ラッキーの不思議な旅
21国目 スポーツの国 @(5話構成)
大きな体育館で、小さい金髪の女の子ラッキーはバトミントンの試合をやっていました。
バトミントンを知らない方に説明すると、ネットで二つに分けられたコートの両側に選手が位置し、シャトルと呼ばれる羽つきのボールをラケットで打ち合い、相手のコートの中にシャトルを落して得点を競うスポーツの事です。
今日のラッキーは動きやすくて短いピンク色のスカートとTシャツを着ています。
動く度にスカートがヒラヒラして、レースの可愛らしい白色のパンツが見えそうですが大丈夫です。
テニス、ゴルフ、バトミントンの女性選手が履くパンツは見られても良い見せパン(見せても良いパンツの略称)だからです。
見せパンだから、可愛らしいデザインで作られており、ラッキーは恥ずかしさを感じて居ません・・・という理屈で、一応、納得していました。
身体を良く動かしているせいか分かりませんが、顔を薄ら赤らめています。
「ちょっと、ラッキー!?
さっきからスカートがヒラヒラしすぎて大変だよっ!?
ちょっとは他人の目を気にしようよ!」
頭の上にいる妖精さんがツッコミを入れましたがラッキーは試合に集中し、ラケットの重量を無視したかのような動きで、素早くシャトルを打ち、相手選手の反撃を許さずにコートにシャトルを落して一方的に勝利していました。
逞しい身体つきの相手選手は絶望します。
ラッキーは10歳児くらいの小ささなのに、身体能力が可笑しいのです。
大人と子供が戦っているようなものなのに、ラッキーに勝てるとは微塵も相手選手は思いませんでした。
そのまま精神的にも負けた相手選手は、ラッキーの猛攻の前に敗北し、次々とシャトルをコート内に打ちこまれて、泣きながら体育館を去って行きます。
きっと、小さい娘に負けた事が恥ずかしくて悔しいのでしょう。
「うーん、なんで私と試合すると、相手は泣くのかな?」
ラッキーは不思議そうな顔で立ち去った相手選手の背中を見送りました。
すると、身長180cmほどの格好良い男性がラッキーに近寄ってきます。
青いジャージとズボンを着ているスポーツ体育会系のイケメンです。
顔に茶色のサングラスをかけています。
「そこの君!
今の試合は良い試合だった!
バトミントンで世界を目指さないか!?」
「世界?」
ラッキーは首を可愛く傾げました。
「今の試合を見て、私は感動した!
君なら世界の頂点を目指せる!
今から頑張れば、来年行われるインチョーンアジア大会2014に出場できるだろう!
どうだ?
一緒に頂点を目指さないか!?」
一方的な会話でしたが男の熱い熱意が伝わってきます。
ラッキーはバトミントンが楽しいと思っているので、顔を縦に振って承諾しました。
「うん、いいよ。
なんか楽しそうだしね。」
「よし!
一緒に世界を目指そう!
まずはアジアを制覇して、その後に世界大会で世界制覇だ!
そうだ!まだ私の名前を紹介してなかったな!」
男は両手でラッキーの肩を強く掴んで、大きな声で明るく自己紹介を始めました。
危うく風のバリアーの一部解除をラッキーが忘れてしまう所だったから、男の両手が吹き飛ぶ大ピンチだったなんて事は本人は知りません。
「私の名前は、熱血・コーチ!
君に世界の頂点を取らせる男の名前だ!
親愛の感情を籠めてコーチと呼べ!」
「うん、わかった。
私はラッキーだよ。よろしくね。」
「ラッキー・・・幸運か!
良い名前だ!
文字通り、幸運の女神様が君についているのかもしれないな!
私達の未来は、あの夕陽のように輝いている!」
コーチが指で指し示した先は、体育館の外に見える太陽でした。
まだ地平線の彼方に落ちるまでに3時間ほどの時間が必要な位置にあるので、夕陽なんかではありません。
「夕陽・・・・?まだ昼の15時だよ・・・?
この人のテンション高すぎて、ついていけないかも・・・。」
こうして二人は世界を目指すための、猛特訓の日々が始まったのです。
ラッキーの頭の上にいる妖精さんは、楽しそうな顔で二人のやり取りを見ていました。
ラッキーは、この一年間、ひたすらバトミントンの練習に励みました。
基礎体力が既に十分だったので、ひたすら強敵と書いて【とも】と書く強敵達と戦いまくり、富士山の山頂や、火山の火口、海の底、東京ドーム、国会議事堂、金閣寺、彦根城、姫路城、大阪城、大津の自衛隊駐屯地、富士の自衛隊の演習場、竹島、尖閣諸島などで激戦を繰り広げました。
そして、とうとう、国内最強の覇者【テニヌの王女様】との戦いにラッキーは挑みます。
テニヌの王女様は全身筋肉だらけで、お前の何処が女だ!とツッコミたくなるようなゴリラ女です。
シャトルを次々と手榴弾のように爆発させる技を使う厄介な選手でした。
「おっほほほほほほほ!!!!!
