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ラッキーの不思議な旅
32国目外 砂漠と化した超巨大湖





荒れ果てた砂漠を、1人の小さい金髪の女の子ラッキーがトコトコ歩いています。
普通の人間なら、砂漠の夜の寒さと昼の暑さで死んでしまうような軽装(白いローブ)ですが、周りを魔法で快適に過ごせるように保っているため、何の影響もありませんでした。
広大な砂漠をつまんなさそうな顔で、ラッキーは歩くと

「あれ?」

疑問を感じます。
周りに広がるのが 砂 と 石  で 構 成 さ れ た  砂 漠 だ け というのは可笑しいと。
ラッキーは頭にいる妖精さんに顔を向けて、問いかけました。

「妖精さん。
100年くらい前に訪れた時、ここに世界で4番目の大きさの巨大湖【アラル海】があったよね?
なんで、あたり一面砂漠なんだろう?
前は森とかあったのに」

その問いに妖精さんは心底嫌そうな顔で答えます。

「……きっと、人間の環境破壊が原因なんじゃないかな。
もうやだ、人間の世界」

「うーん?
人間は自然環境を破壊する迷惑な生き物だけど、あの湖を消滅させられるのかな?
ちょっとした小国くらいの大きさがあったよね、アラル海。
湖なのに海の名称がついている時点で凄いし」

ラッキーと妖精さんは、お互いに推論を語り合いながら、砂漠を進んでいきます。
途中、人間が住まなくなった村。
完全に砂に埋もれて、屋根しかない村などなど、死に絶えた集落を大量に見つけました。
100年前は漁村だったのか、錆びた船が幾つも砂漠の上にあります。
ラッキーは首を可愛く傾げました。
この光景を見て、昔、訪れた国の漫画を思い出したのです。

「核戦争後の世界を舞台にした、漫画【北斗の拳】みたいな光景だよね」

「あの漫画、核戦争で自然環境が死滅しているから、僕は大嫌いだよ……
自然環境消滅したら、それに依存している僕が死んじゃうし」

「この光景を見たら、自然は大切にしなきゃいけないって気がしてくるよ。
この環境じゃ人間ほとんど居なくて、つまんないし。
猫や犬もいないしね」

周りを見渡すと、植物も魚も死滅した砂漠しかありません。
ラッキーのエルフ耳が下に垂れました。






更に広大な砂漠の中を何日も何日もかけて歩くと、種モミを持って憂鬱そうに砂漠の荒野を眺めている農夫のおじいさんを見つけます。
周りには、農村がありますが、ほとんど人は住んでなさそうなくらいに寂れていました。
ラッキーは知的好奇心を満たすために近づいて

「ねぇねぇ、どうして湖が砂漠になったの?
何が原因なのかな?かな?」

おじいさんは、ゆっくりとラッキーのいる方向を振り返って辛そうな顔で

「よそ者に教える事はない。
帰れ」

「教えてくれたら銀貨1枚あげるよ?
明日、食べる飯にも困っているんじゃないかな?」

ラッキーは銀貨を一枚取り出して見せました。

「……あれは、今から50年前の1960年頃の事だ」

お金の力はこんな場所だからこそ偉大です。
明日の生活にも困ってそうなお爺さんは、この幸運を掴みとろうとと全部話してくれます。

「当時、ここウズベキスタンヤー国は、ソ連ヤー国という超大国の一部だった。
ソ連ヤー国はこの地で綿花栽培のために農業用水を確保しようと灌漑を進めたら、海が干上がって砂漠になった。
この国は仕事と金を得た代わりに、湖をまるごとなくしてしまった……それが答えだ。
わかったら金よこせ」

「うーん?
もっと詳しく説明してくれないかな?
灌漑ってどんな農法だっけ?」

「……灌漑は、農地に外部から人工的に水を供給するという意味だ。
そうする事で農作物が大量に安定的に採れて豊かになる……そのはずだった……
だが、灌漑の結果はアムダリヤ川とシルダリヤ川の二つの川から流入する水が、アラル海ではなく農地へと流れたせいで、水の流入と消費のバランスを崩したアラル海は砂漠に消え、周辺一帯も砂漠になる結末を迎えた。
これ以上教えて欲しいなら、銀貨もう1枚寄越せ」

