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1国目 税金がない国なのです 後編 



何処で産まれたのか?それを言えない私は笑顔のまま黙る事にしました。
師匠が超怪しんでます。
所詮、私なんて元人間の似非エルフですよ、似非エルフ。
エルフがどんな種族なのかすらよく知りません。

「で?
君は何処で産まれたんだい?髪の色も違うからこの国の産まれじゃないだろう?
過去に辛い事があったのかもしれないけど、黙っていちゃ僕は納得しないよ?
君の反応から察するに隠したい事のようだね?」

いやー、どうしましょうかね?
こうなったら、重要な所は誤魔化して、本当の事を言いましょう。
前の世界の詐欺師が、嘘半分、事実半分を話に混ぜると相手を騙しやすいとか言ってましたし。

「えと、ですね、師匠。
私の両親は人間なんです」

「?
人間から、エルフの君が産まれたのかい?」

「はい、他のエルフを1人も見かけない人間の国で、私は育ったんです。」

「ああ、なるほど、先祖帰りという奴か。
きっと君の先祖にエルフが居たんだろう。
君もとんだ災難だ。
子供の頃から、外見が違うせいで、人間達に苛められて大変だったろう?
酷い目に合わなかったかい?」

「いや、あの、えと、そ、その師匠、エルフってどんな種族なのですか?
私、そこらへんの知識もないのです」

ふぅ、勝手に師匠が納得してくれましたよ。
いま、私がおどおどしても、過去に人間に虐められた少女だと思ってくれるから、誤魔化せるのです。
捨てられるフラグを見事にへし折りました!

「簡単に言うとエルフは悠久の時を自然とともに生きる不老の長寿種族だよ、ヴィクトリア。
人間から産まれた子供なら、精霊魔法を知らないのも無理はない。
師匠として君にゆっくり全部説明してあげよう。
散歩しながらね」

そう言うと師匠は、片目をウインクして、一瞬でなんの動作もなく 何 か を し ま し た。
私達の周りに、薄い透明の膜が展開されています。

「これが精霊魔法だよ、ヴィクトリア。
厳密に言うと風の精霊魔法に区分されるね。
今は光を歪めて屈折させて、周りから僕達の姿を見えなくしたんだ。
そうしないと、警察官に通行料を取られてうるさいからね」

光学迷彩!?
魔法すごい……一瞬で透明人間になれるなんて科学をある意味超越してますよ。
相手から見えないという事は、一方的に圧倒的な大奇襲ができるって事ですよね。

「さぁ、会話しながら国の外まで散歩しようか」

「はい!散歩しましょう!
ぜひとも師匠の説明を聞きたいです!」

師匠が左手を差し出したので、私は右手で優しく師匠の手を握りました。
大きくて温かい手です。
散歩はいいですよね。
散歩ポイント貯まりますし。
……よく考えたら、これはデート?
気づいたらリア充になっていたのです。







散歩する途中、あちこちに警察官が立ってましたけど、私達の姿が見えないから通行料を請求されるという事態に一度もなりません。
いやー、これ便利ですね。
うまく使えば正面から銀行強盗できますよ。
周りを見るのはこれくらいにして、師匠の話を聞き逃さないように集中しようと思います。
こんな素敵な力、私も使ってみたいのです。

「精霊魔法はね。
この世界に存在する精霊達が力を貸してくれる魔法なんだ。
でも、この力を精霊達が無償で貸してくれる訳じゃない。
世界の敵【魔族】と戦う義務が発生する」

「魔族とは何ですか?」

「この世界が誕生した時に産まれ、全てを無に還そうと企む自殺志願者さ。
一度、彼らと会話してみたけど、価値観が完全に異なるから分かり合う事は無理だ。
こっちは生きたいと願い、魔族は無に還りたいと願う正反対の種族だしね。
しかも、精神生命体だから物理攻撃は完全無効、魔法が魔族に致命打を与える有効な手段なんだ」

昔の冒険ファンタジーみたいな感じなんですか。
いやはや、ファンタジーですよね。この世界。
あ、視界の端で高層ビルが燃えているのです。
でも、師匠の講義を遮って貴重な情報を教えてもらえなくなったら大変ですから、華麗にスルーなのです。

「そして、ここからが重要な話になるよ、ヴィクトリア。
精霊の種類は風、炎、土、水、光、闇の6種類があるんだけど、その内の一種類と友好関係を結ぶと、他の精霊達から嫌われるから、それをよく考えて精霊と仲良くならないといけないんだ」

「えと、師匠の場合は風の精霊と契約しているから、風の精霊魔法しか使えないって事でいいのですか?」

「すぐ理解できるなんて凄いね、ヴィクトリア」

師匠の手で、頭を撫でなでされました。
なんかRPGのような世界観だから、簡単に覚えちゃいましたよ。

「炎はその性質ゆえに破壊に偏り。
風は探知と速さに偏り。
土は大質量と自己の身体能力の強化と回復に偏り。
水はバランスが取れているが水場が近くにないと効力が薄く、
光は最強の貫通力と速度を誇り、他者への回復を行えるが太陽が出ている昼間しか使えず、
闇は破壊と命の搾取に偏り、夜の間しか使えない。
どれもこれも、メリットがあり、デメリットがあり、精霊の運用の仕方が違うのさ。
ヴィクトリアはこれらの事をよく考えて決めた方がいいね」

