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もふもふ帝国で狐耳の巫女やっています
二章 ナポレオンの大陸封鎖令

5話 ブタマン朝がオスマン・トルコ帝国に名前を変えたそうです。

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メフメト2世ってだーれ?

合計2回に渡る30年以上の治世をずっと戦争に費やして、オスマン朝を帝国の名に相応しい国へと導いた偉大なトルコの征服王です。
父ムライ2世が死んだ知らせを聞いて喜び、幼い弟の首を絞めて殺し、他の兄弟を皆殺しにしてスルタン(帝位)に就き……辛うじて当時残っていたローマ帝国にトドメを刺して滅亡させ、最後を演出した人物でもあります。
もしも長生きしていたら、現代のヨーロッパ中にイスラム教のモスクがあったかもしれません。
キリスト教徒を改宗して作り上げたイニチェリ軍団が最強でした。

白人「オー!マイ!ゴット!」  「キリスト教カトリック!」

白人「オ!マイ!アラー!」 「イスラム教スンニ派!」

by 領主補佐タヌキモン





【エミール少年視点】


マスターを対象にした暗殺騒ぎが起きたから、港町アレクサンドリアでの視察を打ち切って都市スエズに電車で帰ることになりました。
無論、情報源であるオークの暗殺者達を蘇生して、魔力を強制的に吸い出すロープでぐるぐる巻きにして拘束して電車の後ろの列にある貨物室へと放り込み、廃人冒険者達が監視してます。
僕の方は電車の最前列の車両の座席にマスターと一緒に座って、こっそりマスターの尻尾を右手でモッフモフしました。
その対面にランヌ元帥とダヴー元帥が座ってます。
ダヴー元帥は電車のガタンゴトンガタンゴトンという激しい揺れに気分を悪くしたのか、窓の外にゲロを吐いてました。

「オエッー!」

ついでに頭髪も抜けて、どんどんハゲ頭になっていて悲惨でした。
このままじゃ不敗のダヴーではなく、不毛のダヴーという異名が付きそうです。
なぜこれほどまでに酔っているのか、僕にはわかりません。
わかる事は次の駅に着いたら、売店で胃薬を購入した方が良いという事です。
ランヌ元帥の方は、過ぎ去っていく窓の外の景色を見たり、興味深そうに電車の内装とかも見回っていて楽しそうです。
何か珍しいものを見つける度に、ランヌ元帥はマスターにしつこく質問してました。
隣にいる僕の存在は無視されてます。

「……こりぁ、すげぇ。
噂で聞くイギリスの蒸気機関車みたいなもんか?
これ?」

このランヌ元帥の問いかけに、マスターが狐耳を少しピョコピョコ動かしながら返事を返しました。

「電気で動いているから、蒸気機関車よりは早いと思いますよ、ランヌさん」

「やべぇー。まじすげぇー。
これ欲しいー。
物資の大量輸送ができて兵站が楽になるぞ。
下手したら、馬車が要らなくなる。
馬車とかマジで役に立たんからな。
戦争の時、馬車と再会するのが全部終わった後とかいう事もあるくらい馬車は不便だからこれ欲しいー」

ランヌ元帥がダヴー元帥を押しのけて、窓から外に身を乗り出しました。
ダヴー元帥は急いで他の座席へと走り、他の窓でゲロを吐いてます。えれえれ〜。
近くで立っている護衛の廃人冒険者さん達は、嫌そうな顔で汚物を吐くダヴー元帥を見てます。
……この人、本当に大陸軍最強なんでしょうか?
電車の揺れに負けた今、不敗ではなく、汚物のダヴーです。











しばらくの間、ランヌ元帥とマスターは楽しく会話して、平和な時間がゆったりと場に流れてました。
電車の外の光景は、ひたすら砂漠か農村か、巨大なピラミッドダンジョン、企業広告でペイントされた飛行船……見慣れた光景ばっかりが見えるから飽きます。
時折、対向車線から、北へと向かう貨物列車が通過し、その衝撃波で電車からビリビリ激しい音がしてビックリします。
マスターはずーと、ランヌ元帥と会話してて楽しそうですが、僕はつまんないです。

「ナポレオン陛下の字って下手ですよね〜。
ランヌさんは、ナポレオン陛下の文字読めます?」

「いやいや、あんなにオリジナルの略字が大量にある文章なんて読める訳がない。
初めて、あいつの文章読んだ時、戦場の地図かと思ったぜ。
しかも最悪なことに、書いたナポレオン本人すら、書いた文字に誤字がありすぎて読めないときてる。
あれでどうやって士官学校を11ヶ月で卒業したのか、俺にも分からん」

