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7話「アイテムはプレイヤーのために勝手に生えてくるんだよ」
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ベルティエ参謀長
■飛び降り自殺元帥ベルティエ■
「フランス大陸軍に命じる!被災したパリ市民と……ついでに冒険者(プイレヤー)も救え!」
パリが爆撃された後、ナポレオンは凱旋門の近くにあるホテルに参謀本部を置いて、軍に救助活動を命じた。
市内のあちこちから火の手が上がって大変だが、爆撃が政府・軍関連の施設に集中した事(おかげで国家機能が麻痺状態)、冒険者(プレイヤー)が回復魔法や蘇生魔法を掛けながら巡回している事もあって犠牲になった市民は少なそうだ。
三日後、ナポレオンは紅い椅子に座り、茶色のちぢれ毛が特徴的なベルティエ参謀長――前世のナポレオンに扱き使われて、最終的に「無能のルイ18世と戦争狂のナポレオンのどちらに従えばいいのかわがらないよおおおお!!!」と悩んだ末に飛び降り自殺しちゃった不幸な男から報告を受けている。
「陛下、ソ連軍の爆撃機はイタリア、フランス、オーストリア、プロイセンなどの主要都市を爆撃して去ったようです。
これから蘇生魔法が間に合わず、魂があの世へと行ってしまった元帥を報告いたします。
オージュロー(理想の上司と言われた男)、
シール(防御戦が得意な人)、
マクドナルド(名誉を重んじる男)、
マルモン(ナポレオンを一番裏切った男)、
ヴィクトル(最初の頃からずっと一緒に戦っているのにナポレオンに存在忘れられている人)、
ウディノ(勇敢だけど脳みそが足りない人)、
ペリニョン(一番地味な男)、
……以上、7名の元帥の死が確認されました」
報告を聞いたナポレオンは――見事なまでに、前世で私を裏切ったり、無能だからいらね!ってリストラした奴らだなと思った。
何の因果か分からないが、使える手駒が減るのは残念だ。
あと、ベルティエ元帥、今度は自殺するなよ。
お前が飛び降り自殺したせいで、誤字だらけで読み辛い文書を書くスルトを参謀長にしたから私は破滅したんだぞ。
一番居て欲しい時に自殺して亡くなるのはやめてもらいたい。
ナポレオンは目の前にいる不幸そうな顔をしたベルティエを睨んだ。
ナポレオンが怒っていると勘違いしたベルティエは話を変えてご機嫌をとろうとした。
「次に対空ミサイル?という兵器を爆撃機に向けて撃った冒険者の事ですが……隣の部屋で待たせています。お会いになられますか?」
「うむ、会おう」
ナポレオンは頷いた。
ベルティエが部屋から出ていき、1分後に部屋に例の冒険者(プレイヤー)を連れてきた。
外見は16歳ほどの金髪の美少女、胸が豊かで母性たっぷり。
頭にピョコピョコ動く黄金の狐耳。
お尻に大きくてフサフサした尻尾。
鮮やかな巫女服が似合う狐娘――ミーニャンだった。
「マスター、フランス料理美味しかったです!」
「ミーニャン!?なぜここにいるのだっ!」
「爆撃機に対空ミサイル撃ったら、なぜかここに連れてこられたんです」
「リアルマネーで1発10万円する代物をなぜ持っているんだ……」
「……二人は知り合いだったので?」
二人が知り合いだった事に驚いたベルティエ参謀長が疑問の声を上げた。
ミーニャンは満面の笑みで答える。
「マスターとは、古い付き合いなんです」
「……なるほど、そうですか」
この一瞬で、ベルティエの頭の中で、ミーニャン=皇帝の愛人という図式が誕生した。
ナポレオン皇帝の性癖は、ベルティエもよく知っている。
自分を甘えさせてくれる女が大好き。
子供のようなイタズラを許してくれる女性大歓迎。
