数百人の人間達の拍手が終わると、紺色のスーツを着た、人の良さそうな20代前半の男が前に出てきました。
とっても優しそうな顔つきの男性なのです。
「おめでとうございます!
私はこの国の最高責任者アポリ・ジーニ大統領です!
あなた様達の名前はなんですか?
A級ランクのダンジョンを攻略した偉人として、我が国の歴史に名前を残したいと思います!」
さっきから一方的な会話ばっかりで訳がわからないのです。
セリフから察するにあのオークだらけのダンジョンは、この人たちが作ったという事ですよね?
ちょっと聞いてみるのです。
「あのダンジョンは、あなた方が作ったのですか?」
「ええ!
徒歩で踏破するのに最低でも二週間ほどかかる超巨大ダンジョンです!
我が国と外部を繋ぐ唯一の出入り口でもあります!」
「そんな貴重な通路を、ダンジョンにしちゃったのですか?」
大統領は興奮気味だった状態から、気分を少し落ち着けて
「いえ、本来はダンジョンにするつもりではなかったのですが、いつの間にか精霊魔法を使えるオークが住み着き、無数の横道をモンスター達が掘って、迷路だらけのダンジョンになってしまっただけです。
おかげでこの国は、他国との国交が全くなくて寂しかったんです。
どうしてモンスターが住み着いたのか、今でも謎です」
「なるほど。
それは大変なのです」
「ええ、本当に困りました。
幸い、この国は科学が発展した国なので、地下暮らしは自給自足生活で快適ですが、他国との交流がなくなって残念です。
でも、ここの暮らしも良いですよ? エネルギーは地熱発電、水は地下水脈、食料は工場で生産しているから餓死の危険はありません。
お嬢さんも暮らしてみませんか?
今なら無料で市民になれますよ?
ここなら地上で戦争が起きても、何の影響もなく平和に暮らせます。
元々、神々と大魔王との戦争から逃げるために作られた地下都市ですし、隕石で地上が壊滅してもここには何の影響もありません」
うーん、悩みますね。
師匠と結婚生活するなら、ここで子供を産むのが一番良い気がしました。
でも、私的には人工の光で集まったここの光の精霊さんよりも、太陽で集まった光の精霊さんの方が逞しくて大好きなので悩み所です。
あ、今度は師匠が大統領に話しかけました。相手が偉い大統領なので口調が丁寧なのです。
「さきほど僕はこの国の人からダンジョン探索の国と聞きましたが、それがこの国の産業ですか?」
「ええ、この国ではダンジョン探索は国民的なスポーツです。
皆、楽しんでダンジョン探索をやっております」
「スポーツ?
それは危険なのでは?
オークに捕まったら、男は良くて断種されて労働奴隷、女は繁殖奴隷として死ぬまで性奴隷生活を強要されて酷い目にあいますよ?」
「ええ、そうです。
だから、私達は兵器を遠隔操縦して、テレビゲーム感覚でダンジョン探索をやっております。
とても安全で爽快で楽しいですよ。
機銃を取り付けたラジコンカーでゴブリンを撃ち殺したり、スナイパーライフルを搭載してスナイパー気分で狙撃して遊んだり、火炎放射器で広範囲をなぎ払ってモンスターを焼いたりと、多種多様な遊び方ができます。
モンスター用に数百にも及ぶ巨大ダンジョンを作り上げたから、どれだけモンスターを殺しても絶滅する心配がありません」
「……僕は、そういう命を弄ぶ事には関心できないね。
負の感情が大量発生して、魔族が成長したらどうするつもりですか?」
「は?魔族?
なんですか?それは?」
大統領が訳が分からないという顔をして、師匠に聞き返しました。
どうやら完全に魔族という種族を知らないようなのです。平和でいいですよね。
師匠は少し考えた後に、この国がどういう事情に置かれているのかすぐに考察して
「……ひょっとしてこの国は、外の情勢を全く知らないんですか?
今、外は世界滅亡を企む魔族達が暗躍し、オークやゴブリンなどのモンスター達が国家を乱立して戦国時代に等しい状態になっていますよ」
「え?
我が国が作ったゴブリンやオークが、国を作ってる?
