ラッキーの不思議な旅
24国目 国旗の国々
キムチ臭い国の住宅地にある道路を、金髪の小さい女の子ラッキーが歩いています。
頭に乗っている妖精さんは、キムチの匂いに気絶していて可愛らしいです。
ラッキーはコンクリートで舗装されているのにデコボコだらけの道をひたすら100mトコトコ歩くと、無数の車が行き交う大通りへと出ました。
車にぶつかったら、(車が)大変なので脇にある歩道へと足を向けると、歩道が色んな模様でペイントされていた事にラッキーは気付きました。
紅い丸だらけの歩道。
三つの横線だらけの歩道。
星条旗が描かれた歩道。
よく見たら、これらの模様は世界中の国々の国旗です。
紅い丸はジャパンヤー国。
三つの横線はタイヤー国
星条旗はアメリカヤー国です。
他にも無数の国々の国旗が、歩道にペイントされていて、まるで国旗の見本市のような光景でした。
その上を、顔にエラがある人間さん達が踏んで歩いています。
ありとあらゆる国旗が描かれた歩道が踏まれて汚れ、人間がペッと吐く唾で踏みにじられていました。
気になったラッキーは、歩道を歩いている20歳くらいの青年に話しかけます。
青年は顔にエラがあって、自信に溢れている活気な黒髪の男性です。お洒落なブランド物の服を着ています。
「ねぇねぇ、どうしてこの歩道は国旗をペイントしているの?」
「ん?小さいお嬢さんは外国の人か?」
「うん、そうだよ。
この国に今日来たばかりだから、この歩道の事を教えてほしいの。」
ラッキーの整った綺麗な顔を見て、青年は顔を赤らめてゆっくりと答えてくれました。
小さい子供が好きなんですね。
「この歩道が国旗だらけなのはな。
相手国に嫌がらせ・・・いや、抗議するためにやっているんだ。」
「抗議?」
「ああ、この国では何か問題が発生すると、その度に、相手国の国旗や首相・大統領・王様・帝の写真を燃やして熱烈に抗議する伝統があるんだ。
団体によっては、一週間に一度、相手国の大使館っていう場所で抗議活動をする所もある。
最近はジャパンヤー国と従軍娼婦問題で揉めているから、抗議活動が盛んだぞ。」
「変わった伝統だね。
でも、そんな事をして大丈夫なの?」
「大丈夫って何がだ?」
「国旗や王様の写真を燃やしたら、相手の国の人達が怒ったりしない?」
「?」
青年は訳がわからないという顔をしています。
ラッキーは丁寧に説明してあげる事にしました。
「国旗って、国の象徴だから、自国のだろうが、他国のだろうが、国旗掲揚の時に敬意を持って接するじゃない?
その国旗を道路にペイントして踏んだり、抗議のために燃やしたら・・・・その国を侮辱しているも同然だから、相手国に悪印象持たれて関係悪化とかしないの?
この国って地理的にも詰んでいる国だから、外交関係が悪化すると経済的に損でしょ?」
「は?
何が悪いんだ?」
青年は本当にわかってない顔をしています。
普通、ここまで説明すれば理解できるはずなのに、全くわかってません。
ラッキーはちょっと嫌な気持ちになりながら、問いかけてみました。
「ひょっとして、この国じゃ自国の国旗を燃やしたりしても何も問題ないの?」
「国家冒涜罪で逮捕されるぞ?
そんなの常識だろ?
この前も、この国のハククネ大統領の政策が気に入らないっていう理由で、国旗燃やす馬鹿がいて、逮捕されてたぞ。
とんでもないキチガイだよな。」
「ひょっとして君はふざけてるのかな?かな?
自国の旗は駄目でも、他国の旗は燃やしても良いの?」
「はぁ?
他国の旗を抗議のために燃やしてもいいに決まってるだろ?
ただの絵だぞ?
何言ってんだ?」
「うーん?
なんか会話が設立してない気がするね。
価値観が違いすぎるのかな?」
「小さいお嬢さん。
あっち見てみろ。
俺の言いたい事がわかる。」
青年が指で道路の向かい側の歩道を指し示しました。
するとそこには、たくさんの国旗と各国の権力者の写真を販売している店があります。
ラッキーは他国の国旗をどうして大量に販売しているのか分からないので、疑問を口にしました。
「えと、あれはなんなの?」
「焼くための国旗と写真だよ。」
「焼くために国旗が大量に売ってるの?」
「ああ、抗議の度に、相手国の国旗や偉い奴の写真を燃やして消費するから、一定の需要があるんだ。
国旗なんて、布に印刷するだけで簡単に作れる代物だろ?
それを抗議のために焼いて何が悪いんだよ?
こっちだって理不尽な事をされて怒ってるんだぞ?
そんな事よりも、そこの喫茶店で一緒にお茶しないか?」
ラッキーは、この国はこういう国なんだなと納得する事にしました。
現実はこういう話がごろごろ転がっています。
この国では、他人にならどれだけ迷惑をかけてもいいとか、勝利するためなら何をしてもいいと子供の頃から教育を受けるので、これが当たり前なのです。
青年はラッキーをナンパしようとしたから、ラッキーは青年のお腹を殴り、この国から出て行きました。
次にラッキーが訪れた国は、ユラン半島とそれを囲む小さな島々で構成された寒い北国です。
人口560万人ほどの小国ですが、国民が幸福そうで他の国から幸福大国と呼ばれています。
医療費は無料。大学まで教育も無料。その代わり、税金が高い国なのです。
ラッキーは綺麗な路地をトコトコと歩くと、奇妙な光景を目にします。
路地の片隅で国旗を焼いて暖をとっている白人の爺さんがいるのです。
それも、この国の紅い背景に白い十字を入れた国旗です。
ラッキーはどうしてこんな事をするのか聞いてみました。
「ねぇねぇ、この国じゃ、国旗を焼くのは合法なの?」
「ん?小さいお嬢ちゃんは外国の人か?
ああ、そうじゃよ。」
「じゃ、抗議するために他の国の国旗を焼いてもいいんだよね?」
「いや、それは駄目じゃよ。
違法じゃ。」
ラッキーは首を可愛く傾げながら
「なんで他国の国旗を焼いちゃ駄目なの?」
「そりゃ簡単じゃよ。
他国の国旗を抗議のために焼いたら、その国の人達が怒って面倒事になるからじゃ。
抗議したいなら、他の方法で抗議した方が穏便に済むんじゃよ。
逆に自国の国旗を警察の前で焼いても、誰にも迷惑かからんじゃろ?
この国は人口500万人ほどの小国じゃし、わざわざ国家間の関係を悪化させる必要はないんじゃよ。
それに古い国旗は燃やした方がいいんじゃよ。
寒い国じゃから、国旗は燃やして暖を取れてええのぅ。」
なるほど、とラッキーは納得しました。
そして、自国の旗を燃やしても良い。この国の事を変な国だなぁーと思い、クスクス笑いました。
おしまい
テーマ【時事ネタ +各国の国旗の取り扱い
前半の国は●国 後半の国はデンマーク】
※実際に道路に国旗をペイントしていたのは、タイヤー国だけ。でも、他の国旗でも似たような事をしているから比喩でこうなった。
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