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『プロローグ』ナポレオン皇帝「三大陸統一した狐娘が居た件」
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『19世紀のフランス、パリ郊外の一軒家にて』

おお、可愛い孫息子よ。
今日はワシが若い頃の話をしよう。
ワシがフランス大陸軍(ラ・グランド・アルメ)の兵士として各地で戦っていた事は知っとると思うが、何を隠そう、ワシはヨーロッパを征服したナポレオン陛下から名誉あるレジオン・ドヌール勲章を授与された歴戦の兵士なんじゃ。
若い頃は爆弾をあちこちに投げて敵兵を吹き飛ばして大活躍しとった。

「レジオン・ドヌール勲章ってなーに?」

孫息子よ、今時の若者はそんな事も知らんのか?フランスで最も名誉ある最高の勲章じゃよ。
卓越した功績のある人間にしか授与されないんじゃ。
どうじゃ?すごいじゃろ?
この勲章得るために7回もワシは戦争で負傷したんじゃよ。
アルコレ橋、カスティオーネ、エジプトのピラミッドなどで戦って怪我して、合計11回も遠い異国の地でフランスのために戦ったんじゃ。
しかも、ワシはナポレオン陛下とはジャイガモを分け合って食べた仲じゃ。
猛暑のジャッファ砂漠でスイカを差し上げた事もある。
このレジオン・ドヌール勲章が創設された時に、スイカを砂漠でプレゼントしたから勲章寄越せ!ってナポレオン陛下に言ったら逆に怒られたもんじゃ。
「スイカをプレゼントした事よりも、先に11回も遠征した事を先に言え!ほらレジオン・ドヌール勲章をくれてやる!」とな。
陛下は偉大な人物にしては飾り気がない人でのぅ。
周りの側近は金ピカの軍服を着ているのに、ナポレオン陛下は緑色の質素な服に小さな帽子を被り、白馬に跨った人じゃ。
そんな地味な格好をした陛下は兵士達と一緒に汗を流し、危険を冒して戦う勇者じゃった。
後ろでふんぞり返って良い身分でありながら、ワシのような一兵士の名前すら覚えて応援して励ましてやる気を出させる良い男、戦となれば軍の先頭に立ってオーストリア軍に突撃したりして無茶苦茶じゃったよ。
その頃のナポレオン陛下は戦に出れば神に愛されたかのように常勝不敗。
ワシらと一緒に圧倒的な速度で行軍して、敵軍の予想外の場所に出現して戦いを強いて勝ちまくった凄い人じゃ。
敵軍の弱点を見抜いたり敵軍の行動を誘導して弱点を作る能力もすごくてのぅ、それらの隙を突いて敵軍を分断して各個撃破して徹底的に追撃して殺しまくって圧勝する凄い‌軍人皇帝なんじゃよ。

「兵士と一緒に前線で戦う皇帝って格好いいね!他に有名な人はいないの?そんなに凄い皇帝なら有能な部下も居たんでしょ?」

ナポレオン陛下の部下で有名所と言えば不敗のダヴーが有名じゃな。
ダヴー元帥は倍の兵力差の敵軍相手でも撃破しまくる最強の名将じゃった。
普通、兵力差が倍になったら99%勝てんのにダヴー元帥は常に戦場で無敗。
どんな絶望的な状況でも不屈の意志で徹底抗戦していたそうじゃ。
ダヴー元帥みたいなお方がもう1人いれば、ナポレオン陛下は最後まで勝利できたじゃろうなぁ……。

「うん、凄いね。でも、ナポレオンって戦争で負けちゃった人でしょ?なら弱かったって事だよね?」

馬鹿者!
揚げ足を取るな!
ナポレオン陛下は民主主義を掲げ、全ヨーロッパの腐った王政を敵に回して勝ち続けた御方なんじゃよ!
あんな偉業はナポレオン陛下以外には絶対真似できん!
ワシら兵士達にとって陛下は同輩であると同時に神様じゃった!
男として生まれたら誰もがあのお方に憧れる!
ああなりたい!
成り上がって皇帝になって全ての栄誉を掴み、全ヨーロッパを支配しようとする大望を抱く!それを実現仕掛けた人なんじゃ!
確かに最後は反ナポレオン連合軍に負けて全てを失って大西洋の孤島セント・ヘレナに島流しにあい、大英帝国に暗殺されて生涯を遂げた残念な人でもある。(※当時は暗殺説が流行してた)
じゃが陛下はワシらの希望だったんじゃ。
腐った王政を破壊し、フランス革命の成果を背負って立つと同時に壊した大英雄。
陛下がメートルやグラムとかの度量衡を統一したおかげで、皆、商売しやすくなったと言っておる。
法律を記したナポレオン法典は難しくてワシには理解できんが、「万人の法の前の平等」「国家の世俗性」「信教の自由」「経済活動の自由」などを盛り込んであって今でも諸外国から高い評価を受けておるんじゃ。
ナポレオン陛下は内政も凄かったんじゃよ。

