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ラッキーの不思議な旅
31国目 にゃんこの国



小さな金髪の少女ラッキーは、今日も、とある国に不法入国して散歩していると、とても和む光景を目にしました。
猫です。
煉瓦作りの大きな広場に、数百匹の猫が集まり、毛づくろいしたり、日向ぼっこしてゆっくりしています。
どの猫も愛らしい外見をしていて幸せそうです。にゃー

「にゃー」「にゃー?」
「にゃにゃっ?」
「にゃっー!」

これを見て、ラッキーの心が癒されました。
猫のニャーという聞くだけで甘たるい鳴き声。
もふもふとした綺麗な毛並み。
小さくて可愛い手足。
大きなまん丸とした目。
鼻の周りに生えている長い髭。
近づくだけでラッキーに甘えて、猫顔でスリスリしてくるから、可愛すぎて辛いです。
ラッキーは目をキラキラ輝かせながら、灰色の毛並みをした猫を抱き上げて

「にゃー」

ラッキーも鳴きました。
灰色の猫もそれに反応して笑顔で「にゃー」と鳴き、しばらく「にゃー」と「にゃー」の応酬が続きます。

「にゃー」
「にゃー」

可愛い猫がたくさんいる。
それだけで、この国はいい国だと思っています。
広場には、猫を愛する人間さん達がたくさんいて、猫の頭を撫でたり、顎を撫でたりして、それぞれの方法で猫を可愛がっています。
ラッキーは、灰色の猫を抱いたまま、煉瓦で舗装された道を歩くと、猫たちの愛らしい姿が次々と目に映りました。
綺麗な小川で、水を飲んでいる猫たちがいたのです。
猫は人間とは違って、水の飲み方が違います。
川の水面近くに顔を突き出して、舌を素早くサッサッと何度も何度も出して、時間をかけて水を飲むんです。
その必死な様子が可愛いかったから、ラッキーは癒されました。
あまりにも可愛すぎたから魔法で

「えい!」

「「「「「にゃっー!?!!?!」」」」」

風を起こして、水を飲んでいた猫さん達を小川に突き落としました。
ポチャンっポチャンっ
「にゃっ!」「にゃにゃっ!」「にゃ!」
猫たちは慌てて小さな手足を動かしてバシャバシャ泳いで、元居た場所に戻り、水を落とすためにブルブル震えています。
体が水浸しのままだと風邪をひいてしまうから当然の措置ですね。
ラッキーは、猫たちの愛らしい姿を見て、クスクス笑いました。
ラッキーの頭の上にいる妖精さんは、どうでも良さそうな顔で、これらの光景を見ています。

「猫のどこが可愛いんだろう」

拳サイズの妖精さんから見れば、巨人に等しいサイズの猫を可愛いと思えませんでした。










更に道を歩くと、今度は猫達が1匹の柴犬と遊んでいる光景を目にします。
犬と猫がお互いに仲良くしている姿に、大興奮してラッキーのエルフ耳がピョコピョコ激しく動いています。
柴犬も愛らしい姿をしていて、茶色の毛並み、舌を出してハッハッと笑顔を浮かべている可愛い犬です。
あまりにも可愛かったからラッキーは、抱いていた猫をその場に捨てて

「わん!」

と鳴いて柴犬に抱きついて、頭を撫で撫でしました。
捨てられた猫さんは、恨めしそうな顔でラッキーの背後を見ています。
柴犬は舌を出してラッキーの顔をペロペロ舐めました。
犬が相手を舐めるという事は、子の親に対するおねだりや甘えの表現であると同時に、相手に服従の意を表現する手段なのです。
ちゃんと目の前の小さい女の子が化物だと、柴犬は本能で理解していました。
ラッキーは喜んで顔を舐められて、柴犬の頭を手で撫で撫で。
柴犬の毛並みはとても良く、猫毛よりも触り心地が良いです。
しかも、大勢の猫さん達がラッキーの足に擦り寄って、頭をスリスリ擦り付けてきて、にゃーにゃー鳴いています。
ラッキーはとても癒されて幸せな気分になったから

