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もふもふ、きつねっこぉ

★19話の狐娘「地球の支配者は関羽だったんじゃよ!」



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空気を思いっきり吸ったニャンタンが叫んだ。

「も、もう手遅れってどういうこと……まさかリーファさんは裏切り者!?やっぱりそうだったのか!」

「失礼アル!商売人は信用が命ヨ!札束で顔を叩かれない限り、そんな事はしないアル!」

「説得力の欠片もないですよ!?その発言!?」

「アタシは潔白ネ!証拠はアタシの正々堂々とした態度アル!信じて欲しいヨ!このキラキラな瞳を見るアル!」

リーファの黒い瞳を、ニャンタンは見てみた。しかし、見ても見ても……金銭で濁った欲の塊にしか見えない。

「もふぅ……?」

「今、失礼な事を考えたアル!?酷いヨ!乙女心を傷つけるなんて女垂らしネ!」

ニャンタンとリーファの口喧嘩を、タヌウの冷静な声が仲裁した。

「まず、私の話の続きを聞いてもらいたい……先ほど購入した近代経済学を見て思ったのだが……どうやら、この地球という惑星は、金(かね)を異常なくらいに信仰しているようだ。
大量の金銭があれば、世界中、どこの土地でも買えて、組織を移転できる。金(かね)さえあれば、大抵の無茶は通るようだな」

「異常なくらい金(かね)を持っている人がいたら……普通は全財産没収イベントが発生するんじゃ……?どこの国も財政問題で困っているのが普通だと思いますし……旅行中の金持ちを投獄して、財産没収とか外国だと普通だと聞きましたよ?」

ニャンタンの有り触れた疑問に、タヌウは即座に答える。

「地球では、金銭はデータ化されて、現存している貨幣や紙幣以上のお金が、経済の中で動き回っている。財産没収なんて事をしたら、すぐさま、金持ちは国外へと逃げ、超大国とやらが経済制裁を実行するようだな。
なにせこの地球の金持ちたちは、資産を現金以外の形で持っているようだから、没収する難易度も高いようだ」

「もふぅ……?金銭のデータ化……?現金以外の資産……?」

「株式……いや、この概念はわからないか……とにかく、本のこのページをみたまえ」

ペラッ!
とタヌウが見せたのは、先ほど、コンビニで購入した経済学の本だった。
素人でも分かりやすいように、ドドーンっ!と、対談形式で経済の事が説明されている。

★★★

日本 (´・ω・`)俺に任せろ!
銀行使って、貸し借りすればっ!
数字上のお金の額は、2桁にも3桁にも膨れ上がるんだ!


経済(´✖ω✖`)しゅごい!
80兆円が1000兆円以上になった!
これで色んな事業ができる!

byパルメ書房 「俺は80兆円の現金を信用創造でっ!千兆円以上に増やしてチートする!」より
(※パルメが書いた過去記事の一部です)

★★★

「ぎ、銀行というシステムを使うと、数字上でしか存在しない金を幾らでも増やせる!?」

本に書かれていたのは異常すぎる内容だった。実在する現金以上の金が、経済の中でブォーンブォーンと台風のように動き回り、その膨大な金が数百万規模の大戦争を可能とさせる……そんな事が書いてある。
ニャンタンの常識をぶち壊す内容だ。そもそも、紙の金(かね)なんてものが価値を持っているのも非常識である。
享楽国が誕生する前の自分たちの世界なんて、鉱山用ダンジョンなんてものが存在せず、銀貨と金貨が足りなさ過ぎて、経済が窒息死して物々交換やっている地域が多かっただけに、その内容は衝撃的だ。しかも、タヌウの話はまだまだ続くようである。

「本によると……地球では……享楽国よりも遥かに、金(かね)に執着する人間が多いようだな。
私たちの国にも、金貨の魅力に取り憑かれた商人達が、せっせと貯蓄に励んでいたりするが――この地球に存在する商人……特に上位62人は、地球の半分の富を保有しているらしい」

「し、信じられない……こんなに高度に発展した社会の富を……独占しまくる商人がいるなんて……財産没収したら赤字問題を解決できそうですね……」

「しかも、この状況を放置すれば……ごく一部の富裕層が、地球全体の99%の富を握ることになる……そう予想されているようだ……ここまで言えばわかるだろう?
商人が崇拝する神は、商売の神。
つまり……この地球の支配者は……関羽という商売神にほかならないんだ」

「えと、どういう事なんです……?」

「証拠はこれだ。ニャンタンがこの地球にやってきて、すぐに接触したのが関羽の眷属神リーファ。
恐らく、彼女はスパイに違いない!」

タヌウの発言を聞いて、ニャンタンは戦慄した……何時から自分は行動を操作されていた?
先生と一緒に異世界へ来たのは偶然だ。大陸系商人がいる場所に殴りこんで、アルミの棒を購入したのも偶然のはずだ。だが、そこに惑星一つを支配する大いなる存在が介入していたとするならば……リーファとの出会いは必然となる。まさに恐るべき陰謀だ。神としての圧倒的な格差をそこに感じる。

「そうだったアルか!?アタシはスパイだったアル!?」

「ああ、そうじゃないと可笑しいのだよ。こんな偶然があるはずないのだ……恐らく君は金(かね)が支配する世界からの刺客なのだろう?」

「し、知らなかったアル……関羽様が全世界の支配者だったなんて……アタシが貧乏なのはどうしてアルか……」

「君が知らないのも無理はない……基本、商人は英雄と違って目立たない存在……裏で動く奴らだ。君は思考でも誘導されて無意識にスパイ活動をしていたのだろう……」

「あ、でも、関羽様は元々は武人だったアルよ?」

「……」

「この関羽の目をもってしても……世界恐慌がくる事を読みきれなかった……って毎回言っている人ネ。その度に破産する眷属神が大量に出て、夜逃げで大変ヨ。大陸系商人の国なんてバブルが崩壊して、ゴースト都市だらけネ」

「……ふ、どうやら私の推理は間違っていたようだ。
それではクレジットカードとやらを見せてもらおうか」

タヌウの推理は間違っていたようだ。ニャンタンはそんな幼馴染の名前を呟いた。

「タヌウ……」

「け、経済は生き物だから……神の目をもってしても読みきれない……恐らくそういう事なのだろう」

顔を真っ赤にしたタヌキ娘の尻尾をモフモフしたい。ニャンタンがそう思えるくらいに今のタヌウは可愛かった。

「リーファ、君を勝手に犯人扱いして悪かったな……すまない」

「誤解が解けたならそれで良いアル。お詫びは金貨10枚でどうネ?いや、冗談アル。これから良い関係を築きたいヨ」


 

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