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ドラゴン転生  
18話「ガチャ
ガチャの国」@ 11KB 

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2話構成

「すべての日がそれぞれの贈り物を持っている」

[マルティアーリス]
(古代ローマの詩人、40〜104)

ガチャガチャを知っているだろうか?
箱の中に大量の景品を入れ、お金と引き換えに景品を吐き出す機械。
日本では箱の中に、玩具やカードなどのコレクター向けのアイテムが入っていて、子供や大人達の購買意欲を掻き立て、衝動買いをさせて誘惑感たっぷり。
なぜ、私がこんな話をしているのかと言うと……今回訪れた浮遊島のあちこちに、ガチャガチャがあるのだ。
公園に行けば、屋根がある場所にガチャガチャが30台ほどずらりと並び、子供達がお金を入れて、次々と景品を購入していた。

「この『魔女娘の飴玉』が美味しいんだよな!1000種類もあって凄いぜ!」
「あ、ウンコ味だぁー!うげぇー!」
「こっちは1歳若返る味だから、9歳になっちゃったよう」
「こっちは鼻くそ味!外れの飴がガチでハズレだから最悪だ!こんな所まで再現するなよ!」

……この光景を見ていたら、私とアイスの間に子供が出来たら、ガチャガチャ代で湯水のように大金を消費しそうだなぁと思った。
なにせアイスの子供だ。
きっと浪費癖が凄いに違いない。

「ねぇねぇ、ドラさん。
あっちの方に超大きいガチャガチャがあるよ!」

隣を飛んでいるアイスが、私に声をかけてきた。
今の私の姿は緑髪の妖精さん……巫女服以外の服を着たい、男になりたい。
アイスが男の体の構造を知らないせいで、未だに変身した私の姿は妖精娘だ。
そんな事を思ったが、折角のデートに水を差す訳にはいかず、私は元気よくアイスに

「ああ、わかった。
そっちに行ってみよう」

エメラルドの羽を震わせて、空をグングンと高速で飛ぶ。
目的地には、ビルサイズの巨大な青いガチャガチャがあった。
ガチャガチャの前には、裕福そうな人間達が一列に並んでいて、一番前の金髪の男が、金貨をガチャガチャに入れている――

「値段高すぎるだろ!?
一回につき金貨1枚(日本円で10万円)のガチャガチャとか、どんな景品を扱っているんだよ!?
ガチャガチャもビルサイズとか巨大すぎる!?」
「ドラさん、ドラさん。
景品のメニューを見ればわかるよー」

アイスにそう言われて、ガチャガチャの前に降り立って、メニューを近くで見た。
そこには写真と一緒に、景品が紹介されている。

      『特等景品』
【魔女娘の若返り薬】●一粒飲むだけで1歳若返る。1000粒入り
【惚れ薬】●今日からモテモテ。1000粒入り
【国宝ルビー】 ●値段を付けられない高級感
【万能治療薬】 ●どんな不治の病も治す。1000粒入り
【エルフ娘になれる薬】
今日から君はピチピチギャル 1粒入り

一回につき、金貨1枚かかって当たり前の値段だった。
そりゃそうだ。
どれもこれも人間の欲望そのもの。
特に【魔女娘の若返り薬】とか【惚れ薬】とか――

「おいこら!惚れ薬は犯罪だろ!?
相手の好意を薬で得ようとか最低だ!」
「ドラさん、普通に景品として販売しているって事は、この国では合法なんだよ」
「まじで!?」
「僕、色んな国々を見てきたけど、結婚相手を金で購入したり、誘拐して結婚する伝統がある国とかあったよ」
「地球の国々と似たような国がある異世界は嫌だ!」
「世界は変わっても、人間がやる事は同じって事なんだねー」

楽しそうにアイスが笑った。
私も彼女の笑顔を見て笑……おうと思ったが、この場の雰囲気が重い。
ガチャガチャに大量の金貨を入れまくって、景品を次々と川のように吐き出させている金髪の男がいる。
黒いスーツを着ていて、見た目は美男子、身に纏う雰囲気は――まるで死闘に挑む戦士のようだ。

「何故だ!何故出ない!?
金貨を1万枚も入れたのだぞ!
万能治療薬出ろ!」
「金使いすぎだろ!?
ギャンブル中毒者か!お前は!」

ツッコミを入れちゃった。
あー、しまったなー。
関わり合いになりたくないのに、ツッコミ入れてもうた。
金髪の男は振り返って睨んでくる。

「妖精の小娘!
俺は病気の妻を助けるために忙しいのだ!黙れ!
万能治療薬出ろ!」
「え?
ああ、そういう事情があったのか。
それはすまなか――」
「俺は今、非情にイライラしている!
人民の税金を使い込んだのに……戦果を上げられなか、ヒデブッ!」

