次の話 >>

ゆっくり戻るよ!

ある一発の核ミサイルから始まった核戦争で、人類の栄光の時代は終わりを告げた。
核は世界を放射能で汚染して自然環境を破壊し、モヒカンと呼ばれる悪人顔の武装集団が跳梁跋扈する暗黒の時代が到来したのである。
弱き人々は嘆き、この時代を地獄だと呼称していた。
しかしっ!そんな時代を変えようとする救世主がいるっ!
その名をマッハ兄貴っ!音速を超えるスピードを持つパンチを放ち、筋肉を身に纏った身長2mの大男であるっ!
彼は、暗黒の時代を変えるべく、旅を始めたのだっ!

「悪党は許せぬっ!この俺のパンチで悪党は地獄に行くがいいっ!」

マッハ兄貴の脳内想像では、無力な民衆を襲う凶悪なモヒカン達が世界にうようよしている感じであるっ!
そんな悪党どもを見つけ出し、討伐する事でマッハ兄貴は己のパンチの力を世界に知らしめてやろうとしているのだ!






1話 ヒャッハー!なんて恩知らずな犯罪者なんだぁっー!







マッハ兄貴が故郷を旅立って、一週間ほど経過した頃、マッハ兄貴は食糧を調達できなくて困っていた。
核戦争のせいで人間の勢力圏が縮小し、自然も荒廃してしまったので、身長2mの巨体を維持できるだけの食物に巡り合う事ができなかったのである。
このまま何もしなければ、脱水症で今日中に死亡するほどにマッハ兄貴は苦しんでいた。
必死に荒野を歩き、水を探し求めるが周りに広がるのは荒れ果てた土地だけである。

「い、家に帰りたい・・・」

マッハ兄貴は、この極限状態に置かれた事で家に帰りたかった。
だが、来た道を戻るだけの体力もなく、進む事しか方法がない。
そんな最低最悪に等しい状況で、マッハ兄貴の前方の荒野から砂埃をまき散らしながらバイクで走行している武装集団を発見した事で、マッハ兄貴は絶望した。
遠くからでも、武装集団はモヒカンヘアーの悪人顔だと理解でき、今の衰弱したマッハ兄貴では楽しく嬲り殺しにされるだけだ。
マッハ兄貴は、世界そのものに絶望して地面に倒れる。
走行中のモヒカン達は、マッハ兄貴との間の距離をどんどんつめて、あと30mほどで人身事故に発展しそうな距離で

「「「「ヒャッハー!こんなところに行き倒れの男がいるぞぉっー!バイクを止めろぉっー!」」」」

倒れたマッハ兄貴を発見したモヒカン達は、マッハ兄貴を弾き殺す前にバイクを止めて、斧やボウガンを取り出し、警戒しながらマッハ兄貴へと近づいた。
マッハ兄貴は、このままモヒカン達の餌食になってしまう己の運命を呪うが・・・モヒカン達が次にとる行動に、マッハ兄貴は驚愕する事となるっ!
1人のモヒカンが手持ちの水筒を取り出して

「ヒャッハー!この水でも飲みやがれぇっー!とても美味しい水だぁっー!」

マッハ兄貴の口元へと宛がったのだっ!
新鮮な水をグビグビと飲み込んだマッハ兄貴は、生きるための気力を取り戻す。
だが、こんな状態になるまで絶食生活していたせいで身体が動かず、水を飲んで安心した事もあって気絶してしまう。

「気絶しちまったぞぉっー!どうすればいいんだぁっー!」
「ヒャッハー!トラックに放り込んで村まで連れていくんだぁっー!村には医者がいるぜぇっー!」

モヒカン達は気絶したマッハ兄貴の巨体を協力して担いで運び、5台あるトラックの中の一つにマッハ兄貴を放り込んで、再び移動を開始したのだった。














マッハ兄貴が次に目を覚ますと殺菌されて清潔な白い部屋のベットの上だった。
何故ここにいるのかマッハ兄貴は全く思いだせなかったが、モヒカン達に救助されたようなそんな夢か現実かもわからない記憶がある。
ベットの周りには、水が入ったコップが幾つか並べられており、誰かに助けられたという事だけがわかった。

