もふもふ帝国でニート巫女やっています
4話
最高責任者は逃げちゃ駄目なんだよ。 |
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責任者ってなーに?
責任者は責任を取るために存在するんだよ。
だって、責任者が逃げたら混乱して余計に犠牲者がでるって、歴史どころか現代の地球でも証明しているでしょ?
by ミーニャン辺境伯
給料未払いに激怒した10人の軍人に、大統領がびびって逃げて50万人が内戦で死んだ世界最貧国シエラレオネが悪い例ですな。
おかげで日本の支援が無駄になり、作ったインフラが廃墟になりました。
by タヌキモン領主補佐
【辺境伯ミーニャン視点】
1000人の廃人プレイヤーが国境を越えて侵入してきたという情報を入手したから、それに対処するために作戦会議をする事になった。
会議室は緑色の掲示板がある大きな部屋で、普段は文官達の執務室として使ってる。
現在、ここには私とエミール君、領主補佐タヌキモンの他に数人しか居なかった。
あれ?
面接試験で採用した冒険者はどこにいったのかなー?
目の前で平然としてる顔が丸い青狸に聞いてみた。
「たぬきもーん。
武官として採用した冒険者はどこにいるの?」
「閣下、彼らには都市の門を閉じるなどの仕事をしてもらっています」
「凄いね。
廃人プレイヤー1000人も来るのに逃げずにとどまってくれるなんて良い子達だよ」
「いえ、正確な情報を知らせると逃げると思われたので、未確認の軍勢が1000人来たとだけ教えました。
これで彼らの退路は絶たれたも同然」
「なるほど、頭いいね」
私は感心した。
タヌキモンに領主の地位を譲ってあげたいくらいに、彼は優秀だよ。
子供みたいに小さくてもふもふな狸だけど、やっぱり中身が違うね。優秀で良い狸だよ。
タヌキモンは私との会話を終えた後、小さい狸の手で緑色の掲示板を指差し
「それよりも廃人プレイヤーに対処するために作戦会議を始めましょう。
まずは、現時点で判明している情報を掲示板に書いてあるので、そちらをご覧ください」
掲示板にはこう書かれていた。
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★謎の武装集団
@数は1000人。黒い鎧を着ているが、恐らく集団の内側に後方支援要員がいる。
A全員、馬に乗っていた。
BLvは低くても1000、高くて6000。
Cあと半日〜1日で都市スエズまで来る。案内役がいるのか、地理を把握している。
★ミーシャン辺境伯軍
@数は30人、全員冒険者。
ALvは低くて10、高くて2000。
B警察は領土の各地に100人いるが、分散している上に彼らはLv10未満なので当てにしてはいけない。
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えと、これ勝てないよね。
そ、か。
冒険者たくさん雇ったと思ったけど、30人しか軍隊に居ないんだ。
質も向こうが上となると、この国おしまい?
ひょっとしたら、タヌキモンがなんとかしてくれるかなー?と思って、彼の狸顔を見つめると冷静な口調で私に言い聞かせるように
「閣下、戦えば必ず負けます。
籠城しても壁を強引に破壊されて負けます。
ヨーロッパ本国から仮に増援が来たとしても間に合いません、いえ、それ以前に増援部隊が大英帝国に艦隊ごと沈められて海の藻屑になるだけです。
ここはおとなしく降伏するのが得策かと」
「……なんか策はないのかな?
少数で大軍を撃破とか無理?」
「閣下、既に戦略的に圧倒的な劣勢で詰んでおります。
謎の武装集団は圧倒的な数と質を備えており、こちら側の抵抗は無意味です。
今のうちに、門の外に白旗を掲げて降伏の意思を示す事が一番だと思われます」
「でも、地の利はこっちにあるんだよ?
1000人がこの砂漠地帯で飲み食いするのは大変だろうし、なんとか頑張れないかな?
