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ネット通販は異世界最強なんだよ!
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ボツネタ↓
男は目を覚ました。
一瞬、先ほどの悲劇は夢かと思ったが、周りは真っ暗な暗黒に包まれている。
しかし、男の周りだけ薄らと明るかった。

(死んだのは夢じゃなかった……?
というか、なんで俺の体が明るいっ……え?)

今、男の体は、丸い火の玉になっていた。
日本人の間に伝わる人魂という奴だ。
つまり、やはりというべきか、自分はトラックに轢かれて死んだ。男はそう判断せざる得なかった。

「あなたはゲームオーバーしました。
記録を保存して、異世界に転生しますか?」

先ほどまで居なかったはずなのに、すぐ目の前にいる巨大な女神というしかない美女がいる。
男は唾を飲み込み、問いかける。

「あ、あの……」

「あなたはゲームオーバーしました。
異世界に転生しますか?」

「あのっ!?
会話が成立してないんですがっ!?
ここがどういう場所で、アナタは誰なのか言わないとダメだと思う!」

「転生トラックを注文して自殺した、アナタには転生の権利があります。
異世界に転生しますか?」

「説明になってない!?
俺、マンションの十階に居たんだけど、トラックに轢かれるのは物理的にありえないよね!?」

「あなたのせいで、マンションの皆さんも死にました。
転生トラックはどんな場所にも現れ、対象を確実に殺す働き屋さんです。
どうか、褒めてあげてください」

「全部、俺が悪いのか!?
あれって、みんなが利用するネット通販サイトだよね!?
アメリカ軍もビックリする殺人兵器を、あんな場所に登録するのはダメだと思う!」

「あなたが望む能力は、ネット通販する程度の能力で良いですね?
世界の壁を超え、地球の物資を購入できます。
しかも、即日配達どころか、即、その場に配達されてお得です」

「やったー!
なんかすごい無理やりすぎる展開だけど、そういう能力いいかもっ!……って喜ぶ訳ないだろ!?」

「ネット通販に使う金は、あなたの口座で良いですね?
貯金尽きたら、口座凍結でファイナルアンサー?」

何を言っても無駄だと理解させられた。
女神は、まともに男と会話する気はないようだ。

(も、問答無用で転生させる気だっ……!
輪廻転生って本当に存在したんだっ……!)

このまま沈黙を保っていたら、問答無用で転生させられると思った男は、人魂な体をゆらゆら揺らし、焦っている素振りをジェスチャーして

「駄目ぇぇぇぇ!!
俺、半年ニート生活してたからっ!
貯金が5万円しかないんですぅぅぅぅっ!!
ご慈悲をくださいぃぃぃぃぃっ!!」

「分かりました。
ネットに接続できる能力と、自動動画中継の能力をあげましょう」

「え、どういう事?」

女神様は事務的な怖い笑顔で

「金がないなら、ネット広告で稼げば良いと思います」

「ネット広告って、競争が激しすぎて儲けるの大変だよ!?
俺、挑戦したけど、ほとんど稼げないよ!?
日本の頂点に立つレベルでやらないと駄目だよね!?」

「だから、動画を撮影して自動中継する能力をプレゼントしたんです。
これであなたもネット広告業界のトップランナー。
良かったですね」

「……異世界で得た物品を、オークションに出品できます?
あ、もちろん地球のネット通販サイトで」

「それは出来ません。
技術的な問題がたくさんありますので」

それを聞いた男は、残念すぎる気持ちになった。
ネット広告は、不景気になれば、企業が一番最初に削減しかねない業界だ。
その上、人間は飽きやすい生き物。ずーと人気を維持するのは難しい。
他者より優位な何かを持たないと、一年と持たずに口座は凍結するだろう。

(そ、そうだっ!
俺の外見を、格好良かったり、可愛い感じにすれば見てくれる人が増えるはず!)

人は外見が9割という嫌な言葉を思い出しつつ、男は女神様に話しかける。

「か、神様っ!
動画サイトで人気者になるために、絶世の美少年になりたいです!」

「なんて注文が多い転生者なのでしょう。
ネット通販で注文しまくるだけの事はありますね」

「ご、ご慈悲をぉぉぉぉっ!!!
第二の人生を幸せに生きたいんですっ!
ネット通販なしじゃ、生活できませんっ!」

「分かりました。
愛らしい妖精さんに転生させましょう」

「やったー!」

「これで、アナタの人生ヘルモード。
人間社会に溶け込むのは大変でしょうが頑張って、広告収入を伸ばしてください」

「ふぁっ!?」

「ちなみに、妖精は男にも女にも変身できる種族です。
オークや山賊に捕まっても女の子になれば、命だけは助かります」

「……え?命の危険がたっぷりな異世界なんですか?」

平和な日本社会で生きてきた彼には、治安が悪い社会は想像し辛かった。
女神は素敵な作り笑顔を維持したまま答える。

「アナタが転生する先は、将来的に人類が滅亡しそうな異世界ですが何か?」

「ちょ、ちょっと待った!
転生する先の異世界を変更してください!」

「諦めてください」

「そんなに簡単に言われても困ります!
俺っ!今まで動物一匹も殺したことがない現代子なんですけど!?」

「大丈夫、あなたは一人じゃない。
ネットに住む皆の応援の声が、自動的に聞こえる能力も差し上げます」

「うわぁぁぁぁ!!!強引に話を進める気だ!この人!
絶対、アンタ管理職とかに向いていない性格だよ!
コミュ能力が足りて無さ過ぎる!」

「きっと頑張れば、あなたも異世界でゆっくりできます
最後に質問はありますか?
ないなら、さっさと異世界に行ってもらいます。次の人を転生させないといけないので」

「……駄目人間な俺だけど、異世界行って幸せになれますか?」

女神様は、やはり作り笑顔のまま――

「幸せとは、自分で見つける物です
神に祈っても出てきません」
















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