エルフ娘の世にも不思議な旅
11国目 自然保護の国
白いワンピースを着ている、綺麗な金髪の小さな女の子ラッキーは、自然に飲み込まれた巨大な都市の廃墟の中を歩いていました。
頭に拳サイズの妖精さんを乗せています。
ここは、かつては高層ビルが乱立していたようですが、今では見る影もありません。
人間の建築物は草木に完全に隠れ、人間は一人も住んでない野生の王国です。
時折、動物の絶叫が聞こえて不思議でした。
ラッキーは残念そうに、都市の廃墟を見て呟きました。
「うーん、可笑しいなぁ。
200年前は、自然と人間が共存する素晴らしい都市だったのに、滅亡しちゃってるよ」
「そうだね、ラッキー。
僕でも安心できる普通の都市だったのに、残念だよ……」
妖精さんも残念そうです。
二人の言葉から分かる通り、ここに来たのは200年ぶりです。
ラッキーは昔を思い出しながら、道なき道を歩きました。
「人工物と自然の調和が、今じゃ人工物が自然に蹂躙されて台無しだね。
どうしてこんな事になったんだろう」
かつては電気自動車が通った大通りは、全て木で埋まっています。
試しに昔の道路でも出てこないかと、ラッキーは魔法で全て消滅させてみました。
具体的には風の刃を大量に射出して表面上の植物を全て粉々に切断し、魔法で遠い場所へと飛ばして捨てました。
すると、200年前にはなかった物が見えます。
青色の錆びない金属製の道路に……刻まれた文字です。
滅亡した国の文字でこう描かれていました。
【これを読む、あなたは驚いたかね?
あなたは男かね?女かね?
年寄りかね?赤子かね?
人間かね?人間以外かね?
あなたは、この国が滅亡した理由を知りたいかね?
知りたいなら、かつて国道一号線と呼ばれた道路があった場所を発掘すればよい。
吾輩は道路に真っ直ぐ、一定間隔で文字を彫った。
他の国道には、吾輩以外が文字を彫った。
知りたいなら見るが良い】
「うーん、暇だからいいかな。
知的好奇心でワクワクしちゃう」
ラッキーは、この文字が何を伝えたいのか気になったので、最後まで付き合ってみる事にしました。
昔の道路が何処にあったのかを思い出しながら、次々と魔法で植物を粉砕し、遠い場所へと飛ばして捨てていきます。
それを200m先まで繰り返しながら歩くと、次の文字が見つかりました。
【あなたは、自然を愛しているかね?それとも人工物の方が愛しいかね?
吾輩は自然が愛しい。
出来れば、木に文字を刻みたかったが、それだと後世に伝わらないから、仕方なく錆びる事がない金属の道路に文字を彫っている。
続きを読みたいなら、また発掘作業をやりたまえ】
植物を全部破壊しながら、ラッキーは200m歩きました。
そこからようやく本題の文章が道路に彫ってあります。
【あなたから見れば、遥か大昔。
吾輩達は、自然と人工物の調和を保った素晴らしい都市で暮らしていた。
ビルの中も外も自然で満ち溢れ、共存していた訳だね。
だが、その自然は人間にとって都合が良いだけの紛い物に過ぎない事に気付いたのだよ。
あなたは驚いたかね?驚いたかね?
この真理に気付いた吾輩達の英知を褒めるかね?
続きを読みたいなら、また発掘作業をやりたまえ】
ラッキーはまた自然を全部破壊しながら200m歩きました。以下略
【我輩達は、自然と人間の共存を謳いながらも、自然を自分達の都合で虐げていたことに気づき、深く反省したのだよ。
でも、我輩達【人間】が暮らしていく上で、どうやっても自然を犠牲にしてしまう。
新しい建物を建築する時に、その土地にある自然を壊し、紙を作る時に木を材料にするから、一方的に自然を傷つけ略奪してしまう訳だね。
そこで良い事を思いついたのだよ。
自然が大事なら、自然と一体化すれば良いのだと。
どうかね?驚いたかね?
あなたはきっと、私達を キ チ ガ イ ……狂人だと思っているのではないかね?
続きは発掘して読みたまえ】
「うーん、良い感じに怖いオチが待ってそう。
これは楽しみだね。
人間をやめたのかな?」
ラッキーは文字を読んでいて楽しい気分になりました。
妖精さんは文字が読めないので、ラッキーの頭の上で眠っています。
また、道路上にある自然を全て魔法で破壊しつくし、200m歩いて次の文字を読みました。
【自然と一体化するために、我輩達は様々な方法を考えたのだよ。
建造物を植物にしたり、木を改造して住居にしたりと、試行錯誤した。
だが、どれもこれも自然の一体化とは、遠いかけ離れたことだと理解して、我輩達は絶望したのだよ。
そこで我輩の頭脳は閃いた。
究極の自然の一体化とは、人間が動物である事をやめて、植物になる事なのではないかとね。
どうかね?驚いたかね?尊敬したかね?
それとも、我輩が怖いかね?