軍事学の常識だと、補給線が長い方が敗北しやすいって本に書いてあったよ」
「いいえ、閣下。
例え、私が名将だとしてもこの状況を覆すのは不可能です。
湾岸戦争の時のイラク軍のタワルカナ機甲師団と米軍の第2機甲騎兵連隊の戦い……【73イースディングの戦い】の二の舞になるでしょうな」
「73イースディングの戦い?」
初めて聞く戦いの名前だった。
確か、湾岸戦争は中東のクウェートっていう石油が豊富に取れる小さな国に、陸軍大国イラクが侵攻した事で始まった戦いだったけ。
イラク VS 多国籍軍だったけど、多国籍軍側が空から圧倒的な物量で攻撃して、イラク側は一方的に攻撃されて多国籍軍(米軍)の圧勝で終わったんだよね。
でも、具体的な戦いの内容は知らないから、タヌキモンに聞いて見る事にした。
「たぬきもんー、私は知らないんだけど、どういう戦いだったの?」
「イラク側が師団兵力の数の利と地の利を生かして、戦車部隊による完璧な待ち伏せ戦術で米軍の連隊を撃破しようとした戦いです。
イラク軍は米軍を包囲しましたが、どうなったか分かりますかな?」
「うーん、包囲した方が有利だから、イラク軍が米軍に勝利したのかな?
数もイラク軍の方が遥かに上なんでしょ?」
「いいえ、戦術も地の利も数の利も全てがイラク軍にありましたが、米軍の兵器の性能が圧倒的だったために、逆にイラク軍の精鋭部隊が壊滅したのです。
米軍の戦車は移動速度も早くて装甲が堅く、その装甲はイラク軍の砲弾を弾き、米軍の劣化ウラン弾はイラク軍の戦車を正確な射撃で容易く破壊し、射程距離も米軍側が2倍も上だったのです。
更に砂漠は見通しが良く、隠れる場所がほとんどない地形のため、機動力に優れ、遠距離から大火砲で攻撃できる戦車が有利な戦場でした。
そして……我が辺境伯領も見通しが良い砂漠地帯だらけ。
あとは分かりますな?閣下」
「つまり、私達が弱いイラク軍で、今侵入してきている武装集団が世界最強のアメリカ軍と考えればいいんだよね?」
「はい、残念ながらその通りです、閣下。
どんな策を仕掛けようと、彼らを激怒させるだけなのです。
ここは降伏して彼らの理性に期待するしかありません」
「そ、か。
じゃ、降伏頼んだよ。
何を要求されるか分からないけど、最悪の場合は私の身体一つで済むといいよね?」
この私の言葉に、タヌキモンからの返事は帰ってこなかった。
……これで私の領主ライフはおしまいかな?
でも、エミール君がいるし、一緒にダンジョン探索して冒険者やって暮らすのも悪くないかもね。
相手もきっと冒険者だろうし、日本人の集団だったら良識に期待できるかも?
もし、そうじゃなかったら、牢屋でアヘ顔ダブルピース生活や首チョンパ?
女として無理やり男達に犯されるのには慣れているけど、なんかやだな。
暴力の前に、女は無力な存在だって思い知らされるんだもん。
皆、獣な亜人をモフモフして幸せになればいいのに、なんで酷い事をするのだろう。
降伏のための準備を全てタヌキモン達に任せた後、私は執務室でエミール君と二人っきりになった。
だって、何もやれる事がない。
2年間の努力は、誰かさんに奪われるためにあったみたい。
人生は諸行無常だよ。
歴史そのものが敗者の屍の山の上に出来た、ひと握りの勝者による栄光の記録だものね。
日本人に馴染みがある戦国時代だってよく見たら悲惨だよ。
天下布武を夢見て修羅道を突き進んだ末に裏切りで死んだ織田信長しかり。
信長の意志を継いで、それ以外何にもなくなってしまった豊臣秀吉しかり。
何十年も時を待ち続けて最後の勝者となった徳川家康。
世界は無常だ……気落ちしている私に、エミール君は、とっても心配そうな顔で私を見詰めながら、片手を掴んできた。
この子だけは何があっても最後まで私を見捨てないでくれる。
それだけで私の人生に意味がある気がするよ。
「マスター。
僕と一緒に逃げませんか?」
ほんと、良い子だよ。エミール君。
「エミール君。
私は逃げちゃ駄目なんだよ?