蹴った。
私は金髪の男の頭を蹴った。
巫女服だから、袴のせいで人を蹴るのが難しいから威力は低めだ。
だから、金髪頭はすぐに起き上がって私に詰め寄ってきた。

「妖精の小娘っ!
なぜ、俺を蹴った!?」
「人民が頑張って納めた税金を無駄遣いするなよ!?
お前、役人か何かか?
だとしたら横領だぞ!」
「俺を役人風情だと思っているのか!」

金髪の男は逞しい胸板を反らして

「グラム公爵家当主ラインであるぞ!
人民の税金を使い込んで済まないなーと思う気持ちは少しあるが、今は非常事態だから許される!」
「いや、人民が汗水垂らして稼いだ税金だぞ!?
人民の事も考えろよ!
腐敗貴族かお前は!?」
「自分の妻すら救えない男が、人民を救えると思うのか!?
人民を救うのは、妻を救ってからだ!」

その言葉に……私は何とも言えなかった。
もしも、好きな娘――アイスが不治の病にかかって助ける手段があったら、私も公金横領をやりかねない。
だから、これ以上のツッコミは出来なかった。
自分の緑色の髪を恥ずかしそうに手で掻きながら

「……蹴って悪かった。
万能治療薬出ると良いな」
「……俺も悪かった。
税金を使い込んでいる事は事実だ。
妻を救う事が出来たら、今まで以上に人民のために頑張ろうと思う」
「お前、良い領主になれそうだな。幸運を祈っておくよ」
「ああ、俺は世界を掴む男だ。
妻を救ったら近くの無能な国にでも攻め込んで、使い込んだ分以上の金を稼ごうと思う」
「戦争で儲けようとかアホか!?」
「アバブッ!」

ラインの頭を蹴った。
小さい妖精娘の体で、足を大きく上に動かすハイキックは辛かった。
そのままここから空を飛んで離れて、島の中央にあるリリーの家へと向かった。




★ガチャガチャの正体★

リリーの家は、とんでもない豪邸だった。
家の周りに壁と堀を巡らし、玄関口に当たる橋のすぐ傍に歴史資料館がある。
小山の上には日本風の白い城があった。
屋根には黄金の鯱、青い瓦があり……見るだけで故郷【日本】を思い出せて懐かしさを感じさせてくれる。
敷地中に大量の木々が植えられ、死を意識して作られた日本庭園が美しい――

「大金持ちすぎる!?
個人で城持ちとか!どこの大名だ!」
「ドラさん、この国のリリーは凄く儲けてるんだよー」
「いやいや、どんな商売したらこんな家に住めるんだよ!?」
「今日、この国を見たし、どうやって稼いでいるのか、ドラさんにはわかるはずだよー」
「……国中にあるガチャガチャの利益か!?」
「そうそう」
「リリーが大商人すぎて尊敬するしかない!?」

こんなやり取りをしながら、私達は城の前へと降り立った――

「橋とか他の設備無視して……いきなり城に直接来ている時点で不法侵入すぎるだろ!?」
「僕、大親友だから顔パスならぬ、空パスだよ。ドラさん」
「う、上手い事を言われた」
「それよりも早くリリーに会おうよ」

そう言ってアイスが、城の前にあるスイッチを押した。
ピンポーン、と古き良き音が鳴る。
城の中からトコトコと歩く足音が聞こえて、城の玄関扉が開いた。

「ドラとアイス、わっちの家に来てくれて嬉しいのう。
どうじゃ?露天風呂あるから朝風呂はどうじゃろ?」

姿を見せたのは……桜柄でピンク色の着物を着たエルフ娘のリリー。
花魁風に長い銀髪を纏めあげていて、とっても妖艶だ。
その姿を見て、笑顔を浮かべたアイスはリリーに抱きついた。

「わーい!お風呂!お風呂!」
「うむ、この国では裸で入れるから安心してくれると嬉しいかの?」
「やっぱりお風呂は裸で入るのが一番だよね!」
「風呂は開放感たっぷりの方が、とっても贅沢な気持ちを味わえるしの。
ドラにも、わっちが設計した風呂を思う存分に満喫して欲しいでありんす」

やったー。お風呂だぁー。
混浴だぁー。
……リリーから、男として認識されてないな、私。
大きなトカゲとか、オカマとか思われているのかもしれない。
グスン。



★露天風呂は人類が生み出した最高の文化だよ★

脱衣室で巫女服を脱いで裸になって露天風呂に入った。

露天風呂のあっちこっちにガチャガチャの箱が置いてある。
お酒、お菓子、タオル、桶、避妊具などなど各種様々――ん?風呂に避妊具?深く考えるのはやめておこう。
それよりも今考えないといけないのは……ガチャガチャの製造元がリリーという事は、ラインが欲しがっていた万能治療薬を彼女が持っているという事になる?
試しに、両目を瞑ってお湯でゆっくりしているリリーに聞いてみよう。