それ嘘ですよね?」
「はっ?」「ふぇ?」
師匠と私は、大統領のその言葉に驚いたのです。
今まで信じられてきたモンスター関連の一般常識が完全に覆るという事なのです。
師匠は、急に無表情になって、ゆっくりと大統領に質問しました。
「……大統領、ゴブリンやオークをこの国が作ったというのは本当ですか?」
「ええ、ダンジョン用に作りました。
他にもミノタウロス、ドラゴン、コボルト、ケンタウロス、触手、スライムなども製造して大人気ですよ。
我が国の技術者は凝り性でして、我が国でも把握しきれないくらいに多種多様なモンスターが作ったんです」
「もしかしてそれらは人間の遺伝子を元に作りましたか?」
「よく分かりましたね。エルフのお客さん。
この国の死刑囚の遺伝子を使って、豚、鼠、牛などの遺伝子を組み合わせて作りました。
絶滅すると困りますから、相手が人間だろうが、違うモンスターだろうが妊娠させられる交配機能とかもオマケにつけましたね」
「それらを作ったという証拠は?」
「この国のモンスター博物館で、資料と実験設備が保存されております。
見ますか?」
師匠は首を縦に振りました。
とても悲しそうな顔で、人間達を見てます。
そりゃそうですよね。
地上を戦乱まみれにしたモンスターを作り出しのが人間だなんて、エルフじゃなくても人間不信になるのです。
……私、師匠と出会ってなかったら、小屋の中でオーク達に囲まれて毎日エッチィ事をされて大変な未来が簡単に想像できるだけに、ほんと、迷惑な国ですよ。ここ。
女性という性に対する犯罪です。犯罪。
この国、消滅させてもいいですよね?光の精霊さん。
え?精霊さん達は産まれた時から、ここの人工の光で暮らしているから故郷を壊すお願いは無理?
破壊するのはやめてくれ?
わかったのです。やめておくのですよ。どうせ、今の内容は冗談のつもりですし。
大統領に案内されて来た博物館は、周りに水堀と橋があって一回建ての横にひたすら長く広がっている建物でした。
なぜか近くに日本式の城があって、紅い兜を頭に着用している人型の猫が【ひごうにゃーひごうにゃーひごにゃーにゃー】言いながら刀を振り回していて可愛らしいです。
なんでしょうかね?あれ?
ツッコミを入れたら大変な事になりそうなので、見なかった事にして大統領とともに博物館の中に入りました。
本来は入口近くにある受付で入場料を払わないと入れないようですけど、大統領がいるから顔パスでどんどん奥に入る事が出来るのです。
入口から少し歩くと、青い液体が詰まった大きなガラス製の容器の中に、人間の子供サイズのモンスターの死体がありました。
顔はまるで老婆のように皺くちゃです。
大統領はこれを見て笑顔で
「このモンスターを我々はゴブリンと呼んでいます。
鼠と人間の遺伝子を合成したら誕生しました。
繁殖能力が非常に高くて素早くて、ダンジョンで狩る獲物としてトップクラスの人気を誇っております」
「……大統領さん、元人間を狩る事に抵抗はないのですか?」
「あははははは!
モンスターはモンスターですよ、エルフのお嬢さん。
殺しても法律上問題にはなりません。
これは人間ではないのですから」
「うう……私の言いたい事がわかってないのです」
大統領と私の倫理観が違いすぎて、私が言いたい事を理解してない気がするのです。
通路を歩くと、周りにどんどん色んなモンスターの死体が展示されていて、人類の罪深さという奴を思い知らされてしまいそうです。
それぞれのガラス容器には、銀色のネームプレートが取り付けてあって、そこに種族名が書かれています。
人と昆虫を合成して作った人型の虫【昆虫人間】
人と魚を合成して作った魚に手足が生えた【魚人】
人と牛を合成して作った巨大な巨体を持つ【ミノタウロス】
人とタコを合成して作った無数の触手を持つ【触手生物】
人とアメーバーを合成して作った半透明な液体【スライム】
人とゴキブリを合成して作った巨大なゴリラにしか見えない【ゴリオ】
人と豚を合成して作った人型の太った豚【オーク】
人と馬を合成して作った馬の手足に人間の胴体がある【ケンタウロス】
人と蛇を合成して作った巨大爬虫類【ドラゴン】
人とエルフを合成して作った小さな人間【ホビット】
人の遺伝子を改造して作った【強化人間】
人の遺伝子を更に強化して作った【スーパー強化人間】
更に強化して作った【強化人間Z】
どれもこれもひどすぎるのです。
人間に近い外見の死体が幾つかある時点で、この国の倫理観は可笑しすぎます。
でも、大統領はこれを見て誇らしげに
