盾すら紙のように貫通するでしょうな」
チィズは両目を瞑って静かに語った。
時代の変わり目。それは今までの常識が崩壊する瞬間でもある。
銃火器が、戦争の有り様を大きく変えたように。
人間が、飛び道具を使って世界最強動物に君臨したように。
今が歴史の節目。まだ若いピィザ3世は、その変化に対応する自信と無謀な勇気だけはあった。
「ならば、そのための策を考えよ!知恵を搾り出せっ!それがお前達の仕事だ!」
君主が一つの事に極端に固執するのは、現実だと海軍をなぜか解体したり、同じ場所でひたすら長期戦やる死亡フラグだから、臣下達に仕事を放り投げた。
軍師と将軍達は考え込む。
軍隊は集団行動する組織であり、ピィザ軍を構成する兵士達の練度は低い。
だから、策は皆に理解しやすくて単純な物じゃないと駄目だ。
下っ端の兵士に、複雑な策を理解して実行する能力なんて無いのだから、作戦にシンプルさがないと『お前は既に死んでいる』と宣告しても良い敗北要因になる。
「次の策は……こういうのはどうでしょうか?」
やはり真っ先に答える事ができたのは、外国出身のチィズ軍師だった。
周りの武将たちは、異人のチィズがここまで出世した事に激しい敵意を燃やしている。
「首都カイロンは大きな人口を抱える大都市。当然、消費される兵糧は我が軍の比ではないはず。
古来から、食料不足で崩壊した国や城塞は、数え切れないほどあります」
ひと呼吸置いて、言葉を続けた。
「つまり私が何を言いたいかと言うと……飢えた民に手伝ってもらいましょう。
内部からカイロンを攻略する手伝いをしてもらうのです。
密偵達に『食料はセイルン王が独占している』などの流言を流すように指示すれば、一夜もせずに歴史ある古都は陥落する事でしょう」
今回のコメントをまとめたページ
http://suliruku.futene.net/Z_saku_Syousetu/Tyouhen/Fusiou/c22.html
【小説家になろう】「俺はネットスーパーで異世界無双する!」
とんでもスキルが本当にとんでもない威力を発揮した件について
http://suliruku.blogspot.jp/2016/02/blog-post_12.html
異世界「椅子に座って食べる文化を発明した主人公しゅげぇぇぇぇ!!」 異世界征服
〜異世界に転移したので略奪スキルで商人を目指していたら世界を掌握していた件〜
http://suliruku.blogspot.jp/2016/03/blog-post_78.html
ワルキュラ「この大きな川、魚さんが大量に取れるなぁ……
水産資源が尽きそうになったら、近くの村から物資購入すればいいや」
ルビー「水草でしばらくは持ちそうですね……ワルキュラさま……。
でも、魚は臭くて辛いです……」
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