「へー、メートルやグラムって昔からあると思ってた。ナポレオンのおかげだったんだね。……でも、なんでそんなに強いナポレオンは負けちゃったの?最強なんでしょ?」

ロシアの冬が寒かったんじゃよ。
確かどっかで火山が噴火してな。
噴火で舞い上がった塵が太陽を覆って、とんでもなく冬が寒くなったんじゃ。
おかげで防寒具持たずにロシアに遠征したフランス大陸軍は丸ごと消滅して大変じゃったんじゃよ。
特にロシア人はキチガイじゃ。キチガイ。
ワシを含めたフランス大陸軍は頑張って首都モスクワまで攻め込んで占領したんじゃけど、あやつら首都すら放火して焼け野原にして徹底的に焦土作戦をやりおったんじゃ。
首都を占領されたら講和するのが当たり前なのにロシアの皇帝ツァーリは頭が狂っとる。

「焦土作戦ってなーに?」

敵軍に施設や物資を利用されないように、徹底的に建物や食料をぶっ壊して放火して、井戸に死体を投げ入れたりする作戦じゃよ。
焦土作戦をやられるとな。
現地で補給できなくなるからワシらは困ったんじゃ。
首都モスクワまで攻め込めば食料を得られると思ったのに首都が焼け野原になったから何も得られず、結局、大陸軍は占領したモスクワを放棄してフランスへと逃げ帰る事になって悔しい思いしたんじゃ。
帰り道は今でもトラウマじゃわい。
穀倉地帯で略奪……もとい徴発しながらフランスへと戻ろうとしたんじゃが、怒り狂った農民どもが襲ってきて同僚がどんどん戦死したんじゃ。
おかげで陛下と一緒にフランスに帰った時、70万の大軍が5000人に減って悲惨じゃった。

「生還率1%以下!?お爺さんよく生きて帰れたね!!」

孫よ、エジプト遠征時のフランス軍の生還率なんか20%じゃよ。3万5000人で遠征したら7000人しか生還できんかった。
ナポレオン皇帝陛下と一緒に遠征して戦うという事はそういう激戦を潜り抜けるという事なんじゃ。
あのお方は勝利するためならば、そういう損耗率を気にせずに豪快な戦いをするお方じゃったからな。

「ナポレオンよりもそんな生還率ばっかりの戦いやって生きて帰ってきたお爺さんの方が凄いよ!」

どうじゃ?ワシの凄さがわかったじゃろ?
しかし……フランス大陸軍がロシアで壊滅した事で軍事力によるヨーロッパ支配体制が崩れてそこから先のワシの人生は転落人生じゃ。
ヨーロッパ中の国々が連合を組んで、弱ったフランスに攻め込んできてのぅ。
さすがのナポレオン陛下といえども勝利できんかった。
確か最後はナポレオン陛下の軍勢が新兵7万、反ナポレオン連合軍は51万人くらい居て凄かったんじゃよ。
……もしも70万の軍勢で大遠征して軍団丸ごと消滅するロシア遠征がなかったら、今頃、陛下は元気でピンピンして大英帝国倒してヨーロッパ全てを支配してたじゃろうなぁ。
そうじゃったら、ワシなんか厚遇されて少佐くらいにはなっていたかもしれん。
そう思うと残念じゃなぁ。
 

「でも、ナポレオン陛下のせいで80万人くらいフランス軍人が死んだって教師が言ってたよ?ナポレオンが起こした戦争でヨーロッパ全体で200万人以上が死んだんでしょ?ならナポレオンは悪い人じゃないの?」

ナポレオン陛下が台頭する前のフランスは、フランス革命で王政が倒れてフランス全土で大虐殺の嵐じゃったんじゃよ。
貴族も平民も王様も仲良く裁判にかけられて首をスパーンとギロチンで切断される酷い時代じゃ。
それに比べれば、戦争で戦って80万人が死ぬ時代の方がマシじゃ。
学校の教師の方が間違っとる。
戦争すれば人は死ぬ。それは当たり前じゃ。
これだから最近の若いものは困る。
 

「でも結局ナポレオンは負けたから駄目なんでしょ?ヨーロッパ全てを敵に回した時点で、僕は無謀だなぁって思う」

……確かにナポレオン陛下にも駄目なとこがあった。
無能な親族どもを征服した土地の王様につけたせいで、現地の住民に反感持たれてワシら余計に苦労したわい。
ナポレオン陛下は大天才じゃったが、ナポレオン一族は無能じゃ。無能。
もっとまともで有能な奴に征服地を任したら楽できたじゃろうなぁ。