後腐れがない関係が最良。
なら頭に狐耳が生えていようが、そんなのフランス皇帝には関係ねぇ!ベットの上でそんなの関係ねぇ!とベルティエが頭の中で考え込んでいると、ナポレオンが
「この狐娘としばらく二人っきりで話をしたい。すまないがベルティエ参謀長は部屋の外へ退出してくれるか?」
「分かりました陛下」
ベルティエが頭を下げて出て行く――皇帝が狐耳の愛人とイチャイチャするんだろうなと勘違いを残して。
■スティンガーミサイルの有効射程は4kmです■
「ミーニャン、なぜ対空ミサイルを持っているのか教えてくれ。あれは高価な課金アイテムだろう?」
ナポレオンは、ミーニャンを自分の前にあるソファーに座らせて問いただした。
ミーニャンは大きな黄金の尻尾を片手で弄りながら
「物々交換で手に入れたんです」
「10万円する課金アイテムを……何と交換したんだ?」
「エミールって名前の犬の獣人冒険者(プレイヤー)に、知り合いのウサギ娘を紹介したらくれました。あと、話は変わりますけど、私、マスターがゲームにログインしてない時間帯に、あちこち旅してゆっくりしてたんです。その時に偶然ゲームのバグを発見しちゃったんですよね」
「バグ?コンピュータプログラムの誤りや欠陥の事か?」
「ええ、そうです。とりあえず、これを見てください」
ミーニャンはそう言って、鮮やかな緑色の魔法の鞄を机に置いた。
「これは冒険者(プレイヤー)専用の課金アイテム【魔法の鞄】です。マスターは詳しい事を知らないと思いますけど、無限に物が入る代わりに、質量に比例して魔法の鞄が重くなるというデメリットがあります」
「便利だな。それがあれば兵站が楽になる。リアルマネーで幾らするんだ?」
「1万円くらいで買えます。盗まれても何処に現在あるのか分かる優れ物です」
「それで?その魔法の鞄とバグに何の関係がある?」
「まぁ、説明するよりも見た方が早いので、今からバグを実演しますね」
魔法の鞄に右手を入れたミーニャンが、中から長い長いスティンガーミサイル――1981年にアメリカ軍に採用され、携帯タイプの中で最も命中率が良い携帯型地対空ミサイルを取り出した。
円形の使い捨て樹脂製コンテナ内部に、細長いミサイルが格納されている構造だ。
ミーニャンは取り出したスティンガーミサイルを、魔法の鞄の中へと戻し、狐耳を10回ピョコピョコ動かす。
その後に、魔法の鞄に右手を入れて、スティンガーミサイル10基を次々とゆっくり取り出して床に置いて、ナポレオンに笑顔を向けた。
「分かりました?」
「分からん。無限に道具が入る事をアピールしたかったのか?」
「いえいえ違いますよ。スティンガーミサイル10基――合計100万円もする武器を、私が持っている事に違和感を感じませんか?」
「まさか……私の銀行口座に手を出したのか!?」
ナポレオンは激怒した。
生前の嫁ジョゼフィーヌが――別邸作ったり改造を繰り返して、莫大な借金を押し付けてきた事があるだけに、それを思い出して怒った。
その度に「こんな嫁とは離婚してやる!」と思ったが、騎乗位で逆レイプされて問答無用で有耶無耶にされ、借金返済のためにイタリア諸国から金を搾り取って汚職させられたから辛かった。
理不尽に怒られたミーニャンは狐耳をピョコピョコ激しく動かして
「違いますよ!アイテムを魔法の鞄に入れてから5秒以内に、狐耳を10回ピョコピョコするとアイテムが10倍に増殖するバグがあるんです!」
ミーニャンがまた魔法の鞄にスティンガーミサイルを入れて、狐耳を10回可愛くピョコピョコ。
10基に増えたスティンガーミサイル(15kg)を鞄から取り出して、よく見たら重さを感じさせない軽やかな動きで床の上に並べている――うわ、とんでもない怪力。
ナポレオンは冷や汗を流した。