あなたは私には勝てないのよ!
爆発する魔球!」
テニヌの王女様が神速の勢いで打ったシャトルは、ラッキーのラケットに触れた途端、大爆発を起こしました
ラッキーは風のバリアーで爆発を防いで無傷ですが、ラケットが黒焦げでバラバラです。
「シャトル(球)が・・・爆発するっ・・・?」
魔法かな?
「魔法?それは違うわ!
シャトルはね!
凄い速度で打てば爆発するのよ!」
「ねぇ、ラッキー。
この人、本当に人間なの?
僕達と同じ人外じゃないの?」
妖精さんが嫌そうな顔で呟きました。
爆発する魔球を撃つ【テニヌの王女様】との戦いで、ラッキーは初めての敗北を喫し、一度はバトミントンを諦めかけたりもしましたが、熱血コーチの熱烈な説得の末に修行を再開。
爆発する魔球を打ち返すために、ラケットを最大限効率よく振り回すまで練習し、その果てに爆発する魔球を自分のものにしました。
二回目の戦いでラッキーはテニヌの王女様に圧勝して黒こげにして、国の代表選手としてインチョーンアジア大会2014に参加する事が決定したのです。
ラッキーは、大勢の強敵達に見送られ、戦場(大会)へと向かうためにジャパンヤー国の代表選手団や、熱血コーチとともに大きな飛行機に乗りました。
ラッキーはとっても良い笑顔です。隣の座席で座っている熱血コーチはラッキーに熱い視線を向けていて、ラッキーがそれに微笑みを返す、そんな良い関係を構築できています。
バトミントンを通して、多数の強敵(とも)と知り合い、ラッキーの小さい身体に、今まで戦ってきた強敵(とも)の期待を背負っているのです。
大勢の強敵(とも)は、ラッキーが乗る飛行機に、外から何度も何度も声をかけ続け、ラッキーの勝利を祈っています。
絆で結ばれた美しい友情でした。皆、若い癖に筋肉がモリモリのゴリラ女ばっかりです。
基本的に身長180cmを越えて当たり前、平均身長2m以上の怪物だらけでした。
とても女性には見えません。
「頑張れ!ラッキー!小さき勇者よ!」
「爆発する魔球を攻略したアンタなら、世界を取れるわ!」
「べ、別にあんたの事なんて好きじゃないんだからね!でも応援してあげる!」
「頑張れー!頑張れー!頑張れー!殺せー!殺せー!殺せー!がんほー!がんほー!」
「負けるなー!勝てー!殺せー!」
「世界をその手に掴むんだァー!全てをねじ伏せよぉー!」
「私の教えた分裂する魔球を世界で使えよ!絶対だぞ!」
スポーツのフェアプレイの精神っていいですよね。清々しさがあります。
激戦を潜り抜けた末に、敵が友になるなんて美しいです。
ラッキーが乗る飛行機は数時間の飛行の後、インチョーンアジア大会2014の開催国であるチョウセン国の仁川国際空港に着陸しました。
ラッキーと、国を背負う代表選手達の心は緊張感で一杯で、窓から外の光景を眺めています。
インチョーンアジア大会2014では、陸上競技を始めとして、マイナー競技も含めた膨大なスポーツの大会があり、全ての国を合わせて1万人以上のプロスポーツ選手が参加するビックイベントなのです。2010年の広州アジア大会の時は参加国44国、参加選手14302人と言えば、その凄さがわかるでしょうか?
あまりにも規模が大きすぎる大会だったため、チョウセン国のインチョン市は、3300億円の借金を背負って大変でした。
財政が大赤字なのです。
そもそもインチョン市は2012年に公務員の給料遅配を引き起こし、2008−13年に月尾銀河レールというモノレールを作ったのですが、碌に技術者がいないから多数の不祥事が発生して開業できず、巨大な廃墟と化しました。
こんな状況で開催するインチョーンアジア大会2014は、インチョン市のヤケクソ気味の最後の大博打なのです。
失敗すれば、その莫大な負債はインチョン市に住む住民に高い税金として返ってくる予定です。
つまり、この大会に自治体の存亡を賭けているのです。
ラッキー達は飛行機から降りて、空港の外に止まっている大型のバスに次々と乗り込み、戦場(会場)へ陸路で向かいます。
これからインチョーンアジア大会2014の開会式に参加する予定なので、きっと観客席には何十万人もの観客が集まっている事は間違いなし。
ラッキー達はそう思っていました。
バスから降りて、大会のスタッフと通訳専門ボランティアスタッフに案内されるままに大きな大きな会場へと入ってみると
「あれ?可笑しいな?