「……なぁ、リリー」
「どうしたのかの?」
「万能治療薬って持ってるか?」
「わっちの超高級ガチャガチャの目玉商品じゃからな。
当然、持っとるよ」
「欲しがっている男が居るんだ。譲ってくれないか?
そいつの奥さんが死にそうなんだ」
「うーむ、それはダメじゃ。
万能治療薬は値段が高すぎての。
簡単に渡す事はできん」
「実際にどれくらいの値段なんだ?」

リリーがニヤリと笑って

「金貨1万枚(10億円)ほどの価値はあるのう。
ま、ひと瓶あれば大抵の病気は治せるし、一生、病気に困らん素敵な素敵な薬じゃよ」
「……そうか、そんなに高いのか。
なら、諦めるしかないな。
いや、待てよ。
あの男なら金貨1万枚払える?」
「お金を持ってきても、わっちの手元には万能治療薬ないから無理でありんす。
全部、超高級ガチャガチャの中じゃよ。
次の入荷が何時になるのか、検討もつかんのう」
「……ガチャガチャに金貨何枚入れたら、超高額景品が出てくるのか聞いてもいいか?」
「3万枚の金貨を入れたら、超高額景品が一つ出るような仕組みになっておる」
「ボッタクリだ!?」
「いやいや、ハズレ景品も豪華じゃよ?
周辺国の在庫品を纏めて買い叩いて、あの中に入れておるからの」
「具体的にはどんなハズレ商品が入ってるので?」
「半分くらい、わっちの経営するアイドル事務所のプロマイド写真じゃな。
水着とか、ウェデイングドレスとか、巫女服とか着た可愛い美少女の写真が100枚セットで入っとる」
「おおーい!?
女性客から見たら、全く要らない景品だろ!?」
「皆、人気アイドルじゃよ?
しかも、超レアな非売品じゃ。
オークションで売れば、それなりの金になるでありんす」
「でも、リリーからしたら元手がかかってないだろ!?」
「しかも、富裕層へのアイドルの宣伝になって一石二鳥じゃ。
昔はわっちのエッチィ写真をたくさん入れて、経費削減したでありんす」
「ロリBBAの写真とか、ロリコンほいほいすぎる!?」
「おかげでわっち人気になりすぎて、アイドルデビューして伝説のアイドルになってもうた」
「この話のタイトルをロリコンの国に変えた方がいいと思う!今すぐタイトル変更すべき!」
「メタな発言はやめるでありんす」
「いや、小さい娘が好きなのは犯罪だろ!?」
「12くらいの外見のアイスに惚れとるお主も、日本の価値観から見たら犯罪じゃよ?」
「アイスはロリBAAだから!
ロリじゃないから!手を出しても犯罪じゃないから!」
「わっちもロリBAAじゃから、ロリではないでありんす。
わっち的には、ロリBBAよりも合法ロリという表現の方が好きじゃのう」
「合法ロリ!なんて素敵な響き!」
「手を出して結婚してもええからのう。
ま、今はそれよりも……お主、アイスとの仲は何処まで進展したかの?」

直球すぎる話題だ。

「わっちが思うに、早めに告白して結婚した方がええでありんす」
「いやいや、出会ってまだ2年くらしだし」
「このまま告白せずに旅をしていたら、異性じゃなくて、女友達と認識されて終了すると思うのは気のせいかの?」

私の心にグサッと、言葉の槍が突き刺さった。

「い、いや、ちゃんと男として認識されてるし」
「お主の今の身体が女な時点で、説得力がないのう……。
このまま、男の体の構造を学習してもらえんと、一生、変身した時の姿が妖精娘の身体じゃよ?」
「むぅ……確かにそうだな」
「ほれ、わかったのなら今日か明日辺りに、アイスにプロポーズするでありんす」
「わ、わかった!
私も男だ!勇気出してやってみる!」
「わっちも協力するんじゃよ?
明日の超高級ガチャガチャは、当たり景品が出やすくなるように設定を変更してあげるでありんす。
当たり景品をプレゼントして、告白すれば完璧じゃな。
国宝ルビーとか喜ぶと思うんじゃよ」
「イカサマか!?」
「そりゃそうじゃろ?
ギャンブルは元締めが儲かるように出来ているのが一般常識。
何が悪いでありんす?」

この銀髪ロリエルフ、略してロリフ。
腹黒すぎる……。
でも、私の恋を応援してくれるし、感謝して抱きついた。

「ありがとう!リリー!」

リリーのエルフ耳がピョコピョコ動いて可愛かった。
合法ロリのエルフって最高だなと思った。




後編に続く

18話のコメントまとめ+作者感想
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