「さ、さすがゲーム世界。何でもありだな」
「ええ、そうなんです。おかげでこの世界の人類、エネルギー問題に困りそうにないんですよね」
「……ところでミーニャン。このアイテム増殖バグの事を、私以外の誰かに話したか?」
「マスターに話すのが初めてですよ」 ミーニャンが首を可愛く傾げた。
「そうか、それなら良いのだ。もしもこれがソ連辺りに知られたら……巡航ミサイルや大陸間弾道ミサイルが無限に飛んでくる世界になってしまうから、絶対に誰にも言うんじゃないぞ?」
「遠距離攻撃が一番最強ってロマンないですよねー」
「歴史は常に矛が盾に勝利できるように進んでいるから仕方ないのだ」
こうして、ナポレオンはソ連への僅かな反撃の糸口を掴んだ。
アイテム増殖バグがあっても、戦争に勝利するのは難しい。
ソ連にはどのような戦況も一発逆転できる最悪の兵器――核ミサイルがある。
■銀髪美少女の家は警戒厳重?■
困った顔をしたスターリンが、ランプを持った親友のベリヤとともに自宅の廊下に立っていた。
大量の鍵の束を右手に持ち、寝室の扉に――何重にも設置された鍵を開錠しようと努力している。
「可笑しいわねぇ、どの鍵だったかしら?」
「……スターリンちゃん、家中、鍵だらけにするのは可笑しいよ?」
「ソ連の指導者たるもの、これくらい警戒が厳重じゃないと暗殺されちゃうわよ」
「いやでも、部屋に入る度にたくさん鍵の開け閉めしないといけないとか大変だよ!」
「警戒を緩めて、変態にパンツとか機密書類とか盗まれたらどうするの?」
「スターリンちゃんのパンツと機密書類の価値が同列だった!?」
「ベリヤだって、好きでもない男にパンツを盗まれるのは嫌でしょ?」
「え?好きな男ならいいの?」
「……前言撤回するわ。パンツ盗む男と付き合うとかさすがにないわね」
スターリンは喋りながら、鍵を片っ端から試して――10分の時間をかけて寝室の扉を開けた。
部屋には巨大なベット、熊の抱き枕、着替えを収納したクローゼット、書棚と机がある。
ベリヤからランプを受け取ったスターリンは、部屋の中をランプの灯りで照らし、不審者が居ないかどうかチェックした。
ベットの下――異常なし。
クローゼットの中――白熊をプリントしたパンツや、ドレスが並んでいる、異常なし。
机の下――脱ぎ捨てた、クシャクシャな黒と白の縞々パンツ一枚落ちているだけ。異常なし。
「あの、スターリンちゃん」ベリヤがスターリンの後ろから声をかけた。
「どうしたの?」
「毎回毎回、部屋の中をチェックするの疲れないの?」
「こうやってチェックしないと安心して眠れないじゃない。不審者が部屋に居たらどうするの?」
「ソ連でスターリンちゃんの部屋に無断で入る男なんていないと思うよ……あ、そういえば爆撃機がパリで1機落ちたとか何とか報告が上がっていたんだけど、どうしよう?」
「大した被害じゃないわね。今まで通り低空からの爆撃を繰り返せば良いと思うわ――それよりも早く寝ましょう?睡眠不足は美容の天敵よ」
スターリンはそう言いながら黒いドレスを豪快に脱いでクローゼットの中に収納し、子供らしい熊柄のパジャマに着替えていた。
ベリヤも会話をしながらクローゼットの服を拝借して、急いで黒いドレスを脱ぎ散らかして、ペンギン柄のパジャマに着替えた。
外見年齢12歳のロリババアによく似合う可愛らしい格好だ。
「フカフカだぁ」ベリヤは楽しそうにベットに向けてジャンプ。
「ベリヤはまだまだ子供ね……」スターリンは苦笑しながら、ゆっくり同じベットに体を横たえた。
ランプの灯りを雪女の技:氷ブレスでフゥっと吐いて凍らせて消すと、部屋が真っ暗になった。
ベリヤは暗がりの中、ベットの柔らかい感触を楽しんだ後、寂しそうな顔で、窓の外に広がる無限の星空を見ながら呟いた。