「これが我が国の生命工学の結晶です。
生命には無限の可能性が溢れています。
本来はダンジョンや家畜用の生物を製造する事を目的に研究していたのですが、人間の遺伝子を改造する技術がその過程で生まれましてね。
人間から老化を取り去ったり、寿命を延ばしたり、身体能力や頭脳を向上させたり、病気になり辛い体にしたりと、医学に貢献しているのです。
ところでエルフの方々は、私が何歳に見えますか?」
「僕は20代に見えるね」「私もそれくらいに見えるのです」
大統領がクスリと笑いました。
どうやら不正解のようです。
「いえ、私はこう見えても、既に844歳です」
「なるほど僕と同じくらいか」
どっちも凄い長生きなのです。
科学って残酷ですけど凄いです。
前世の私だったら、その技術を開発した技術者を尊敬して一生尽くすレベルですよ。
師匠は無表情のまま、大統領に丁寧だけど厳しい口調で
「大統領。
あなたは人間の遺伝子を元に作られたモンスターを殺す事に抵抗感を感じていないんですか?」
この言葉に大統領は全く動揺せずに笑顔のまま
「ええ、全く感じていません。
週に一度、レーザー戦車を遠隔操縦してミノタウロス狩りをしますが、日頃のストレスを発散できて良いですよ。
殺したミノタウロスを持ち帰って、解体して、ステーキにして焼いて皆で食べると牛肉みたいで美味です。
ゴブリンとホビットは蒸し焼きにしたら絶品でした」
さすがに私が黙っている訳にはいかないのです。
元人間として、この国の人たちがどんな風に可笑しく見えるのか、言わないといけない気がします。
「……それは共食いなのです。
人間が人間を食べるのは、禁じられたタブーなのです」
「いいえ、モンスターは人間ではありません。
人間の遺伝子を元に作られただけの全く違う種族ですよ、エルフのお嬢さん」
「私には分からないのです。
人間と魔族のどこに違いがあるのか、分からなくて……正直言うと、あなたが怖いのです」
私がこう言うと、大統領が困惑しました。
一応、人間と認めた相手には優しい男性なんですね。
「おや?怖がらせてしまったようですね?
何分、この国で800年以上生きてきたものですから、他の国の常識が分からないんですよ。
小さいレディに申し訳ない事をしました」
「あの、遠隔操縦する兵器でモンスター狩らなくても、そういうテレビゲームを作れば誰も殺されなくて平和だと思うのです。
私が今まで見た例ですとモンスターを狩るテレビゲームとか、ゾンビを倒すホラーゲームとか。
お金もそっちの方がかからないですし、検討してみてくれませんか?」
「いえ、それは駄目です。
このダンジョン探索という狩りは、争いがほとんど起きない平和ボケした我が国の軍事力を維持するための訓練も兼ねていますので、止める事はできません。
それにモンスターは次々と繁殖して、新しい通路を掘って作るから、狩らないと地下空間がいずれ大変な事になります」
「やっぱり駄目なのですか?」
「ええ、駄目です。
エルフのお嬢さんの頼みといえども、これだけは譲れません。
軍事力は最低限維持しないと、緊急時に対応できなくて国民全員が困るからです
それに」
「それに?」
「一度も地上の国を見た事はないのですが、地上では家畜を大量に放牧して育てた後に、殺して食べているそうですね?」
「はい、そうなのです。
羊とか牛とかを草原に放牧して草を食べさせて、成長したら殺して食べているのですよ」
「我が国の場合、ダンジョン探索で殺したモンスターは、後でロボット部隊が回収して、狩った人の物になります。
自分で狩りをして得た肉を食べる事の満足感に、大人も子供も笑顔を浮かべるのです。
ダンジョンで繁殖したモンスターと放牧された家畜、どう違いがありますか?」
「えと、その、分からないのです」
「ええ、そうでしょう。
むしろダンジョンに住んでいるモンスターの待遇は、家畜よりも良いんです。
上手く隠れれば、殺されずに天命を全うする事ができますし、自由に生きる事ができます。
逆に過去の文献で見る家畜の可哀想さときたら嘆くしかありません。
必ず殺されて肉にされる事が決まっていて、夜は狭い小屋で寝るんです。
それと比べたら、我が国は優しいと言えるでしょう。
国民の失業率はほぼ0、自殺も少なく、人は他者に優しくするのが当たり前で幸福度はほぼ100%、とても豊かな暮らしができています。
それに、エルフのお客さん達もダンジョンでたくさんモンスターを殺しましたよね?
我が国のモンスターハンティングと、エルフのお嬢さんの殺戮に何処が違いがありますか?
