むかし〜むかし〜、とある砂漠に、エルフのお爺さんと、お婆さんが住んでいました。
お爺さんは、働くために街へ。
エルフ娘で、ピチピチギャルなお婆さんは、衣服を洗濯するために、川へと行きました。
そこで、衣服の黒い汚れを、ゴシゴシッと、木製の洗濯板で落とそうと努力します。
何時間もかかる重労働に、お婆さんは「洗濯機が欲しいんだよー、わからないよー」 と悔しそうに愚痴りました。
すると、どうでしょう。
川の上流から、恐怖の帝王ワルキュラ様が、ドドンっ!ドンッ!ザザーン!というラスボスっぽい音とともに、流れてきました。とっても巨大な骸骨です。桃っぽい形状の船に乗っています。
それを見て、お婆さんは気軽に話しかけました。見かけは若くてもロリなBBAだから、最高権力者相手でも恐怖しません。
丸太ような太い神経の持ち主なんです。
「ワルキュラ様〜。
税金を安くして欲しいんだよー。
わかるねー?
このままじゃ洗濯機を買えないんだよー。
夫の安月給じゃ、手が届かないよ〜」
その陳情にワルキュラは、辛そうに言い返しました。
「すまぬっ……!これ以上、税金を安くしようにもっ……!
色んな団体と、たくさん協議しないといけないのだっ……!
利害の調整って難しいっ……!人生が嫌になってくるっ……!」
「わからないよー。
洗濯機、高すぎるんだねー。
夫の給料5年分とか酷いんだよー」
「た、大量生産すれば、もっと安くなるはずだ……!
それまで待って欲しい……!
量産体制が整うまで、電化製品は高いのだっ……!」
お婆さんは、若い手足を必死に駆使して、走りながら、ワルキュラの乗る船と、併走します。
最高権力者と会話できる、貴重な機会を逃したくないからです。
「ワルキュラ様〜」
「どうしたのだっ……!」
「どうして、川を流れているの〜?」
「一年間っ……!学生になりたいと言ったらっ……!
頭を川で冷やさなきゃっ……!と王妃に言われたからっ……!
流れてるっ……!俺はなんて情けない男なんだっ……!人生やり直したいっ……!リライフしたいっ……!」
「わからないよー」
そのままワルキュラの身体は、桃っぽい船とともに、川下へと流れて行きました。
そして、エルフのお婆さんは、ふと、気づいたのです。
この話を、本にすれば売れるんじゃね?と。
川から、何かが流れてくるという時点で、インパクトがありまくりです。
ちょうど夫が、出版社の編集者だから、頼み込めば何とかなるでしょう。
「わかるんだねー、この話はきっとヒットするよー」
……お婆さんが書いた物語の名前は『モモ・タ・ロ・ウ』
巨大な桃から生まれたエルフの美少年が、絶対支配の能力を使って、ハーレムやって、悪の帝王ワルキュラを倒す、そんな物語です。
言論の自由が認められているから、ワルキュラを批判したり、悪役にしても、弾圧されません。
こうしてお婆さんは――高級すぎる洗濯機を手に入れ、幸せに暮らしましたとさ。
めでたし、めでたし。
ワルキュラ「モモ・タ・ロ・ウという物語が流行しているようだな……とっても気になる……」
側近「はい、買ってきました(やべぇー、終盤は全部検閲しないと渡せない内容だぁー。
いや、序盤からワルキュラ殺す!って書いてあるから見せられねぇー!)」
ワルキュラ(ほとんどのページが破かれて読めない……
この国の庶民は……どんな粗悪な読書文化を歩んでいるんだっ……!)
読者の反応
A「ちょwwwww破くなよwwwww」
B「本を読みたいなら、本屋に行けばいいじゃない(顔がこわいから無理だろうけど」
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