責任者は責任を取るためにいるの。
なんだかんだ言っても、この2年間、領民の税金で生活していた訳だし」
「……マスターはほとんど贅沢してないじゃないですか。
僕はマスターが不幸になる姿を見るのは嫌なんです。
毎日、さんま定食が食べたいなら、僕が稼いで料理しますから一緒に逃げましょうよ」
「それは駄目だよ。
私、荒木村重みたいな卑怯者にはなりたくない」
「荒木村重?」
「荒木村重は私が産まれた世界の……戦国時代の大名だよ。
その人は、織田信長っていう凄い化物相手に謀反を起こして戦って負けたんだけど、織田軍に降伏して村重が自害すれば、家臣と妻子の命が助かったはずだったんだ。
でも、荒木村重はすべての責任を放り出して城から逃げちゃった。
結果はどうなったか、エミール君にはわかるかな?」
「そんな卑怯な男の事なんて、分かりたくもありません」
「皆、織田軍に殺されたんだよ。
一族郎党皆殺し。
そのせいで荒木村重は後世で卑怯者として歴史に名前を残す事になったんだ。
私はそんなのは嫌だよ」
「……マスターがそう言い張るのなら、僕もそれに従います。
きっとここで逃げ出したら、マスターはずっと後悔なさるのでしょう?」
エミール君が気分を落ち込ませて、狐耳がペタンと下に垂れた。
この世界に来る前の私なら、きっと逃げ出していただろう。
でも、今は逃げたくない。
指導者を失った辺境伯領が混乱すれば、きっと多数の犠牲者がでる。
特に女性は力が弱いんだ。
きっとあちこちで犯されて、見知らぬ男の子供を妊娠して酷い目に遭う。
そんなの嫌だ。
女性になってオークの軍勢に陵辱された過去が私にあるから、その辛さ苦しみは今では簡単に想像できる。
妊娠した事はないけど、性奴隷をやっていた頃は毎日豚の子供を孕んだらどうしよう、どうしようって、私悩んでたもん。
あんな酷い恐怖を味わせちゃ駄目だ。
そんな展開になっても最小限の犠牲に済むように努力するのが領主の努めなんだ。
だから、だから、人生の最後かもしれないから、エミール君の尻尾をモフモフしたい。
狐の尻尾は太くて可愛いすぎるのがいけないんだよ。
私はエミール君の身体をそっと抱きしめた。
エミール君を安心させるという意味もあったけど、狐耳と尻尾をモフモフしたかった。
ただ、それだけなんだ。
あー、狐耳可愛いー。
尻尾モフモフ。
これってセクハラな気がする。
異世界で女の子になって、妖狐のショタにセクハラ。
なんて罪深い性癖なんだろう。
可愛かったら男でも女でもどっちでも良い気がする。モフモフー。
【エミール視点】
マスターは僕の体をそっと抱きしめてくれた。
豊満な胸が僕の顔に当たっている。
一瞬、その事に気がついて僕の頭が真っ赤になったが、これがマスターとの最後のモフモフタイムになるかもしれないと思うと寂しかった。
こんな良い人と二度と会えないのは嫌だ。
神様、僕はマスターとずっと、こうやって抱きついてモフモフして生活したいです。
長い人生の中、初めて出会った同族がこの人で良かったと僕は思っています。
マスターがひどい目にあったら、きっと、僕は、復讐鬼になる。
マスターを辱められたなら、僕も廃人と呼ばれる化物を陵辱してから殺します。
マスターが殺されたら、廃人を殺します。
こんな良い人が不幸になるのは間違っている。
世界そのものが間違っている。
許せない。世界が許せない。
……と、この時の僕は思っていました。
ですが半日があっという間に経過して、都市の外を見ると、門の外に漆黒の鎧を来た1000人の廃人冒険者集団が集まって、【就職希望】という旗を掲げています。
これから戦いをするぞっていう雰囲気ではなく、ただの仕官希望者の群れでした。
皆、尻尾や獣耳があってモフモフな外見です。
同族の妖狐も10人ほどいたから、僕の心がホッコリしました。狐の尻尾が素敵なお姉さまがたくさんいます。
「就職希望ー!」「暗黒大陸は暮らし辛いから逃げてきました!」
「武官募集の噂を聞いてやってきましたー!」
「現実でアメリカ軍の空母を作る仕事をやっていました!空母は複数作らないと運用できません!」
「フランス軍でレールガン戦車作ってました!」
「高給で雇ってくれるんだろう?雇ってくれよー!」
「金髪のモフモフな巫女さんがいると聞いてきましたー!」
「最終的に民主主義国家にするんですよね?俺、共和主義者ッス!専制主義クソくらぇー!」
「ワシはウィスキーを作りたいだけなんじゃー!北海道でウィスキー作ってたー!」
「銭湯を作らせろぉー!毎日、風呂に入りたいー!」
「ライフル銃作らせろぉー!」
廃人冒険者という人たちは、良い人たちのようです。
マスターとのモフモフ生活がこれからもできるようで何より。
あとがき
(´・ω・`)この小説は健全なモフモフ小説です。
荒木村重が、生きるためならば、一族郎党が皆殺しにされても良かろうなのだぁーなクズ戦国武将な件
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