ラッキーの不思議な旅
20国目 ゲームの国 (超絶ムリゲー イス・ラム国オンライン) C (4話構成)
全世界VSイス・ラム国同然の戦いは、熾烈な物になりました。
超大国アメリカの空軍は、恐ろしい高性能機で構成されているため、イス・ラム国は制空権なしで戦争しないといけません。
制空権がないという事は、トヨタ車を改造した戦闘用車両で移動なんてしていたら、ただの的にしかならないという事です。
イス・ラム国は支配していたイラク北部の街を次々とアメリカ軍を中心とした有志連合軍に奪還される嵌めになりました。
今も、数両の戦闘用車両(トヨタ車)で構成されたイス・ラム国の軍勢が砂漠を逃げ回り、アメリカ軍の執拗な攻撃を受けています。
その中の一両は、助手席にラッキーが乗っているトラックでした。
それを攻撃するのはアメリカの最新鋭戦闘機です。
ミサイルを次々と遠くから撃ちまくり、イス・ラム国の戦闘車両をスクラップにしています。
ラッキーは車の窓から身を乗り出してAK47の銃弾でミサイルを迎撃できないかな?と思って、乱射しますが無理でした。
一発のミサイルがラッキーの乗るトラックに一瞬で近づいて大爆発!
ドカーン
トラックをばらばらの鉄くずにしてしまったのです。
部下もラッキーも黒こげのバラバラ死体になって倒れました。
これってグロゲーですよね。
【アメリカ軍に殺された!死因はミサイル!
おお!なんて情けない冒険者だ!
と言いたいところだが、世界最強のアメリカ軍相手なら仕方ない。
こいつらは軍事費に可笑しいくらいにお金を掛け過ぎて、兵器の性能が異常だぞ!
何度でも挑戦して頑張れ!
あと、聖典【コーラァン】を読め!
あちこちで墓壊すな!墓は復活する予定の身体を収納する設備という設定があるんだぞ!
ラッキーがやった訳じゃないが、イス・ラム国はモスルにあった預言者ヨナの墓壊したろ?!
預言者ヨナを復活させるイベントが台無しだ!
誰か聖典【コーラァン】を読んでくれ!」
「うーん、アメリカ軍っていうの強すぎだよ・・・・
速いし、飛行機の存在に気づいた時には既に殺されてるのがほとんどだし・・・・もう、やだ、このゲーム。
難易度可笑しい。」
ラッキーは死体の姿で呟きました。
このゲームの世界が嫌になりつつあります。
魔法と風のバリアーがあれば、アメリカ軍なんて単独で撃破して、アメリカ大陸ごと滅亡させられるだけに、現実の世界が恋しくなりました。
なにせゲームの兵器は面倒なのです。
銃は手入れしないと壊れるし、銃弾を何処かで補充しないとすぐ使い果たすし、トヨタ車にガソリン入れないと動かないから、現実の魔法での楽な旅に慣れているラッキーには、ゲーム内での生活は面倒な事だらけでした。
更に厄介な事に、お知らせの文字が頭上に表示されています。
【大変だ!
中東の強国トルコもイス・ラム国討伐に乗り出した!
クルド人がクルド人国家を作り出すために、イス・ラム国を攻撃し始めた!
強大なイラン軍がイラク国境付近に迫っている!】
ラッキーは、短い間しか住んでないので、中東情勢がよく分かりませんでしたが、イス・ラム国が詰んでいると思いました。
なお、クルド人というのは、3000万人の人口を持つ少数民族の事です。
自治区という名前の国家と、数千台の戦車+25万人の正規軍を持ち、3000万人もいるのに世界の偉い人の都合で、少数民族として利用され続けてきた過去があります。
イス・ラム国とアメリカのせいで大混乱した中東の情勢を利用して、悲願であるクルド人国家をを世界に認めさせたり、同時に領土拡大をしようと頑張っているのです。
その悲願が完全な形で成就すると、イラン、イラク、シリア、アルメニア、トルコの領土を分捕って新国家が誕生してしまうので、シリアとイラクは南にイスラエルという強大な軍事国家、北をクルド人国家に挟み撃ちにされてしまう形になるので、新しい騒乱の火種が中東に転がっていました。
まさに中東情勢は火薬庫です。
どこをどう転んでも物騒です。
イス・ラム国が地上から消えたとしても、問題は山のように砂漠の国々に転がっています。
復活したラッキーは、シリアにあるイス・ラム国の拠点の地面にゴロゴロと寝転がりました。
偉大な指導者ハクダディが近くの椅子に座って、ラッキーを微笑ましい顔で見ています。
ラッキーは服が汚れるのも構わずに、何度も何度も地面を転がり、暇そうに愚痴りました。
「うーん、そろそろゲームやめてもいいかな?かな?