あ、そうじゃ。
イギリスに経済制裁する大陸封鎖令のせいで安い製品が入らなくなったから物価が高騰して、ヨーロッパ中で貧困に喘ぐ民衆が激怒したのも敗因じゃな。
イギリスを打倒する事に固執しすぎて、反ナポレオンの奴らを大量増殖させてしまったんじゃよ。
世界の工場イギリスの工業力は世界一。さすがにフランスの工業力じゃ、全ヨーロッパの市場を満足させる低価格製品を作れんから、イギリスに経済制裁したのが敗因になってしまったんじゃよ。
 

他にも思い出したら欠点が多いのぅ。
ナポレオン陛下は具体的すぎる命令を出しまくる人じゃったから自分で考えて行動する将軍が育ち辛くて、ヨーロッパ中を舞台に戦争したら陛下1人じゃ対応しきれなくなって自滅したのも敗因の1つと同僚から聞いたのぅ。
有能すぎる事が災いしたんじゃな。
将軍達が自分で考える必要がないくらいに陛下は明確な指示を出しとったようじゃ。
 
「問題だらけだよ!お爺さん!
ナポレオン負けて当たり前だよ!」

完璧な人間なんぞ、この世には居ないから仕方ないんじゃよ。
他の糞みたいな王様に比べれば、陛下はマシじゃった。
それだけはワシが断言できる。
貧乏貴族から皇帝まで成り上がったナポレオン陛下は、ワシらの憧れであり仲間であり神様なんじゃ。
陛下が居なかったら、フランスはもっとひどい事になっていたかもしれん。
個人で歴史そのものを変えてしまった、ワシはその偉業の生き証人になれただけでも満足じゃよ。
……もしも、陛下が別の選択肢を選んでナポレオン帝国(フランス帝国の別名)を存続させる最良の道を選んだら、ロシア遠征でほとんど死んだ同僚達は生きてフランスに帰ってきて、今のワシのようにゆっくり老後を過ごしていたじゃろうなぁ。
頼りになる同盟国が居ればこんな酷い結末にはならんかったとワシは思うんじゃ。
ん?窓の外から黄金の毛が綺麗な狐がこっちを見ておるな。
あの狐はエジプト遠征の時に見た事があるような……?
確かナポレオン陛下によく懐いている可愛い狐じゃった、目と毛並みがそっくりじゃ。

「お爺さん、砂漠だらけのエジプトに狐なんて居るの?」

はて?可笑しいのぅ?
エジプトに狐なんて居ないはずなのに、どうしてナポレオン陛下は狐と戯れたんじゃろう?
世界は不思議な事に満ちておるなぁ。








フランスの歴史
http://suliruku.futene.net/1uratop/Furansu_no_rekisi.html
ナポレオン「70万人の兵力投入したロシア遠征の生還率が1%以下な件。フランスに戻った時、5000人しか居なかった」
http://suliruku.futene.net/1uratop/Rekisimono/EU/Furansu/26.html
ナポレオン「エジプト遠征軍3万5000人の損耗率が80%な件。つまりほとんど死亡」18世紀
http://suliruku.futene.net/1uratop/Rekisimono/EU/Furansu/29.html
小説書くためにナポレオン皇帝の生涯(1769年- 1821年)を簡単に纏めて見た
http://suliruku.blogspot.jp/2015/03/1769-1821.html
当時の新聞「ナポレオンが怖いから、皇帝陛下と呼びします!」
http://suliruku.blogspot.jp/2015/03/blog-post_62.html
ナポレオン皇帝の終盤の人生が悲惨な件
http://suliruku.blogspot.jp/2015/03/blog-post_68.html
ナポレオン皇帝「余の凄さは兵士の士気が高く、兵力の移動と集中がすごかったからである!」
http://suliruku.blogspot.jp/2015/03/blog-post_79.html
不敗のタヴー「銀河英雄伝説のヤンってキャラの元ネタが俺な件」
http://suliruku.blogspot.jp/2015/03/blog-post_63.html
ネルソン提督「俺は海戦で勝利しまくって、ナポレオンの野望を打ち砕いた大英雄なんやで」 (18世紀)
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イギリス「海軍の兵員を確保するために、職人・船乗りを強制的に徴兵して、悪待遇で働かせるわ!」 ☚ナポレオン戦争時代のイギリス(18世紀)
http://suliruku.blogspot.jp/2015/03/18.html



あとがき

(´・ω・`)改稿前、一人称複数視点で読み辛いと言われたから、三人称視点中心で物語を進める事にした。

●プロローグ エピローグ☛ 一人称
●三人称視点 一人称混在視点
で物語構成予定

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