「……私は辛うじて、手紙に書かれた陛下の文字読めますけど、あの文字で政務って出来るんですか?
読めない書類に意味ないですよね?」

「だからナポレオンは口述筆記で全部済ませてるんだよ」

ランヌ元帥のこの言葉にマスターは首を傾げて

「口述筆記?」

「あ、分かんねぇか?
ナポレオンが話した言葉を、書記の人間が聞いて紙に書いているんだ。
この口述筆記の速度を早めるためだけに、今までの黒鉛の棒じゃ書き辛かったから鉛筆開発して、組織全体の書類仕事の速度を改善したりして凄いんだぜ。
ナポレオンは転んでもタダじゃ起きねぇ人間だ」

ランヌ元帥は大笑いしながら答えました。
こんな危険な話やめてくださいよ、マスター。
これを聞いたら、ナポレオン陛下が激怒するかもしれません。
あの人、有能で従順なら部下は誰でも良いって思想の持ち主ですけど、さすがにこれを聞いたら怒ると思います。

後ろの後部車両に面した扉が開いて、迷彩色の軍服を纏ったネズミ人が入ってきました。
ミーニャン護衛部隊のディズーニ中尉です。
とっても愛らしいネズミ顔の女性軍人です。
小柄で可愛らしいから、護衛部隊ではマスコットのように扱われてます。
ディズーニ中尉はマスターの所までトコトコ歩いて話しかけてきました。

「ミーニャン様。
暗殺者達を尋問する準備が整いました。
尋問に参加しますか?」

マスターはちょっと嫌そうな顔をしてます。
オーク達に女性として自殺級の酷い事をされた過去を持つマスターにとって、オークはトラウマの塊です。
でも、マスターはオークへの嫌悪感を抑えて勇気を持って座席から立ち上がり、ディズーニ中尉に落ち着いた声をかけました。

「うん、尋問に参加するよ。
ランヌ元帥達も来ますか?」

ランヌ元帥と仲良いですね、マスター。
僕、うっかり嫉妬しちゃうかもしれません。
この金色のフサフサな尻尾をモッフモフする権利を他の男に上げたくないです。










オーク達を拘束している貨物車両へと僕達は歩いて移動しました。
途中、ダヴー元帥がゲロの吐きすぎて死亡しましたが、蘇生魔法があったから問題がありません。
早く、電車に慣れてください、ダヴー元帥。
大陸軍最強の名が可哀想です。
とても歴史に名が残るレベルの名将だとは思えません。
10分ほど歩いて貨物車両に着くと、魔力を強制的に吸い出すロープで拘束されているオーク達がこちらを殺気を籠めた視線で睨んでます。
暗殺者の分際で口々に僕の敬愛するマスターに罵倒を浴びせてました。

「神敵ミーニャン!」「ミーニャン死すべし!」
「……女神さまだ。美しい」「スルタンの敵!」

1匹だけこっちに寝返りそうな雰囲気です。
さすがマスターのカリスマ。
敵対していたオークの1匹に、短時間でここまで好意を持たせるなんてさすがです……本人は全く嬉しくないでしょうけど。
現に、マスターは嫌そうな顔をしてて、早くここから出ていきたい顔をしてました。
でも、マスターは恐怖や嫌悪感を押し殺して、勇気を振り絞り、オーク達の前まで歩いて問いかけます。

「……どうして、私を殺そうとしたのですか?
いえ、それよりも気になるんですけど、どうして語尾にブヒィーって言葉付かないんですか?
ブヒィーってオークの口癖じゃないの?」

この言葉に、好意を示しているオークが返事を返しました。

「ブヒィーは、田舎者の訛った方言です女神様。
女神様を暗殺しようとした俺を許してください」







【ミーニャン視点】

ビクンビクンっ……!このオーク、礼儀正しいけど熱っぽい視線を向けてきて怖いよ。
昔、砦で囚われて性奴隷やっている時もそうだった。
魅力ステータスが上がりすぎて、一日中、取り囲まれてエッチィ目に会った時も、オーク達はこんな熱っぽい視線と大きくなったフランクフルトを私に向けていた。
怖い。オーク怖い。フランクフルト怖い。色々と認めたくない事を性奴隷だった時に認めさせられて、オーク見るのも嫌だよ。
でも、このトラウマは乗り越えなきゃいけない。
辺境伯領の住民にはオークだってたくさん居るんだもん。
私が嫌悪感出したら、たぶん、罪のないオーク達まで住民から差別されちゃうよ。
と、とりあえず、数字を数えよう。
銀髪の妖狐のエーミル君が1匹、2匹、3匹、4匹、5匹、6匹、7匹、モッフモフ。
……ふぅ、エミール君のフサフサの尻尾を触ったら落ち着いた。
女の子になった利点は、こうやって誰とモッフモフしてもセクハラにならない事だよね。
モッフモフはこの世界の皆の心のオアシスに違いないよ。
好意的な態度を示すオークと私は目を合わせて、とっても重要な事を問いただしてみた。