「……ねぇ、スターリンちゃん。私達がやっている事って正しいのかな?」
「突然、どうしたのよ」
「労働者や農民を数百万人単位で過労死させて共食いさせてるけど――たまに思うの。私達、死んだら絶対地獄に落ちるって」
「死んだら無よ、あの世なんてないわ。私達がやった事への評価は後世の歴史家とやらにでも委ねなさい」
「死んだら無――虚しくならないの?スターリンちゃん」ベリヤは後ろからスターリンを強く抱きしめた。
「ベリヤは淋しがり屋ね……今は酷い事をやっているように見えるかもしれないけど、これは全部新しい時代を築くために必要な事よ。古い細胞を除去し、党を一新しないとソ連は駄目になるわ」
「スターリンちゃんは凄いよね……どんな時でも意志を貫こうとする姿に、私、感動しちゃったかも?私なんか、時々、社会主義が間違っているんじゃないか?って思う事があって不安だよ」
そう言ってベリヤはクスクス笑った。
スターリンもそれに釣られてクスクスと笑って
「迷わずに私に最後まで従いなさい。そうしたら――理想の平等社会を私と一緒に築く栄誉をあげるわ」
「うん、わかったよ、スターリンちゃん。もっともっと悪い人を殺して世界に貢献するよ」
「あら?ベリヤはさっき地獄とか言ってたけど、人を殺して地獄に行くのは怖くないのかしら?」
「スターリンちゃんと一緒に地獄に落ちれるなら、それはそれで良い事だよ」
そのベリヤの言葉に心が温まったスターリンはベリヤの頭を手で包み込むようにして優しく撫でた。
「大丈夫よ、もしも天国と地獄があったら……理想社会を作った私達は天国行きと決まっているわ。まぁ、どっちも存在しないでしょうけどね」
ベリヤと楽しそうに語り合うスターリンの未来予想図には、地球の人口を一気に削減して統治しやすいようにする未来が映っていた。
――リアル大魔王の歴史がまた1ページ。
あとがき
スターリン(´・ω・`)末期の私の部屋は鍵だらけ。
【歴史のテンプレ】国家の平均寿命は約200年。100年で短期政権、300年で長期政権
http://suliruku.blogspot.jp/2015/07/200100300.html
【歴史のテンプレ】地の利を利用した中継貿易は初期投資ほとんどなしで莫大な利益を得られる。
http://suliruku.blogspot.jp/2015/07/blog-post_20.html
【歴史のテンプレ】組織の内部分裂や崩壊を抑えるために、外敵を設定するのが常套手段
http://suliruku.blogspot.jp/2015/07/blog-post_19.html
軍を養えなくなると国が亡ぶ。 例 現代の国々
フランス大陸軍 26名中7人死亡(君は最後まで生き残る事ができるのか?)
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6話のコメント欄はこちら
プロットはノートに書く主義だから、ほとんど紙媒体で保存しているでござる
●ミーニャんがステlンガーミサイルうった本人
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●どうして持ってるのっ!?!
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●物々交換したから。
☟
●10万円するものをどうやって買った?
☟
●ゲーム時代のバグ。
魔法の鞄に入れて、5秒後に取り出すとアイテムが増殖する。 魔法のカバンの説明
☟
●よっしゃー!対空ミサイルと兵器をどんどん増やせ!
スターリンたんのターン
●家に鍵かけすぎて困っている。
☟
●なぜ人をたくさん殺すのか?スターリンの思想表明