食べる分だけ我々のほうがマシでは?」
うう……屁理屈で勝てそうにないのです。
800年以上生きた人間相手に、弁論で勝てる可能性なんてほぼ0なのです。
でも、この大統領が優しい人なんだなって事は伝わってきました。
だって、この人の目と口調、頼りになる素敵な男だって伝わってくるほどに穏やかなんですよね。
でも、でも、大統領の言っている内容は、モンスターを殺して食べる事を正当化するために、自己弁論して己の心を守っているようにも見えました。
もしかすると大統領は、心の奥底ではこの国の歪みに気がついていて、自分と国民の精神を崩壊させないために必死にその常識を守ろうとしているのかもしれません。
もし彼らが……今まで散々殺して食べてきたモンスターを自分たちと同じ人間だと認めたら、絶対社会維持できませんし。
私の言い分を大統領が認めたら、自分達は人を食べる食人鬼だと宣言するようなもんです。
博物館を出た後、大統領は公務があるという理由で、私達と別れました。
師匠と私は手を繋いだまま、この国を見て回るために歩きましたけど、人間という生き物に師匠は絶望して目が悲しそうです。
……こういう時こそ、女が男を慰めないといけないですよね。
私は師匠の左手を両手でギュッと強く握って
「あの、師匠。
そんなに悩むと疲れるのですよ?」
「……そうだね。
ヴィクトリア。本当に悩み込むと困った事になるよ」
「悩んでいる事があったら、私に言って欲しいのです。
溜め込むのは良くないです。
私は足手まといですけど、これでも立派な1人のレディなのですよ?」
師匠の表情に少し笑顔が戻りました。
右手で私の頭を撫で撫でして、気分を落ち着けています。
やっぱり師匠の隣には、私みたいな女が必要なんだと思って、ちょっと嬉しくなりました。
「ヴィクトリア。
散歩しようか?
何分、僕の頭の中でも纏まってない内容でね。
歩きながら考えた方が答えが出そうだ」
「わかったのです、師匠。
散歩は気分転換になって素晴らしいのです」
手を握りなおして師匠と私は、この地下都市を散策しました。
その道中、色んな人々が私達に話しかけてきます。
肉を焼いている屋台を通れば、屋台で肉を焼いているおじさんが
「そこのエルフの方々!ほら!オーク肉の串焼きだよ!ただでいいから持って行きな!
その代わり写真を撮らせてくれ!」
「共食いはちょっと……」
「共食い?なんのことだ?」
次に、自称超一流ホテルの近くを通ると、中から大勢のホテルマンが出てきて道にズラリと並び
「「「「A級ダンジョンを攻略したエルフの方々!我がホテルに泊まりませんか!?
宿泊費を無料にしますよ?
監視カメラもあって、安全が保証されています!」」」」
「あの、このホテルは、男と女が愛し合うラブホテルなのでは?」
「「「「安心してください!監視カメラの映像は外部には流れません!」」」」
小型のラジコンカーを持っている少年たちの近くを通りすぎると、スカートを子供たちに掴まれて
「「「「「たしか生身でダンジョン探索した凄い奴だよな!あんた!
TVで見てたぞ!俺らにも精霊魔法教えてくれよ!
いいだろ?!まだ子供だから狩猟用の無人兵器を親が買ってくれないんだ!」」」」
「や、やめて欲しいのです!スカートめくりは犯罪なのですよ!」
アイドル事務所の近くを通り過ぎると、中からスカウトマンが出てきて
「「そこのエルフの方々!プロの俳優になって映画に出ませんか!?
きっと歴史に名前が残りますよ!
映画名は、プロジェクトW!A級ダンジョンを攻略した勇者達!」」
ひいええええええええええええええええええええええええ!!!!!
どこにいても皆に注目されすぎて、ゆっくりと師匠との素敵な散歩デートができないのです!