どうしたら現実に戻れるんだろう。
このゲーム飽きた。クソゲーだよ。
難易度高すぎ。」
「どうした?同志ラッキー。
アメリカ軍と戦って忙しい時期だから、早く戦場に戻りなさい。
戦力が足らなくて、皆、大変なんだ。」
偉大な指導者が優しく命令してきますが、ラッキーにはやる気が見られません。
どうやら、テロリストごっこに飽きたようです。
ラッキーは偉大な指導者のヒゲ顔を見上げながら質問しました。
「ねぇねぇ、このゲームの世界から出るのってどうすればいいの?
指導者さんって、中身人間だよね?」
「同志ラッキーが24時間接続しっ放しだと思ったら、ログアウトの方法も知らなかったのか?」
偉大な指導者は呆れた顔をしていました。
ラッキーは首を縦に振って肯定の意味を示し
「うん、そうだよ。
ゲーム初めてだから、ログアウトの方法が分からないの。」
「親御さんが泣くぞ・・・・
この3ヶ月間ずっとログインしっ放しだったろ?
学校にちゃんと行けよ。
まだ10歳なのにネットゲーに嵌っちゃ駄目だろ・・・・・
この国は働かなくても暮らせるけど、現実とゲームの両方を両立しような!」
「おじさんもずっとログインしてるよね?
無職なの?」
「いや、私はこのゲームの開発者の1人だ。
プレイヤーを盛り上げるために、仕事とかを作って、皆に渡している。
あ、これは秘密だから他の人に言うなよ。」
「ふーん、そうなんだ。
でも、もうイス・ラム国の存続って無理でしょ?
なんか戦場は凄い大軍だらけだし、包囲されてるし、アメリカの空軍が攻撃してきて大変だよ?」
偉大な指導者は少し黙った後に、ゆっくりと答えてくれました。
「いや、まだ石油の密売による利益が1日に3億円くらいあるから、これを上手く使えば兵隊を幾らでも雇えるし、民衆を盾にする非道なゲリラ作戦を展開すれば、アメリカ軍相手でも勝ち目があるんだ。
民主主義国家はテロに弱いし、長期戦に持ち込めば何時か諦めてくれる。」
「うーん、それは無理なんじゃないかな?」
ラッキーが首を可愛く傾げました。
偉大な指導者は黙ったままなので、ラッキーが続きの言葉を紡ぎます。
「アメリカ軍は石油関連施設を爆撃すると思うの。
こちらの収入源を消し飛ばしてから、世界中の国々が動くとなると 、まず勝ち目がないよ?
冒険者に給料払えないとどうなるの?」
偉大な指導者さんはようやく詰んでいる事を理解しました。
「・・・・そうか。
その手があったか。
今回もゲームリセットか。
もう少し難易度を下げた方がいいかもしれ」
ドカーン
偉大な指導者が最後の言葉を呟く前に、この拠点がアメリカ軍の戦闘機に攻撃されて、全員死にました。
ラッキーも偉大な指導者も他の人達も黒焦げの死体です。
現実なら、何処が拠点なのか入念に調べないと分からないのですが、頭上に【職業 テロリスト】とイス・ラム国の冒険者の頭の上に表示されているから、何処にいるのかバレバレでした。
隠れる事ができません。
戦闘機から見ても、位置が筒抜けです。
「もうやだ、この世界。
妖精さんの気持ちが理解できた気がする・・・・」
「難易度高くしすぎた・・・・」
【偉大な指導者まで戦死するなんて情けない!
だが冒険者は幾らでもいる!