(この国、すごくいい国かも)

うっかり気づいたら1年間ほど滞在してしまい、にゃんこと暮らす素敵な生活を楽しんでしまいました。
この国は、猫を愛する人間さん達がたくさんいる、そんな博愛主義の国なのです。
無数の専門店があるデパートに行けば、猫専用の店。
人によっては100匹以上猫を飼っている人間さんもいて、猫に人権ならぬ猫権まで与えられている素晴らしい国なのです。
国のどこに行っても猫だらけ。
猫嫌いの人は、非国民扱いされて村八分ならぬ、国八分にされています。

「にゃー」

「にゃー」





















……20年後、ラッキーは心を癒して貰うために、この国に再び不法入国して訪れると猫が一匹も国内に居ない事に気づきました。
あれほど猫を愛していた国なのに、どうしていないのか気になったから、道端を歩いている裕福そうなおばさんに声をかけます。

「ねぇねぇ、どうしてこの国は猫がいないの?
昔は国中に溢れるほどに猫が居たよね?」

「あら?
小さいお嬢さんは外国の方かしら?」

「そうだよ。
20年前はこの国は猫で溢れていたはずなんだけど、どうして今は猫がいないのか聞きたいんだよ」

おばさんは少し悩んだ後に、辛そうな顔でゆっくりと答えてくれました。

「……私たちはね。
過ちに気付いたの」

「過ち?」

「ええ、猫にもっと平等に接しないと、猫と人間との対等な関係を築けないと思ったから、10年前に猫を全部国外追放して、餌付けも法律で禁止したら、国内から猫が一匹も居なくなってしまったのよ。
でも、私たちには後悔はないわ。
甘やかすだけ甘やかすして、猫の自活能力をなくしてしまう方が可哀想よね。
人間が猫の人生を縛るのなんて、本当はいけない事だったんだわ」

ラッキーは残念な気持ちになって、エルフ耳が下に垂れました。
100年くらい住んでもいいかもしれない国は、こうしてそこらへんにある普通の国になったのです。








ラッキーはエルフ耳が垂れたまま、寂しい気持ちで国を出て、次の国を目指して歩きます。
気分はションボリ。ちょうど時刻が夕方という事もあり、夕日の光が辺り一帯を照らして余計に憂鬱です。
可愛い猫さん達に会えなくてゆっくりできません。
そんな辛い気分で、まともに整備されていない荒れ果てた道を歩いていると

「にゃー」

遥か前方に野生下した猫の親子が2匹居ました。
二匹とも茶色の毛並みをしていて、夕日に顔を向けて日向ぼっこをしています。
ラッキーは猫さん達の背後から、興奮してエルフ耳をピョコピョコ激しく動かしながら、光学迷彩展開しながら近づきます。
そろーり、そろーり、そろーり、ゆっくりー、ゆっくりー。
猫の親子は、舌で毛づくろいをしていて大変可愛らしいです。
親猫が子猫をペロペロしている姿は、絵にしても良いほどに感動的な可愛さがあります。
ラッキーはすぐ近くに到達すると、光学迷彩を解除して力強く鳴きました。

「にゃっー!」

「にゃにゃっ!?」「にゃぁっー!?」

猫の親子は突然の大声と、ラッキーの出現に驚いて、森へと逃げて行きます。
ラッキーはその滑稽な姿を見て癒されてクスクス笑いました。




おしまい


テーマ【現実で写真に撮れた猫達の光景をそのまんま順番づつ書いただけ】

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 ●にゃんこの国

●猫を愛する素晴らしい国。
にゃーにゃー

ゆわわーい

●10年後、
猫を愛するがゆえに、野生に全部返し、野良猫も国外追放
猫さん地獄に叩き落とされて涙目。
しょんぼり


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