ゆっくり戻るよ!
前話に戻る
次話に進む

もふもふ、きつねっこぉ

27話のキツネ娘「ニャンタン達の死は忘れないんじゃよ!」



カウンター日別表示 


※出口を岩で塞いでいるから、脱出するとき、部屋のカーテンで窓から移動しないと駄目ぽ(´;ω;`)

 

 

逃げた。ニャンタン達は帰宅難民で混雑した道を走った。イド生物群のせいで街は大混乱だ。
車と車が衝突し、大混乱して立ち往生している車が交通を妨害している。歩道には人がゴミにように溢れていた。そんな人ゴミを踏み潰し、強引に掻き分けて、騎兵級が歩道を走ってくる。
もちろん、狙いは――ニャンタン達だ。

「可笑しいアル!さっきからイドに狙われているのは私たちだけネ!周りの日本人を無視しているヨ!」

リーファが拳銃を発砲しながら言った。チャイナ服の大きな裾を使って隠しながらの発砲だ。きっと拳銃は日本国では一般人が持ったら違法な武器なんだなとニャンタンは思いつつ、返事をしてあげた。

「……あいつらは攻撃目標を制限しているんです。攻撃してくる奴とか、事前に攻撃してもいいと教えられた目標しか攻撃しません。
猿から進化した人間とか、最初から目標として設定されてないんだと思います」

「つまり……どういう事アル?色々と意味深すぎる発言ネ……」

「種族:神は、最優先殺害目標だって、以前、知識神パルメドンが教えてくれました。だから、奴らは僕たちを積極的に狙っているんです。リーファさんも……一応、神ですよね?」

「アタシ達だけ罰ゲーム状態アルか!?」

「追いつかれる前にホテルに逃げればいいんです!」

「あいつら四本足だから早すぎるネ!銃弾が勿体ないヨ!日本の販売ルートだと、銃弾はとんでもない値段がするネ!」

リーファが振り返って発砲した。
ターンっ!ターンっ!ターンっ!
銃弾は赤い殻にめり込むが、急所に当たっていない。リーファは狙いを頭から4本ある足へと変えた。
ターンっ!
足の関節部分に銃弾が突き刺さる。騎兵級はバランスを崩して倒れこみ、立ち上がれなくなった。
だが、その後ろから数十匹の騎兵級が倒れた個体を踏み潰して通り越し、ニャンタン達がいる方向へと迫ってくる。日本人達は巻き込まれないために、路地とか裏路地とかを通って、大通りから次々と立ち去っていた。

「銃弾が明らかに足りないアル!もう、逃げられないヨ!一匹一匹潰しても意味がないネ!」

リーファが諦めの声をあげる。ニャンタンは仕方なく、懐から切り札を取り出した。
石コロが書かれた投石カードだ。矢印が刻み込まれており、ニャンタンはその矢印を騎兵級がいる方角へと照準を合わせて――

「キーニャン!」カード化を解いた。

その場に数十個の石が実体化する。至近距離なら、鉄板を凹ませるような運動エネルギーを持ったままの石だ。
それが騎兵級の巨体のあちこちを打撲させ、足を粉砕し、5匹ほどの騎兵級が場に倒れ込んだ。
……リーファが今の光景を不思議そうに見た後、ニャンタンに語りかける。

「今の石はなにアル?」

「投石による運動エネルギーを保持した――石をカード化した代物です。それより早く走って!あのホテルの階段を登ってください!」

「わかったヨー!安そうで羨ましい武器ネー!」

籠城に適したホテルまで、すぐそこだ。1階部分が吹き抜けの駐車場で構成されており、二階への進入路が少なく、防衛に適している。逃げる事に専念していたキーニャン、クロネッコォ、タヌウが階段を駆け上り、ホテルの玄関口へと入っていき、その後ろをリーファが追いかけた。獣神族と比べると巨人と言っても良い巨体だから、逃げるのがニャンタンより早すぎる。
このままでは、ニャンタンは騎兵級に追いつかれて潰されそうだ。仕方なく、残酷な奥の手を実行せざる負えない。ニャンタンは小さな両手を組み、自身が誇る最高の信仰スキルを発動させる。

「「もふぅー?」」「「もふふっ」」

小人サイズのニャンタンが、30匹ほど場に現れた。どれくらい小さいかと言うと、リーファの手のひらに乗れて踊れるような小ささだ。
彼らはニャンタンの分身体である。誕生したばかりで戸惑い、周りの風景を呑気に眺めていた。一部は銀色の猫耳をピョコピョコさせて激しく興奮している……説明する時間も惜しいニャンタンは投石カードをその場にばら撒いて叫んだ。

「投石カードを上げますから、頑張って逃げてください!」

「「もふぅぅぅぅぅっ!?」」

抗議の声を上げる分身体。どうやら本体(ニャンタン)を助けるために製造されたんだと理解したようだ。
ニャンタンだって分身を犠牲にするのは悲しい。でも、ここでニャンタンが大ダメージを負えば、享楽国で書類仕事したり、議員活動している分身体まで丸ごと消滅だ。
そんな事になったら、暴走した議会が『分身体は議員になっちゃいけない』などという法律を作って、国家機能が麻痺し、プチ世界大戦に敗戦して、地球で亡命政権ENDだろう。

「「もふぅー!?」」

騎兵級が、次々と分身体を潰そうと追いかけてくる。
ニャンタンは可愛い分身が犠牲になっている間に、ホテルまで走り抜き、階段をジャンプしてピョンッピョンッピョンッ。玄関口を通り抜け、懐から岩カードを出した。

「キーニャン!」

カード化を解除された岩が玄関を防ぐ。これでしばらくの間は時間を稼げるはずだ。そう思って二階の窓から外を見ると――騎兵級が騎兵級を足場に、さらにその騎兵級を足場に、別の騎兵級が上へとあがり……恐ろしい力技で二階の窓がある所まで登ろうとしている。





 

 

ゆっくり戻るよ!
前話に戻る
次話に進む

  • ブログパーツ