「なるほど、そういう経緯を経て砂漠になったんだね。
わかったよ。
報酬増やすから、もっと色々と教えて欲しいな」

お爺さんは、変わらない様子のまま、説明を再開しました。

「……灌漑のせいで、アラル海は年を経るごとに縮小して大変だった。
水が少なくなったせいでアラル海の塩分濃度が上昇した上に、とうとう肥料や化学物質で汚染された湖底が露呈して、その土壌が風で飛ばされて周辺一帯の農地まで汚染する最悪の事態になってしまった。
アラル海が消えてから、温度差が極端に激しくなって、夜はより寒く、昼はより熱くなって、住み辛くなって、ここにはもうワシ以外誰も住んでいない」

「あ、確か水が大量にあると熱を吸収したり放出して、周辺の温度が安定するんだよね?
たぶん、それはアラル海が砂漠に消えたせいだよ」

「……話はこれでおしまいだ。
金を寄越せ」

ラッキーは素直に銀貨を2枚、異次元ポケットから取り出して、お爺さんに投げ渡しました。
お爺さんは銀貨を噛んで本物かどうか調べています。
ラッキーは気になったから、お爺さんに最後の質問をしました。

「ねぇねぇ、どうしてお爺さんはこんな所で1人住んでいるの?」

「ここがワシの故郷だからだ」

「でも、もうここは砂漠だよ?
手遅れだよ?
魔法で周りを調べてみたけど、残り少ない水も毒物で汚染されているよね?」

「手遅れでも、ワシは最後までここに住む」

ラッキーには、人間の気持ちは解りませんでした。
次から次の土地に旅している風来坊だけあって、一つの土地に拘るお爺さんとは価値観が違います。





ラッキーはお爺さんと別れて、砂漠を再び歩きました。
かつては、漁業が盛んだった中央アジアヤー地域のオアシス(アラル海)はほとんど砂漠。
エルフ耳が下に垂れてションボリ。
有害な物資だらけの砂嵐が巻き起こり、ラッキーの風のバリアーに何度も何度もぶつかっていました。
この地は、年間7500万トンもの塩混じりの砂が周辺に飛び散る魔境と化し、それらが1000km離れた農地まで汚染しています。
ラッキーは自然破壊は良くないなと他人事のような感想を抱いていると、砂嵐の向こうから1台の
トヨタ製の軽トラックがやってきました。
トヨタ車は壊れ辛い事で有名です。
中には頭に黒いターバンを巻いた男たちが乗っていて、片手に小銃を持っています。

「ひゃっはー!お金を持っている女の子がいるらしいぞぉー!」
「身包み剥いで、女の方は奴隷として売るぞ!ひゃっはははは!」
「異教徒はレイプだぁー!」

環境が悪化しすぎて、治安まで悪化していました。
迂闊に、さっきのお爺さんにお金を払ったせいで、ラッキー = 金持ちだということがばれてしまったようです。
男たちから見れば、ラッキーは狼の群れに放り込まれた子羊のようなもんでした。
ラッキーは、人間は貧乏になったら獣になる生き物だったなーという事を思い出しながら、風の刃を一つ作って射出。
トヨタ車は中にいた人間ごと横に真っ二つになりました。
この光景を見た妖精さんは呆れた顔で

「現実が、核戦争後を舞台にした漫画と変わらなくなりつつあるよね」





おしまい


テーマ【20世紀最大クラスの環境破壊】
消えた海【アラル海】を小説書くためにまとめてみた。
http://suliruku.blogspot.jp/2014/11/blog-post_89.html

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 ●にゃんこの国

●猫を愛する素晴らしい国。
にゃーにゃー

ゆわわーい

●10年後、
猫を愛するがゆえに、野生に全部返し、野良猫も国外追放
猫さん地獄に叩き落とされて涙目。
しょんぼり


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