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「ふむ、ここは疾風戦術を取ろうと思う。みんな甲冑を脱ぎ捨ててくれ」
「か、甲冑を……ですか?」
私の言葉に兵士達は困惑の表情を浮かべる。それも無理からぬ事。
常識的に言って甲冑は身を守るための道具。それを脱ぎ捨てるなど命を脱ぎ捨てるのと同じ。
けれどもだ。鎧があろうと剣で貫通されれば死ぬし、身体の動きも重さによって鈍くなる。
それなら鎧を脱いで俊敏性をあげた方が効率的だ。
「おおっ! 身体が軽い。防具をつける前よりも軽くなっている気がする……!」
「本当だ……一体どうして…………?」
やはりか、と内心で思う。どうやら配給された甲冑の中には鉄粉が練り込まれており、普段よりも重くなっていたのだろう。
だから甲冑を外すと重さになれた身体が普段の状態でも軽くなったように実感するのだ。
それは錯覚現象ではあるのだが、兵士達の士気を上げるためにも話に勢いをつける。
「忌まわしき鎧を脱ぎ去った今。もう君たちを縛るものは何もない、俊敏になったこの肉体を使い共に敵軍を倒そうではないかっ!」
私にしては珍しく声を大きくする。それを聞いて兵士達の目に輝きが帯びてくる。
「「おおおおおおおおおおっ!!」」
勢いよく大地が揺れる。それは獣の声ではない兵士達の闘志溢れる心の咆哮だった。
「ふむ、いい調子だ。では向かおうか私たちが最強であると示そう!」
「おうっ! 俺はアンタに付いていくよ……! 絶対に活躍して見せるからなっ!」
「敵どもをぎゃふんと言わせてやるぜぇぇええ!」
中略
主人公「落とし穴と、伏兵でずっと俺のターン!
俺の大勝利!」
これが私によって葬られたのならば彼は納得していたのかもしれない。
だが、シオンーーつまるところ奴隷に敗北を決したのが彼の小さな自尊心を傷つけたのだ。
ミレイユは叫ぶ、ひたすらに。それに兵士達は互いに顔を見合わせて頷くと携えていた護身用のナイフを取り出して。
「おおっ、ようやく命令を聞いたか……! ほら早くこの害虫共を……おい? な、なぜ俺に刃を向けるッ!」
「ふざけるなっ、こんな無能の奴が宰相だと国が汚れてしまう! お前が一番の国の害虫だ!」
今までの不満が爆発し兵士達は次々にミレイユに刃を向けて切りつけていく。
「や、やめ…………ろ」
しかし、そんな命令は誰も聞かない。結局兵士達は、彼の身体が動かなくなっても尚、ミレイユに刃を突き立て続けたのだった |