我らの戦いは終わることはない!】
ラッキーは偉大な指導者に、再び会ってログアウトの方法を聞くのに更に三ヶ月の時を要することになりました。
イス・ラム国は有志連合の空軍に、空からぼこぼこにされ、石油関連施設は根こそぎ空爆。
周りの国々全てが敵に回りから、勝ち目がなくなり全拠点を破壊されて詰みました。
最初からイス・ラム国は詰んでいたのです。
軍事的にはテロ組織の割には異常なほどに強い組織だったのですが、外交面が駄目駄目です。
世界中の国々と敵対しちゃった時点で、勝利なんて無理だったのです。
あと、現実と違って【職業テロリスト】と表示されているせいで、テロ攻撃する前にばれて返り討ちにあったり、一般の人民にボコボコにされたりして、現実でテロリストやるよりも難易度高すぎでした。
ラッキーはゲームの世界から現実の世界にようやく戻ってきました。
今のラッキーは黒色のパンツ以外身にまとってない姿です。
体中についているコードを外して、ベットから起き上がり、軽く両手を組んで背伸びをしました。
半年間全く運動していませんが、特に肉体に影響はありません。
「ふー、やっぱり現実の方がいいなぁ。
ゲームの世界も楽しかったけど、魔法と風のバリアーが懐かしいー。」
台風を圧縮した風のバリアーが常にラッキーの周辺に展開され、魔法の力を感じることが出来て、ラッキーは幸せです。
近くに置いてあった白いローブを被るように着ると、部屋の入り口からメイドロボと、その頭の上に乗っている妖精さんがやってきました。
妖精さんがとっても怒っています。
「ラッキー!
半年もゲームの世界に行って帰ってこないなんて酷いよ!
僕、暇だったから、メイドロボさんと親友になるくらい会話しっちゃったよっ!?」
ラッキーもさすがに申し訳なく思ったので、頭を下げて
「妖精さんごめんね。
ログアウトの方法知らないから、半年間もログインしちゃった。」
妖精さんは空を飛び、ラッキーの頭の上に乗りました。
そこが居心地がいいのが妖精さんは、顔を満面の笑みで染めます。
ラッキーは、そんな妖精さんを見て微笑みました。
メイドロボさんは、ラッキーに近づいて、相変わらずの無表情のまま話しかけてきます。
「ラッキー様。
半年間、栄養を注入しなかったのですが、体は大丈夫ですか?
高速回転しているエネルギーの塊のせいで、寝ているラッキー様に何も投与できなかったのです。
注射をしようとしたら、私の腕ごと粉々に消滅しました。」
「あ、そうか。
普通の人間なら、毎日食事をしないと死んじゃうよね。
エルフは個体によって差があるけど、10年間くらい食事しなくても、風のバリアーから栄養を補給できるから、生活できるんだよ。」
「ラッキー様のおっしゃる事は、私には分かりません。」
メイドロボさんは無表情のまま不思議がりました。
ラッキーは、この地下都市を出て、旅を再開しようと思ったので、メイドロボさんに
「この半年間、ゲームを楽しませてもらってありがとうね。
また50年くらいしたら、ここにやってくるよ。
次はもっとまともなゲームがいいな。」
「そうですか。ラッキー様。
またのご来訪をお待ちしております。
次は妖精様もゲームを出来るように、専用の設備を用意しておきます。」
メイドロボさんは無表情のまま頭を下げました、
ラッキーは、地下都市の外へと向かうためにトコトコと歩き、建物を出て、新しい旅を始めます。
頭の上にいる妖精さんが、ラッキーに問いかけてきました。
「ねぇ、ラッキーはどんなゲームをしていたの?」
「うーん、全世界を敵に回す無理ゲーっかな。」
「なにそれ怖い。」
おしまい
【テーマ 2014年現在の中東情勢】
http://suliruku.futene.net/1uratop/Isuramu_koku.html
●冒険者の国【ユスラム国】を作るのが君の目的だ!
↓
●依頼内容 → 酷い
シリアスタート
アメリカ軍がイラクから撤退したぞ!
イラク正規軍を襲撃して、支持者を大量に集めるんだ!
銃弾やミサイルを全部回避して、殺しまくれ!
後篇 シリアとイラクを手に入れ、国盗り物語完成!
↓
●世界中の国々が敵になりました。
本当の地獄はこれからだ。
石油関連の施設は空軍に爆撃されて、資金源壊滅。
どうするの?!
↓
無理でした。
おしまい