続きはまた発掘して読みたまえ】
「クスクスクス」
ラッキーは笑いながら、周りの自然を全て破壊して、200m先まで歩きました。
また道路に文字があります。
【人間が植物になるのは、非常に難しい苦難の連続で大変だった訳だね。
でも、我輩は諦めない人間だから、何度も人体実験して奇跡的にやり遂げた訳だよ。
反対する愚民が国民の半分を占めたが、全員を捕えて、名誉ある人体実験に使って有意義だった訳だね。
我輩達は、人間を植物に出来た時、大喜びした。
植物の身体を自由自在に動かし、根っこで移動し、光で光合成して栄養補給、植物の身でありながら人間の英知を持つ新人類になれた事を喜んだ訳だよ。
どうかね?凄いかね?
私の天才っぷりを褒めるかね?
この文字も、植物になった私の体で彫っている訳だよ。
続きは、また発掘して読みたまえ】
ラッキーはここにきて気づきました。
今まで破壊した植物って、元人間なんじゃないかと。
「あ、どうしよう。
植物人間を殺しちゃったかも」
でも、気にせずに、知的好奇心を優先しました。
更に周りの自然を破壊しながら、200mを歩くと
そこには、歪んだ文字がありました。
【あなたは女かね?男かね?
吾輩は女の子が好きだ。
特に10歳くらいのピチピチの女の子が大好物だ。
生々しい太股がたまらない。
お尻もモチモチして実に良い。
人生経験が少なそうで、声が良い。
ああ、そうだ、可愛い美少女だともっと良い。
我は金髪で碧眼の娘を求める】
「あれ?
植物人間なのに、人間の女の子に発情するの?
うーん、植物人間と人間との恋愛って、どんな感じなんだろう」
ラッキーは内容が可笑しいから、少し考え込みましたが、周りの自然を全て破壊しながら200m先まで歩いて文字を読む事を優先しました。
そこには更に歪みきった文字で
【美味い!美味い!
人間は美味しい!
若い女の子の肉は柔らかくて美味しいっ!
あなたは男かね!?女かね!?
吾輩は若い女の子を所望ずるうううううううううううううう!!!!!!!
うまいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!
人肉おいじいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!
女の子の悲鳴が最高うううううううううううううう!!!!!!
太股が一番うまいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!
お尻も美味いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!】
「なにこれこわい」
ラッキーは気付きませんでしたが、ラッキーの死角から無数の植物の蔓が蠢いてやってきています。
普通の女の子だったら、身体を拘束されて、色んな所をガポガポ食べられちゃう所です。
危険です。
でも、植物の蔓は、ラッキーの風のバリアーに触れて粉々に砕けてしまいました。
「え?え?」
ラッキーは突然の事に驚きました。ちょっと心臓がドッキリ。
さっき見た文字のせいで、いつもよりも怖がっています。
背後を振り返ると、膨大な数の人間の顔を持った大木が、ラッキーを半包囲していました。
人面樹という奴です。
どの人面樹も、ラッキーの事を美味しい獲物だと思って、無数の触手(木の蔓)を向けてきました。
ラッキーは恐怖でガクガク震えて涙目になり、うっかり反撃も過剰になり
「えいっー!」
ドカァーンっ!ショボォーン!
魔法で産みだした圧倒的なエネルギーで、廃墟な都市が周りの地形ごと消滅して、巨大なクレーターになりました。
ラッキーはやりすぎた事を後悔して
「……やっちゃった」
新しい人間の国を目指して、空を飛んで旅立ちました。
久しぶりに恐怖というものを味わったので、眼から涙がぽろぽろでていました。
自然を愛しすぎて狂った元人間な植物モンスター達は、一瞬で皆殺しにされて、愛した自然と一緒にあの世へと旅立ったのです。
場に残ったのは巨大なクレーターと、奇跡的に、ラッキーがまだ見てない文字が刻まれた道路が残っていました。
そこには
【人肉美味しいイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!
性欲と食欲が一体化した食事が楽しいいいいいい!!!!
人間の時には味わえない究極の快楽うううう!!!
犯しながら食べると美味しいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!
人間の女の子美味しいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!
何処だあああああああ!!!!
どこに女の子がいるんだあああああああああああああ!!!!
美味しいイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!
女の子美味しいイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!!!
あああああああああああああああああああああああああああああ!!!!
国の外へと逃げても無駄だああああああああああああ!!!!
我輩は何処までも追いかけて食べるうううううううううううう!!!!
人肉美味シイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!
女の子オイシイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!
うまいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!】
11国目 自然保護の国
おしまい
テーマ【ホラーへの挑戦】
●自然を守ろうとする余り、国を滅亡させてしまった愚か者達の話。
↓
●ジャングル。
↓
●ところどころに、自然の最大の敵は人間だ。
↓
●ゆえに私達は全員死なねばならない。
↓
●この思想を、他の国にも伝えて欲しい。
人間はこの世界には居てはならないんだ。
↓
おしまい。