「俺は・・・善良な人々に助けられたのか?」

考えても状況が分からないマッハ兄貴は餓えを満たすためにコップの水を飲む。
そして、栄養のある物を摂取していなかったので、お腹が空腹でグーと鳴き、水以外にも食物が欲しいと思った。
そんな事を考えると、部屋の扉がガチャッと開き、医者のような白衣を身に纏った・・・悪人顔のモヒカンが現れたっ!
モヒカンの手には、栄養バランスが考えられて作られたであろう料理を載せたお盆があるっ!

「ヒャッハー!起きてやがったかぁっー!この料理でも食べていけぇっー!
俺はここのお医者様だぁっー!ヒャッハハハハっ!」

マッハ兄貴は突然の大声に、心臓が止まりそうなほどに驚き、ベットから崩れ落ち、頭を床に激しく打ち付けて気絶する。
そんな自爆をしたマッハ兄貴を心配したモヒカンが、手元のお盆を床に置き、心配そうな顔で

「大丈夫かぁっー!誰かぁっー!医者を呼べぇっー!
・・・ヒャッハー!俺がお医者様だったぜぇっー!俺が責任を持って治してやるぅっー!」












次にマッハ兄貴がベットの上で目を覚ました時には、モヒカンはいなかった。
マッハ兄貴は夢か現実か分からない記憶の数々で、現実を疑うほどに疑心暗鬼になっている。
幸い、ベットの近くに冷めた食事を載せたお盆があったので、それを食べて気分を落ち着かせ、部屋の窓の外を見ることで少しでも情報を集めようとしていた。
きっと、こんなにも親切にしてくれるのなら、ここに住んでいる人々は優しいのだろうと思って外を見ると

「ヒャッハー!愚民どもぉっー!食料の配給を受け取れぇっー!」

そこには、トラックから荷物を次々と降ろしているモヒカンの姿と、その荷物を並んで受け取る薄汚い人々の姿があった。
しかし、人々は大人しく並ぶ事ができないのか、順番を抜かしたり、真っ先にモヒカンの元へと詰め寄って荷物を取ろうとしている。
そんな身勝手な民衆にモヒカンは激怒して

「整列しろぉっー!順番を守らねぇとぶち殺すぞぉっー!一番後ろにさっさと並びやがれぇっー!」

悪人にしか見えないモヒカンが、民衆に食料を配給するというありえない光景をマッハ兄貴は目撃してしまった!
恐ろしいほどのカルチャーギャップっ・・・!
明らかに何十人も人を殺してそうな雰囲気を身に纏っているモヒカンが善良な行為をやっているっ・・・!
そんな風にマッハ兄貴が戦慄していると、部屋の扉があき、先ほどの白衣のモヒカンがやってくる。
マッハ兄貴が振り返ると、何人も人体実験して残酷に殺していそうな悪人顔が見える。
しかし、白衣のモヒカンの口から聞こえる内容は

「ヒャッハー!起きてやがったかぁっー!
貧乏人の治療代は無料だから、安心してさっさと退院しやがれぇっー!」

とても善良で医者の鑑といってもいいほどのセリフであるっ!
マッハ兄貴は拳を高く振り上げて

「なんでそんな悪人顔なのに善良なんだっー!
普通に可笑しいだろっー!」

「アベジッ!」

白衣のモヒカンに拳でツッコミを入れてしまった!
殴られた白衣のモヒカンは空中をクルクルと回転し、そのまま扉の向こうの壁をぶち抜き、吹き飛んだ!
そして、通路に他のモヒカン達がいたのか、この行動が切欠で大騒動になってしまうっ!

「た、大変だぁっー!名医なお医者様がやられたぁっー!やった奴をぶち殺せぇっー!」






あとがき

(´・ω・`)ヒャッハー!なんて凶悪なマッハ兄貴なんだぁっー!

ゆっくり戻るよ!

ブログパーツ  次の話 >>