なんで席がガラガラなの?」
広大な会場にある七万席近い観客席は、空席だらけだったのです。
開会式のチケットは、商店が抱き合わせ商法で無料配布していたのに、席がガラガラです。
ラッキー達どころか、アジアの各地から集まった一万人以上いる選手全員が驚愕しました。
あまりにも不人気すぎる大会に、不安を隠せません。
「なんだよ!これは!」
しかも、更に可笑しい事実に気付いて、代表選手達の1人が叫んでいました。
手に、大会のパンフレットを持っています。
ラッキーは気になったのでトコトコ歩いて近付いて、パンフレットの内容を見てみました。
するとそこには、ラッキー達の国がこう紹介されていたのです。
【ジャパンヤー国は周辺国とトラブルを起こす問題国!要注意!】
思いっきり、スポーツ大会に政治を絡めて、国際試合大会憲章に違反していました。
こんな事は、普通の国では絶対起こらない出来事だけに、ラッキーも代表選手達も驚きます。
政治とスポーツを絡めるとややこしい事になるため、こういう場では禁止されているのです。
それなのにチョウセン国は一方的にルールを破って嫌がらせをしていました。
「うーん、この国酷いね。
でも、不正とかしないだろうし、正々堂々と勝てばいいだけかな?」
「「「おお!そうだ!俺達は勝つぞー!」」」」
代表選手達は士気を高める事を優先して、今のパンフレットを見なかった事にしました。
しばらくすると、開会式が始まり、花火が打ち上げられます。
花火は空にこのような文字を点火で大きく表示していました。
「HELL
COME(地獄が来た)」
会場にいた一万人の選手達と観客が驚愕します。
なぜかスポーツ大会なのに、地獄が来たとか、洒落にならない文字が表示されていたのです。
恐らく、WELCOME(ようこそ)と表示したかったのでしょうが、表示に失敗してHELL
COME(地獄が来た)になっていました。
WEL COME
↓
HELL
COME
でも、代表選手達は気にしない振りをします。小さい事に拘っていては、試合に影響しちゃうからです。
それに次は開会式選手団行進をしないといけないので忙しいという事情もあります。
次々とアナウンスで他の国々の選手団の行進が始まり、会場の真ん中へと向かい、すぐに順番が回ってきます。
「ジャパンヤー選手団行進!」
そのアナウンスとともに、ラッキー達は見事な整然とした行進をして会場の中心部に進みます。
そんなジャパンヤー選手団に対して、観客席にいる大量のチョウセン国人が熱い熱い・・・・罵倒を浴びせてきました。
それは憎しみと恨みだけが籠った恐ろしい罵声とブーイングです。
ジャパンヤーという国に、これほど恨まれる理由はないのですが、チョウセン国では子供の頃からやっている反ジャパンヤー教育のせいで反射的に理不尽に恨んじゃう人達なんです。
洗脳教育って恐ろしいですよね。
「ジャパンヤーの選手は帰れ!!!!!!!!!!」
「死ね!死ね!死ね!死ね!」
「犯されろ!ビッチ!糞ビッチ!」
「謝罪と賠償をしろおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
「ははははは!チビがいるぞ!おい!お前達の国は小学生がプロスポーツ選手になれるのか!がははははは!!!!!!!」
代表選手達は驚愕を通り越して、呆然としています。
まさか、こんなにも酷い国際大会だとは思わなかったからです。
スポーツ選手は若い年齢で引退しちゃう苛酷な職業のため、こういう大会は貴重すぎるチャンスなのですが、観客席から罵声なんて浴びせられたら、精神的に辛くて敗北する確率が高くなってしまいます。
幸先は真っ暗でした。
「うーん、なんか、私の想像していた大会と違うな・・・・
久しぶりに酷い現実を見た感じで、カルチャーショック?」
「ラッキー、もうやだこの国。」
ラッキーの頭の上に乗っている妖精さんは嫌そうな顔をしています。
兎にも角にも、世界中から酷評される事になるインチョーンアジア大会2014は、こうして幕を開いたのです。
大勢のチョウセン国人の人達が、罵声、五月蠅い叫び声が何度も何度も会場に響き渡りました。
※今回だけ特別に大会参加国の言語が全部共通設定。
※ バトミントンはこんなに危ないスポーツではありません
テーマ【インチョンアジア大会2014】
どれだけ大量のイベントがあったのか知りたいなら、下記のURLどうぞ。
http://suliruku.futene.net/uratop_2ch/2zi_zyanru/Kankoku_Intyon_Azia_taikai_2014.html
●
熱血コーチ
「そうか!君がラッキーか!」
「頑張れ・・・ラッキー・・・・私はここで死んでも・・・勝利をその手に掴むんだ・・¥・」
敵 ゴリラ女、対して強くもないけど、不正行為で勝利をおさめる。
インチョン・アジア2014
「ふはははははは!!!!
勝てば良かろうなのだああああああああああああ!!!!!」