今、散歩チートを試してみたら、莫大な散歩ポイントがあれば複数種類の精霊に好かれる事も可能なようです。
あとで他の精霊も使える事を前提に考えるなら、この中で光の精霊がとても便利のようですし、光にしましょうかね?他者を回復できる時点で医療でお金ガポガポですよ。
あ、先ほどの燃えているビルが延焼を起こして、周りのビルも燃え始めたのです。
師匠の左手を強くグイグイと引っ張って、師匠の興味をそらすと、師匠は呆れた顔で火事現場を見てました。

「……ん?火事かい?
それにしてもすごい大火事だね。
周りのビルに燃え移ってるよ」

「消防隊が来るのが遅すぎて、被害拡大しちゃった感じですよね、師匠」

師匠が顔を横に振りながら

「いやいや、この国は税金がない国だよ?
火を消す消防隊は本来、税金で運用される代物だからね。
この国には消防隊がないのかもしれないよ」

「……あははははは、それ笑えないですよね」

「僕が今まで見た所、税金がない影響で、倒壊寸前の橋が大量にある上に、国を外敵から守る軍隊すらないから、消防隊がなくてもおかしくはないさ。
やれやれ、どうしてこんなおかしい国が現実にあるのか、僕には謎だね」

火事はどんどん酷い事になって、都市区画そのものを燃やすレベルで拡大中なのです。
このまま国にいると危ないのですが、そろそろ国の出口が見えてきました。
そこには青い服を来た警察官さん達の死体が大量に転がって、装甲車や銃で武装した豚顔の二足歩行の怪物が大量にいるのです。
ひええええええええええええええええええええええ!!!!!
豚の化物なのですっー!

「「「「ブヒイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!
ブータ大中帝国は、貴国に宣戦布告するブヒイイイイイイイイ!!!!!
抵抗したら男は全員殺して、女は繁殖奴隷にしてあげるブヒイイイイイイ!!!!
さっさと降伏するブヒイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!
降伏したら男は全員断種して労働奴隷として生かしてあげるブヒイイイイイイイ!!!!」」」」」

一瞬驚いて大変でしたが、この豚はイラストやゲームで見た事ありますよ。
オークっていう豚顔のモンスターです。
セリフから察するに、人間と交配……できるんですか!?
豚と人間でエッチィ事はさすがに駄目だと思うのです!

「やれやれ、どうやらあの放火はあのオーク達の手によるものらしいよ、ヴィクトリア。
放火して人間の国が混乱している間に攻め込むなんて、嫌らしい手だけど堅実的だね。
この国には軍隊がいないから、このままだとこの辺り一体はオークのものになってしまうという訳さ」

こんな時も冷静ですよね、師匠。
最初は頼りない雰囲気の男性だなぁって思いましたけど、すごく頼りになります。

「ちょうど良いから、あの豚達に風の精霊魔法の素晴らしさを教えてあげよう。
風の精霊はね。
風故に質量が軽いけど速く、圧縮すれば、こうなるのさ」

師匠がそう言うと、薄い薄い風の刃が出て、オーク達のところを一瞬で通り過ぎました。
シュパァーン!

「「「「「ぶひ?」」」」

オーク達は自分達が死んだ事に気づかずに、上半身と下半身が離れ離れになり、地面に落下。
頑丈な防御を誇る装甲車も、中にいたオークごと真っ二つ。
全員生き物から死体になったのです。
予備動作なしで魔法が発動するから、相手からしたら対処困難ですよ、これ。
あと、
ゲロ吐いてもいいですか?師匠?
ちょっと、グロに耐性ありません。
地面にえれえれー
でも、この三週間、何も食べてないからゲロでませんでした。


「……やれやれ、よく考えたら、子供に見せるような光景じゃないね。これは。
ごめんよ、ヴィクトリア」

「「「「「「「「「「「「「「「「「「ブヒイイイイイイイイイ!!!!!!!
一番乗りを果たした部隊が全滅したヒイイイイイイイイイイイ!!!!!
この国は軍隊がない国じゃないブヒイイイイイ!!!!!
強力な兵器を保有しているから逃げるブヒイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!!」」」」

国の外に数千人匹単位でオーク達が居たようですが、逃げちゃいました。
師匠は、背中を擦ってくれて優しいです。
こういう優しくて強い人のお嫁さんになれたらいいなーと思います。
超優良物件すぎますよ、師匠。
あと、税金がない国はもうこりごりです。
税金がないと、国をまともに運営できませんよね。
警察官が王様のように振舞う国には住みたくないのです。




1国目 税金がない国  おしまい


テンプレB【無双してヒロインに惚れられる】

http://suliruku.futene.net/uratop_2ch/2zi_zyanru/Syousetuka_ni_narou_Tenpure.html

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●なんでもかんでも税金なさすぎて酷い国

●通行料払わないから、奴隷にされる→ しかも、そいつら警察

●警察署の牢屋の中に入れられる。

●そこでこの国のひどい惨状を、同世代の少女に聞く。

●散歩チートを使って、良い男に出会えますようにと願う(良い飼い主にである的な意味で

●奴隷市場に売りにだされて、師匠と出会う。

●弟子入りする。

●師匠、ロリに興味なし。
でも、ロリの一人旅は超危険だと理解したから、師匠にしがみついて積極的なアピール


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