私と師匠は逃げるように、地下都市のあちこちに行きましたが、どこでも似たような歓待を受けて大変でした。
出される料理は、モンスターの肉だから食べる気になれません。
皆、優しかったり、欲望まみれだったり、実はスカートをめくりたかっただけのエロガキだったり、色んな人が居ました。
余りにも鬱陶しかったので、この国を出て、また暗い暗い地下通路を通って地上に戻る散歩をする事にしたのです。
でも、この騒動のおかげか師匠に笑顔が戻りました。
どうやら悩み事は吹っ飛んだようなのです。
「やれやれ、人間とは複雑な生き物だね、ヴィクトリア」
「そうなのです。優しかったり、残酷だったり、エロかったり、もう訳がわからないのですよ」
「ああ、でも僕は人間のそういう矛盾だらけの所が好き……だった気がするんだ。
僕達、エルフも皆違う性格をしているからね
ラッキーお婆さんは、無邪気だけど頑固で我が儘で食べ物を食べるし。
おじさんは闇の精霊に好かれすぎて自宅に引き籠もり。
お母さんは夫を愛しすぎて子供を放任して精霊任せ。
イエニーは、可愛いものが好きすぎて弟に女性物の服を何度も着せる変態。
弟は、大雑把な性格でいい加減だけど、芯が通った良い弟。
ヴィクトリアは、食べ物を食べる変な性癖があるけど、他人思いの良い娘だ。
よく考えたら、人間の国の問題が可笑しすぎるからといって、僕の頭が痛くなるくらいに悩む必要はなかったという事さ。
どうせ通り過ぎるしね。
悩むのが馬鹿らしくなったよ」
「そうなのです、そうなのです。
人生気楽に考えた方が良いのです」
食べ物を食べる習慣、止めた方がいいんですかね?
あんなに美味しいのに、人生を損していると思う訳です。
でも、この国の人達みたいに遺伝子がほとんど同じモンスターを食べる共食いには反対します。
太陽光がある地上へと戻るために、二週間の長い長い帰り道を進む嵌めになりました。
その道中、おかしい事に、モンスターの死体が各所に転がり、壊れた無人兵器がたまに落ちていて、あちこちで爆発音やら銃声がしました。
どうやら、ダンジョン探索の国の人達が、この地下通路に大量の無人兵器を投入して、狩りを楽しでいる様子なのです。
時折、遺体を回収するためのトラックが通路を走ってきて、轢かれそうになるから怖いですよ。
前世の私、トラックに轢き殺されたんですし。トラックは見るのもこりごりなのです。
あ、目の前に砲塔を構えた大きな装甲車の後ろ姿が見えました。
その装甲車の車体に、複数の紅い細長い旗が掲げられていて、そこには
【目指せ!A級ダンジョン踏破!やれば出来る!】
【死体は忘れずに回収して焼肉】
【補給と充電は忘れずにしましょう】
【エルフの旅人に喧嘩売るな、誰だダンジョン入口で砲弾撃った奴】
【殺す前にモンスターなのか、人間かエルフかドワーフなのか確認してから楽しくモンスターハンターライフ】
と描かれていました。
どうやら、私があの国に訪れたせいで、このダンジョンが人気スポットになったようなのです。
モンスター達の悲鳴が聞こえて可哀想可哀想でした。
でも、元が人間の遺伝子を使っているとは思えないほどに外見に違いがあるので、同情心が湧かないのです。
よく考えたら、人間が鹿を殺して食べるのと、何ら変わらない行為でしたよね。これ。
まぁ、地上でモンスターが大量繁殖しすぎて、大勢の人間に迷惑がかかっているから、酷い国だったといえば酷い国でしたよ。
「「「「ぶひいいいいいいいい!!!!
助けて欲しいブヒイイイイイイ!!!!!
雷が出る鉄の棒が凄すぎるブヒイイイイ!!!!!!
俺たちが何をしたというブヒイイイイイイイイイイイ!!!!!!!!
鉄のお化けは怖いブヒイイイイイイイ!!!!!!!
俺たちは、女の子を探してお嫁さんにしようとしただけブヒイイイイイイ!!!!!!」」」
テーマ1【ダンジョン探索物は人気のテンプレジャンルなんだよ!】
http://suliruku.blogspot.jp/2014/12/blog-post_34.html
テーマ2【ダンジョン経営物は人気のテンプレジャンルなんだよ! 】
http://suliruku.blogspot.jp/2014/12/blog-post_44.html
テーマ3【オーストラリア大陸の移民によるスポーツ人間ハンティング(アボリジニ)を元ネタの原型をなくして、ファンタジー化】
http://suliruku.blogspot.jp/2014/12/blog-post_62.html
✖ボツネタ✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖✖
そう思って更に師匠の方に近寄って抱きしめてもらおうとしたら
パシャッ
カメラのシャッター音と光が、私の背後から聞こえたのです。
振り返ると、そこにはデジタルカメラを持ったイエニーさんと、ニヤニヤ笑っている師匠の弟さんの姿が!
今日のイエニーさんはツインテールの髪、茶色の可愛いエプロンドレスを着ているのです。
「あらあら?二人ともとっても良い雰囲気で良いですわ。
もうそろそろ結婚しますの?
どちらからプロポーズしましたの?
恋っていいですわね」
「兄貴、さっさと結婚して母ちゃんを安心させろよ」
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