「それじゃ、話題を変えるけどなんで私を殺そうとしたの?」

「オスマン・トルコ帝国の偉大なる神の代理人にしてスルタン、メフメト2世陛下の命令です。女神様。
あの方は女神様に酷く嫉妬しておられます」

「オスマン・トルコ……?あれ?……?」

可笑しい。
ブタマン・トンカツ帝国の名前が出てこなかった。
いや、それよりもオスマン・トルコって、史実のイスラム世界最後の超大国の名前じゃなかったけ?
以前、タヌキモンがそう言ってたはず。
私の疑問を解決するように、オークはペラペラと全部話してくれる。

「メフメト2世陛下が突然、『豚とはなんだ!豚とは!イスラム教では豚は不浄な生き物!ブタマン・トンカツ帝国の名前は可笑しい!我はトルコの征服王ぞ!』って叫んで国名を変更したと噂になっていました、女神様」

「あの、それ可笑しくないかな?
ブタマン、いやオスマン帝国ってトルコをヨーロッパ帝国に奪われたままだよね?
なのに、なんで国名にトルコがつくの?」

「俺にもわかりません、女神様。
メフメト2世陛下は突然、人が変わったかのように数年前に言動を変えたんです。
最後に俺達と会った時、陛下はこう言ってました。
『我の30年の征服活動は何だったのだ!アッラーよ!我を豚の姿に変え、異世界に送るとは何事だ!しかもヨーロッパごとき辺境に押されるとは情けない国だ!』とこんな感じの事を言ってました」

この言葉に誇り高いランヌ元帥が反応して怒った。

「何がヨーロッパは辺境だよ!
ヨーロッパはな!世界最先端にして大発展しまくった場所だぞ!
……いや、わかったぞ!
その発言から察するに、メフメト2世は頭が狂ったんだな!
戦争に負けすぎて、気が狂ったんだよ!」

うーん、ランヌ元帥はこう言ったけど私にはよくわかんないや。
皆、モッフモフすれば良いのにね。
メフメト2世も私の暗殺なんて企んでないで、その権力で可愛い娘とイチャイチャした方が良いと思うの。
モッフフー。
ネズミ人の女性ディズーニ中尉は、小動物のような雰囲気があって可愛い。
抱きついてモッフモフしてもセクハラ扱いされないから、こういう時、女の子になって良かったなって思うんだ。
辺境伯領は色んなモッフモフで溢れているよ★
メフメト2世は人生を損してるよね。










〈オスマン・トルコ帝国首都バクダット(イラク)〉
【スルタン メフメト2世視点】


未だに分からぬ。
我には分からぬ。
どうして我が、トルコすら領有してないブタマン・トンカツ帝国というふざけた名前の国がある世界で、この豚(オーク)の身体を得て新しい人生を生きているのか分からぬ。
今の身体は人型の太った豚だ。悪い冗談としか言いようがあるまい。
そう確かに我はかつて1人の人間だったはずだ。
我は偉大なるトルコの征服王、メフメト2世。
30年に渡る治世を征服活動に費やし、オスマン朝を帝国の名に相応しい国家へと導き、二つの海と二つの陸を支配した世界屈指の王者なり。
キリスト教徒最大の敵にして破壊者である。
数々の敵を打ち破り、蹂躙し支配し、兄弟を皆殺しにして覇道を突き進めた王。

しかし、 我 は 死 ん だ は ず だ 。
年老いて、身体がブヨブヨに醜く腐り果て、それでも最後の親征(君主が軍隊と一緒に遠征する事)をしようとした果てにユスキュダルで死んだはずだ。
しかし、今、我はこうして新しいオークという豚顔の体を得て生きている。
周りで我に従い、頭にターバンを載せている大勢のオーク達は、イスラムの教えを信仰する同胞という事になるらしい。
悪い冗談だ。
不浄な豚ごときがイスラムの教えを信仰するとは片腹痛し。
地獄へと落ちてアッラーに詫びるがよい……だがまぁいい。
我は柔軟な合理主義者。
人間だろうと豚だろうと使えるものは使えるだけ使って使い潰してやろう。
前の世界で粛清した大宰相も、役に立つ間は生かしておいてやる。
我も器が大きくなったものだ……相手が豚だと思えば、前よりも情け容赦なく粛清できる。
ふははははははは!








