伝えたいこと。お前らはピンチだ。絶対絶命を通り越した崖っぷちなのだ。


15話〜狐娘「日本へ再びやってきたんじゃよ！」
★トラエモンを配備したせいで……行政撤去にやってきた連中と交戦。
トラエモンは、辛うじてワープゲートの向こうへと撤退するが、警察がワープゲートを包囲してしまう。

公園に建てられた違法な家を包囲する警官隊の群れ。彼らは頑丈そうな透明な盾を持っている。しかも軽そうだ。
そんな警官が少なくとも20人はいて、声を拡大する道具を使って叫びまくっている。

「虎のマスクを被った子供ー！抵抗するのはやめさない！
その家は違法に建築された建物です！撤去の許可が都から出されていますー！」

どう見ても原因は……ニャンタンの隣にいる大陸系商人だった。リーファの顔を見ると冷や汗がポツンッポツンッと流れ落ちている。今にもアイヤー！と叫びそうだ。
恐らく話の流れはこんな感じだろう。公園に違法に家を建てた。それを撤去するために解体業者がやってきたが、警備していたトラエモン達に追い返され、警察に連絡。
この包囲網が敷かれている状況に陥っているのだろう……ニャンタンはここまでの事を容易く推理し、冷たい声で話しかける。

「……おい、リーファさん」

「どうしたアル？なんか口調が可笑しいネ？全然、丁寧じゃないヨ？」

「ワープゲートが包囲されているのは……明らかにお前のせいですよね？」

「……異世界語わからないネー。あー、大変アルー。アタシの家が大変ヨー」

「僕たちの退路が絶たれたじゃないですか！？一体、どうするんです！警察と騒ぎを起こしたら大問題になりますよ！？」

「じゃ、米国辺りに亡命するアルか？キーニャン殿の信仰スキルを、こっちでも使えるようにすれば……ずーとニート生活ができるネ。その方がいいヨ。
仲介料に100億円くらい貰っていいアル？それとも、色んな国と駆け引きして一番高く買ってくれる所に移住するアルか？」

「尻を叩かせろー！この金の亡者めー！」

「いやアルー！セクハラはやめるネー！」

ニャンタンとリーファの鬼ゴッコが始まろうとした途端――場の雰囲気がガラリッと変わった。
ドゴッ！バギッ！グシャンッ！
リーファの家から、無数の衝突音が聞こえる。
ドドドドドドッ！ボボボボボッ！
恐ろしい数の足音もした。そして次の瞬間――ガシャァーン！パリパリーン！窓という窓が壊れ、ガラスが飛散、玄関がドゴッと吹き飛び、中から白い化物たちが飛び出してきた。
蟹のような四本足の巨大な化物、二つの盾を持った人間っぽい生き物……それらにニャンタンは見覚えがある。

「ぎゃあぁぁぁぁぁ！化物だぁぁぁぁ！」

「署に応援を要請しろぉー！」

ターンターンターン！

警官の叫びとともに、拳銃から銃声が響いた。だが、二つの大盾を持った化物――盾級が防ぐ。
防ぎながら警官隊との間を移動して距離を詰めまくり――銃声が鳴り止む瞬間を奴らは持っていた。今度は大型の蟹のような化物――騎兵級が、赤い四本足で地面を力強く蹴って高速移動。両手の大きな鋏を振り下げて、警官に叩きつける。

「撃てー！害獣は警察の管轄内、あ、予備の銃弾がない――」

警官の頭は見事に潰れた。踏み潰されたトマトのような姿になり、ドサッと残った胴体が地面へと倒れる。
残った警官は拳銃を放り捨て、警棒で応戦する。だが、近接戦闘で騎兵級に叶うはずもなく、大きなハサミで次々と潰し殺され、被害が続出するばかりだ。拳銃にこめる弾丸がないのか、先ほどから拳銃は役に立っていない。
この光景を見て、リーファは首を傾げている。

「あれは何アルか？四足歩行で気持ち悪い格好をしているアルな」

「イド生物群だ……どうして、ワープゲートの向こうからウジャウジャ湧いてくるんだ……？」

「ニャンタン殿が戦争している相手アルか……やはり、亡命政権を作った方が良いネ。大陸系商人の国とかどうアル？きっと言い値でキーニャン殿が売れるネ。尖閣諸島辺りで交渉すればきっと熱い展開が待っているヨ」

パシコーン！　ハリセンで叩く軽快な音が、リーファの頭から響いた……。

「うーむ大変じゃのう？逃げた方がええかの？最近のわしは何もやってないのに運が悪いぞい」

イド生物群を異世界へと呼び込んだ元凶であるキツネ娘の頭からも、パシコーン！という音が鳴った。