そう思って余裕こいて1年過ごしていたら、周りの国の恐ろしさに気がついた。
なんだ、この大魔境は。
西にあるナポレオン率いるヨーロッパ帝国とはなんだ。コルシカ島という小さい島で育った貧乏貴族の分際で皇帝だとっ!?どうやって周りの将軍を納得させて、あんなに巨大な帝国を作り上げたのだ!?
【ナポレオンが皇帝に即位した後に、すぐにオーストリアと戦って勝利して周りを納得させたからだ。 by 戦の神様】
しかも、ナポレオンは戦場で大きな兵力差があっても常に勝利し続けている強敵だった。
我の居た世界のヨーロッパはバラバラで纏まってなかったから弱かったのに、この世界のヨーロッパは可笑しい。
兵士達はナポレオンを神のように崇めて士気が高すぎる。
羨ましい。悔しい。殺したい、それは我の理想の君主像だ。
特に洗脳教育を受けた訳でもない兵士達から崇拝されているだと!?
どこまで非常識な存在なのだ!

東にあるチンギス帝国という国も可笑しい。
前の世界でもモンゴル帝国という国があったが、きっとそれに該当する国だと思うほどに恐ろしい。
大陸の果てでもすぐ連絡が行き届く情報網を持っている、歴史書通りの可笑しい騎馬民族の国だ。
なんとかオスマン帝国の領土を一部割譲して休戦条約を結んだが、チンギス・カーンの野心から考えて条約が破られるのは時間の問題であろう。

大英帝国という国も可笑しかった。
イギリスという小さな島国の分際で、世界の富の半分を独占し、海軍の優位を利用して徹底的に各地で武器を売り捌いて長期戦して、二枚舌外交の達人だった。
アメリカ独立戦争のおかげでこちらに構っている暇がなくなった大英帝国と講和を結べたが、もしも再び敵対する事があれば大変な事になる。
オスマン帝国の艦隊は、大規模な物資輸送用の艦隊。
陸軍を支援するためにある。
海を支配されるとなると、物資の輸送を陸路でしなければならず、兵站に影響が出て迅速な行軍を望めない。

アッラーよ!
なんて恐ろしい世界に我を呼んだのだ!
特に一番恐ろしいのは、エジプトの地にあるミーニャン辺境伯領!
密偵を送って調査させたが、空飛ぶ船、大量の物資を陸路で超高速で運搬できる電車、水平線の彼方まで届く大砲、遠くの音を聞けるラジオ……恐ろしい技術の発展速度だ。
これは放置する訳にはいかぬ。
なんとしてでも、ミーニャン辺境伯領を征服して、あの地の全てを我の物にし、その後にトルコをヨーロッパ帝国から奪還するのだ。
歴代のオスマン帝国の首都があった場所を取り返さなければ、我のプライドが我を許さぬ。


最初の首都ソユット(1302–1309年) 
イェニシェヒル(1309-1314年)
イネゲル (1314-1326年)
エディルネ(1365–1453年)
イスタンブル(1453年) 東ローマ帝国を滅亡させて手に入れた我の人生最大の宝物。
スエズ 今、欲しい都市


きっと我は苦戦する。
だが、我がやらねばイスラム世界はバラバラに分裂して、栄光ある未来を手に入れる日は二度とこない。
前の世界よりも強大な敵だらけだが、やるしかないのだ。

……ところで、我の頭の上に時折表示されている数字は何だ?
『メフメト2世 Lv4万2112』
分からぬ。
前の世界と違い、世界を支配する法則が異なりすぎている。
ベットに来る美少年は全員が豚顔で困った。
これでは立つものも立たぬ。
前の世界の麗しき美少年達が恋しい。





あとがき

(´・ω・`)アッー!


小説書くためにオスマン朝のメフメト2世の事を纏めてみた。
http://suliruku.blogspot.jp/2015/03/2_19.html
トンプソン短機関銃を作って軍事チート(新しい銃種の時代を到来させて、世界史を変えた武器)
http://suliruku.blogspot.jp/2015/03/blog-post_78.html

【フランスの歴史】 ナポレオン「鉛筆、俺が作らせた道具なんやで。鉛筆の方が書類書きやすいやろ?」(18世紀)
http://suliruku.blogspot.jp/2015/04/blog-post_59.html 


 

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